公益社団法人 日本産科婦人科学会

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平成23年度第1回倫理委員会議事録

更新日時:2018年8月2日

平成23年度第1回倫理委員会議事録

日 時:平成23年9月12日(月)午後6時00分~7時15分
場 所:日本産科婦人科学会事務局「会議室」

出席者:
   委員長 落合 和徳
   副委員長 久具 宏司
   主務幹事 榊原 秀也
   委員 安達 知子、石原 理、苛原 稔、澤 倫太郎、杉浦 真弓、高橋 健太郎、澤 倫太郎、
杉浦 真弓、竹下 俊行、津田 尚武、平原 史樹、矢野 哲、山中 美智子
<欠席者>大川 玲子、齊藤 英和、小森 慎二、峯岸 敬、吉村 泰典
敬省略
 

   定刻に落合倫理委員長から開会が宣言され、委員長の挨拶の後に次第に則り議事が開始された。
   まず、【資料1】の平成22年度第5回委員会議事録を確認し、報告・協議事項に移った。
   1 登録関係 久具副委員長より登録・調査小委員会の諸登録について
【資料2】に基いて以下の件について報告があった。
   1 ART登録数 2 ARTオンライン登録状況 3 安全管理調査票 4 2009年分報告書 5 学会見解に基づく諸登録の更新申請
   3について 佐世保共済病院から回答がなかったため地方連絡員を通して再度回答依頼をしたところ、実施責任者の木寺義郎先生より凍結受精卵の保管に関する回答が届き、凍結受精卵の保管のないことを確認したので、施設登録の抹梢を行うこととした。
   5について 今年度は5年毎の登録し直しの年に当たり、業務量が膨大になることが予測されるため、更新審査を登録・調査小委員会の委員以外にも依頼することが提案され、以前に登録・調査小委員会委員を務められた先生方に審査員をご承諾いただけるか問い合わせることが諮られた。
   落合委員長から5に関して審査をきちんと行うためには多くの先生にご協力頂きたい旨の発言があり、了承された。
   次いで、着床前診断に関する審査小委員会平原委員長より8月23日に着床前診断に関する審査小委員会が開催され、認可4件、照会が2件であったことが【資料3】に基いて報告された。また、小委員会で神経内科医を委員に加えることが議論されたことなどについても報告があった。
   さらにセント・ルカへの照会文案について以下のような議論が交わされた。
   平原 史樹委員:現在、習慣流産に関しては染色体に均衡型転座があるものについて認められている。しかし、宇津宮先生から出されたのはスクリーニングをさせて下さいというものである。したがって、基本的には非承認であるが、申請書の中にすでにPGSを実施している旨の記載があり、事実関係を照会の予定である。事実であれば見解違反と考えられる。ついては本件の取扱いについてご議論いただきたい。
   落合 和徳委員長:PGSに関するセント・ルカの宇津宮先生からの申請の件である。見解ではスクリーニングを目的としないと明記されている。PGSを施行したいという申請でありながらすでにPGSを施行したというような内容が書かれている。厳しく取扱うとすると、見解に違反しているということで何らかのアクションを起こす必要がある。どのような対応にするか意見を頂きたい。
   杉浦 真弓委員:対象としているのは転座のある症例か?
   平原 史樹委員:転座はない。ただ、流産した際の絨毛染色体の結果がトリソミーであった。
   杉浦 真弓委員:まず、事実関係の確認が必要である。
   石原 理委員:最近のデータではトリソミーに対するPGSの利益がないということになっているので、意味はがないのではないか?患者の年齢は何歳か?
   平原 史樹委員:41歳である。まずは事実であるかを問い合わせるか?以前にもPGSを申請してきていて審査対象外として回答したことがあったが、審査対象外ならば自分たちの倫理委員会で審査してやってよいと解釈している可能性がある。
   落合 和徳委員長:まずは、事実関係の確認を行うことにするのがよいのではないか。
   平原 史樹委員:多くの施設ではPGSは施行できないと考えているので、理解しているはずだと思う。
   久具 宏司副委員長:照会して施行しているとの返事が来た場合は、厳重注意をする必要がある。
   安達 知子委員:宇津宮先生は2年後に受精着床学会を主催するはずで、ARTに関して学会の姿勢を無視するようなスタンスはよくないと思う。自分の立場を重んじて頂ければ解決するのではないか。
   落合 和徳委員長:こちらが非常に重大な関心を持って見ているのだということを、照会の中に込めることが必要である。
   澤 倫太郎委員:審査対象外という用語が自分たちでやってよいと考えたと思われる。
   苛原 稔委員:一部には、対象外となったら自分たちでやってよいと思っている風潮があるように感じる。
   平原 史樹委員:見解の対象に入っていない疾患は審査対象外としてきたが、これはやってはいけないということであることは見解を見れば明らかである。しかし、審査対象外と返ってくると自分たちの倫理委員会で決めればよいと詭弁を弄される可能性がある。
   落合 和徳委員長:われわれの返答が誤解されて読み取られない様にすることも、倫理委員会として必要なことと思われる。
   澤 倫太郎委員:見解の44ページにはスクリーニングを目的としないと書いてある。これを読み落としているのはいただけない。
   平原 史樹委員:審査対象外と雖も、着床前診断を行うのであれば学会の見解を守って下さいという添書きをするべきだったかもしれない。審査対象外を誤解している可能性もあるので、事実関係を問い合わせることにする。

