公益社団法人 日本産科婦人科学会

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平成21年度第4回倫理委員会議事録

更新日時:2018年8月2日

平成21年度第4回倫理委員会議事録

日 時:平成22年2月4日(木)午後6時30分~8時30分
場 所:日本産科婦人科学会事務局「会議室」
出席者:
   理事長:吉村 泰典
   委員長;嘉村 敏治
   副委員長;久具 宏司
   委 員:安達 知子、石原  理、齊藤 英和、榊原 秀也、澤 倫太郎、杉浦 真弓、竹下 俊行、
阪埜 浩司、平原 史樹、堀  大蔵、矢野  哲、山中美智子

嘉村敏治委員長より開会の挨拶があり,委員会が開始された。
平成21年度第4回倫理委員会議事録(案)について、会議終了までに特に異議の申し出がなく、議事録は承認された。【資料1】

1. 登録関係報告事項
(1)本会の見解に基づく諸登録(平成22年1月31日)【資料2】
齊藤英和委員から資料2に従って平成22年1月31日現在の登録状況について報告があった。
①ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する登録:47研究
②体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録:624施設
③ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録:624施設
④顕微授精に関する登録:507施設
⑤非配偶者間人工授精に関する登録:16施設

   齊藤英和委員:1月31日現在登録施設は624施設で、平成21年には18施設が新たに登録された。毎年20前後の新規登録が行われている。
   ARTオンライン登録状況は2007年が約16万件、2008年が186,854件であった。2009年分はすでに18万件登録されており、毎年、約2万件増加している。2008年分の妊娠から出産までの登録画面を一部変更した。2008年未登録施設が16施設有り最終催促をし、報告がない場合は調査未回答施設として機関誌、ホームページに公開する旨連絡した。また、47の受精卵を取り扱う研究施設に研究成果報告書の提出を依頼した。
   ART実施医療機関の登録は、現在小委員会で書面にて審査している。より正確な情報を得るために、自治体に実地調査をしてもらうように、資料2-2の要望書を提出することが報告され、承認された。
   嘉村敏治委員長;未登録施設はどこに掲載しているのか
   齊藤英和委員;2007年の未登録施設は3施設で昨年の日産婦誌9月号に掲載している。0報告もされていない施設は、今回の見解の改訂にも書かれているようにART実施医療機関の登録を抹消されることになる。
   嘉村敏治委員長;実地調査は今行われているのか
   澤倫太郎委員;各自治体で温度差があり、しているところと、していない自治体がある。
   吉村泰典理事長;厚生労働省母子保健課の課長宛に送って、全自治体で実地調査を行うように、厚生労働省から各自治体を指導してもらうことが重要だ。
   久具宏司副委員長;要望書の下から4行目多くの自治体を一部の自治体と変更を。要望書の変更ならびに提出先について承認された。

(2)着床前診断に関する臨床研究申請・認可について【資料3】
   申請件数:166例[承認122例、非承認4例、審査対象外14例、照会1例、取り下げ1例、審査中24例] (承認122例のうち3例は条件付)
   平原委員から今回の小委員会には、新規申請が24件で、再申請1例の25例を検討した。相互転座の19例は承認し、条件付2例、照会3例,対象外が1例であったことが報告された。条件付、照会になった症例、対象外の症例につき詳細な説明があった。
慶應大学から申請があったDuchenne型筋ジストロフィー9例中3例で 資料3,34ページの症例は臨床経過が急激なことから診断、臨床症状、カウンセリングで某医科大学となっているがどこの大学かの照会とした。資料3,38ページ慶応大学の症例遺伝カウンセリングに関して他設の医師によるカウンセリング実施に関する記載がなかった条件付とした。56ページ症例9 Duchenne型筋ジストロフィーの臨床経過・診断について照会した。
資料3、4ページの症例。腕間逆位で5回連続して流産しているが均衡型転座の症例ではないため対象外とするとした上で、付議に今後このような症例をどうするか検討していくとした。31ページの症例は均衡型転座に18番の染色体の中に腕間逆位がある。腕間逆位は本学会では対象となっていないため、付議を付けて、均衡型転座による習慣流産として認可した。
57ページの症例は化学流産5回を流産として認めるかどうか,その流産の内容を照会したところ、hCG値を示してきた。hCG値が高い2回の流産について申請施設での妊娠継続率を提示して頂きこのhCG値が流産として妥当かどうか検討するため,照会としたことが報告された。

異議なく承認された。

 

