公益社団法人 日本産科婦人科学会

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平成19年度第1回倫理委員会議事録

更新日時:2018年8月3日

平成19年度第1回倫理委員会議事録

日   時:平成19年6月1日(水)17:00~19:00
場   所:日本産科婦人科学会「会議室」
出席者:委員長:星合  昊
            副委員長:平原 史樹
            委      員:岩下 光利、大川 玲子、神谷 直樹、久具 宏司、小林 重高、五味淵秀人、
齊藤 英和、澤 倫太郎、白須 和裕、高倉  聡、竹下 俊行、田中 俊誠、阪埜 浩司、
平松 祐司、増山  寿、宮崎亮一郎、矢野  哲、山中美智子、渡部  洋
欠席者:安達 知子、福田  淳

資 料:
1.平成18年度第4回倫理委員会議事録(案)
2.生殖補助医療(ART)遺伝カウンセリング医について
3.見解の変遷
4.五稜郭ウィメンズクリニックよりの文書
5.着床前診断答申
6.着床前診断申請まとめ
7.倫理関係新聞記事
8.学会宛非配偶者間人工授精に関しての質問
番号なし 倫理的に注意すべき事項に関する見解:別刷り先行分

星合委員長が平成19年度第1回倫理委員会の開催を宣言、委員長挨拶・各委員の自己紹介の後、協議に移った。

1.議事録確認
   (1)  平成18年度第4回倫理委員会議事録(案)【資料1】
       特に異議なく承認され、本案を平成18年度第4回倫理委員会議事録とした。

2.報告事項
   星合委員長より以下の報告がなされた。
   (1)  諸登録について
         【4月】
         ①ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する登録
            申請2件〔審査 照会 2件〕:65研究
         ②体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録
            申請2件〔審査 受理 2件〕:610施設
         ③ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録
            申請11件〔審査 受理 5件、照会 6件〕:570施設
         ④顕微授精に関する登録
            申請7件〔審査 受理 4件、照会 3件〕:439施設
         ⑤非配偶者間人工授精に関する登録
            申請なし:19施設
         【5月】
         ①ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する登録
            申請1件〔審査 照会 2件〕:65研究
         ②体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録
            申請11件〔審査 受理 10件、照会 1件〕:603施設
         ③ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録
            申請23件〔審査 受理 13件、照会 8件、返却 2件〕:575施設
         ④顕微授精に関する登録
            申請20件〔審査 受理 12件、照会 7件、返却 1件〕:441施設
         ⑤非配偶者間人工授精に関する登録
            申請1件〔審査 返却1件〕:17施設

 

