公益社団法人 日本産科婦人科学会

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令和元年度第4回倫理委員会議事録

更新日時:2020年4月1日

令和元年度第4回倫理委員会議事録

日 時:令和2年2月4日(火)午後6時~8時20分
場 所:日本産科婦人科学会事務局「会議室」

出席者
 委員長:三上 幹男
 副委員長:苛原  稔
 主務幹事・委員:織田 克利
 委 員:石原  理、岩佐  武、片桐由起子、久具 宏司、桑原  章、桑原 慶充、
     小出 馨子、榊原 秀也、佐藤 健二、澤 倫太郎、柴原 浩章、関沢 明彦、
     竹下 俊行、矢内原 臨、山上  亘
 オブザーバー:木村  正理事長、永松  健
 欠席者:倉澤健太郎、阪埜 浩司、松本 陽子
<敬称略>

議事次第:
<確認事項>
令和元年度第3回倫理委員会議事録(案)【資料1】

<報告・協議事項>
1.登録関係
(1)本会の見解に基づく諸登録<令和元年12月31日現在>【資料2-1】
下記の報告が行われた。
 ①ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する登録:99 研究(45 施設)
 ②体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録:615 施設
 ③ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録:615 施設
 ④顕微授精に関する登録:582 施設
 ⑤医学的適応による未受精卵子、胚(受精卵)および卵巣組織の凍結・保存に関する登録:(123 施設)
 ⑥提供精子を用いた人工授精に関する登録:12 施設

下記は報告に対する議論
 医学的適応による未受精卵子、胚(受精卵)および卵巣組織の凍結・保存に関する登録施設が123に急増している。適切な施設数について検討が必要。
 〇採卵数は減って、胚凍結が増えている状況にある。

(2)平成30年度登録・調査小委員会報告の学会誌公表データの修正について【資料2-2】
⽇産婦誌71 巻11 号の累積出⽣児数の公表データの間違いの指摘があり修正を行うことが報告された。

(3)登録・調査小委員会の今後について【資料2-3】
下記の報告および議論が行われた。
 登録・調査小委員会の活動について今後継続性をもってやっていく必要がある。現在は特定の担当者の負担が大きい。
 〇ART施設認定は行政のARTの助成金とも絡んでくる。倫理委員会内に金銭が絡むことが入っているのも問題となりうる。
 〇常務理事会で登録・調査小委員会の今後のあり方を話し合う会を設置することが認められた。
 〇本会からもメンバーを推薦する予定で、総務にもメンバーを考えてもらっている。
 〇国に働きかけているが、簡単には動いてもらえない。その中で、施設・症例の登録数が非常に増えている。登録業務と様々な仕事がこの登録・調査小委員会にすべて入っていることに問題がある。
 〇現体制では、倫理委員会が会告を作り、同時に会告についての違反の取り締まりを行っている。全権が集約しない形の方が望ましい。
 〇施設認定、症例登録を担当する先の候補としては生殖医学会という案も考えられるが、生殖医学会に可能であるかどうかは検討が必要。
 〇他の領域の登録は、周産期委員会や腫瘍委員会から必要に応じて始まったが、生殖の登録については、ボランティアベースで立ち上がり90年くらいまでその体制であった。その後、日産婦で行うようになった。
 〇ART症例登録については10,000件程度まで紙ベースで行っており、2000年以降、紙ベースをやめてEDC入力を行うようになったが、そこでシステムを徳島大学内で作成したところ、その後の管理を任された。その後、2006年にUMINシステムに移行した。
 〇登録と調査は本来、別に考えるべきものでありご検討いただきたい。本来は、国に動いてほしい。
 〇生殖内分泌委員会の先生にも話し合いに加わっていただきART施設認定・症例登録のあり方についてワーキンググループを立ち上げて今後話し合いを行いたい。

(4) 特定治療支援事業に関する行政機関から学会への相談について【資料2-5】
下記の報告および議論が行われた。
 〇ART登録施設の責任医師が専門医の更新をしていなかったために行政から問い合わせがあった。
 〇ART助成金の対象施設は自治体が管理、認定している。日産婦が認定しているわけではない。厚生労働省令で、施設要件は、各県が独自に作り、指定するという建て付けになっている。日産婦が関わる義務はない。自治体に委ねる形でよいと考える。

(5)着床前診断に関する臨床研究申請・認可について【資料3】
下記の報告が行われた。
 ・施設申請169件《承認102施設(うち25施設は条件付)、照会10施設、審査中57施設》
 ・症例申請:909例《承認796例、非承認28例、審査対象外36例、取り下げ5例、照会27例、保留4例、審査中13*件》(承認796例のうち114例は条件付)

下記は報告に対する議論の内容
 PGT-Aを行いたい施設からの申請について不備が多い。が多い。80から20追加になったが、書類不備が多い。本会ホームページにQ&Aを載せているが、今後さらに申請書類にチェックリストを加えて改善を図りたい。
 申請書類の不備があったら認可が遅れることをはっきり伝えておく必要がある。

(6)PGT-Mの実施施設一覧について
 〇症例の紹介のためにPGT-Mを実施できる施設の一覧をほしいという要望がある。
 〇PGT-Aの臨床研究の参加を目的とした認定施設が増えており、そうした施設では必ずしもPGT-Mの実施が可能とは限らない。
 〇倫理審議会の結果やPGT-MとPGT-Mのそれぞれの施設認定に関わる見解の改定を進めた上でその後に検討することとしたい。

