公益社団法人 日本産科婦人科学会

English
委員会情報
SUB MENU

平成20年度第2回倫理委員会議事録

更新日時:2018年8月3日

平成20年度第2回倫理委員会議事録

日時:平成20年10月3日(金)18:00~20:00
場所:日本産科婦人科学会事務局会議室
出席者:理事長:吉村 泰典
          倫理委員会委員長:星合 昊
          倫理委員会副委員長:平原 史樹
          委      員:安達 知子、岩下 光利、大川 玲子、久具 宏司、
                       小林 重高、五味淵秀人、澤 倫太郎、高倉  聡、
                       竹下 俊行、阪埜 浩司、宮崎亮一郎、渡部  洋
          幹事長:矢野 哲

星合 昊委員長より挨拶があり、委員会が開始された。

1.議事録確認
   平成20年度第1回倫理委員会議事録(案)につき検討され、会終了時に特に異議なく承認され、議事録とした。

2.報告事項
   (1)登録調査小委員会の報告が、齊藤英和委員長代理として、星合 昊倫理委員長よりなされた。
   (2)着床前診断審査小委員会からの報告が、星合 昊委員長よりなされた。
   (3)神経筋疾患ネットワークのシンポジウムが9月15日に開催されたことが星合 昊委員長より報告された。本会からは杉浦真弓教授が出席し講演を行ったこと、ネットワークと本会とが対立しているのでなく、それぞれの立場を理解し、よい環境が作れたとの報告であった。
   (4)臨床遺伝専門医制度の説明および専門医制度委員会のホームページ収載についての説明が、平原史樹委員よりなされた。既に過去に内規の形で要綱の審議はなされているので、今後は最終確認を行ったうえで、収載する。
   (5)遺伝学的検査に関するガイドラインの改定について、平原史樹委員より説明がなされた。この中の文章は1988年にできたものが現在でも踏襲されている。この中の「重篤な」という文言の定義については内規のようなもので運用されているが、これに関して改めて議論をする必要があろうとの説明であった。これについては、少人数の専門家によるワーキンググループなどを組織して検討するのが適当ではないかとの提案がなされた。
   (6)その他の報告および協議事項として、登録調査小委員会齊藤英和委員長の代理として久具宏司委員より次の議題が提示された(2項目)。
   ①ART登録施設の中には、症例の登録の方法についてさまざまな意見、提言をもっている施設が多く、それらの意見を直接出し合い懇談する内々の会を、齊藤英和委員長とセントルカ産婦人科の宇都宮医師の発案により、さる8月29日福岡での受精着床学会の際に行った。出席者は20人程度であった。そこでは登録の方法、運用上の問題について貴重な意見も多く、また、登録方法について十分理解の得られていない点もあることが判明した。ついては、登録の充実を目指すために、ART登録施設の全てに呼びかけて、登録方法について意見を交換する会をもちたいと思う。本来、日産婦学会の総会が行われる時に合わせるのがよいのであろうが、できるだけ早期に多くの施設に周知するためには来春まで待つよりは、今月(10月)に行われる生殖医学会において開くのが適切と考える。他学会の開催を利用して行うことになるが、承認を求める。
   また、この際ART症例登録の集計についての登録施設に向けての報告も併せて行いたい。各施設に症例の登録をお願いしている以上、それを元にした集計の報告、すなわちフィードバックを行うのは、各施設に対してモチベーションを高めるためにも意義があると考える。この報告を行う会は今後も毎年行いたいが、やはり生殖医学会の時に行ってよいか、検討を求める。
この発議に関し、今年の生殖医学会でART登録施設の意見交換会を催すことについては、承認された(常務理事会で報告の予定)。来年以降、毎年、登録施設に対する集計報告会を生殖医学会中に行うことについては、常務理事会での審議を要する、とした。
   久具宏司委員より、登録調査小委員会は日産婦学会の下部委員会であるので、日産婦学会開催時に集計報告を行うのが適切であろうが、ART登録施設の医師は実際には日産婦学会よりも生殖医学会に多く出席する傾向があるので、生殖医学会時に報告するのが実質的との登録調査小委員会の意見が付け加えられた。
   矢野 哲幹事長より、ART登録施設への説明に際して、症例の登録を個票で行うべきと説明するのか、一括を望む施設に対してそれを認めることにするのか、との疑問が示された。
   吉村泰典理事長より、症例数が非常に多くて、一括登録でないと事実上登録が無理であるという施設があり、そのような施設に個別登録をするよう強要するのは無理であると考える。出生児のデータをできるだけ完全に集約するには、そのような施設にある程度認めるのはやむをえないと考える、との意見が出された。
   矢野 哲幹事長より、個別登録をすることを施設登録認定の要件とするということもできる、個票で登録するというのがUMINへのデータ管理の条件となっている、との意見が出された。
   吉村泰典理事長より、一括登録であっても個票での登録には変わりない、と。
   久具宏司委員より、登録の内容は症例ごとの個票になっているが、それを個別に入力するか、一括で入力するかという点の問題であった、一括で入力するということになると、UMINの現システムを大きく改変する必要があり、UMINへの依頼が必要である、この改変は技術的には可能であると聞いている、と。
   星合 昊委員長より、そもそも毎月入力するのは、都道府県からの補助金の拠出のために必要であるのであって、学会としては年に1回の入力でも構わないはずだ、と。
   久具宏司委員より、しかし現実には、都道府県は、入力がなされていなくても補助金を出す体制となっており、個別入力を求める理由が薄れている、と。
   吉村泰典理事長より、そのとおりであり、学会が個別入力を強要しにくい状況となっている、この上は、生殖医学会の時の説明会でもこの点を十分に説明し、個別入力をするよう登録施設にお願いするようにしてほしい、と。
   矢野 哲幹事長より、強硬に一括入力を主張する施設に対しては、それに要する負担を十分に認識してもらい、場合によってはその一部を負担してもらうことを考えてもよいのではないか、との意見が出され、この議論は終息した。

