公益社団法人 日本産科婦人科学会

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平成29年度第1回倫理委員会議事録

更新日時:2018年8月2日

平成29年度第1回倫理委員会議事録

日 時:平成29年5月16日(火)午後6時30分~8時30分
場 所:日本産科婦人科学会事務局「会議室」

出席者(敬称略)
   委員長:苛原  稔
   副委員長:久具 宏司
   主務幹事:桑原  章
   委 員:石原  理、齋藤  豪、齊藤 英和、榊原 秀也、佐藤 美紀子、澤 倫太郎、
関沢 明彦、竹下 俊行、寺本 瑞絵、平原 史樹、森重 健一郎、山中 美智子、吉野  修
欠 席:内田 聡子委員、杉浦 真弓委員、原田 省委員、阪埜 浩司委員
 

 定刻に苛原委員長が開会を宣言し、平成28年度第4回及び第5回倫理委員会議事録(案)【資料1-1、1-2】を確認した後、定例の報告・協議事項に移った。

1. 登録関係
(1)本会の見解に基づく諸登録(平成29年4月30日現在)
 齊藤委員より、登録・調査小委員会の諸登録について報告があった【資料2-1】。特に今年度は、5年ごとの更新申請が多い年に当たるため、事務作業が増加しているが、手分けして対応している事が説明された。

(2)提供精子を用いた人工授精に関して【資料2-2、参考資料(審査委員からのご意見、他施設の運用状況など)】
 現在、更新審査の対象となっている既存AID施設や、最近新たに申請があった新規AID施設登録の審査の過程で、精子提供者の条件や施設条件の詳細に関して、申請段階で詳細な情報を求めるべきとの意見があったことが齊藤委員から説明された。

   久具 宏司副委員長:5年前までは、AID施設審査は申請書類(A4一枚)に加えて、患者への説明文書などが添付されていることが多かった。しかし、最近の情勢を考え、既存施設において、患者説明文書とは別に、当該施設での精子提供者の管理の詳細などを記載した診療計画書(研究計画書に相当するもの)を学会申請時に別途添えて申請するべきではないかと考えた。卵子提供なども議論される状況なので、AIDに関しても見直しが必要であることの問題提起とした。
   石原  理委員:AIDに関する見解を見直しした2006年当時は、法制化などを見据えて現状維持が無難であろうと考え、施設を含め、見解ができる前から実施されてきたAIDの現状を追認することとした。最近の現状として、精子提供者の確保が困難であることなどからAID実施施設が減少しており、加えて、法制化も見通しが立たない状況であるが、実際にAIDを必要としている患者が少数ながら存在し、多様性が広がっていることなどから、AID実施施設を維持する必要性があることは指摘しておきたい。一方、提供者の情報を長期管理する必要性など、詳細な施設要件などを規定していない現状で、安易に新規施設を認めることには懸念がある。
   桑原  章委員:提供精子を用いたARTの詳細を議論すると、同時に提供卵子を用いる場合の議論も必要となってくることを指摘しておきたい。
   苛原  稔委員長:いただいた意見も参考に、次期倫理委員会で第三者が関与する生殖補助医療に関する議論を行っていただき、合意が得られるなら、現在のAIDに関する見解を見直すこととしたい。なお、新規申請施設に関しては、申請内容がこれまでと比べて問題がないのであれば、不承認とする理由は見当たらないが、本日の議論内容などを付記して、慎重に実施することを要望したうえで、承認いただきたい。
(他に異論無く、この件の議論を終えた。)

(3)FTM性別不適合手術後に婚姻した夫婦からの質問状に関して
 桑原委員より、性別不適合手術後の婚姻している夫婦から、AIDの対象に含まれるか問い合わせ【資料2-3】があったことが説明された。学会としては適応の範囲と考えられるが、個別の施設でより厳しい適応を定めたとしてもそれは見解違反とは考えられないこと、施設ごとに判断が異なるので、詳細について学会では把握していない旨の説明を行ったことが報告された。

