公益社団法人 日本産科婦人科学会

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平成29年度第4回倫理委員会議事録

更新日時:2018年10月4日

平成29年度第4回倫理委員会議事録

日 時:平成30年2月13日(火)午後6時30分~8時20分
場 所:日本産科婦人科学会事務局「会議室」

出席者
   委員長:苛原  稔
   副委員長:三上 幹男
   主務幹事・委員:桑原  章
   委 員:石原  理、織田 克利、河端 恵美子、久具 宏司、倉澤 健太郎、齊藤 英和、
     榊原 秀也、佐藤 美紀子、澤 倫太郎、杉浦 真弓、関沢 明彦、竹下 俊行、
     寺田 幸弘、山上  亘、山中 美智子
 欠席者:桑原 慶充、阪埜 浩司
<敬称略>

 定刻に苛原倫理委員長が開会を宣言し、平成29年度第3回倫理委員会議事録【資料1】を確認した後、定例の報告・協議事項に移った。

1. 登録関係
(1)本会の見解に基づく諸登録<平成29年10月31日現在>
 齊藤委員より、登録・調査小委員会の諸登録について報告【資料2】があった。

(2)着床前診断に関する臨床研究申請・認可について
 榊原委員より、PGD審査小委員会の結果【資料3】が報告された。

(3)着床前診断の審査に関する見解、細則の改定について
 榊原委員より、着床前診断に関する見解、細則の改定に関してWGを組織し、検討を進めていることが説明され、その骨子が提案された【資料4】。

 倉澤 健太郎委員:ART施設の倫理委員会と着床前診断に関する審査小委員会の関係性を確認しておきたい。
 榊原 秀也委員:着床前診断に関する審査小委員会(以下、本小委員会)で、各施設の事前施設審査を行う。その内容は、倫理委員会の構成・成立要件や議事録の作成状況、基本的に第三者施設で実施する遺伝カウンセリングの準備状況、さらにARTや着床前診断に必要な施設要件を含む。さらに、実際にPGDを希望する症例が発生した時点で、重篤性や検査方法の科学的妥当性を症例ごとに事前審査する。施設、および症例の審査が終わった後に、各ART施設で倫理審査を行うことになる。
 山中 美智子委員:遺伝学的検査の妥当性の審査は従来通り、本小委員会で行われるのか?
 榊原 秀也委員:これまで同様に行い、申請内容に疑念がある場合は差し戻す。
 桑原  章委員:これまで施設で審査し、その後学会で審査していたが、この順序を学会が先、各施設は後と、これまでの逆に改め、重複していた審査内容も棲み分けを図る。当局からみた時に重要となるIRB審査は各施設で行われることとなり、患者に不利益が発生した場合の責任も各施設のIRBが負う。
 寺田 幸弘委員:倫理審査の目的として患者の人権や権利を守ることが重要であり、各施設のIRBの内容にも十分配慮する必要がある。本会の施設審査においてもIRBの果たすべき機能を確認することが重要と考える。
 苛原  稔委員長:5月に仙台で開催される日産婦学会期間中に、これまで問題となったこと、今回の変更、そして今後各施設の注意点を含め、実施施設が参加するセミナーを開催予定としている。一部のクリニックでは倫理審査が形骸化し、学会が責任を負っているかのような捉えられ方も見受けられるので、指導を行いたい。
 杉浦 真弓委員:PGDの結果報告の方法も改善をお願いしたい。
 寺田 幸弘委員:重篤性の審査に加えて、その後の実施状況の報告はモニタリングとして重要である。
 榊原 秀也委員:毎年の実施報告を徹底して行い、集計を行う予定である。複数年にわたる場合が多いので、報告書の様式も検討している。
 佐藤 美紀子委員:これまでは、各施設で重篤性に関する検討をしたうえで、本会でも慎重に、重篤性について検討してきた。本会が先に判断すると、各施設では重篤性に関する認識がおろそかになる懸念、あるいは本会が許可したのであるから、PGDを実施せねばならないといった圧力を、各施設、患者に与えるリスクもある。
 苛原  稔委員長:重篤性は施設、患者個人個人で判断基準が異なることを十分承知している。一定の基準を設けることは不可能であり、また、治療法の進歩により変化もする。加えて、時代とともに「重篤性の捉えかた」も変化するため、学会として最新の知見と見識をもって、必要があれば専門家も招いて意見を聞きながら判断することに、責任を負うこととなる。
 桑原  章委員:重篤性に関する内規はあっても、これまでも画一的な判断が困難な事案はあった。学会として実施可能な基準を提示するのではなく、いくら何でもこれはやってはいけないという最小限の基準を設けることはできる。学会が許可したからやって良い、と画一的に受け止める方が多いのが現実かもしれないので、当面、判断基準はそれなりに厳しいものとなるが、最終的には、各施設において、患者と担当医師の間で十分話し合って決めることが今後は重要と思われるので、本小委員会の審査でも、患者に十分な説明が行われ、患者の自己決定権が保証されているかを審査することが重要となる。
 石原  理委員:遺伝カウンセリングの重要性は言うまでも無く、現在も各症例で当たり前に行われており、見解に詳細に記載する必要は無いが、全ての症例で専門家による遺伝カウンセリングが実現可能かどうか疑問である。
 山中 美智子委員:全国の大きな病院に遺伝診療専門部門が開設されており、遺伝カウンセリングの提供は可能と考える。一方、特殊症例などで自施設にしか専門家がいないこともあり得るので、第三者機関での実施が望ましいが、自施設内でも中立的遺伝カウンセリングが行えるのであればそれで良いと思われる。
 苛原  稔委員長:遺伝カウンセリングの重要性を見解で記載し、その詳細は細則で定めたい。次回倫理委員会までに成案を作成し、本委員会で審議、その後理事会、総会で審議できるよう準備をお願いしたい。

