第67回日本産科婦人科学会学術集会のテーマである「知の連携」の視点に立ち、日本の産婦人科医の次世代を担う若き20代、30代が将来の人生設計に思いを巡らす中で、ナビゲーションとなる経験や体験を「ダイバーシティー」をキーワードに、今きらきらと輝いている30代後半から40代前半の医師にお話しいただくことを本企画の目的とした。
男女共同参画・女性の健康週間委員会委員長 片淵秀隆
(平成27年4月)
産婦人科医を増やし頑張って乗り切っていこうとしていたが、それだけではいけないことに気が付いた。2年前より「ワーク・ライフ・バランスをしっかりと考え、生活も保障します。と、いうことを実践しよう」と学会全体で努力してきている。その努力には2本柱が必要である。
1.24時間保育や病児保育、ベビーシッター制度などのハード面の整備
2.プライベートな状況で産婦人科の常勤医として続けられるかと判断を迫られる場合、先輩たちがどのように乗り切ってきたかなどの情報を共有して生かすことである。
本日の企画に大いに期待をしている。今後も継続して取り組んでもらいたい。
公益社団法人日本産科婦人科学会理事長 小西郁生
(平成27年4月)
司会:男女共同参画・女性の健康週間委員会副委員長 清水幸子
(平成27年4月)
薬剤師からの医学部受験を経て産婦人科へ
初期研修医で結婚し、後期研修医で出産を経験する。
多忙な夫にはあまり頼れず専門医試験に向けて症例数の不足が問題になる。
大学では不足分を埋めることは困難であり、分娩や外来を分娩数の多い医院で経験することで充足した。
米国のレイバリストという制度は画期的。
方向性を決定づけた三つの出会い
① 胎児期に治療が必要な疾患があること
② 胎児治療で劇的に改善される疾患があること
③ モデルになるようなメンターどの出会い
自分の方向性が見えない時、モデルになるようなメンターの先生を見つけることが一つの道になる
愛媛大学を卒業後、兵庫県立成人病センターで臨床のモチベーションにつながる研究として悪性腺腫に携わる。子宮頸癌患者の多い地域への留学を希望しインドネシアへ。
多くの手術を経験した。今は岩手医科大学の医局長という立場にあり配慮していることがある。育児中の女性医師がサブスペシャリティの専門医を取得できる。フルタイム復帰時には指導医の立場で戻れる。女性が働きやすい環境が男性にも多様な働き方を認められる環境となる。男女にかかわらず自分なりに頑張り続けること、それを支えられる環境を作ることが大切。
札幌医科大学卒業後北海道で20年間過ごす。腹腔鏡手術を多く手掛ける中倉敷中央病院の安藤正明先生と出会う。2011年から2年間の倉敷中央病院での研修で悪性腫瘍の腹腔鏡手術を習得。研修会でであった豊橋市民病院からのオファーで現職。新たな地で腹腔鏡手術を広げている。一生懸命やるという思いは皆さんに伝わる。名刺交換は人とのつながりを生み、その関係を保つことが大切
富山県出身で富山大学卒。卒業と同時に結婚し、専門医取得後出産。何とかなるはずが何とかしなければとなり、夫のキャリアを優先し分娩のない総合病院で一人医長として勤務した。夫の留学でともにカナダに行き子育ての楽しさを実感し、後の思春期医療への基礎となる。帰国後、高岡市民病院で再研修を行い女性のヘルスケアについて学ぶ。夫と共に静岡に移り現病院で思春期・更年期外来を開設、さらに性教育推進事業を立ち上げる。思春期医療・教育を通じて静岡の子供たちの未来をまもることをライフワークとしていきたい。
久留米大学を卒業後、聖路加病院で外科医としてキャリアをスタートした。父の入院を契機に地元で産婦人科をすることに決意し九州大学に移る。産婦人科専門医を取得しH24年からは大学と週1回の実家診療所勤務となった。再度父の入院があり、今後の方向性を考える契機となる。週に2日の大学での外来・手術と週4回の診療所での外来・分娩取り扱いとなっている。多様性が求められる中、謙虚な気持ちを忘れずに、短期的な目標と長期的な目標を適度なバランスで持ちながら仕事に関わり続けていくことが、より良い医療を形作るきっかけになる。
産婦人科は20、30代において最も女性医師の割合が多い診療科で、早くから積極的に男女共同参画に取り組んできた。男女共同参画というと仕事と家庭の両立をテーマにすることが多いが、日本産科婦人科学会は一歩進んで「ワーク・ライフ・バランス」に取り組んでいる。今回のワークショップでは、多様な働き方の19人の若手男性・女性医師で「産婦人科医を続ける理由~あなたのミッションは?~」と題して、産婦人科医を志した理由、仕事が生活や家庭に与えるよい影響、生活や家庭が仕事に与えるよい影響、上司・同僚・部下からの心ない一言、自分を育てた一言、そして産婦人科医として成し遂げたいことなどを話題に開催した。
産婦人科医療の発展のためには仕事に内容、働き方、生活など、すべての分野でダイバーシティーが必要だと認識できた。このことを受け、女性を診る診療科だからこそ、医学界のどの団体よりもダイバーシティーを推進する団体でありたいと思う。
司会の種部恭子先生
(日本産科婦人科学会特任理事 平成27年4月)
横浜市立大学 | 浅野涼子 |
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日赤医療センター | 有馬香織 |
神戸市立医療センター中央市民病院 | 池田裕美枝 |
三井記念病院 | 板岡奈央 |
瀬戸病院 | 太田 寛 |
済生会長崎病院 | 河野通晴 |
横浜市立大学 | 齋藤圭介 |
獨協医科大学 | 多田和美 |
鳥取大学 | 出浦伊万里 |
馬込中央診療所 | 中嶋章子 |
倉敷成人病センター | 羽田智則 |
横浜市立大学附属市民総合医療センター | 山本ゆり子 |
よしかた産婦人科 | 善方裕美 |
詳しくは日本産科婦人科学会雑誌 2015年 第67巻 第10号 理事長推薦フォーラム『「きらきら光るギネ女、ギネメン」ギネナビ~ワーク・ライフ・バランスを応援します~』をご覧下さい。
http://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=67/10/067102192.pdf