(4)着床前診断に関する臨床研究申請・認可について
 平原委員より、PGDに関する審査小委員会の結果【資料3-1】が報告された。特に、均衡型転座を原因とする反復流産にaCGHやNGSを用いてPGDを行った場合の偶発所見に関して長年議論していることや、具体的案件の詳細が説明された。加えて、見解に纏わる議論や、研究・診療における取り扱いなど、長年の懸案事項を次期本委員会においても継続審議をする必要があることが提案された。
   竹下 俊行委員:効果が未確定の新しい医療を行う場合には、研究として実施するべきであり、当然ながら研究倫理審査が行われている必要がある。そのうえで、現状の倫理指針に合致した倫理審査が行われているかどうかを、確認していくことが重要と思われる。
   石原  理委員:探索的医療は研究倫理審査が必要であるが、いったん臨床的有用性が確定した後は、症例ごとの適応審査が重要となる。性別適合手術を例に挙げると、昔はそもそも、行ってよいのかという議論があったが、現在は症例ごとに適応に該当するかどうかを審議している。PGDに関してもその時期に来ていると考える。果たして各ART施設の倫理委員会では、各症例にPGDの適応があるか審査する十分な能力を持っていないことが問題となっているように思える。今後、PGDにおいて必要なのは、倫理審査ではなく、症例ごとの厳密な適応審査であることを明確に示していく必要があると考える。
   苛原  稔委員長:これまで同様の審査を行うのか、医療として適応審査を含めた各施設の能力を審議するのかが、今後の懸案となっている。加えて、重篤性の問題を含め、次期倫理委員会での審議になると考えている。

(5)着床前診断に関する臨床研究の報告について
 榊原委員より、着床前診断に関する学会報告の集計結果【資料3-2】が説明された。苛原委員長から本報告書を理事会に報告し、日産婦誌にも報告書として掲載する予定であることが説明された。

2. PGS特別臨床研究の実施について
 竹下委員より、小委員会開催の内容と、慶應義塾大学倫理委員会の審査で却下された詳細に関して照会していることが説明された【資料4-1、4-2】。現在は、慶應義塾大学を除く多施設で技術的な細部を調整中で、早ければ6月中にも本試験に入る予定であることが説明された。

3. 豊橋市民病院における胚の取り違え事例について
 苛原委員長より、豊橋市民病院における胚の取り違え事例に関して、当該施設から詳細な報告があったことが説明された【資料5】。今回の事例は、安全管理上の問題を指摘できないことや、患者へも十分な説明、謝罪が行われており、十分納得できている様子であることから、問題とはしないことが報告された。本年度のART安全確認の際には、胚の取り違えが発生したことを含め、安全管理の徹底を求めることが確認された。

4. 平成27年度~28年度倫理委員会活動についての総括
 苛原委員長より、平成27年度~28年度の倫理委員会活動の総括が説明された【資料6】。

 

 委員長より閉会が宣言され、20時30分に終了した。

 

【資 料:】
1-1.平成28年度「第4回倫理委員会」議事録(案)
1-2.平成28年度「第5回倫理委員会」議事録(案)
2-1.「登録・調査小委員会」報告
2-2.京野アートクリニック高輪からの提供精子を用いた人工授精に関する申請および既存登録施設1~11の資料、委員からのご意見
2-3.一般の方からの提供精子を用いた人工授精に関する照会(メール)
3-1.「着床前診断に関する審査小委員会」報告(答申書、照会文案、議事録)
3-2.着床前診断に関する臨床研究の報告まとめ
4-1.第10回PGSに関する小委員会議事録(案)
4-2.慶應義塾大学医学部倫理委員会からの回答、およびそれに対する照会文書
5. 豊橋市民病院からの報告書
6. 平成27年度~28年度倫理委員会検討概要

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