公益社団法人 日本産科婦人科学会

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平成26年度第4回倫理委員会議事録

更新日時:2018年8月2日

平成26年度第4回倫理委員会議事録

日 時:平成26年11月25日(火)午後6時30分~8時15分
場 所:日本産科婦人科学会事務局「会議室」

出席者(敬称略)
   委員長:苛原  稔
   副委員長:久具 宏司
   主務幹事:桑原  章
   委 員:安達 知子、石原  理、久保田 俊郎、齊藤 英和、榊原 秀也、佐藤 美紀子、
澤 倫太郎、関沢 明彦、髙橋 健太郎、竹下 俊行、平原 史樹、矢幡 秀昭、山中 美智子
欠 席:加藤 聖子委員、杉浦 真弓委員、阪埜 浩司委員、小西 郁生理事長
 

 定刻に苛原委員長が開会を宣言し、平成26年度第3回倫理委員会議事録【資料1】を確認した後、報告・協議事項に移った。(尚、NHKの取材スタッフによる会議冒頭の録音・録画、読売新聞社による写真撮影が行われた)

1.登録関係
(1)本会の見解に基づく諸登録(平成26年10月31日現在)【資料2-1】
 齊藤委員より、登録・調査小委員会の諸登録について報告があった。2013年のART登録件数は35万件を超え、最終的に36万件以上(昨年は32.6万件)と予想される事が報告された。

(2)日本生殖医学会からのARTデータ提供依頼について【資料2-2】
   齊藤 英和委員:日本生殖医学会の機関誌であるRMB編集委員会より、日産婦ART集計データをRMBに掲載してほしいとの依頼があり、登録・調査小委員会では異論が無かったので、倫理委員会で検討していただきたい。
   久保田 俊郎委員:情報管理委員会でも検討するべき議題である。
   苛原  稔委員長:日産婦英文誌のJOGR編集委員会からは、日産婦誌掲載の様々な邦文報告をJOGRに英文掲載してほしいとの意見が出ている。JOGR,RMB双方で同時掲載となるよう検討していただきたい。JOGRは要約のみ、RMBは日産婦データであることを明記した上で詳細なデータを掲載することを検討したい。
本案は情報管理委員会でも検討し、次回理事会に報告することとなった。

 

(3)会員からの臨床研究申請について
   苛原  稔委員長:ローズクリニックより、休眠卵子活性化に関する倫理審査について本委員会へ問合せが来ているので、同様の研究を行っている聖マリアンナ医科大学に対する回答と同様の回答を行いたい【資料2-3】。すなわち、本学会倫理委員会は各施設における臨床研究の諾否を決定する立場に無く、各省庁が示す関連の指針などに沿い、各施設において倫理審査を行った上で、実施していただきたいと考えている。
   石原  理委員:再生医療に関する法律の施行や、臨床研究、疫学研究に関する臨床指針の改定があるので、年度内にこれらを会員へ案内する必要がある。
   苛原  稔委員長:最終原稿は次回倫理委員会で確認するが、それまでに日産婦誌原稿の準備を進め、4月までに会員へ周知徹底を促したい。

(4)着床前診断に関する臨床研究申請・認可について
 平原委員より、着床前診断に関する審査小委員会の結果が報告された【資料3-1】。IVF大阪クリニックから申請の取り下げがあったことが平原委員から説明され、了承された【資料3-2】。加えて、特に施設審査に関して検討が必要な案件があり、以下の説明があった。

