公益社団法人 日本産科婦人科学会

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平成24年度第2回倫理委員会議事録

更新日時:2018年8月2日

平成24年度第2回倫理委員会議事録

日 時:平成24年11月27日(火)午後6時00分~8時15分
場 所:日本産科婦人科学会事務局「会議室」

出席者(敬称略)
   委員長:落合 和德
   副委員長:久具 宏司
   主務幹事:榊原 秀也
   委 員:石原 理、苛原 稔、大川 玲子、齊藤 英和、澤 倫太郎、髙橋 健太郎、竹下 俊行、
津田 尚武、平原 史樹、矢野 哲、山中 美智子、吉村 泰典
   陪 席:桜田 佳久事務局長、青野 秀雄事務局次長
 <欠席者:安達 知子委員、杉浦 真弓委員、岸 裕司委員、阪埜 浩司委員、峯岸 敬委員、
小西 郁生理事長>
 

   定刻になり、落合委員長が開会を宣言し、次第に則って議事が開始され、報告および協議が以下の如く行われた。

1.登録関係
(1)本会の見解に基づく諸登録<平成24年11月20日現在>
①ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する登録:45研究(38施設)
②体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録:574施設
③ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録:574施設
④顕微授精に関する登録:513施設
⑤非配偶者間人工授精に関する登録:15施設

齊藤委員から上記のART登録数の他にARTオンライン登録状況や更新申請について説明があった。本年の更新申請当該施設は25施設と昨年に比して少ないので、審査は登録・調査小委員会委員だけで行う予定。また、2010年分報告書を機関紙9月号およびホームページに掲載したことが報告された。

   落合 和德委員長:登録率はこの程度か?
   齊藤 英和委員:年度末ぎりぎりになって駆け込みで報告してくる施設がある。年度末までに報告内容の修正も含めてやり取りをしていく予定である。

(2)着床前診断に関する臨床研究申請・認可について
平原委員から下記の内容が報告された。
申請件数:299例[承認247例、非承認4例、審査対象外18例、取り下げ2例、照会中7例、審査中21例](承認247例のうち7例は条件付)