   ②学会会員から、ART症例登録のデータを元にして集計値を研究に利用したい旨の要望があったが、提供してもよいか。登録調査小委員会委員長としては、わが国におけるARTの現状を登録した貴重なデータであり、学会が学会誌やホームページ上に公表している統計以外に使用せずに死蔵するのはよいこととは言えず、多くの学会員のアイディアに基づき利用してもらうのはよいことと考える。しかし、症例登録を行う施設に対し同意を得る必要がないか、また、会員に提供する形に解析する作業の負担など、問題点もあり、協議をお願いしたい。
   阪埜浩司委員より、この問題に言われている、既に公表されている統計のほかの、生データを新たに解析する必要のあるものやデータの一部分を抽出しての会員へのデータ提供についての問題は、生殖医療に限らず、他の領域でも十分な検討がなされていない問題であり、改めて学会全体での検討を要する、との意見が述べられた。また、現時点で、周産期や腫瘍のデータの提供についてはおそらく小委員長の判断にまかされているものと思われる、さらに、各施設からデータを登録している目的を考慮すると何らかの形でそれを会員に還元できないと意味がないという議論が他委員会でなされた、と付加された。また、何らかの新しい目的で全国的に調査をしてデータを集める、というようなものは、各専門委員会が新たな小委員会を作って対応すれば済むことであるが、既に集積されたデータの中からの提供については小委員会委員長の判断に任されているものと思われる、と付加された。
   審議の結果、周産期領域、腫瘍領域での実態も考慮する必要があることから、常務理事会において審議することとした。