   平原 史樹委員:資料3-1下線部のように、PGDにおけるアレイCGHなどの遺伝子検査外注と、その検査結果の解釈、患者説明に関して問題と考えられる案件が増えている。そこで「着床前診断申請施設における外部委託検査にともなう問題点」【資料3−1、2ページ目】と「着床前診断に関する審査小委員会課題提案」【資料3-3】に問題点と提案をまとめた。特に外注検査施設の品質管理、およびPGD実施施設の品質管理、特にPGD実施施設において生データを理解できる遺伝検査の専門家が関与する必要性を強調したい。この技術が持つ限界を認識してPGDを行うことが重要である。この改善策を、既にアレイCGHによるPGDを許可した施設(慶応大、IVF大阪、IVFなんば、札幌医大)と、新たに申請が出ている3施設(特に遺伝疾患に対するPGDにおいて、遺伝検査の外注を計画しているセントマザー産婦人科)に示し、対応を求めたい。
   山中 美智子委員:PGDで診断しようとしている部分の結果のみがPGD実施施設に帰ってくるのであれば、アレイCGHのデータ品質管理は不可能に近い。かといって、全てのデータを見て品質管理をすると、偶発的な所見を知ってしまうこととなり、患者にどう説明するかジレンマに陥ってしまう。
   平原 史樹委員:実際は、PGD実施施設に全データが帰っていることが多い。FISHと同じ部分のみを見ることを前提にPGDを実施しているが、一部の施設では、PGSとの区別が曖昧な状態でPGDを実施している懸念がある。現在、PGSに関する議論が進んでいる時期なので、より慎重な取り組みが求められている。
   石原  理委員:専門の外注検査施設で検査を大規模に実施する方が、品質の良いことは疑いようが無く、外注すること自体は悪いことではないが、外注施設の品質保証と、PGD実施施設においてデータを解釈し、クライアントへ説明する品質管理が必要と考えられる。
   平原 史樹委員:一部の外注検査施設、特に一部の国の品質には問題が指摘されている。外注施設の品質を本学会が判断する状況にはないので、各PGD実施施設が遺伝検査に精通した専門家と連携して、実施施設の責任でPGDを実施することが求められる。データの品質を解析出来る専門家がART実施責任者に進言することが必要であり、遺伝解析の専門家とPGD実施施設の間での公式な契約(雇用)を結んでいただく必要性を考えている。
   石原  理委員:遺伝解析の専門家とは、どのような人を、どのように認めるのか?
   平原 史樹委員:PGD審査小委員会で症例毎に対象症例と実施施設の両方を審査している。
   久具 宏司副委員長:PGD開始当初より、各実施施設の遺伝検査成績も含め審査してきた。従って、外注する場合では、外注施設の精度も含め審査する必要性がある。PGDは再検査不可能な検査であり、慎重な対応が必要である。
   澤 倫太郎委員:外注は時代の流れであるが、得られたデータを各PGD実施施設が責任を持って解析して、患者に説明する責任があることを示すことが大切である。
   苛原  稔委員長:PGD実施施設の要件に、外注する場合の品質管理と責任の所在がPGD実施施設にあることを付け加えることが必要と思われる。本案件はPGSにも影響を与える重要な事案なので、慎重に最終案をまとめて、各委員にも確認を取った上で、理事会で協議できるように進めていただきたい。

 

2. 着床前診断に関する情報公開について【資料4】
 平原委員より、PGDに関する情報公開として資料4の様式で集計し、日産婦誌およびホームページに掲載する予定であることが説明された。妊娠転帰に関しても公開準備を進めていることが説明された。

3.「習慣流産個別症例申請書」の提案について【資料5】
 着床前診断WGの竹下委員より、習慣流産に対するPGD症例審査申請書に添付するデータチェックリスト案が資料5のように説明され、PGD細則にこの案を加えて、申請様式を統一することが提案された。特に異論無く了承された。

4. 日本受精着床学会における田中温医師の発表に関する対応【資料6】と、会員へのお知らせ(再通知)【資料7】について
 苛原委員長より、資料の通り該当施設に指導を行うとともに、会員へ再通知を行ったことが報告された。

5. 次年度の「生殖医療に関する遺伝カウンセリング受入れ可能な臨床遺伝専門医」認定講習会の開催と「日本産科婦人科遺伝診療学会」の立ち上げについて【資料8】
 平原委員より、資料8のように「日本産科婦人科学会遺伝診療学会」の立ち上げ準備が進んでいることが報告された。それに関連し、これまで隔年で実施していた「生殖医療に関する遺伝カウンセリング受入れ可能な臨床遺伝専門医」認定講習会を来年度に実施することが提案され、了承された。

6.「生殖医療に関する遺伝カウンセリング受入れ可能な臨床遺伝専門医」について【資料9】
 平原委員より、「生殖医療に関する遺伝専門医認定小委員会」で「生殖医療に関する遺伝カウンセリング受入れ可能な臨床遺伝専門医」の審査が行なわれ、新たに45名が認定されたことが報告された。

