公益社団法人 日本産科婦人科学会

English
委員会情報
SUB MENU

平成17年度第4回倫理委員会議事録

更新日時:2018年8月3日

平成17年度第4回倫理委員会議事録

日時:平成17年11月11日(金) 16:00~18:30
場所:日産婦事務局・会議室
出席者:
委員長:吉村泰典
副委員長:田中俊誠
委 員:安達知子、稲葉憲之(代 北澤正文)、大川玲子、亀井 清、齊藤英和、 竹下俊行、
平原史樹、宮崎亮一郎
幹 事:阪埜浩司、久具宏司、澤倫太郎、下平和久
配布資料
資料1:第3回倫理委員会議事録
資料2:第5回・第6回登録・調査小委員会の報告
資料3:慶應義塾大学からの着床前診断に関する審査小委員会委員(案)
資料4:会告見直し(案)
資料5:会告見直し案に対する倫理委員会委員・WG委員の意見

1.前回議事録確認
阪埜委員より資料の説明があった。
平成17年度第3回倫理委員会議事録(案)につき、修正なく承認された。

2.報告事項
10月分諸登録について齋藤登録調査小委員長より説明があった。
(1)ART申請審査最終決定
-1-ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する登録
申請3件(審査 照会1件 返却2件):51研究
-2-体外受精・胚移植、及びGIFTの臨床実施に関する登録
申請8件(審査 照会4件 返却4件):653施設
-3-ヒト胚及び卵の凍結保存と移植に関する登録
申請8件(審査 照会4件 返却4件):554施設
-4-顕微授精の臨床実施に関する登録
申請2件(審査 受理1件 照会1件):386施設
-6-非配偶者間人工授精の臨床実施に関する登録
申請なし:22施設
(2)「ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する登録」再登録について
再登録 47研究 研究完了・削除39研究
(3)ARTオンライン登録について
・来年1月よりのデータに対応すべく準備している。
・UMINのシステムでは、個別登録が基本となるが、多くの症例を取り扱っている施設では能率が悪い。しかしながらUMINのシステムでは、一括登録できない。よって仲立ちサーバー使用してデータの精度を上げたうえで一括してUMINに登録するシステムを構築したいと考える。これにかかる費用は約200万円である。
吉村委員長より、「上記の予算は倫理委員会の予算として請求することとする。オンライン登録が無いと地方自治体補助金等を受けられないことがあるとのアナウンスをだすこととする。」との意見が述べられた。
以上が報告され、了承された。

(2)会議開催
・第5回登録・調査小委員会が9月28日(水)、第6回登録調査小委員会が10月25日(水)に開催された(資料2)。
・会告見直しに関するワーキンググループの第3回会議を10月6日(木)に、第4回会議を10月27日(木)に開催した。
・着床前診断の適応に関するワーキンググループの第3回会議を10月5日(水)に第4回会議を11月10日に開催した。

3.協議事項
(1)会告の見直しについて(資料4)
吉村委員長、阪埜委員より、今回作成された会告の見直しについて、ワーキンググループで事前に検討し、さらに通信で検討してきた経緯について説明があった。
最初に、事前に通信で寄せられた意見を参考にして、討議が行われた。
安達委員より、AID登録申請用紙に誤りがあったとの指摘があったが、阪埜委員より、用紙の間違いであり、本日は訂正してあるとの回答があった。
通信での石原委員の意見で、登録の書式があるのに対し、所定の報告の書式がないとの指摘があったが、阪埜委員よりこれは本会として未作成であるとの回答があった。
通信での大川委員の意見で、AIDにおける児の出自を知る権利の問題を検討することの必要性が指摘されたが、吉村委員長より、そのことを認識しているとの回答があった。
通信での辰巳委員の意見で、いくつかの語句を訂正すべきとの意見が出され、検討された結果、以下のように訂正することとなった。
-1-3頁(3)(a) 3行目 「採卵室の設計は、基本的に手術室仕様と同じである。」を「採卵室の設計は、基本的に手術室仕様とする。」に変更。
-2-(4)(a) 4行目 「不妊治療、及び不妊患者の取り扱いに」を「不妊治療、及び不妊患者の看護に」に変更。
-3-16頁 2.2行目 「目的を達した後の残りの胚または卵子および許容」を「目的を達した後の残りの胚または卵子および許容」に変更。
通信での松岡委員の意見で、いくつかの語句を訂正するべきとの意見が出されたが、検討された結果、訂正しないこととなった。
通信での水沼委員の意見で、AIDの登録で実施場所の見取り図及び設備内容の概略を提出しなければならない理由はなく削除すべきとの意見があった。これに対し、齋藤委員より、卵子、胚の保存では安全性(施錠)の評価が可能な見取り図の提出を求めており、精子も同等の扱いが必要ではないかとの意見が出され、検討の結果、削除しないこととなった。
安達委員より、23頁の「提供者の感染症検査は少なくとも年1回施行する」との部分は現在では意味がなく、削除すべきとの意見が出され、了承された。
平原委員より、23頁の「精子提供者は心身とも健康で、感染症がなく自己の知る限り遺伝性疾患を認めず」と言う部分と、解説の「自分の2親等以内の家族、及び自分自身に遺伝性疾患のないことを提供者の条件とする。」と言う部分は矛盾していないかとの指摘があった。生活習慣病も遺伝性疾患としての側面を持つ等の意見も出され、この部分に関しては現状では明確な方針を打ち出せないとの結論が出された。最終的に、平原委員より、この議論があったことを議事録に残すべきであるとの意見が出され、了承された。

