公益社団法人 日本産科婦人科学会

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平成26年度第5回倫理委員会議事録

更新日時:2018年8月2日

平成26年度第5回倫理委員会議事録

日 時:平成27年2月10日(火)午後6時00分~8時15分
場 所:日本産科婦人科学会事務局「会議室」

出席者(敬称略)
   委員長:苛原  稔
   副委員長:久具 宏司
   主務幹事:桑原  章
   委 員:安達 知子、石原  理、久保田 俊郎、齊藤 英和、榊原 秀也、佐藤 美紀子、
澤 倫太郎、関沢 明彦、髙橋 健太郎、竹下 俊行、平原 史樹、矢幡 秀昭、山中 美智子
陪 席:菅沼 信彦(京都大学大学院医学研究科人間健康科学)
欠 席:加藤 聖子委員、杉浦 真弓委員、阪埜 浩司委員、小西 郁生理事長
 

 定刻に苛原委員長が開会を宣言し、平成26年度第4回倫理委員会議事録【資料1】を確認した後、報告・協議事項に移った。(尚、NHK、TBSの取材スタッフによる会議冒頭の録音・録画が行われた)

1. 登録関係
(1)本会の見解に基づく諸登録(平成27年1月31日現在)【資料2】
 齊藤委員より、登録・調査小委員会の諸登録について報告があった。2013年のART登録件数は37万件程度と予想されること(2012年は32.6万件)が報告された。

(2)着床前診断に関する臨床研究申請・認可について【資料3-1】
 平原委員より、着床前診断に関する審査小委員会の結果が報告された。

(3)「着床前診断」に関する見解、実施に関する細則の改定について
   平原 史樹委員:従来、PGDは院内で遺伝子解析を行うことを前提に実施許可されていたが、最近になってアレイ解析のみならず単一遺伝子疾患の解析も外部委託するPGD実施計画が一部の施設から提出され、その計画書を見る限り、責任の所在、品質管理、遺伝医療に対する配慮に関する懸念が指摘されている。そこで今回、PGDに関する見解および細則を【資料3-2】のように変更し、一定の基準、対応を明記したい。
   髙橋 健太郎委員:解析データを見て、カウンセリングを行える遺伝子解析の専門家とは具体的にだれのことか?
   山中 美智子委員:サンプルを院外へ移送する際の安全管理などの規定も含めてはどうか?
   苛原  稔委員長:見解の変更を伴う案件なので総会事項となる。委員からの意見は通信を含め十分検討し、成案を次回理事会(2月末)に提出したい。その後パブリックコメントを求めて理事会、総会で協議したい。

 

(4)着床前診断に関する情報公開について
   平原 史樹委員:見解が認められて以来の全PGD申請、実施許可、非承認例の詳細を【資料3-3】に示す。遺伝性疾患は大項目別に、染色体均衡転座を伴う習慣流産は一つにまとめて公表する準備を進めている。7月までにデータをまとめて日産婦誌、HPに公開する予定である。転帰に関しては、各々別の研究グループにより、遺伝性疾患ならびに習慣流産に関する検討が行われている。日産婦は、各施設で行われるPGDに関する研究申請を審査している。つまり、PGDの転帰は各PGD実施施設で臨床研究として公表するべきであり、学会が中心となって個々の研究結果を公開する義務はないと考える。学会としてはPGD申請、実施許可、非承認に関するデータ公開を行っていきたい。

2. 「子宮移植の臨床研究に際しての指針」について
 子宮移植プロジェクトチーム代表の菅沼医師より、【資料4】を元に、これまでの背景、経緯、今後の方針が説明された。