   ここで、澤委員より今回は第1回の委員会なので自己紹介をすることが提案され、各自自己紹介を行った。

   2 聖マリアンナ医科大学からの「『卵巣凍結保存―休眠原始卵胞活性化―卵巣自家移植―体外受精・胚移植』による新たな不妊治療の開発」について
   【資料4】を参考に以下のような議論がなされた。
   落合 和徳委員長:聖マリアンナ医科大学の石塚教授からの研究申請の件。当初頂いた研究計画がかなり多岐にわたるような誤解を招く書き方だったので研究計画の書き直しをお願いした。この研究自体は聖マリアンナ医科大学の倫理委員会ですでに承認された技術を使うということで承認されている。さらに、その上でこちらでのお墨付きを貰いたいということであった。資料4-2にあるような回答を倫理委員の意見を付記してお返しした。これは医師主導の臨床研究とみなされるので、本学会倫理委員会は認可の諾否を決定する立場にはない。貴大学の倫理委員会の認可を得て実施されるべきもの、と考える。但し、添付資料にいくつかの問題点があるので倫理委員から寄せられた意見をつけてお返しした。基本的には医師主導の臨床研究として宜しいこと、改定された文言に関しても最終的には問題ないということで慎重に研究を進めていただくということをお認め頂きたい。
   石原 理委員:ここ2~3年で政府の研究の指針が変わったので、われわれも指針を変える必要がある。
   落合 和徳委員長:基本的には、今回出てきた様な研究について、この倫理委員会で諾否を決めるのは立場上、少しおかしいのではないかと思う。臨床研究の指針に沿って行っていただくのが前提になる。したがって、このことを会員に周知徹底する必要がある。また、学会には報告してもらう必要がある。これから研究の指針について改定作業をして行くことにする。
   安達 知子委員:施設の倫理委員会の構成員、内容を確認せずに倫理委員会の承認だけでよいか?
   石原 理委員:その必要はないと思う。臨床研究指針に倫理委員会について書いてある。それに則ってやってもらえればよい。但し、政府の指針なので罰則がない。個人のクリニックの倫理委員会の構成までチェックする術はない。
   平原 史樹委員:報告事項として倫理委員会は臨床研究指針に則って構成されていると宣言してもらえばよい。
   久具 宏司副委員長:これは政府が作った指針に則って行うものであり、検証するとなると政府が行うべきものであり、学会が行うものではない。
   髙橋 健太郎委員:施設内倫理委員会の承認番号を書いてもらえばよい。
   落合 和徳委員長:今後、医師主導の臨床研究に関するきちんとした見解を示して、指針に則って行うということを早急に会告として出すべきである。各施設で臨床研究倫理指針に則って行われるものに関してはわれわれとしては認める。倫理委員会の構成メンバーが不適切であるかというようなことについて、こちらが意見を挟むと言うのは非常に難しいところがあると思う。各施設が研究の申請をするときに申告していただく内容を整備することで代用できるのではないかと思う。
   安達 知子委員:こちらが責任を持つことはできないので了解した。以前、倫理委員会の構成について照会したことがあったので発言した。
   落合 和徳委員長:当時は倫理指針が詳しく公表されていなかったと思う。今後われわれは、臨床研究の倫理指針を遵守することを基盤において、それを遵守している研究について検討しているというスタンスでよいと思う。

   3 加藤レディスクリニックからの「凍結受精卵の移植に関する問合せ」について
   対応を協議した。
   平原 史樹委員:患者が離婚した夫との間の受精卵を戻すことを言ってきている。
   石原 理委員:夫の権利もあるので実施できない。
   久具 宏司副委員長:加藤レディスは体外受精・胚移植に関する見解の4にある「被実施者は婚姻していなければならない」というところを根拠にしている。また、ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する見解の4の「胚の凍結保存期間は婚姻の継続期間である」というところにも該当しない。
   落合 和徳委員長:加藤レディスは見解からみて妥当な回答をしていると思われる。実施できないということを加藤レディスに回答することにする。

   4 加藤レディスクリニックからの性転換した男性の「凍結精子の取り扱いに関する問合せ」についての対応に関して
   久具副委員長から性転換を理由に廃棄することは出来ない旨を口頭で回答した内容について説明があった。

   5 慶應義塾大学からの「着床前診断実施報告書の書式に関する検討依頼」について
   平原 史樹委員:
小委員会での検討としたい。

   6 「遺伝カウンセリング講習会」開催の提案
   平原 史樹委員:
着床前診断に関する情報提供を目的として昨年夏に開催し、好評であった。来年度の事業計画として入れたい。
   落合 和徳委員長:収支としては赤字になっていないので来年度の事業計画に入れることにする。

   7 セントマザー産婦人科医院からの「円形精子細胞に関する臨床応用」の登録申請に対する回答文書を発出したことが報告された。

   8「AIDに関する疑義照会」について回答文書を発出したことが報告された。

   9 関連報道記事が【資料11】にあり、参考資料としていただくことになった。

   10 その他
   平原 史樹委員:
慶應義塾大学からの「重篤」に関する問い合わせがあった。慶応の倫理委員長と直接お話する予定である。慶応大学で倫理委員長が交代する可能性があり、まだ交渉中である。

   最後に、今後の倫理委員会の開催予定(11月28日、2月6日、3月19日、5月21日)を確認して閉会となった。

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