公益社団法人 日本産科婦人科学会

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「婦人科領域におけるロボット手術に関する指針」の改訂について

更新日時:2024年1月11日

「婦人科領域におけるロボット手術に関する指針」の改訂について

2022年 6 月25 日
2022年12月12日一部改訂
2023年12月9日改訂

公益社団法人日本産科婦人科学会
理事長 加藤 聖子
婦人科腫瘍委員会
委員長 川名  敬
社会保険委員会
委員長 永瀬  智

指針改訂の背景

 婦人科領域におけるロボット手術は、これまで日本産科婦人科学会(以下、本学会)の定める「婦人科悪性腫瘍に対するロボット支援下手術に関する指針」、「婦人科良性疾患に対するロボット支援下手術に関する指針」に基づいて行われてきたが、これはロボット支援下手術を各施設に安全に導入することを目的としたものであった。 当初の指針が2014年5月に発布されて以降、2018年4月に「腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術(子宮体がんに対して内視鏡手術用支援機器を用いる場合)」、および「腹腔鏡下膣式子宮全摘術(内視鏡手術用支援機器を用いる場合)」が、2020年4月に「腹腔鏡下仙骨膣固定術(内視鏡手術用支援機器を用いた場合)」が保険適用となった。現在、婦人科疾患に対するロボット手術は普及期に入っており、本学会全体での安全性の担保および有効性の検証が求められている。
 これらの術式が保険適用される要件として周術期の安全性を中央監視できる登録システムが必要とされ、2020年1月以降の症例は一般社団法人National Clinical Database(NCD)の症例登録システムに登録することとなった。また、低侵襲手術による悪性腫瘍手術においては安全性の確保に加えて根治性を担保するための実施基準の設定が求められ、2020年3月に本学会の「婦人科疾患に対するロボット支援下手術に関する指針」を改訂した。
 ロボット手術支援機器の機種拡充に合わせて、指針の改訂を行った。

婦人科領域のロボット手術に関する指針

 手術施行に際して、厚生労働省が保険診療として定めるロボット手術に関しては、その適応と術式を遵守して行う。保険診療として定められていない手術適応や術式に関しては、関連学会の定める直近のガイドライン(産婦人科内視鏡手術ガイドライン・子宮体がん治療ガイドライン・子宮頸癌治療ガイドラインなど)に基づき、先進医療あるいは臨床試験として実施する。

施設・術者基準

下記項目を満たした各施設でロボット手術を行う。

① 厚生労働省の定める腹腔鏡下膣式子宮全摘術(内視鏡手術用支援機器を用いる場合)または腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術(子宮体がんに対して内視鏡手術用支援機器を用いる場合)にかかわる特掲診療料の施設基準を満たしていること。
② NCDに各施設で実施施設登録申請を行い(注1)、承認を受けたのち手術を実施すること。
③ NCDの症例登録システムに沿って遅滞なく症例登録を行うこと。
④ 本学会の婦人科腫瘍登録施設で悪性腫瘍に対してロボット手術を行った症例については、従来通り婦人科腫瘍登録にオンライン登録を行うこと(注2)。
⑤ 新たにロボット手術を導入する際には必ず適切な指導者のもとに行うこと(注3)。
⑥ すでに手術支援ロボットを用いてチームで手術を行っている施設が新たに別機種(注4)のロボットを用いた手術を初めて行う際には、その製造販売会社のトレーニングプログラムをチームとして終了し、その機種の指導者の執刀手術見学と招聘手術を少なくとも1例は経験しておくこと(注5)。ただし、そのチームに従来の手術支援ロボットによる当該手術の経験が十分にあること(注6)。

注1:登録申請にあたり、手術実施チーム内に日本産科婦人科内視鏡技術認定医(または日本内視鏡外科学会技術認定医)が含まれていること。さらに悪性腫瘍手術を行うにあたっては、手術実施チーム内に日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医が含まれていること。但し、いずれも自施設の常勤医に限る。
注2:ロボット支援下の悪性腫瘍手術を実施する施設は本学会の婦人科腫瘍登録を実施していること。
注3:「指導者」は原則として、日本婦人科ロボット手術学会が日本産科婦人科内視鏡学会および日本婦人科腫瘍学会と共同認定するプロクター(学会HPで公表)を推奨する(新規ロボット機器においては、プロクター制度がスタートするまでは、日本婦人科ロボット手術学会が推奨するファーストインストラクターとする)。
注4:下記項目内に併記された機種は同一機種とみなす
(1)da Vinci Siサージカルシステム、da Vinci Xサージカルシステム、daVinci Xiサージカルシステム(インテュイティブサージカル合同会社)
(2)hinotoriサージカルロボットシステム(メディカロイド株式会社)
(3)da Vinci SP サージカルシステム(インテュイティブサージカル合同会社)
(4)Hugo RAS システム(コヴィディエンジャパン株式会社)
(5)Saroaサージカルシステム(リバーフィールド株式会社)
(6)ANSURサージカルユニット(朝日サージカルロボティクス株式会社)
注5:良性疾患ロボット手術から悪性疾患(体がん)ロボット手術に移行する際にも、プロクタ-招聘が少なくとも1例は必要である。
注6:そのチームにロボット手術の経験が十分ない場合は、新たにロボット手術を始める際の要件を満たすこと。

術者は以下を遵守してロボット手術を行う。

① 既定のトレーニングコースを受講し、個人名で使用許可証を取得(必須)した後に、実機あるいはシミュレーターで十分なトレーニングを実施し、手術支援ロボット特有の操作方法に習熟していること。
② ロボット手術の見学、またはビデオ動画等により、術式を十分に理解・把握していること。
③ 厚生労働省の定める各術式(内視鏡手術用支援機器を用いる場合)にかかわる特掲診療料の施設基準に定める経験症例数を有すること。

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