公益社団法人 日本産科婦人科学会

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今回の母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針についての経過報告と理事長所感

更新日時:2022年12月14日

今回の母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針についての経過報告と理事長所感

 会員の皆さまにおかれましては日々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
 6月22日の理事会にて議決され、総会にて報告されましたNIPTに関する指針(添付1)については、6月21日付で厚生労働省子ども家庭局母子保健課長通知(添付2)を鑑み、今後の厚生労働省における議論を見守ることといたしました。したがって本指針の運用は当面行わず、NIPTに関心のある妊婦さんがおられましたらこれまでの指針を遵守する施設にぜひご紹介頂きたいと思います。
 会員の皆さまには今回の経緯は大変判りづらいものと思います。今回の経緯を私の所感を含めて会員の皆さまと共有させていただくべく日産婦ホームページに掲載させていただきます。
 母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する妊婦の皆さんの意識が高まり、その一方で実施認定施設がない県が現在でもいくつかあり、実施認定施設でも適切な週数までに予約が取れないことがあるなど妊婦の皆さんに十分なアクセスが保証できない状況が生じておりました。さらに、妊娠全体を見守ることができず、実施数やその転機を報告する義務のない、いわゆる無認可施設がネットなどで広告を打ち、NIPT希望者を集めるなど無秩序な状態が問題となってまいりました。しかし、私たち以外のどの学会もこの問題に関しての具体的対策の提案はしていただけませんでした。私たちは、学会の倫理委員会内小委員会で原案を出しつつ、いくつかの関係する学会のご意見も伺い、修正もいたしました。私たちとしては、現状をはるかに改善できる現実的な指針と考え、これを本会の理事会で決議し、総会で承認いただいた次第です。しかし、本指針についてはご同意いただけなかった学会もあり、そのような中で6月21日に添付2にあるような課長通知が発出されましたので、現時点では、今後開催されるであろう厚生労働省の審議会にNIPTの実施体制の改善を委ねた形といたしました。
 NIPTを行うにあたっては、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの観点から全国の妊婦さんと真摯に向き合い、この検査に関する正確な情報を示し、妊婦さんご自身の的確な判断を支援し、その妊娠経過全体を見守る体制が必要です。私は、NIPTに関する議論において、私のような年代の方々の参加・発言が大多数であることが気になっておりました。そこで、指針案の段階で本会ホームページと同時にBABYプラスアプリに掲載し、アンケート調査を行なったところ6,869件の貴重なご意見をいただきました。女性が9割、8割が妊娠中、20~30代の方が8割5分を占め、まさにリプロダクティブ・エイジの皆様の意見を反映しています。その詳細を添付3に示します。また、自由記載を求めたところでは強く賛成するから強く反対するまでの2,432筆の真摯なご意見をいただきました。このアンケート結果は今後行われる審議会においても重要な資料の一つとなると考えます。
 今回本会が作成した指針は確かに本会会員の皆さまだけが遵守しても現在の混乱状態は解決しません。厚生労働省がこの議論を引き取り、作成されるであろう適切な指針によって全ての医師のNIPTに関する行動がリプロダクティブ・ヘルス/ライツの原則に当てはまるものとなれば良いと考えております。しかし、延々と議論ばかりを続けて、妊婦の皆さまを惑わせるわけには参りません。半年を目途に日本国の妊婦さんがこの情報化時代に惑い続けることがないような議論と合意が成立し、より良い運用がなされることを期待いたします。
 以上、今回のメディアに現れた様々な情報の背景をより詳しく会員の皆さまにお知らせするとともに、私の所感を述べさせていただきました。
 

令和元年7月3日

公益社団法人日本産科婦人科学会
 理事長 木村 正

添付1:NIPTに関する指針

添付2:厚生労働省子ども家庭局母子保健課長通知

添付3:NIPTアンケート結果報告書

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