協議事項
   (1)根津八紘会員への対応
   星合 昊委員長からの趣旨説明
   根津八紘会員が代理懐胎を行った、という報道について、本学会は事実確認の文書を送付してきたが、本人からの直接の返事は得られないままである。ところが、8月に受精着床学会においてこの代理懐胎の件についての発表がなされた。他学会とはいえ、学会という学術発表の場で発表された以上、事実であるとして本学会も対応を考えなければいけないのではないか、ということが先月の常務理事会で話題となり、倫理委員会で討議をするように指示された。配付資料にこれまでの経過を全てまとめてあるが、現在は昨年4月に厳重注意処分を下したところである。なお、代理懐胎を行ったということは、学会の会告に違反する行為であり、根津会員が学会からの除名後、復帰する際の裁判所の和解条項に触れる、ということでもある。
   吉村泰典理事長:常務理事会では、処分をしなさいと言ったわけではない。何らかの声明、メッセージは出すべきではないか、何もしないというのはよろしくない、という意見が出た。しかし、何もしないという行動もありうると思う。
   平岩弁護士の意見は、次の3つ、①懲戒処分の中の「退会勧告」の内容を一部(従わない場合は除名処分とする、の部分)を改定する(改定した上で「退会勧告」とする、②会員資格の一時停止の処分とする、③何もしない、のいずれかが考えられる、とのことである。
   前理事長の意見は、今回の発表は他学会の発表であるが、各学会はそれぞれオートノミィ(自立性)があり、日産婦学会(本学会)での発表でないことを考慮すると、他学会のオートノミィを尊重して本学会の懲罰の対象とはなりにくい、とるべき行動は、ホームページ上で日産婦学会会員は会の規則を厳守するよう呼びかけることであろう、とのことである。このご意見は、5年間裁判を続けてきて、裁判が不毛なものであるとの理解が前提となっており、新たな問題提起はする必要がないとの意見と、考えられる。
   もう一人、法律家の町野朔氏の意見がある。町野氏は学術会議で代理懐胎の議論をまとめられた一人である。学術会議では、代理懐胎を法律をもって禁止すべきである、ただし試行は考慮してもよい、という提言をまとめた、学術会議の各委員は日産婦学会が(根津会員の代理懐胎実施との学会発表の報道に対して)何らかのメッセージを出して欲しいと思っていると推測される、との意見であった。
   五味淵秀人委員:代理懐胎を行ったことは、明らかに和解条項に違反するのではないのか。
   澤倫太郎委員:司法が入った和解であるから、違反したときの処分については手続き論になると考える。
   吉村泰典理事長:和解条項に違反した場合の取扱いについては、平岩弁護士も特にコメントはされていない。ただ、除名という処分を行うことについては、消極的であった。やはり、それに引き続き起こるであろう新たな裁判で不毛な時間を費やすことへの忌避感を私は感じるし、彼もそうかもしれない。
   平原史樹委員:受精着床学会で発表した内容についての事実確認は、今回行ったのか。
   星合 昊委員長:事実確認はしていない。今回は報道されたわけではなく、学術的な学会での発表という形であるので、事実であることを(本人が)認めたと、とれるのではないか。しかし、前理事長の発言のように、別の学会での発表であるので、われわれ(日産婦学会)の確認作業とは別のものとみなすこともできるかもしれない。
医会は彼に対して今まで処分はしたのですか?
   吉村泰典理事長:医会は彼に対して一度退会勧告を出したことがある。それは卵子提供に対してであった。
   宮崎亮一郎委員より、医会の除名に関する取り決めについて、医会では、過去に2名の除名者がいる。いずれも、支部から除名の報告を受けて、それを受理した形であって、医会本部が除名をすることは今までなかった。会長名で除名勧告を出したことはある。学会とは大分システムが異なる、との発言があった。
   五味淵秀人委員:和解条項違反はそのままでよいのか。
   星合 昊委員長:平岩弁護士の意見では、正当な手続きとしては、和解条項違反に対して処分する、または裁判を起こすことは間違っていないが、そのことが再び先方に正当性をアピールする手段として使われてしまう可能性があるので、注意を要する、とのことであった。
   澤倫太郎委員:厳重注意を出し続けていれば、そのうちにやはりあの医師はおかしいということになり、メディアがそのようにみなすようになる、だからメディアを味方につけるべき、という意見もある。
   星合 昊委員長:代理懐胎についての報道は数年前からなされているが、今回学術会議の提言が出た後で、なされた報道についても、同じように学会との対立軸での報道となっている。
   久具宏司委員:今回、学会が何も行動を起こさないとすれば、代理懐胎は行っても処分はされない、というメッセージを会員全体に送ってしまうことになる。
   星合 昊委員長:それは代理懐胎にとどまらず、会告全体に対して、守らなくてもよい、というメッセージに繋がる。
   吉村泰典理事長:報道機関でこの問題を根津医師と学会との対立軸で書き続けているのは1社のみであるが、だからといって再び処分を科すということになると、彼らのフィールドにはまることになる。和解条項があるからという筋論で突き進んで、不毛な5年間を再び通るのは好ましくない。現実的な対応として、和解条項にあまり触れずに、厳重注意を与える、会員資格の一定期間の停止、などの対応が望ましいのではないか。
   矢野 哲幹事長:資格停止は、やはりやらないほうがよいのではないか。
