公益社団法人 日本産科婦人科学会

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平成24年度第1回倫理委員会議事録

更新日時:2018年8月2日

平成24年度第1回倫理委員会議事録

日 時:平成24年7月31日(火)午後6時00分~8時25分
場 所:日本産科婦人科学会事務局「会議室」

出席者(敬称略)
   理事長: 小西 郁生
   委員長: 落合 和德
   副委員長:久具 宏司
   主務幹事:榊原 秀也
   委 員:安達 知子、石原 理、苛原 稔、齊藤 英和、澤 倫太郎、杉浦 真弓、髙橋 健太郎、
竹下 俊行、平原 史樹、峯岸 敬、矢野 哲、山中美智子、吉村 泰典
   総務担当理事:岩下 光利
   事務局:桜田 佳久事務局長、青野 秀雄事務局次長
<欠席者:大川 玲子委員、津田 尚武委員、中村 和人委員、阪埜 浩司委員>
 

   定刻になり落合委員長が開会を宣言し、次第に則りまず協議事項から議事が開始された。

—協議事項—
1.大谷・根津医師関連
   落合 和德委員長:平岩先生は本日欠席なのでお聞きする事項をまとめて後ほど電話で意見をお伺いすることにする。そのつもりで議論をしていく。
   兵庫県の地方連絡委員に事実確認を依頼したが、兵庫県の臨時理事会にはお父様の恭一郎先生が出席し謝罪されたものの、御本人は出席されなかった。その後、遠藤弁護士からFAXで解答が送られてきた。
   われわれは20日に臨時倫理委員会を開催し、27日の常務理事会でも検討した結果、本人をお呼びして意見を聞くべきだということになった。その後、本会としての声明を出した。処分としては現段階では触れないということになっている。
   召喚については「出席するが代理人の弁護士が同席、弁護士だけ、まったく出席しない」の3つのパターンが考えられるが、それぞれに対してのこちらの対応を平岩先生にお聞きすることにしたい。
   小西 郁生理事長:弁護士が同席する場合、こちらも平岩先生の同席をお願いできるか?
   落合 和德委員長:お願いできると思う。今回は会員としてお話を聞きたい訳で、代理人だけだと学術的なことや患者さんとの関係について聞くことが出来ない。
   小西 郁生理事長:声明や会見で強く批判しているので、処分が絡む可能性があると考えて弁護士の同席を求めることはあり得る。
   落合 和德委員長:弁護士は来ても陪席だけとするか平岩先生に同席してもらうことも考えられる。
   岩下 光利総務担当理事:大谷先生は学術的な内容のコメントも出しているらしい。本人が学術的にどう考えているかを直接聞くことが必要である。
   落合 和德委員長:召喚する目的をはっきりさせて、本人が出てこざるを得ないような状況を作ることが大事である。
   吉村 泰典前理事長:誓約書を書いたのに会告を守っていないこと、学会への申請が必要なのにしていないこと、CGHアレイの科学性について、の3点が聞くべきことである。
   落合 和德委員長:全く出席しないと言われた時に、こちらから出向いてまで意見聴取するか?あるいは、あくまで来てもらうことにするか?遠藤弁護士だけが来た時の対応はどうするのか?また、吉村先生あての誓約書の法的な意義や面接するメンバーも考えておく必要がある。メンバーとして倫理委員長と総務、幹事長、着床前診断に関する審査小委員長あたりか?

   ここで、落合委員長が平岩弁護士へ電話するために中座。久具副委員長の司会で審議が続けられた。

2.登録関係
■登録・調査
 資料2に基づいて報告が行われた。2011年分のARTオンライン登録は24万件程度であること、2010年分の報告書を機関紙9月号およびホームページに掲載する予定であることなどが報告された。
■着床前診断
 資料3に基づいて審議が行われた。
   平原 史樹委員:2012-16 から2012-19の習慣流産の申請はすべて基準を満たしているので認可としたい。2012-13の慶応大学からの福山型筋ジストロフィーの症例については診断法に若干の疑問点が指摘され、詳細について照会とする。
   2012-15のIVF大阪からのDuchenne型筋ジストロフィーの症例は遺伝カウンセリングの内容が明らかでないので内容の詳細を照会とする。2012-14の慶應義塾大学からの先天性表皮水疱症は初めて申請された疾患であり、重篤性である事については問題ないと思うが慎重を期すために外部の専門家に評価を依頼したいので、現時点では保留とする。外部の専門家としては北海道大学の清水先生、岡山大皮膚科の岩月教授を考えている。照会については回答確認後に倫理委員会委員長、同副委員長、着床前診断に関する審査小委員会委員長および着床前診断に関する審査小委員会斎藤委員に確認して9月の理事会へお諮りすることにする。保留の件については外部の専門家の意見を求めるということでよいか?
   久具 宏司副委員長:照会については回答確認後に小委員会を開催せず、委員長等に確認して理事会上程とする。保留の件に関して何か御意見などは?
   山中美智子委員:保留の症例は遺伝子異常と表現型に関連があるか?
   平原 史樹委員:それを確認するために専門家に依頼する。
   久具 宏司副委員長:外部の専門家意見を頂いたら、通信の小委員会、倫理委員会で審議し、理事会へ上程することにする。