   久保田 俊郎委員:代理懐胎の問題、リスクと対比しながら、詳細に検討する必要がある。
   澤 倫太郎委員:生命維持に必須ではない臓器を移植すること、免疫抑制剤投与による児へのリスクなど、これまでの移植医療とは異なる検討が必要となる。
   山中 美智子委員:胎児に対する免疫抑制剤投与によるリスクとは別に、胎児発育や流早産のリスクは明らかになっているのか?
   菅沼 信彦先生:これまでの症例数は非常に限られており、スウェーデンの例では早産例もあれば、満期産となった症例も報告されている。
   石原  理委員:これまで子宮移植が行われているスウェーデン、トルコ、サウジアラビアは代理懐胎が禁止されている。特に後の2国はイスラム教国であり、代理懐胎は絶対的に禁止されている。一方、スウェーデンでは子宮移植が報告されたことを受けて現在、代理懐胎を可能にする法改正が検討されている。日本でも代理懐胎に関する法案などが今後、検討される予定であり、これらの事情を勘案しながら子宮移植に関する考え方を議論していく必要がある。費用の点ではドナー、レシピエントを含めて、自費医療として非常に高額な費用負担が発生する。スウェーデンでは篤志家による寄付があり10例実施できたが、予算がないため次の実施は見通しが立たないと聞いている。
   菅沼 信彦先生:国によって宗教、社会制度、法律などの状況が異なるので、日本におけるあり方を、代理懐胎と子宮移植の選択肢双方を含めて検討して頂ければ幸いである。
   髙橋 健太郎委員:移植医療として移植学会などの受け止め方、考え方はどうなっているのか?
   菅沼 信彦先生:同じような依頼を日本臓器移植学会にも投げかけている。
   石原  理委員:子宮は生検が簡単にできるため、移植後の拒絶反応を含めた管理が比較的容易であることが移植医療としては特徴的で、学術的にも検討すべき課題として受け止められている。
   苛原  稔委員長:具体的な実施例が今日明日に発生するという状況ではなく、将来、子宮移植が具体的に検討されるようになった場合に備えて、現時点での本会の基本的立場を明らかにしておく必要がある。倫理委員会で本件に関するWGを組織し、検討したい。

 

3. 「生殖補助医療実施医療機関の登録と報告に関する見解」の一部表記に関する修正について
 苛原委員長より、現在の見解集の誤字、文字の乱れなどを校正し【資料5】、次回理事会に提出して総会確認事項としたいことが説明された。

4. 非配偶者間人工授精に関する問題点に関して【資料6】
   久具 宏司副委員長:一般の方から寄せられた、事実婚夫婦のAIH実施に関する学会の見解に関する質問に回答を練っていたところ、従来、学会で用いている「非配偶者間人工授精」という用語の問題点に気がついた。学会は夫婦間の人工授精に関する見解はないと回答したいのだが、婚姻していない夫婦は「まさに」非配偶者であり、「非配偶者間」で人工授精を行うこととなる。一方、学会の「非配偶者間人工授精に関する見解」はAID、つまり婚姻している夫婦間で提供精子を用いた人工授精が行われることを意味している。従って「非配偶者間人工授精」という用語を変更し、表題を「提供精子を用いた人工授精に関する見解」と改めることを提案したい。見解の内容の変更は無い。同時に用語委員会においても、関連した検討をお願いしたい。
   石原  理委員:AIDという英語表記も再検討するべきである。donor insemination(DI)と言うことが多い。
   桑原  章委員:そうなると、夫婦間の人工授精(AIH)もIUIに置き換えるなど検討の余地がでてくる。
   苛原  稔委員長:そこは用語委員会で検討していただくとして、今回は表題変更を提案したい。
委員から他に異論なく、理事会で協議、対応を検討することとなった。

5. 「胚および卵子の凍結保存」に関する質問について【資料7】
 苛原委員長より、生殖年齢の定義に関して加藤レディスクリニックから質問があったことが説明された。明らかな定義はないので、明らかに不適切な場合にはコメントを出すとしても、今回のような妥当な判断であれば個別のコメントは不要と考え、各施設で判断し、各施設が運用することで良いとの説明があった。