   岩下光利委員:厳重注意であれば、(資格を奪われるわけではないので、)先方は何も(訴訟など)できないわけである。その意味で、退会勧告でもよいと思う。従わない場合は(除名)と書いてあるが、時間的な制約は書かれていないのであるから、(従わなくても)除名しなくてもよいのではないか。
   矢野 哲幹事長:退会勧告を一度出してしまうと、ある程度の時間の後に除名をしなくてはならない、ということのようだ。目安は半年か。
   吉村泰典理事長:昨年6月に(理事会において)懲戒規定の退会勧告の部分の変更を求めたが、根津医師のことを考慮した改正であるとの理由で却下された。やはりこの部分の変更は必要と思うが、今具体的な問題が起こっている段階で行うのは見識がないとみなされてしまう。
   竹下俊行委員:やはり学会として何らかの行動を起こさないといけないであろう。
   平原史樹委員:まず、日産婦学会として代理懐胎の事実の有無について確認するのが必要で、何もレスポンスがなければ、その不誠実さに対して厳重注意を与える、ということではいかがか。
   星合 昊委員長:厳重注意処分は既に出した。その状態、つまり厳重注意処分の出された状態で、また厳重注意処分を出すという考えでよいのか。
   矢野 哲幹事長:厳重注意処分は案件ごとに出すと考えればよい。
   吉村泰典理事長:今回の学会発表では、昨年から症例数が変わっているので、別の案件とみなしてよいのではないか。
   澤倫太郎委員:受精着床学会も少し思慮が足りなかったのではないか。
   竹下俊行委員:受精着床学会では、演題を受け付けた後、日産婦へ問い合わせなり、報告なりなされたのか。
   吉村泰典理事長:受精着床学会では倫理委員会も開いたうえで演題を受け付けたのであるが、日産婦への報告はなかった。
   安達知子委員:裁判となった場合にその費用は学会が出すのか、理事長なり個人で負担することになるのか、またそれは公益法人になった後でも変わらないのか。
   吉村泰典理事長:学会が負担する。しかし、会員がその負担が不適切として学会からの負担を認めないということも起こりうるであろう。
   岩下光利委員:根津医師は、ART施設として登録されているのか。
   星合 昊委員長:本人は日産婦の専門医でないが、他の医師を実施責任者として諏訪マタニティークリニックは数カ月前に登録された。
   小林重高委員:ものの順序として、学会としての事実確認をして、その点をおさえておかないといけないと思う。また、和解条項によると、学会の決まりを守るということになっているが、これは仲介しているのが素人ではなくて東京地裁であり、この場合は遵守されなければならない、ということになる。処分の内容についていえば、一般的に再犯される場合は一つずつ段階が上がるのが普通である。したがって、決まりを遵守しなかったことに対して厳重注意を一度出したのであれば、次に処分を行う場合は譴責であろう。譴責の説明に、厳重注意より重い処分と位置づける、とある点が重要である。そのやり取りの間に内規の変更を検討するということが考えられる。また、医会では記者懇談会という会を定期的に開いていて、医会の考えを国民に発信する場として、最近は産科の現状についてマスコミの理解が得られるようになってきた。このような会を利用してマスコミに学会の考えを理解発信してもらうことを考えてはどうか。
   吉村泰典理事長:学会でも理事会の後には必ず記者会見を開いており、必ずこの問題(根津医師への対処)については質問を受けるので、あえてこちらから懇談会の席上で問いかけるのは得策とは思えない。新聞社の中でこの問題を扱い続けているのは一社だけであり、学術会議の提言以降他社は既に無視している。かの一社を除いてマスコミはかなりよく理解していると考えられる。厳重注意を繰り返すのでなく、譴責とすることについては十分に考えてよい意見と思う。
   岩下光利委員:学術会議の方から何かコメントを出してもらうことはできないのか。
   吉村泰典理事長:その点も確認したが、学術会議は既に提言を法務・厚生労働両大臣に投げかけた後であり、今はコメントする立場にない。
   矢野 哲幹事長:国が厳重注意してくれると一番よい。
   澤倫太郎委員:課長通達も出したのであるから、厚生労働省がやるべきであり、かかる事態で処分をやると課長が言っていたこともあったが、現在はもうやる気はない。国会議員の中にもいろいろな意見の人がいるから。結局は、学会が行動を起こすしかない。
   星合 昊委員長:本委員会での議論をまとめる。根津会員に対して何らかの処分は必要であろう。事実確認については、他の学会での発表を新聞報道などと同じに捉えて、(日産婦)学会としてもう一度確認する必要があるかどうか検討を要する。事実確認の必要性の有無、また事実確認への返事の有無にかかわらず、何らかの処分は必要であろう。「会員資格一時停止」以上の処分を求める声は少ない。
(さまざまな意見が交わされ)
   やはり事実確認は必要と考える、ということにする。
   また、返事が来なかった場合に処分をする場合、これは返事がないことに対する誠意がないことへの処分ではなく、会告違反をしたことへの処分である。返事が2回来ない場合に認めたものと考えてよい、という法解釈もあるし、代理人が回答してきた場合でも返事として有効とみなすことができるので(高倉委員の発言)。
厳重注意処分以降も続けて行っているのか、ということを確認すべきだ。
   吉村泰典理事長:受精着床学会で発表した代理懐胎を行ったということが事実であるかどうか、学術会議が刑罰をもって禁止すると提言しているにもかかわらず実施したのか、という事実確認をする。