以下、実際の文章に沿って改定案の是非が審議された。
1)前文(案)を久具委員が読み上げた。
澤委員より、この改定案を最終的に会告として会員に提示する場合、この前文を使用するのかとの質問があった。審議の結果、今後、常務理事会、理事会、総会を経て一般会員に提示する際には最後の一節を削るとの決定がなされた。吉村委員長より2月の理事会には承認を得たいとの方針が示された。
久具委員より5年ごとの改定でよいかとの問題提起があり、原則として5年ごとに会告の改定を行うことで委員の了解が得られた。
田中委員より、「原則として5年を経過する度に検証を行い、」では主語がわからないとの意見が出され、「原則として、5年を経過する度に本会告の検証を行い、」と変更するとの意見も出された。吉村委員長より、現在種々の事情より、「見解」・「会告」・「ガイドライン」等の言葉がいろいろな意味合いを持っているため、あえて「原則として5年を経過する度に検証を行い、」とすべきとの意見が出され、委員の了承をえた。
2)生殖補助医療実施医療機関の登録と報告に関する見解(改定案)に関して久具委員より説明があり、審議がなされた。
吉村委員長より、今回の改定は登録と報告の義務化を重視したものであることが説明され、5年ごとの登録の再審査を規定することに関して委員の了解が求められ、了承された。
亀井委員より生殖補助医療の範囲を言及する必要はないかとの質問があり、吉村委員長より、登録申請が決まっているので充分であろうとの説明がなされた。
田中委員より、2頁下段の「現在、登録施設の約90%が報告を行っているが、報告と登録施設の義務として報告率の向上を図り」の部分が不必要であるとの意見があり、了承された。
安達委員より、2頁下段「正当な理由」とは何かとの問いがあり、吉村委員長より委員会でその都度判断するとの見解が示された。

3)体外受精・胚移植に関する見解(改定案)を久具委員が読み上げた。
吉村委員長より、第1項の「本法はこれ以外の治療によっては妊娠の可能性がないか極めて低いと判断されるもの、および本法を施行することが、被実施者またはその出生児に有益であると判断されるものを対象とする。」について、HIV感染者の夫に対し顕微授精を行う場合等を考慮して変更された経緯が説明された。
安達委員より、「妊娠の可能性が極めて低いと判断されるもの」の範囲について質問があり、医学的な判断によるものとの説明がなされた。