6. NIPTにおいて、特定の妊婦に対し性染色体(性別を含む)や染色体微小欠失の検査実施を行うことに関する要望について
 関沢委員より、NIPTの現状に関する説明があり【資料8-2、8-3】、新たな対象に対するNIPTの実施に関する要望書【資料8-1】が説明された。

   山中 美智子委員:対象とされている微細欠失に対する羊水検査は実施されているか?低頻度で再発リスクも低いと考えられる対象にNIPTを行った場合の精度、陽性的中率の検討はされているか?
   関沢 明彦委員:微細欠失などの羊水検査は、わずかしかない。頻度、再発率が低いためNIPTの陽性的中率は、これまでの疾患、対象に比べると低くなる。それでも羊水検査の実施を希望する患者がおり、NIPTで検査できれば羊水検査を回避することができる。
   平原 史樹委員:既存の様々な出生前検査を含め、全て登録制にするべきとの議論もある。そういった検討とも合わせて慎重に対応する必要があり、現在の見解を変更することは、現時点では極めて難しいと考えている。
   苛原  稔委員長:今回の要望書以外にも実施施設の拡大を求める声などがある一方、慎重な意見も多い。今回の提案を理事会で報告し、検討するかどうか、検討する場合の手続きなどを検討したい。

 

7. 会員へのお知らせ:「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」等の遵守について
 苛原委員長より、【資料9】の注意を促したことが説明された。

8. 「生殖医療に関する遺伝専門医認定小委員会」報告【資料10】
 平原委員より、『生殖医療に関する遺伝カウンセリング受入れ可能な臨床遺伝専門医』の登録申請に基づき審査が行われ、新たに3名が認定されたことが説明された。(1月22日現在209名)

9. 公開シンポジウム「着床前受精卵遺伝子スクリーニング(PGS)について」を開催した件
 苛原委員長より、2月7日に公開シンポジウムを開催し、290名の参加があったこと、十分な議論があったことが報告された。

   竹下 俊行委員:前回理事会案に加え、その後の小委員会での意見、先日の公開シンポジウムでの意見を加えて、次回理事会への最終案をまとめたいと考えている。
   苛原  稔委員長:大筋で変更はないので、竹下委員がまとめて理事会に報告いただきたい。理事会で提案が認められれば、より具体的な対応をPGSに関する小委員会で検討いただきたい。RCTを検討する場合でも、患者個人の気持ちに十分配慮した研究計画を立てていただきたい。シンポジウム会場から寄せられた質問への回答、これまでのPGSに関する小委員会議事録の公開も検討していただきたい。

 

次回倫理委員会は平成27年3月24日(火)に開催予定であることを確認し、20時15分に会議を終了した。

【資 料:】
1. 平成26年度「第4回倫理委員会」議事録(案)
2. 「登録・調査小委員会」報告
3-1. 「着床前診断に関する審査小委員会」報告(答申書、照会文書、意見書、議事録)
-2. 「着床前診断」に関する見解(改定案)、「着床前診断の実施に関する細則」改定(案)、様式2−1(案)、様式2−2(案)
-3. PGD情報公開(案)
4. 子宮移植プロジェクトチーム(京都大学菅沼 信彦先生)からの「子宮移植の臨床研究に際しての指針」
5.「生殖補助医療実施医療機関の登録と報告に関する見解」校正案
6. 久具副委員長より、AID見解タイトル変更についての「要望書」
7. 加藤レディスクリニックからの質問状、インフォームドコンセント書類
8-1. NIPTコンソーシアムからの「NIPT検査対象疾患追加に関する要望書」
-2. Nationwide demonstration project of next-generation sequencing of cell-free DNA in maternal plasma in Japan: 1-year experience -3. NIPTコンソーシアム臨床研究報告 9. 「会員へのお知らせ」学会ホームページ掲載画面
10. 『生殖医療に関する遺伝カウンセリング受入れ可能な臨床遺伝専門医』学会ホームページ掲載画面
11. PGSに関する一般の方からのご意見 12. 報道関連記事

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