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平成26年度第1回倫理委員会議事録

更新日時:2018年8月2日

平成26年度第1回倫理委員会議事録

日 時:平成26年4月2日(水)午後6時00分~8時10分
場 所:日本産科婦人科学会事務局「会議室」

出席者(敬称略)
   委員長:苛原  稔
   副委員長:久具 宏司
   主務幹事:桑原  章
   委 員:安達 知子、石原  理、久保田 俊郎、齊藤 英和、榊原 秀也、澤 倫太郎、
杉浦 真弓、関沢 明彦、髙橋 健太郎、竹下 俊行、平原 史樹、矢幡 秀昭、山中 美智子
   陪 席:吉村 泰典前理事長
欠 席:加藤 聖子委員、阪埜 浩司委員、小西 郁生理事長
 

 定刻に苛原委員長が開会を宣言し、平成25年度第5回倫理委員会議事録【資料1】を確認した後、報告・協議事項に移った。

1. 登録関係
(1)本会の見解に基づく諸登録<平成26年3月25日現在>【資料2】
 齊藤委員より、登録・調査小委員会の諸登録について報告があった。
 2012年のART登録件数は約32万6千件、2013年は40万件程度と予測されることが報告された。
(2)着床前診断に関する臨床研究申請・認可に関して【資料3】
 平原委員より、着床前診断に関する審査小委員会の結果が報告された。特にIVF大阪クリニックから申請されている2症例について、本委員会での議論が必要であることが説明された。国外で外注検査した結果によりPGDを行う計画であること、遺伝医療に精通した専門医師がいないことに懸念があると説明された。従来は、重篤な遺伝病に対するPGSを行う場合は施設内に専門医師(たとえば遺伝専門医など)がいるが、今回は遺伝専門医がいないことが問題となると説明された。
   杉浦 真弓委員:外注でPGDを行うことは臨床研究とは言えないのでは?
   石原  理委員:外注自体は問題無いと考える。データを解析し、カウンセリングする専門的知識があるかどうかの問題である。当該施設でこれまで行われているPGDは、習慣流産に関する染色体構造異常の検討である。今回は重篤な遺伝疾患なので、より専門性が求められている。
   苛原  稔委員長:施設が満たすべき要件に関して、今後はより慎重な取り組みが求められているので、一度、問合せをする必要がある。
 次回、委員会までに当該施設へ照会し、慎重に検討することとなった。
(3)着床前診断審査後の調査、データ解析について【資料4】
 平原委員より、PGDデータの公開に関して、年次報告の現状と名古屋市大から申請があったことが説明され、小委員会では承認されたことが説明され、了承された。

2.「生殖補助医療の法制化について」
 吉村 泰典前理事長より、昨日行われた、日本医師会などとの会議に関して説明があった。
   吉村 泰典前理事長:現在、本日配付資料のようにA案、B案、C案が検討されている。A,Cは第三者が関与するARTに限定するもの、B案は全てのARTを対象とするものである。小西理事長、苛原倫理委員長も出席し、これまで本会が行ってきた取り組みにおいて、夫婦間におけるARTが問題となったことはない、既に夫婦間でのARTは通常の医療と考えて良いと申し上げた。これまで問題となったのは、第三者が関与する生殖医療に関する事柄であるが、一般社会や国会のPT、医師会では、第三者が関与するARTと通常の夫婦間で行われているARTとの区別が無いまま、現在のARTでは様々な問題が発生していると勘違いされている印象がある。政府の内部でも、B案を推奨する意見が多く、生殖医療全体を管理していくべきとの流れがあるので、本会から積極的に該当者へ向けて、これまでの本会の見解、施設の登録と5年ごとの見直しなどの取り組み、実績を説明し、問題が発生しているのは夫婦間のARTではなく、第三者が関与するものに限られていることを強調しておく必要がある。全てのARTに法律の規制が関与することは、今後のARTの発展を阻害する恐れがある。さらに、本会が行っているART登録、管理に関する専門的な、膨大な作業を他の集団が適切に行える保証はない。とくに医師会、医会がこの業務を行うことは不可能である。一方、本会では、既存の見解などに反した(これまでの第三者が関与する問題が発生した)場合には、本会のみでは罰則規定は設けられないことが問題であることを、委員長から自民党PTへ手紙を書いておくことが必要と考える。6月に法案が通ると、1年間でガイドラインを作ることとなるので、公的管理機関の必要性などを考えておく必要もある。
   杉浦 真弓委員:着床前診断も含まれるのか?ARTの適応や、費用に関する不透明感が、規制の理由になっているのでは?
   吉村 泰典前理事長:着床前診断は該当しないと考えている。
 来週中に苛原委員長が手紙を下書きし、委員に回覧した上で、自民党PT宛てに送付することとした。来週中に苛原委員長が手紙を下書きし、委員に回覧した上で、自民党PT宛てに送付することとした。

3.委員会提案「医学的適応による未受精卵子および卵巣組織の採取・凍結・保存に関する見解」について【資料5】
   苛原  稔委員長:本件は、4月の総会検討事項として準備されている。会員からは、卵巣凍結に関する順天堂大の菊地先生からの意見、さらに、本日欠席の阪埜委員より、卵子採取、凍結時にもIVFの会告に縛られることになるのか、との質問が寄せられている。
   久具 宏司副委員長:菊地先生のご質問は、ART施設以外での卵巣採取、凍結が不可能となることを懸念しているのか?
   桑原  章委員:現在、卵巣凍結を行っている施設は、ART登録施設なので懸念は無い。技術的に異なるとの意見と思われる。
   苛原  稔委員長:卵巣凍結に関しては、見解公表の後、検討することとしたい。本見解に基づいて採卵、凍結を行う時点では、IVFの見解に縛られない。受精操作、胚移植を行う時には、IVFの見解に縛られると認識している。