(4)倫理審査の外部委託について
 榊原委員より、PGDに関連する倫理審査に関して、ART施設から他の大学へ倫理審査の外部委託をすることの可否に関する問い合わせがあったことが説明された【資料5】。

 杉浦 真弓委員:外部委託を引き受ける施設に一定の基準、例えば、臨床研究中核病院に限るなどの基準を設けてはどうか?
 苛原  稔委員長:臨床研究中核病院は施設数が限られる見込みで、依頼側、受託側とも現実的ではないと思われる。
 石原  理委員:認定倫理審査委員会に制限することは現実的でないので、各倫理委員会のレベルを上げる努力が必要である。
 寺田 幸弘委員:倫理委員会を外部委託した場合、患者と直接接しない施設の委員会で、患者の権利を守る認識を持てるか懸念がある。
 石原  理委員:倫理に関する専門教育と、生殖医療の専門的知識、そして患者の権利を守る認識の、すべて高いレベルを兼ね備えた委員会が少ないことは現実であるが、各ART施設で倫理審査をするより、大規模施設への外部委託が奨励されている。
 苛原  稔委員長:原則として外部委託を可とし、施設の事前施設審査の時に、外部委託する委員会の質も含めて審査することとしたい。

2. 臨床研究審査小委員会について
 三上副委員長より、個人が特定できる可能性のある研究計画審査に関して、専門家の意見も伺いながら、個人情報保護の観点からも安全に研究を進めることができるようにするための対策を検討する会議を、3月2日に開催する予定であることが報告された。

3. PGT-Aに関する小委員会「PGS特別臨床研究」の実施について
 竹下委員より、現在の症例登録状況、解析状況に関して説明があった。

4. 学会HPのリニューアルに伴う委員会掲載コンテンツの仕分けについて
 桑原幹事、山上幹事より、倫理委員会に関連する学会HPリニューアルの進捗に関して説明があった【資料6】。

5. NIPT臨床研究の報告(コンソーシアム、コンソーシアム以外の施設からの報告の合本)について
 久具委員より、NIPT臨床研究に関する学会としての報告に関して、現状の説明があった。

 苛原  稔委員長:次回理事会でNIPT臨床研究の総括報告を行い、同時に指針の附則を削除することを理事会に提案したい。5月総会で報告し、学会会員へ通知する予定である。今後のあり方は、関連する班研究の報告を待って、次年度に検討したい。

6. その他
  苛原委員長より、内閣府よりヒト受精卵(胚)を利用した研究の実施状況に関する照会があり、本会に登録されている胚、受精卵を用いた研究の件数を文書で回答し、さらに3月9日の生命倫理調査会で報告する予定であることが報告された。

 石原  理委員:現在、ヒト胚の取り扱いに関する考え方の見直しが始まっており、パブリックコメントが募集されているのでご紹介したい。胚の臨床研究、ゲノム編集など関連する事案であり、意見を多数寄せてほしいと考えている。

 次回委員会は、4月17日(火)18時30分より事務局会議室において開催予定であることを確認し、20時20分に会議を終了した。
 

【資 料:】
1. 平成29年度「第3回倫理委員会」議事録(案)
2.「登録・調査小委員会」報告
3.「着床前診断に関する審査小委員会」報告(答申書、照会文案、議事録)
4. 着床前診断に関する見解改定の骨子、改定案
5. 倫理審査の外部委託に関する照会、回答案
6. 新しいHPの掲載概要、現行の掲載内容
7. NIPT コンソーシアムとして取り組んだ臨床研究、コンソーシアム以外の単独施設からの報告書
8. 報道記事など

[見解集] 第70巻1号(最新版) http://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=70/1/070010001.pdf

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