2. 着床前診断に関するWG報告(竹下委員)【資料4】
   竹下俊行委員より資料4に従って、見直しを行う経緯、着床前診断に関するWGの最終答申について説明があった。
   竹下俊行委員;①着床前診断の見解について見直しを行った結果、平成18年見解「染色体転座に起因する習慣流産(反復流産を含む)を着床前診断の対象とする」の変更は行わず、「遺伝子の診断を基本とする」旨の解説を含む、平成10年見解の改訂を行うことにした。その改訂の骨子は、10年見解は、その解説を含め、18年見解および最近の着床前診断の考え方に合致しない部分が生じていること、両見解とも最近の生殖医療の進歩、社会状況の変化に応じて改変が必要となったためであることが報告された。資料4の別紙1に「着床前診断」に関する見解、別紙2に習慣性流産に対する着床前診断に関する解説の改定案を示している。
   ②審査の迅速化を望む意見が多く、少しでも迅速な審査を遂行する上で、症例サマリーを添付することを義務づけた。審査の簡略化については具体的な指針を出すには至らなかったことが報告された。
   ③着床前診断実施報告書の様式についても改訂を行ったことの報告があった。
   嘉村敏治委員長;倫理的に注意すべき事項に関する見解142ページから145ページが別紙1に,146ページから147ページを別紙2に改訂した.非常にわかりやすくなったと思うが、まず、別紙1についてご意見は。
   吉村泰典理事長;特に問題ないと思う。
   榊原秀也委員;腕間逆位の症例が審査に挙がったが、それも反映している見解か。
   竹下俊行委員;それは考えていない。
   安達知子委員;適応と実施要件でいろんな症例が出てくる可能性があるため,均衡型染色体構造異常という文言とし、あえて転座ということにしなかった経緯がある。
   杉浦真弓委員;腕間逆位はあまり流産と関係ないとする文献も出てきている。
   嘉村敏治委員長;個々の症例について見解を変えると言うことは無理であり,別紙1についてはこのままでよいか。異議なく承認された。
   嘉村敏治委員長;別紙2については如何か。
   安達知子委員;染色体転座に起因する習慣性流産が対象となると、腕間逆位などは審査対象外となる。染色体構造異常とした方が良いのでは。
   久具宏司副委員長;腕間逆位はデータが少なく、流産との関係がないとの意見もあることから。
   阪埜浩司委員;これは委員会案と言うことで、あと理事会、会員の意見などを聞くことになるので,そのような意見が多ければ再度検討するということで良いのでは。
   石原理委員;習慣流産は子宮内膜のセレクション異常との意見もあり、見解の性格としては細かいことには触れない方が良い。
   嘉村敏治委員長;阪埜委員の指摘のように見解はこのままで,常務理事会、理事会、会員の意見を聞いた上で,意見が多ければ再度検討することにする。承認された。
   吉村泰典理事長;前文の最終答申はどこかに載せるのか。
   竹下俊行委員;答申がないと分からないかも知れない。
   嘉村敏治委員長;この答申を含め、原案のままで理事会に提出し,会員のご意見を聞いた上で修正する。ということでよろしいか。特に異議なく原案は承認された。

3. 出生前診断の適応に関する諮問WG報告【資料5】
   平原委員から資料5に従って1月15日に第1回の作業部会が行われたことが報告された。
   平原史樹委員;マーカーテストの扱いは、99年に厚労省から患者に知らせる必要がないという位置づけでアナウンスが出た。一方で、NTとか、マーカーテストの発達などが有り、ACOGでも、2年半ぐらい前に妊婦さんには必ず伝えることとしており、先進諸国ではNTやマーカーテストの位置づけが明確になってきている。このような問題をどうすりあわせるかを検討する部会である。見直しの方向性については資料5の3の部分に書いてあるようなことについて検討して行く予定である。原則はあまり変えないで、解説の所に学会としてのスタンスを入れていくような形にしたい。
日本人類遺伝学会の遺伝学的検査のガイドライン、産婦人科診療のガイドライン(産科編2008年)と齟齬のないように進めていきたいとの報告があり、メンバー、方向性について承認された。

4. 遺伝カウンセリング講習会開催について(平原委員)【資料6】
   平原委員から資料6に従って、今年、7月4日に開催予定の第3回の生殖医療に関す る遺伝カウンセリング相談受け入れ可能な臨床遺伝専門医講習会について、その開催の目的、ならび対象者について説明があった。2001年、2005年の2回行われているが、昨今の諸問題について適切なる情報を伝達する講習会である。受講対象者は日本産科婦人科学会会員だけでなく人類遺伝学会の受講希望者など約300名程度で主催は日本産婦人科学会が行うことが報告された。方向性について問題なければ詰めていきたい。
   吉村泰典理事長;人類遺伝学会の受講シールを発行して貰うことができるのか
   平原史樹委員;それは可能である。
   阪埜浩司委員;倫理委員会の予算計上はしているのか。
   嘉村敏治委員長;来年度予算には計上している。
   特に異議なく承認された。