   ここで、落合委員長が平岩弁護士との電話会談を終えて審議に復帰した。
   落合 和德委員長:平岩先生の御意見では、吉村前理事長に裁判で負けたことを認めた上での再入会、会告遵守の誓約書は法的に有効である。無申請で着床前診断を行ったことは明らかな会告違反であり、その理由を聞く必要はない。
   また、処分前提を目的とするということであれば弁護士の出番となる。医学的事実関係の聴取を目的とするのであれば弁護士だけの出席の聴取は拒否してよい。
   また、来てもらえないようならこちらから出向くこともありうる。出向くということは、世間に対してもマスコミに対しても本会の真摯な態度を示すことになる。
   対応のメンバーはあまり多いと威圧的であるので、倫理委員長と着床前診断に関する審査小委員長の2人が適当である、との事であった。現時点で処分に言及するのは時期尚早である。次の倫理委員会で聴取後の対応を考えたい。次回の理事会が9月1日にあるので、その前に臨時倫理委員会を開催したい。こちらから趣旨を記載した文章を送り、面会する。その上で臨時倫理委員会を22日18時に開催する。できればそれまでに召喚する。召喚状の文案については今から検討する。

   落合委員長が用意した召喚状について以下のような討議が行われた。
   吉村 泰典前理事長:見解違反に関することは聞かなくてよいのか?医学的なことをどこまで聞くのか?
   平原 史樹委員:着床前診断の方法について聞くことにする。
   竹下 俊行委員:クライエントにどういう説明をしたのか聞く必要がある。
   吉村 泰典前理事長:施設内倫理委員会での認可や遺伝カウンセリングの実施についても聞く必要がある。
   小西 郁生理事長:厚労省の指針を遵守しているかも確認する。
   山中美智子委員:児の予後の追跡調査はしているのか?
   久具 宏司副委員長:質問内容は予め先方に知らせておく方がよい。
   苛原 稔委員:こちらの人数が2人であることを知らせる方がよい。
   吉村 泰典前理事長:御本人が来ないで代理人だけの可能性がある。その場合の対応も考えておく必要がある。
   落合 和德委員長:代理人とは会わなくてもよい。会えるまで何度も聞くことが必要。
   矢野 哲委員:いつなら会えるのかを聞いてみたらどうか?
   吉村 泰典前理事長:1回目はとにかく手紙を出す。
   落合 和德委員長:来られないなら、会う日を聞くことにすればよい。都合を2~3日聞く。
   吉村 泰典前理事長:日程はこちらが譲歩しても良い。
   久具 宏司副委員長:日程調整をして、直前に質問項目を送るのが良い。
   吉村 泰典前理事長:来ない場合は出向いてまで行くか?門前払いになっても真摯に対応しているというアピールになるのではないか?
   澤 倫太郎委員:以前の根津先生のケースは初めての事例だったので出向いたが、今回は再犯なのでこちらから出向くことはない。
   落合 和德委員長:22日までに面会できなければ倫理委員会は延期となる可能性がある。場合によっては何回かお話を聞くことになるかもしれない。一般の会員が会告を守るようにしていくことが大切である。
   岩下 光利総務担当理事:根津先生に関してはどう対応するのか?
   落合 和德委員長:根津先生には以前に厳重注意をした。今回もとりあえず厳重注意とすることもできる。その上で呼ぶことも出来る。
   塩沢先生に事実確認をしていただいている。
   澤 倫太郎委員:大谷先生は専門医だが根津先生は専門医ではない。専門医は倫理的事項で資格喪失となる筈である。
   小西 郁生理事長:根津先生も召喚するべきではないか?
   落合 和德委員長:根津先生にも大谷先生と同じ対応をするべきである。
   吉村 泰典前理事長:今回のことでは専門医を取り上げることは出来ない。根津先生との裁判は和解であった。彼には裁判で勝っていない。誓約書も書いていない。
   落合 和德委員長:根津先生もお呼びすることにする。まず、大谷先生をお呼びすることとし、来られる日を2~3日お聞きする。今後はPGDとPGSの審査をどのように進めて行くのかを考えていく必要がある。
   石原 理委員:少なくとも明らかにエビデンスがあるものに対するPGDについては、一例ずつ審査せずにルーチン化してよいのではないか?
   吉村 泰典前理事長:症例毎に審査しているのは障がい者団体に配慮した必要なステップであった。召喚については8月中に空いている日を聞くことにすることでよいか?こちらは倫理委員長と着床前診断に関する審査小委員長の2人で会うことにする。