(3)着床前診断の実施報告のまとめ
   平原 史樹委員:通常の適応の申請が多かった。セントマザー産婦人科から、他院からすでに申請され承認された症例が申請されてきた。適応等に問題はないが、自施設での倫理委員会の承認が確認できなかったので照会とした。他はすべて問題がなく認可とした。意見交換についてはIVF大阪クリニックの福田先生、IVFなんばクリニックの中岡先生にお越しいただき、染色体の専門家である埼玉県立小児医療センター遺伝科の大橋先生と着床前診断に関する審査小委員会委員の黒澤先生を交えてarray CGHによるPGDについて意見交換を行った。主な問題点としてarrayCGHの検査精度のことや、全部見えてしまうのでスクリーニングとなることが指摘された。臨床研究として行うのに検査を委託するのはいかがなものか、という意見もあった。CGHはスクリーニングの手法なので、現段階ではFISHでの確認が必要であるが、今後は精度が上がっていくことも確認された。また、スクリーニングの是非について今後議論をして行くことや、PGDをいつまで臨床研究として行うのかなどについて、議論が交わされた。結論を出すには至らなかったが、有意義な意見交換であった。セントルカ産婦人科から「PGS」の申請が出されているが、手続き上の不備があり、現在やり取りしているところである。
以上の報告の後に、以下のような議論が行われた。
   落合 和德委員長:本会としてPGSをどうしていくかについて考えていかなければならない。委員の御意見を伺いたい。
   石原 理委員:外注の問題は技術の進歩が速いので、ゆっくり議論しても始まらない。当面は認めざるを得ないと思う。スクリーニングの是非についての問題点は2つ。1つは技術の正確性、もう一つは様々な疾患について分かってしまうことだが、それがいけないとは言いきれなくなると思う。そういう形で議論をしていくべきだと思う。
   落合 和德委員長:2~3年先には情勢が変わるので、悠長な議論はできない。
   竹下 俊行委員:IVF大阪クリニックで認められなかった患者さんが、大谷先生のところへ紹介されていってしまう実態がある。これは問題である。
   落合 和德委員長:今までは技術面の問題で認めてこなかったが、むしろ全例報告として水面下で行われないようにすべきである。スクリーニングとなるとカウンセリングが必要か?今後、現在母体血による出生前診断で行っているような委員会やシンポジウムなどをやることも考えている。
   久具 宏司副委員長:この問題は何年もかけることはよくないが、だからといって拙速にすべきではない。いろいろな分野からの意見を聞いてある程度時間をかけてやるべきである。
   山中 美智子委員:CGHでやると細かいところまでわかる。出生前診断との整合性が重要である。
   吉村 泰典前理事長:均衡型転座については、CGHは精度が高いので技術的にいけない理由はないと考える。スクリーニングとなる件については「見える、見えない」ではなく、「知らせるか、知らせないか」の問題である。
   久具 宏司副委員長:意見交換の際には、わかっても知らせない場合に、生まれてきた子にわかっていたはずの障害が出た場合の対応が問題となった。
   吉村 泰典前理事長:仮に21トリソミーがあったとしても知らせないということで行く。それを患者さんに理解してもらうことが重要である。CGHをやることを前提にどこかで一線を引くべきである。
   矢野 哲委員:出生前診断との整合性が重要である。他科との話し合いや正確な妊娠率、今までのデータの公表も必要である。規制を続けるのは難しい。ただし、何らかの歯止めは必要である。
   齊藤 英和委員:技術が確立してニーズがあればみんながやり始める。いろいろなやり方が考えられるが、クライエントにとって良いことばかりが分かるわけではない。いろいろな選択肢を提示してICをすることが大切である。
   苛原 稔委員:予め時間を決めて結論を出すように議論をしていただきたい。
   髙橋 健太郎委員:時代はPGSになってきている。ある程度の規制をしつつ早めに認める方向が良いと思う。カウンセリングの基準を学会で示すべきである。
   澤 倫太郎委員:見えてしまったものを知らせないことが患者の不利益になる可能性はある。吉村先生の意見は一つの解決法であると思う。
   津田 尚武委員:適応を守ることも大切である。
   落合 和德委員長:委員の御意見をまとめると、PGDに対するCGHは対象疾患を限定した形で認める方向でよいか?
   山中 美智子委員:例えば、検査会社の報告に目的以外のものは返してもらわないようにするのか?
   吉村 泰典前理事長:今のPGDの適応は厳密に運用されている。社会が我々をどう見ているかも意識する必要がある。PGSをするとなると、そこを認識していないといけない。CGHは方法として明らかに優れている。しかし、PGDとしての限定は守られなければならない。
   落合 和德委員長:目的以外のものが分かった時にどうするかまでは、この場では決められない。これを決めるまで、CGHによるPGDを保留にしていてよいか?
   吉村 泰典前理事長:IVF大阪クリニックは何故いけなかったのか?
   平原 史樹委員:遺伝カウンセリングの内容に曖昧な点があった。
   落合 和德委員長:CGHのことは、スクリーニングの問題提起となっている。CGHによるPGDとPGSは分けて考えていくことが必要である。
   吉村 泰典前理事長:久具先生の検討委員会を継続してPGSの議論をすべきである。
   落合 和德委員長:IVF大阪クリニック、IVFなんばクリニックの申請は、ICを改めて整理して行うことを条件に認めることとする。今後はCGH用の報告書も必要である。
   久具 宏司副委員長:あくまでもPGDとしてやってもらうことにする。
   落合 和德委員長:現見解の範囲内でCGHをPGDの方法としてICをしてもらって行ってもらう。
   澤 倫太郎委員:外部委託であることも、ICに入れるべきである。

2. 母体血を用いた出生前遺伝学的検査について
久具副委員長から、以下の会議およびシンポジウムの概要について、報告がなされた。
   第1回検討委員会(10月2日開催)
   第2回検討委員会(11月1日開催)
   第3回検討委員会(12月7日開催予定)
   公開シンポジウム(11月13日開催)
   久具 宏司副委員長:第1回検討委員会は、平原先生から日産婦における出生前診断について、左合先生からNIPTについての説明を受けた。第2回は、各分野から有識者を招いて意見をお聞きした。それらを元に11月13日に公開シンポジウムを開催した。362人の参加があった。事前質問をまとめ、回答も含めてパネルディスカッションを行った。第3回の検討委員会を12月7日に開催し、指針案を検討する予定である。指針案は第4章がポイントとなる。
   落合 和德委員長:メディアは冷静な取扱いであった。今後は12月7日の検討委員会後に15日の理事会に上程する予定である。日程的に倫理委員会で検討できないので、倫理委員の先生方には、12月7日の検討委員会後までにご意見をいただきたい。理事会後に修正して、パブリックコメントをもらっていく予定である。

