公益社団法人 日本産科婦人科学会

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学会からのお知らせ

「子宮頸がん検診にHPV検査を導入することに関する日本産科婦人科学会の考え方 」を掲載しました。

更新日時:2023年4月21日

子宮頸がん検診にHPV検査を導入することに関する日本産科婦人科学会の考え方

2023年4月17日

日本産科婦人科学会 理事長 木村 正
子宮頸がん検診・HPVワクチン普及推進委員会
委員長 宮城悦子

 日本の子宮頸がん検診におけるHPV検査導入方法の提言のため、日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会・日本婦人科がん検診学会・日本婦人科腫瘍学会・日本臨床細胞学会の5団体は、令和4年度にワーキンググループを作り、複数回の意見交換を行いました。しかしながら、各団体の立ち位置からの多様な意見が出され、導入方法に関する結論を導き出すことはできませんでした。
 一方で「第3期がん対策推進基本計画中間評価報告書(令和4年6月)1)」の策定が議論されたがん対策推進協議会において子宮頸がん増加の懸念が示され、令和5年3月28日に閣議決定された「第4期がん対策推進基本計画」2)において「科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実~がんを知り、がんを予防すること、がん検診による早期発見・早期治療を促すことで、がん罹患率・がん死亡率の減少を目指す~」が掲げられていることを踏まえ、日本産科婦人科学会としては以下の考え方を公表することにしました。

  1. 現在、市区町村事業として行われている子宮頸がん検診は、指針3)の下で「20歳以上に2年に1回、細胞診を用いて実施」されている。HPV検査を使った検診は、この細胞診による検診に比べ、検診受診者に大きな利益があるとは言えず、検診の不利益の程度(特に偽陽性者の数、すなわち不要な精密検査や不要な治療を受ける受診者の数)の評価が重要である。
  2. HPV検査を取り入れた子宮頸がん検診は、HPV検査単独法も、細胞診とHPV検査の併用法も、検診陽性者に対する長期の追跡を含む精度管理体制の構築が前提であり、遵守できない場合は効果が細胞診単独法を下回る可能性があるとされている。
  3. 以上を踏まえ、HPV検査を子宮頸がん検診に導入する場合には、精度管理の状態について高いレベルに設定したある一定の要件(受診率、精密検査受診率、未受診者の把握、受診勧奨/再勧奨、長期にわたる受診者の追跡管理、受診者台帳と検診結果のデータベースの構築など)を満たした自治体より順次導入するべきである。
  4. HPV検査の導入方法としては、30歳以上の女性に対して「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン2019年版4)」で推奨グレードAであった「HPV 検査単独法」が検診の不利益が併用検診に比べて少ないことから学会として推奨するが、自治体と連携した実装研究が必須である。ガイドラインに記載がある検診間隔5年は妥当と考えるが、検診終了年齢設定は日本の高齢化社会を鑑み65歳も検討の余地があると考える。

 さらなる検討については、厚生労働省のがん検診のあり方に関する検討会の中での議論の結果を待ちたく、日本産科婦人科学会は、子宮頸がん検診受診率の向上も含め、よりよい検診によって日本の女性の健康向上に寄与したいと考えます。
 

1)第3期がん対策推進基本計画中間評価報告書 令和4年6月
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001020992.pdf
2)がん対策推進基本計画 令和5年3月
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001077913.pdf
3)がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000059992.pdf
4)有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン2019年版
http://canscreen.ncc.go.jp/shikyukeiguide2019.pdf

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