セクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ (Sexual Reproductive Health and Rights; SRHR) は、性と⽣殖に関する健康と権利です。⾃分のセクシュアリティや望む時に望むだけの⼦どもを持つことをすべての⼈が⾃分で決められます。そのために、避妊の⽅法や不妊治療について知ること。⽣殖器のがんや感染症の予防や治療ができること。⺟⼦保健や育児⽀援。SRHRは、これらすべてを⼤切にする理念です。2022年6月本学会からSRHR普及推進宣言を発出し、わが国及び世界におけるSRHRに関する課題に対して積極的に関わること、わが国の社会のジェンダー平等の達成に貢献すること、SRHRの侵害を含むジェンダー平等を阻害する課題が提起された場合には、専門学会として正面から対応することを宣言しました。
しかしながらSRHRに関して我が国が抱える問題点は多数存在します。⺟体保護法の問題、包括的性教育の未発達、LGBTQ への差別、男性主体の避妊法、性暴力の問題、産後うつなどの問題、プレコンセプションケアの認知度の低さ、不妊症への理解不足。SRHRに関するさまざまな問題点を抱える我が国の現状を委員会HPでは取り上げ、問題点の解決の糸口への議論の糧にしてもらうことを期待します。
2019年12月に日本産科婦人科学会会員を対象に行った「リプロダクティブ・ヘルスについてのアンケート調査」(回答人数712名)では、回答者のうち94%がリプロダクティブ・ヘルスという言葉を知っていましたが、大多数がリプロダクティブ・ヘルスをもっと推進すべきあると回答しています。我が国は、周産期死亡率、母体死亡率ともに世界でもトップレベルの成績であり「世界で母子共に最も安全に安心に出産できる国」と言って差し支えありません。しかし、 セクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ(SRHR)に関する課題は山積されたままです。アンケート調査では、回答した会員はSRHRの現状に懸念を示されていました。一方で、アンケート調査に回答した会員は全会員数の4%にすぎず本学会員でさえSRHRへの意識が高いとは言えないのが現実と思われます。
そこで、この委員会だよりでは、SRHRに関して我が国が抱える問題点を抽出し、解説を加えることで会員の皆様とSRHRの大切さを共有したいと考えています。数回にわたり掲載する予定ですので是非ご一読して議論の糧にしていただきたく存じます。
リプロダクティブヘルス普及推進委員会
委員長 横山良仁