(2)JISARTによる「卵子バンク」計画について
   星合 昊委員長より、昨年来JISARTより、卵子提供体外受精の学会への申請、卵子提供体外受精実施の新聞報道、がなされ、このたび「卵子バンク」の計画なる報道がなされたが、これに対して学会としてどう対応するべきか、という趣旨が説明された。
   吉村泰典理事長より、これは事実確認する必要はないと思う、と。
   星合 昊委員長より、卵子提供については、過去には学会会告を根拠に処分を下したこともあったが、その後技術の進歩と情勢の変化がみられ、現在では学会は卵子提供について会告を有していないとの見解に立っており、昨年のJISARTの申請に対してもその立場で返答している。したがって、何もしないということでよいであろう、と。
   星合 昊委員長より、昨年の返答の繰り返し、すなわち厚生労働省通達を尊重するとの返答をもう一度出す、ということも考えられるが、いかがか、と。
   吉村泰典理事長より、厚生労働省が昨年来、何の行動も起こしていない以上、学会としては対応する必要はないと思う。
   宮崎亮一郎委員より、卵子提供妊娠の臨床データを示すことを求める必要はないのか。
吉村泰典理事長より、その点が重要であり、それを積極的に提出してもらうことが重要である。
   安達知子委員より、日産婦学会からデータをお示しくださいと求めるのはいかがなものか。
   星合 昊委員長より、厚生科学審議会が出した「近親者からの提供を禁ずる」という提言には抵触するが、その点を質す必要なはいのか。
   吉村泰典理事長より、その提言に関しては、そのまま止まっている状況であり、厚生労働省が何もレスポンスしていないのであるから、学会から行う必要はない、と。
   星合 昊委員長より、この問題は学会からは何も行動を起こさないということでよいか。
   吉村泰典理事長より、それでよいが、やはり学会としては、卵子提供妊娠の顛末がどのようなものであったか、把握しておく必要はあるであろうから、登録調査小委員会として、あるいは倫理委員会として、結果について照会を行う必要はあるのではないか。
   星合 昊委員長より、そうなると、倫理委員会が近親者からの卵子提供を認めたということにならないか、不安がある。
   安達知子委員より、卵子提供の顛末を示すよう敢えて学会が書面を送付するのが適切なのかどうか、という問題がある。
   星合 昊委員長より、学会から公式に(データを)要求するとなると、また別の意味合いを持つことになる。
   吉村泰典理事長より、学会として把握しておく必要があり、データを要求するのは意味があると思われる。
   久具宏司委員より、学会が禁止していることでもないので、データの要求は構わないと思うが、そうすることにより学会が卵子提供を内々に認めたという捉え方を、特にマスコミがしかねないのが問題だ、学会としてはデータの提供により卵子提供を認めるというわけではなく、むしろそれを元に禁止する根拠ともなりかねないのだが、マスコミには、学会の方からJISARTに歩み寄る姿勢を示していると曲解される可能性がある。
   矢野 哲幹事長より、卵子提供に関する発表は、日産婦以外の他の学会でなされる可能性がある。
   久具宏司委員より、もし他の学会での発表が行われれば、日産婦がデータ把握に乗り出したとしても不自然ではない。
   星合 昊委員長より、では、現時点ではレスポンスしないことにして常務理事会に諮ることにする。

(3)インドでの日本人の代理出産について
   久具宏司委員より資料の説明あり。
   星合 昊委員長より、この報道は想定外の事案であり、日産婦学会としてコメントすることは何もないが、これを元にこのようなことが起こらないように日本国内での代理懐胎を進めるべきという報道がみられなかったのが救いである、またそれほど異常な事案ということであろう、とのまとめがあった。

(4)根津会員への対処についての追加
   吉村泰典理事長より、受精着床学会が根津医師の代理懐胎の発表を認めることになった経緯を、日産婦学会として公式に質問することが必要ではないかと提案され、審議経過を照会する文書を倫理委員長名で送付することとなった。

終了
このページの先頭へ