3. 『ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する見解/考え方』改定案について
11月2日開催の常務理事会における指摘を受けて修正した案について、石原委員が説明し、その後、以下のような討議が行われた。
   石原 理委員:会員が関わるものであることと、取扱いの条件について、より明確にした。
   落合 和德委員長:常務理事会では卵子等を提供するだけの立場の問題が指摘されたが、そこはどうなるのか?
   石原 理委員:採取するだけでも見解の対象になると考えている。
   久具 宏司副委員長:採取するだけでもクリニックの倫理委員会を通す必要があるか?
   石原 理委員:研究の主たる施設の倫理委員会でよい。
   落合 和德委員長:他科の研究者が主たる場合は適用されるのか?採取者に登録を求めるのは無理があるのではないか?
   石原 理委員:細則に細かく規定することで対処したい。
   落合 和德委員長:提供するだけの場合も日産婦に報告するべきなのか?
   苛原 稔委員:登録はするべきであるが、報告するべきなのか?提供者は登録だけで報告は要らないのではないか?
   髙橋 健太郎委員:主たる研究者からの報告でよいのではないか?
   石原 理委員:細則により、ご指摘の点を明示することとする。

4. 「出生前に行われる検査および診断に関する見解」改定案について
   平原 史樹委員:改定案を見ていただいて御意見をいただきたい。今度の理事会に提出する予定である。5)が新たに加えられた部分で、NIPTの次に出てくるものも見据えて書いてある。
   落合 和德委員長:委員の先生方には、12月3日までに意見を送っていただきたい。理事会で意見をもらった後にもう一度修正し、1月の常務理事会を経てパブリックコメントを求める。最終的には5月か6月の総会で承認をもらう予定である。

5. 大谷医師、根津医師が本会に無申請で着床前診断を行ったことについて
1)9月13日の大谷医師との面談記録
   落合 和德委員長:こちらの面談記録を先方に修正してもらった。大谷先生は無申請でCGHを用いて行ったことを認めている。

2)大谷産婦人科からのART実施登録施設申請について
   久具 宏司副委員長:見解を守らない医師の申請をそのまま認めてよいのか、という問題である。
   齊藤 英和委員:去年登録を抹消したが、今回新規申請をしてきている。
   矢野 哲委員:見解等を守ると誓約しない限りは認可しないことになるのではないか?
   落合 和德委員長:何らかの処分が必要である。見解の解釈が違っていたというのは言い訳に過ぎないとも取れる。ただし、倫理委員会は処分の内容を決めるところではないと思う。
   苛原 稔委員:生殖医療に関わる先生たちは大谷先生に対する学会の対応を見ている。何らかの処罰がないと、学会への信頼を失うことになるのではないか。
   矢野 哲委員:処分の内容は理事会が決める。
   落合 和德委員長:ART実施登録施設の認可に関しては、現会告を守ってもらうように誓約してもらうことが必要である。
   苛原 稔委員:学会員である限りは会告を守ることが当然である。
   髙橋 健太郎委員:見解違反に対する処分が確定しないと、施設申請に対する答えは出せないのではないか?
   齊藤 英和委員:施設申請に対する回答は、保留すると連絡することにする。
   落合 和德委員長:理事会での議論の後に、改めて面談する必要があると考える。

3)9月28日根津医師との面談記録
   落合 和德委員長:根津先生は、新しい技術に対して学会が前向きに取り組む必要を訴えていた。彼らには、むしろ臨床研究として申請してもらうことが必要であると思う。
   矢野 哲委員:一部の施設に臨床研究を認めてデータを取るということになるので、懲戒にしない方がよいか?
   落合 和德委員長:今までやったことに関しては処分が必要である。今後は前向きに臨床研究としてやっていただくのも一案。まとめると、大谷先生は懲戒が必要、施設の認可は保留とする。根津先生も懲戒が必要、今後は臨床研究として行っていただくことを提案することも考えて行く。
   大川 玲子委員:結局は遵守しないのではないか?
   落合 和德委員長:申請しても却下するのではなく、研究として取り上げる姿勢も必要である。
   苛原 稔委員:外国で一般的に行われていることは臨床研究として扱ってよいが、外国でも行われていないような倫理的に問題のあることは、分けて考える必要がある。
   齊藤 英和委員:臨床研究としてやるのは良い方向である。ICや倫理委員会について指導できる形が必要である。
   石原 理委員:組織化したアプローチが必要である。国際標準を意識したプロトコールが大切である。
   山中 美智子委員:禁止すると水面下に潜るところが出る可能性がある。
   久具 宏司副委員長:例えば、NIPTは見解にないので臨床研究として成り立つ。しかし、現見解で認めていないものについては臨床研究にはできない。
   落合 和德委員長:見解の見直しもしていかなければならない。結論として懲戒はすることとする。

20時15分に議論を終了し、落合委員長宣言で閉会となった。

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