   以上のような議論の後に、最終的に大谷先生の召喚状の内容について以下の5点が確認された。
   1.大谷先生に候補日を申告させる。
   2.本人に対する召請を明記する。
   3.本会の面談者は2名であること。
   4.聴取事項については別途連絡する。
   5.回答期限を明記する。

3.ART登録に関する各施設での倫理審査の必要性について
   久具 宏司副委員長:山形大学から大学の倫理委員会への婦人科腫瘍登録、周産期登録、ART登録の申請をするに当たり、学会から倫理審査の必要性についてコメントした文章があるか照会があった。見解では、通常のARTの実施については倫理委員会での審議は要求していない。
   落合 和德委員長:これはあった方がよいと思われる。水沼先生の臨床研究審査委員会に対応を依頼したい。

—報告事項—
4.ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する見解
   石原 理委員:メール会議で検討している。8月23日にWGで集まって議論した後に次の理事会にお諮りする予定である。

5.IVFなんば・大阪クリニックからの着床前診断に関する診断法についての回答
6.セント・ルカ産婦人科院長ならびにクライエントからの要望書
   平原 史樹委員:CGHで均衡型転座についてPGDを行いたいという申請が出ている。小委員会での議論では形態学的な検証が必要であると考えている。
   照会では診断の精度や染色体転座以外でわかる情報の取扱いについて問い合わせた。
   CGHの精度は上がっているが、DNAの量のみの診断で構造的な検査をしなくてよいのかという問題がある。目的以外の異常も見つかるはずだが、情報提供はどう取り扱うのか?黒澤委員の意見ではPGSはあくまでスクリーニングであり、FISHによる構造の確認が必要であるということである。
   石原 理委員:これからは簡単にPGDが出来るようになる時代が来ている。
   平原 史樹委員:6のセント・ルカ産婦人科からもPGSを認めるべきだという要望書が来ている。
   出生前診断で羊水検査は認めているのに、着床前診断を認めないのはおかしいという主張である。絨毛と受精卵の違いや遺伝カウンセリングの問題もある。IVF大阪については回答の内容が依然として不十分である。
   杉浦 真弓委員:着床前診断の適応は産婦人科医が決めることではなく、障がい者を含めた国民的議論を経て国が決めるべき。矛盾しているのは歴史的経緯があるからである。CGHを外国の検査機関に送って検査しているのは臨床研究として妥当なのか疑問である。

7.共同通信社からの着床前診断に関するデータ公開についての要望
   平原 史樹委員:実施数の公表と疾患名の公表は問題ないことが確認された。
   また、各疾患の例数は個人が特定される可能性もあるため、公表しないこととした。

8.出生前診断WG委員会
 平原委員より、臨床遺伝専門医への網羅的遺伝子検査に関するカウンセリングのアンケート結果が説明された。
   平原 史樹委員:CGHによる母体血での胎児DNAのスクリーニングを検証するパイロットスタディーを、限られた施設で行なう方向で動いている。22日に集合会議を行なう。メディアへの発信も検討する。

9.遺伝カウンセリング講習会報告
 平原委員より、7月16日に熱心な議論が行われ、有意義な会であったことが報告された。

10.愛知医大より凍結卵破棄に関する問合せ
   久具 宏司副委員長:凍結卵で5年経過したものは破棄してよいことになっているが破棄してよいかという趣旨の問い合わせが来ている。施設とクライアント間の同意書の内容の問題であるので、施設の顧問弁護士と相談してもらうように回答する。

最後に理事長が修正された召喚状の案を委員で確認し、修正した。

以上で審議を終了し、20:25分に閉会となった。

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