4.各種見解における「婚姻」に関する記載とその変更について【資料6】
   苛原  稔委員長:現在、学会誌4月号ならびにHPに掲載し、5月9日を期限に会員からのご意見を募集中であるので、次回の本委員会でご議論いただきたい。

5.「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」についての回答
   苛原  稔委員長:昨年11月に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が成立し、1年以内に施行される予定である。産科婦人科で特に検討が必要と指摘されている、卵巣体外活性化に関し、実施している聖マリアンナ医科大学担当者と一緒に3月7日に当局で説明を行い、現在回答待ちの状況である。返事が届き次第、本会の意見をまとめて当局へ回答する予定である。
   桑原  章委員:産婦人科関連で以前指摘があった、AIH(精子の体外操作)や、リンパ球を用いた免疫療法などは如何か?
   石原  理委員:当局と確認し、AIH関連技術は該当しないこととなっている。リンパ球は、輸血に準じて解釈すれば該当しないのでは?

6.「ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針」の遵守に関する厚生労働省通達に関して【資料7】
 詳細を把握されている石原委員から説明があった。
   石原  理委員:埼玉県内の医療機関が「ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針」に抵触する研究を行なったため、文部科学省から公表されるとともに、関連学会、全国の医療機関等に通達され、報道されている。本研究は施設内倫理委員会で承認され、論文にもなっていることから、政府・省庁のガイドラインの存在が認識されていなかったことが問題で、各倫理委員会委員の教育が重要である。
   苛原  稔委員長:先ほど、当局担当者から本会にも個別説明があった。「ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する見解」には、政府、省令の各種ガイドラインに該当する研究を行う場合は政府、省令の各種ガイドラインを遵守した上で、さらに本会の倫理委員会にも登録する必要がある、となっている。本案件は、省令ガイドラインに抵触するだけでなく、本会への登録を行っていない点も問題となる。まず、本会員である該当者に対し、調査したい。本会としての対応、対策は、その後検討する。理事会に報告した上で、処分を検討することになる。苛原委員長、久具副委員長と石原委員に参加していただく予定である。さらに、改めて本会会員に向け、見解・各種ガイドラインの遵守に関する注意を学会雑誌に掲載する予定である。
   安達 知子委員:倫理事項に関して、注意喚起する方法を工夫する必要がある。
   久保田 俊郎委員:一般会員が理解できるように、具体的にどのような問題が発生したかを説明し、どのような見解、ガイドラインがあるか、そして、施設内倫理委員会を通過した後で日産婦倫理委員会に登録する必要があることを具体的に示した案内を出す方が判りやすい。
   苛原  稔委員長:施設内の倫理委員会の品質管理に関しても、今後検討が必要となる。
   澤 倫太郎委員:学会として対応をしっかり行わないと、学会のガバナンスが問われることとなる。匿名で理事会に報告する訳にはいかない。

7.「第1回PGSに関する小委員会」に関して【資料8】
   竹下 俊行委員:「第1回PGSに関する小委員会」を3月12日に、「報道を対象としたブリーフィング」を3月14日に開催した。今後1年程度をかけて技術的、倫理的問題を並行して議論していく予定としている。国内外でPGSの有効性に関するエビデンスが無いのが現状であり、現行の見解(PGS禁止)は改訂せずに、限定的に臨床研究を行うことを検討している。

8.「第2回着床前診断ワーキンググループ」に関して【資料9】
   竹下 俊行委員:生化学的妊娠の一部を臨床妊娠に準じて着床前診断の適応とすることに関する、「第2回着床前診断ワーキンググループ」を2月27日に開催した。習慣流産に対するPGDの適応となる2回以上の流産として、以下の条件を満たす生化学的妊娠を臨床妊娠に準じて含めることが議論された。ART妊娠で、hCGを投与していない場合で妊娠4週で血中hCGが80mIU/mlを超えるもの、hCGを投与している場合は、妊娠4週以後の複数回の測定で少なくとも血中hCGが80mIU/mlを超え、かつ、増加が見られるものを対象とすることが適当であるとされた。委員の意見集約のため、もう一度会議を開催(通信でもよい)し、最終結論を報告したいと考えている。
   久具 宏司副委員長:これが結論となると、逆に、今後の流産例については、GS像やhCG値などを明示することを求める必要がある。

9. 倫理委員会主催「『生殖医療に関する遺伝カウンセリング受入れ可能な臨床遺伝専門医』認定講習会」について、平原委員から説明があった。【資料10】

 以上で本日の審議を終了し、次回は5月21日に開催することが確認された。さらに、次年度の開催予定として9/3、11/25、2/10、3/24、5/13に開催を予定していることが案内され、20:10に閉会となった。

 

【資 料:】
1. 平成25年度「第5回倫理委員会」議事録(案)
2.「登録・調査小委員会」報告
3.「着床前診断に関する審査小委員会」報告(答申書、議事録)、IVF大阪クリニックからの申請取り下げ書
4. 着床前診断審査後の調査、データ解析について名古屋市立大学からの申請書類
5. 委員会提案「医学的適応による未受精卵子および卵巣組織の採取・凍結・保存に関する見解」(案)
6-1. 委員会提案:各種見解における「婚姻」に関する記載とその変更について
6-2. 久具副委員長からの事実婚・内縁に関する参考資料
7.「ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針」の遵守に関する厚生労働省通達
8.「第1回PGSに関する小委員会」議事録(案)
9.「第2回着床前診断ワーキンググループ」議事録(案)
10. 受講申し込み者宛の事前送付案内
11. 報道記事など

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