5. 見解改定案に対する会員からの意見ならびにそれに伴う修正案【資料7-1,資料7-2】
   生殖医療実施医療機関の登録と報告に関する見解の改定案を日産婦誌62巻1号、ホームページに掲載したところ会員から意見が寄せられた。それを受けて資料7-1、7-2に修正案について久具副委員長から説明があった。
   久具宏司副委員長;香川県立中央病院の受精卵取り違え、生殖内分泌委員会のなかのリスクマネージメント小委員会でリスクマネージメントについての見解を登録と報告に関する見解に盛り込むということで改定案を出した。また、昨年、凍結受精卵を登録施設から新たに開業する診療所に無断で持ち出したという事例があり、ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する見解も改訂することにした。資料の7-2が改定案で学会誌に掲載されたものであり、8ページ以降に今回の意見をうけて修正したものを載せている。
   今回、会員から頂いた意見は
1)ART実施症例の分娩時の報告は、分娩をした産科施設から報告するように変えて欲しい。
2)安全管理に関する留意事項で、医療に係わる安全管理のための指針を整備するとなっているが,所属する医療機関の安全管理指針で良いのか,または、生殖医療に特化したものを作成しなければならないのか
3)ダブルチェックは、必ず医師が入るように記載されており、改定案の要員例では実施責任者が全ての例に入るようになっているが必要か。また、医師でなくても可とするなら、責任の所在はどうするのか。の3つの意見があった。なお、凍結保存と移植に関する見解の改定案に対する意見はなかったことが報告された。
   この意見を受けて改定案の修正案を登録調査小員会で検討し、それについて、久具副委員長から説明があった。
   修正案の骨子は
   (1)“はじめに”の部分で旧見解にあった登録の有効期間の文言が抜けていたので追加した。
   (2) 5.の4)(その他の要件に4))連続する3年間ART実施結果の報告がない場合、受精卵の保管のないことを確認後、登録を抹消する。という文言を追加した。
   (3) 7.安全管理の留意事項の項で、医療に係わる安全管理を生殖医療に係わる安全管理に変更した。
   (4) 7の⑤の項に「各ART登録施設は報告がない場合,報告内容に問題がある場合は登録を抹消されることがある」との文言を入れた。
   (5) 安全管理の留意事項でダブルチェックについては 考えられる4つの案を提示し、この委員会で検討することにした。
   嘉村敏治委員長;医師が入らない場合は責任の所在は。
   久具宏司副委員長;管理者としての医師の責任は問われる。
   安達知子委員;医師は監督者の責任を問われると思う。
   石原理委員;現実問題として全てに医師が関与することは難しい,外国でもそこまで要求しているところはない。ダブルチェックを行っても限界があるとの報告もある。
   嘉村敏治委員長;胚培養士は国家資格があるのか。
   久具宏司副委員長;特に国家資格はない、人数2人以上であることが重要で、実状からすると第1,2案と思う。
   吉村泰典理事長;第1案で良いと思う。
   検討の結果,2人以上でチェックすることが重要で倫理委員会としては第1案にすることが承認された。今後、リスクマネージメント委員会、常務理事会の意見を聞いたうえで最終案とすることが決定した。
   (6) ARTの臨床実施における安全管理に関する調査票の3を、「インシデントを報告する体制を整えている」の文言に変更したことが報告された。
質問の1)の分娩時の報告は産科施設にして欲しいという意見について、
   吉村泰典理事長;生殖医療者は分娩時の転帰の知る義務があるというスタンスは崩さないようにすべきであり,この質問に対する見解の改訂は必要ない。

異議なく承認された。

 

6. その他
   嘉村俊治委員長:資料ナンバーのない、本日配付資料であるが、国立成育医療センターの緒方先生からデータの開示をして欲しいと言う要望ですが
   齊藤英和委員;緒方先生からPrader-Willi症候群の発症に係わる因子の検討を行っている.これに関して生殖補助医療に関連したデータを開示して頂きたいと言う,本日配付資料の要望書が提出された。会員からの要求に対しては開示していこうと言うことになっていたが,会員以外の方はどうするのか検討して欲しい。スタンスとしては、このような研究目的がはっきりしている場合は開示していきたい。
   澤倫太郎委員;会員になって貰えば問題ないのでは
   石原理委員;データは全て開示すべきと思うが,ジャーナリストやメディア等にはどうするかが問題で、対象を決めていく必要がある。会員になって頂くよりも、データに対する対価としてお金を頂くという手もある。
   阪埜浩司委員;生殖補助医療のデータであるため本倫理委員会に提出されたものであるが,学会としては腫瘍分野、周産期分野などがあり、今後データの開示をどうするのか広報の中の情報処理委員会で検討して頂く必要がある。
   吉村泰典理事長;広報で検討して貰っていただきたい。
   阪埜浩司委員;今まで会員でない個人に開示したことはない。今回の緒方先生の件は会員になって頂ければ、倫理委員会で許可できるのではないか
   本件に対しては緒方先生に会員になって頂いて、許可することにすることで承認された。

嘉村敏治委員長の閉会の挨拶で会は終了した

 

資 料:
1. 前回議事録案
2. 登録・調査小委員会報告
3. 着床前診断審査小委員会報告
4.-1.着床前診断に関するWG答申
4.-2. 習慣流産に関する見解(最終案)
5. 「生殖医療に関する遺伝カウンセリング相談受入れ可能な臨床遺伝専門医」制度に伴う認定講習会開催に関する件
6.-1.1月号掲載見解改定案に対する会員からの意見
6.-2. 会員からの意見を受けて修正案

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