  (2)  会議開催
   ①第1回登録・調査小委員会を5月24日に開催した。
   ②第1回着床前診断に関する審査小委員会を5月24日に開催した。

3.協議事項
   (1)  平成19年度倫理委員会活動について
   ①生殖補助医療(ART)遺伝カウンセリング医について【資料2】
   平原副委員長より、資料2に沿って『「生殖補助医療(ART)遺伝カウンセリング医」(『生殖医療に関する遺伝カウンセリング受入れ可能な臨床遺伝専門医』)についての説明がなされた(本制度の導入は前年度に既に倫理委員会にて承認されており、実務に関する取り決めに関する説明である)。
   日本産科婦人科学会ホームページ等による情報提供を行う。
   産婦人科専門医かつ臨床遺伝専門医リストを掲示する。
   これらのリストのうち下記の項目に該当する医師は別途識別可能な形で『「生殖補助医療(ART)遺伝カウンセリング医」(『生殖医療に関する遺伝カウンセリング受入れ可能な臨床遺伝専門医』)としての情報提供をする。
   登録申請ならびに情報提供該当者の審査を実施する。
   倫理委員会内にて規定した所定の審査をへて掲載を決定する。
   申請にあたっては別紙の申請用紙を持って日本産科婦人科学会倫理委員会内臨床遺伝専門医登録担当係へ登録の申請をする。
   星合委員長より、新たな専門医制度の導入ではなく産婦人科専門医かつ臨床遺伝専門医で申請された方をホームページ等で掲示し情報提供を行うという理解でよいかという質問に対し、平原副委員長より、新たな専門医制度ではなくあくまで生殖医療に関する遺伝的な問題への対応が目的であることが説明された。
   本議案につき倫理委員会では特に異議なく承認された。
   阪埜委員より、本案の実行には理事会での承認を得る必要があるとの発言があり、理事会承認を得た後に具体的な手続きに入ることとした。
   ②生殖補助医療における多胎妊娠防止の見解(仮)制定の必要性【資料3 番号なし資料】
   久具委員より、日本産科婦人科学会では平成8年に「多胎妊娠に関する見解」を出し、移植胚数を原則として3個以内としているが、生殖医学会では2個以内とされており、3個以内とするのが適当であるのか検討が必要である、見解改定の必要性を含めて検討していただきたいとの提案があった。
   白須委員より、日本医師会での母体保護法についての検討の中で減胎手術についても議論しているところであるが、胚移植数の問題をこのままにして多胎防止に取り組むことなく減胎手術を認めることは理解が得られない、是非検討すべきであるとの発言があった。
   齊藤委員より、生殖・内分泌委員会でも検討を始めることになっている、本年度・来年度をかけて結論を出す予定であるとの発言があった。
   星合委員長より、学術団体として専門委員会で検討している間に倫理委員会で結論を出すわけにはいかない、専門委員会での検討を急いでもらうよう要望するという発言があり、承認された。

  (2)    登録・調査小委員会より【資料4】
   齊藤委員より、登録・調査小委員会では生殖補助医療実施医療機関より再登録を行ってもらいこれを審査している、646施設中すでに再登録を受理した施設が509施設、再登録を行わなかった施設が78施設、まだ、書類不備等で審査中が59施設であるとの報告があった。この審査中59施設のうちの1施設である五稜郭ウィメンズクリニックより資料4の如く申請があったが、「現在主に単一卵胞法を実施しておりまして、凍結は行っておりませんので、それに関する書類は、ありません」とされ、「ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録」に必要な説明書・同意書の提出がなかったことが報告され、登録・調査小委員会は実務を担当する委員会であるので上部委員会である倫理委員会にて本件の取り扱いについて決定するよう要望された。なお、登録・調査小委員会では「生殖補助医療実施医療機関の登録と報告に関する見解」の(3)登録施設の設備に記載されているa)基準施設に凍結保存設備が含まれていることから、全ての登録施設に対して「ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録」を行うよう求めているが、この一文以外に「ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録」を義務付ける記載見解にないため取り扱いに苦慮しているとの発言があった。また、本件に付いての意見を登録・調査小委員会委員に求めたところ高倉委員より意見がよせられたことが述べられ、同委員に説明が求められた。
   高倉委員より、以下のⅰ)ⅱ)の選択肢を示すか、ⅰ)のみを求めるか倫理委員会にて決定して欲しい旨が述べられた。
     ⅰ)凍結保存設備を整備し、「ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録」と共に「体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録申請」・「顕微授精に関する登録申請」を行う。
     ⅱ)体外受精・胚移植および顕微授精に関する説明書に単一卵胞法で行うことを明記し、単一卵胞法の説明書に訂正(提出されたものは単一卵胞法に関する説明がほとんどない)、また、凍結保存は行わないことも明記する。
   星合委員長より、凍結保存設備を持つということは規則として必要ということかとの質問があった。
   齊藤委員より、凍結保存設備を持つということは規則として必要である、また、登録・調査小委員会では「ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録」も求めてきたが、今回、こうしたケースがでてきたので意見の統一を再度図りたいとの発言があった。
   田中委員より、「生殖補助医療実施医療機関の登録と報告に関する見解」を読むと登録申請を行う際には、下記の具備すべき施設基準を満たすように努力すべきであるとする項目に凍結保存設備は含まれており具備することを義務付けるとまではいいきっていない、説明書など内容の整合性がとれていればⅰ)ⅱ)のいずれでも可となるのではないか、ただし、自治体によっては、凍結設備がないと「特定不妊治療助成事業」の指定医療機関になれないということもあるとの発言があった。また、義務付けるのであれば見解の文言を訂正する必要があるとの発言があった。
   久具委員より、「生殖補助医療実施医療機関の登録と報告に関する見解」の(3) 登録施設の設備に記載されている「登録申請を行う際には、下記の具備すべき施設基準を満たすように努力すべきである。」とする一文は登録申請する時点で具備すべき設備が既に整った状態でなくても設備を整えていくことが具体的に記載されていれば申請を受理するという時間的配慮を示したものであり整備しなくてもいいということではないとの発言があった。
   白須委員より、凍結保存設備を持つことと「ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録」は従来通り求めた方がいいとの意見が出された。
   五味淵委員より、凍結設備を持たないため今回の再登録を行わなかった施設もある、方針を変更するのは望ましくないとの意見が出された。
   以上の協議の結果、従来の方針の通り凍結保存設備を持つことと「ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録」を求めることとした。