7. 第4回および第5回PGSに関する小委員会、報道機関対象PGSに関するブリーフィングついて
 竹下委員より、「第4回PGSに関する小委員会(9月8日開催)」、「第5回PGSに関する小委員会(11月10日開催)」、報道機関対象のPGSに関するブリーフィング(11月16日開催)の概要が報告された【資料10-3、10-4、10-5】。その上で、計5回のPGSに関する小委員会の議論の成果としてまとめられた「PGSに関する小委員会答申」【資料10-1】の詳細が解説された。
   久具 宏司副委員長:オートノミーという言葉は曖昧なので、「自主規制」としてはどうか。
   平原 史樹委員:10例とは実施数、許可数どちらか?国内の解析施設の追加参加は可能か?染色体構造異常のある習慣流産例はどう扱われるのか?
   竹下 俊行委員:経験数は許可数と考えているが、さらに検討の余地がある。解析施設は追加可能と考えている。今回の臨床研究は、あくまでも夫婦に染色体構造異常が無い症例のみを対象としたい。染色体構造異常のある習慣流産例は、これまで同様PGDとして扱うこととなるので、アレイCGH等で偶発的に見える染色体数的異常は見ないこととしていただきたい。
   苛原  稔委員長:ジレンマがあるが、見解を変更せずに行う特別な臨床研究であり、透明性と科学的研究の観点から、適応症例の選択は厳密に行わないと大変なことになる。実施施設相互の意識を統一して行っていただきたい。PGSの結果に関しても、1胚毎の解釈結果を検証し、透明性を確保していただきたい。
   久保田 俊郎委員:カウンセリングを行うのは、臨床遺伝専門医と認定遺伝カウンセラーとなっているが、日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会の認める資格のことか?
   苛原  稔委員長:そのとおりである。臨床遺伝専門医がカウンセリングを行うことを想定しており、施設内に臨床遺伝専門医が居ない場合は、生殖医療専門医の責任のもとで認定遺伝カウンセラーが実施してもよいと考えている。
   平原 史樹委員:NIPTでは認定遺伝カウンセラーまたは日本看護協会が認める遺伝看護専門職としているが?
   山中 美智子委員:看護協会の遺伝看護専門職はまだ、認定された人がいないので、現段階では含める必要はないと考える。
   苛原  稔委員長:本日この案が了承されれば、12月の理事会に現状を報告する予定である。関連団体へも案内し、公開シンポジウムを行って意見を集めたい。実施案は最終的には、2月理事会で審議された後、委員会報告として日産婦誌に掲載、公開されるよう準備を進めていただきたい。また、本案とは別に、実際の施設において倫理申請する場合の必要な実施要項を別途定めることも明記していただきたい。理事会で実施の了承が得られれば、見解を変更すること無く、次年度から3年の期間限定でこの臨床研究を実施する計画である。
倫理に関する議論は非常に重要であり、今回の臨床研究と平行して議論を続けながら、臨床研究の結果が得られた後には、さらに倫理的な国民的議論を深める機会を十二分に持つことを計画したい。従って、この臨床研究をもって、臨床応用が始まることにはならないと認識している。
以上の議論を経て、原案を修正し、次回理事会に報告することとなった。

8.「PGSに関するシンポジウム」の開催について
 苛原委員長より、来年2月7日土曜に「PGSに関するシンポジウム」を開催する予定であることが報告された。

9.「体外受精・胚移植/ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する見解」における「婚姻」の削除についての会告案に寄せられた会員からのご意見に対する返礼について【資料11】
 苛原委員長より、資料11のとおり返礼を行ったことが報告された。

以上で本日の審議を終了し、次回は平成26年度第5回倫理委員会を平成27年2日10日(火)に開催することが案内され、20:15に閉会となった。

【資 料:】
1.  平成26年度「第3回倫理委員会」議事録(案)
2-1. 「登録・調査小委員会」報告
 -2. 日本生殖医学会からの依頼状
 -3. 石塚先生からの研究申請に対する回答文章
3-1. 「着床前診断に関する審査小委員会」報告(答申書、提案、議事録)
 -2. IVF大阪クリニックからの着床前診断に関する申請取り下げ(2件)
 -3. 着床前診断に関する審査小委員会課題提案
4.  PGD情報公開(案)
5.  PGD習慣流産個別症例申請書(案)
6.  田中医師宛て「厳重注意」通知文書
7.  会員へのお知らせ(再通知)学会雑誌10月号掲載文面
8.  「日本産科婦人科遺伝診療学会」起案書
9.  「生殖医療に関する遺伝カウンセリング受入れ可能な臨床遺伝専門医」学会ホームページ掲載画面
10-1. PGSに関する小委員会答申(案)
 -2. 山本 俊至先生からのプロトコルご提案
 -3.「第4回PGSに関する小委員会」議事録
 -4.「第5回PGSに関する小委員会」議事録(案)
 -5.「報道機関対象PGSに関するブリーフィング」配布資料
11. 「体外受精・胚移植/ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する見解」における「婚姻」の削除についての会告案に寄せられた会員からのご意見に対する返礼

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