吉村委員長より、第4項の「被実施者は婚姻しており」は法律婚のみを意味する言葉であり、事実婚も含める場合は「結婚しており」とすべきであることが説明された。委員長より、婚姻(法律婚)、結婚(事実婚)のいずれを学会として治療対象とすべきか、各委員に諮問があった。すなわち、「法律婚のみ認め、それ以外の体外受精は行わない。(法律婚)」、「我々は事実婚を容認は出来ないが、体外受精を禁止は出来ない。(事実婚)」いずれを日本産婦人科の立場とするべきか、各委員の意見陳述と論議が行われた。
吉村委員長より、第3者から精子・卵子の提供を受けるのは法律婚の夫婦に限るが、パートナー間で行う治療は事実婚で良いと考えるとの意見が示された。
大川委員よりは夫婦別姓のために籍を入れていないカップルもあり、事実婚の治療を認めるべきと考えるとの意見が述べられた。
安達委員よりは、まだ法律が未整備であるため、児の福祉等を考えると現在は法律婚が良いとの考えが述べられた。さらに事実婚の定義があいまいであることも指摘された。
澤委員よりは、少子化のことを考えると事実婚も考えるべきだが、被実施者に負担を与える治療を行うには現実の法律では保護が不十分であり、現在は法律婚に賛成であるとの意見が述べられた。
北澤委員(稲葉委員代理)より、現在は法律婚に限って行い、今後、法律の整備を待って事実婚も対象とすべきとの意見が述べられた。
下平委員より、現時点では法律婚のみを対象とし、産婦人科学会より法整備を促す何らかの働きかけを行い、法整備の状態をみて、5年後の会告改定時に見直しを考えるべきとの意見が出された。
亀井委員より、現時点では法律婚を対象とすべきであるとの意見が出された。
竹下委員より、現時点では法律婚を対象とすべきとの意見と、AIHに関しての何らかの規制の整備を行うべきとの意見が出された。
田中委員より、児の保護を考慮すべきであるとの意見が述べられた。嫡出子と非嫡出子の法的な地位が異なる現在では、第1項にある「出生児に有益であると判断される」状態を担保するためには、第4項は法律婚として考えるのが妥当であるとの見解が示された。さらに、嫡出子と非嫡出子の法的・社会的な地位の平等などが整備されれば事実婚も可と考えるとの意見も示された。
久具委員より以下の反論がなされた。第1項の「これ以外の治療によっては妊娠の可能性がないか極めて低いと判断されるもの」と「本法を施行することが、被実施者またはその出生児に有益であると判断されるもの」とはそれぞれ別の対象を想定している。従って、「これ以外の治療によっては妊娠の可能性がないか極めて低いと判断されるもの」であれば、「本法を施行することが、被実施者またはその出生児に有益であると判断され」なくても良いと考えられる。以上より、第1項によって第4項が規定され、第4項が法律婚を示すという論理は成り立たないと考える。
亀井委員より、「心身ともに妊娠・分娩・育児に耐え得ると判断」するのは実施する産婦人科の医師であるのかとの質問がなされた。吉村委員長より、その質問は法律家からもなされているが、妊娠分娩に耐え得る母体であるかは産婦人科医が判断すべきことであり、現実問題として、この判断は産婦人科医がなさざるを得ないであろうとの見解が示された。
大川委員より、父親の心身も論じると、父親が悪性疾患の場合や死亡した状態での治療が不可能であるとの意見が述べられた。安達委員からも夫婦とすると夫も含むことになるとの見解が示された。
平原委員より、現時点では婚姻として、現在は法律婚のみを認めることにし、今後の社会情勢の変化に応じて改正していくべきとすべきとの意見が出された。また、社会情勢の変化に応じて臨機に会告を見直していくことを解説に付記すべきとの意見が述べられた。

以上の意見を総括し、吉村委員長より、今回の改定案では婚姻(法律婚)のみを不妊治療の対象として理事会に提示するとの方針が示された。

4)顕微授精に関する見解(改定案)を久具委員が読み上げた。
久具委員より体外受精・胚移植の分娩症例を条件とした部分を削除したことがもっとも大きな改定であることが説明された。また、「本法は体外受精胚移植の一環として行われる」との項目をいれることにより、実施者の要件を削除することが可能となったとの説明がなされた。
竹下委員より2行目を「基盤配慮」とすべきとの意見が出され、了承された。

5)ヒト胚及び卵子の凍結保存と移植に関する見解(改定案)を齋藤委員が読み上げた。
田中委員より生殖年齢についての質問があり吉村委員長より個別に決定すべきとの説明があった。
安達委員より、「例えば、抗癌治療の前に卵子を保存しておくこと等はこの見解の対象外となるのか。」との質問があり、吉村委員長、久具委員及び澤委員より、この見解はARTに関するものであり、それ以外について規制するものではないとの見解が示された。
安達委員よりART以外の場合の凍結の規定も必要ではないかとの指摘があった。吉村委員長より、配偶子の凍結保存の見解は別に作成することとしたいとの回答があった。
久具委員より、「この見解の対象は」を「この見解における凍結保存と移植の対象は」と変更すべきとの意見が出され了承された。

6)「XY精子選別におけるパーコール使用の安全性に関する見解」の削除について(案)を久具委員が読み上げた。
安達委員より、重篤な伴性劣性遺伝疾患の回避に限ってはXY精子選別を行うのを認めることとするのかとの質問があった。これに対し、吉村委員長よりパーコールの使用自体は医師の裁量権とし、男女の産み分けは科学的根拠もないため、あえて言及しないとの見解が示された。

7)AIDの項目については次回審議することとする。

以上

このページの先頭へ