  (3)    着床前診断に関する審査小委員会からの答申について【資料5・6】
   久具幹事より、資料に沿って慶應義塾大学から再申請された1例(Dechenne型筋ジストロフィー)、セントマザー産婦人科医院より申請された3例(染色体相互転座によると思われる習慣流産2例・ロバートソン転座によると思われる習慣流産1例)に関する着床前診断に関する審査小委員会からの答申について説明がなされた。なお、着床前診断に関する審査小委員会からの答申はいずれも「申請された症例に対する着床前診断の実施を許可する」とされていた。また、着床前診断に関する審査小委員会からセントマザー産婦人科へ送付する着床前診断審査の申請時の文書作成に際しての留意点を記載した文章についても説明がなされた。
   セントマザー産婦人科医院より申請された3例については特に異議なく着床前診断の実施を倫理委員会として承認した。
   慶應義塾大学から再申請された1例(Dechenne型筋ジストロフィー)について協議を行った。
   大川委員より、34歳以降に挙児を得て35歳まで生存しており、疾患の重篤性という点で疑問がある、今までに「重篤な疾患」としてきた症例とは違うという印象を受けるとの発言があった。
   久具委員より、平成18年3月1日付けの申請・平成19年2月28日付けの再申請で記載された臨床経過から重篤であるとは判断できず照会を行ったところ今回の答申書に記載されているような臨床経過が示されたことが述べられた。審査小委員会としては、「成人に達する以前に日常生活を著しく損なう症状が出現したり生存が危ぶまれる状態になる疾患」を、現時点における「重篤な疾患」の基準としており、照会に対して記載された本症例の臨床経過では「成人に達する以前に日常生活を著しく損なう症状が出現している」ことから「重篤な疾患」に該当すると判断したとの発言があった。
   高倉委員より、今回記載された臨床経過では「11歳で歩行不能となり、車椅子による生活」、「19歳頃からは心筋障害により病院へ搬送」など、審査小委員会で考える現時点での「重篤な疾患」と判断することに全く問題ないと思われるとの意見が出された。
   以上の協議を経て、慶應義塾大学から再申請された1例(Dechenne型筋ジストロフィー)についても着床前診断の実施を倫理委員会として承認した。
   星合委員長より、着床前診断の有用性の評価方法はどのようになっているかとの質問があり、阪埜委員より、着床前診断の実施報告は前年度分を6月30日までに所定の書式にて提出することが義務付けられていること、昨年度も報告書が提出されていることが説明された。

  (4)    その他
    ①倫理関係新聞記事について【資料7】
       参考に倫理関係新聞記事が示された。
    ②学会宛非配偶者間人工授精に関しての質問について【資料8】
       差出人が特定不能なメールであり、特に対応しないこととした。
    ③その他
       澤委員より、生殖補助医療実施医療機関が閉鎖になった場合に各機関が保管している胚等の取り扱いの指針を学会として作る必要はないかとの発言があった。
       星合委員長より、各機関と患者の間のことであり、現時点では学会が立ち入る必要はないと思われるとの発言があった。

 

  星合委員長が平成19年度第1回倫理委員会の閉会を宣言した。

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