2. PGT-M第1部倫理審議会報告 第2部の報告【資料4-1、4-2、4-3】
下記の報告が行われた。
 第1回の審議会が終了した。第2回は医学的なこと以外に、日産婦が実際に何をしていくかを議論する予定。
 〇重篤な状態の定義について提案し、いろいろな意見をいただいた。いただいた意見に基づいて、定義の修正を行う必要がある。
 〇クライエントからの着床前診断を希望するに至った経緯に関する手紙を提出書類に加えることも検討している。
 〇将来の方向性として、公的倫理委員会を作ってもらうのは一つの目標となるが、すぐに実現できるわけではない。
 〇PGT-Mについての公的倫理委員会の構成員としては、従来の倫理指針に定める施設倫理委員会のメンバーに加えて、①医学専門家(遺伝性疾患)②専門看護師(遺伝看護)③遺伝カウンセラーを含める(兼任は不可)を提案したい。
 〇遺伝看護の専門看護師については現状では資格として認定されている人数が少ないことが問題となる。そこで、認定の有無は問わない形で「専門看護師(遺伝看護)」とした。

3. 臨床研究審査小委員会について
下記が報告された。
 〇これまでに承認された実施中の臨床研究一覧は学会ホームページに掲載
 https://www.jsog.or.jp/citizen/jsogpolicy-3
 〇データベースを利用する研究に関する周産期委員会の協議体制について
 周産期委員会が所管する学会登録データを臨床研究で使用したい場合には、周産期委員会全員でみることとなったが、その確認が不十分で記載が不適切な申請があった。明日の、周産期委員会で審査の手順を確認、周知してもらう。

4. PGT-A に関する小委員会について
(1)PGT-A研究―結果のまとめと今後の進め方について【資料5-1】
下記の報告および議論が行われた。
PGT-A研究の現状
 〇PGT-A研究のパイロット研究結果をまとめた論文がHuman Reproductionに掲載された。
 〇第2段階のPGT-A研究への参加施設について施設認定を進めているが、過去にPGTに関する見解への違反が疑われる施設について個別に事情聴取を行った。
 〇7月承認見込み等。過去3年間の登録状況を踏まえて研究参加の適否を判断することが内規で決められているため、開設以来3年未満の施設についてはPGT-A研究への参加の承認は遅らせることとした。
 〇内規については、Q&A集を作って明記しておくのがよい。事務に来る問い合わせについては基本的に、担当者に回答をお願いしたい。

PGT-A研究の今後の進め方
 臨床研究の報告会と、倫理的な検討・説明を実施して、それを踏まえた上で第2段階の研究の開始の準備を進めている。
 〇PGT-Aは流産を繰り返し、着床不全で妊娠できない患者さんの苦痛をとるための治療である。これまでの研究から得られたエビデンスをしっかり説明し、患者さんの同意に基づいて実施することには問題はないと考える。
 〇複数の胚がある場合に胚を返す順番を考えることは、重要である。
 〇倫理的な観点からは胚の選別の問題もあるが、まず患者側の立場の苦痛を取る必要があること、自費で実施する検査であるということを念頭において議論を進めるべきである。
 〇臨床研究のから得られた部分的な結果を強調して、PGT-Aの実施の可否を考えることは避けるべき。PGT-Aの倫理的、学術的なメリット、デメリットをオープンに示しながら議論を進めてゆく。
 〇倫理的マイナス面として胚の選別という側面を強調してPGT-Aを否定的にとらえる意見もあるが、それが患者の側や世論としてのMajorityの考え方であるのか、世に問うことが重要。
 〇PGT-Aに限っては、希望する患者にそれを禁止すると説明する合理的な方法はない。倫理的なマイナス面があっても希望する患者に対しては提供するのは仕方がないと考える。
 〇PGT-Aは不妊、流産で苦しんでいる人を救う方法である。患者さん個人の事情を汲むべきというのは、PGT-Mに関わる倫理審議会でも重要な視点である。
 〇海外のメタ解析の報告では、PGT-Aにより妊娠に至るまでの期間が短くなる、1胚移植で十分流産率の低下につながるということが示されている。最終的な挙児獲得率の上昇につながるのは年齢的に限られた集団とされている。

(2)PGT-MとPGT-Aの施設認定の認定基準について【資料5-2】
下記の議論が行われた
 〇PGTの施設認定基準についてPGT-Mの実施を前提とした基準となっており、PGT-A実施に必要なレベルとの乖離が生じている。
 〇現在のPGTの見解では、遺伝専門医は必須とはしていない。遺伝学的検査の結果を解釈し、説明できる専門家が配置されていること(非常勤可)を見解施設認定要件としている。PGT-Mでは、第三者の遺伝カウンセリングを必須としている。
 〇遺伝解析体制は、PGT-Mでは、実績のある会社への外注は可としているが、解析実績のある検査会社への外注のみを認めている。一方でPGT-Aは外注検査が前提であり、そうした検査会社はPGT-Aのみを行う検査会社がほとんどで、PGT-Mの実績はない場合が多い。そのため、PGT-Aのみを行おうとしている施設が、PGT-Aのみを行っている外注検査会社での実施を予定して施設認定を行っても認められないとうい矛盾がある。今後そのあたりの施設要件の見直しが必要。
 〇PGT-AとPGT-Mは求められる施設要件が異なってしかるべきであり、PGT-Aの実施を目的として施設認定を受けた施設が、安易にPGT-Mを実施することは適切ではない。
 ARTの施設認定では、顕微授精を行う施設と行わない施設を分けている。PGT-AとPGT-Mについても施設ごとに役割を分けて認定するような方向性がよい。PGT-A研究が終了後、臨床導入となる段階で分かれていくことになると思われる。
 〇現状ではPGT-A研究自体が、見解に沿って行っていることが前提である。しかし、PGT-AとPGT-Mの関係性について認識が不十分な施設が出ないように、十分な説明を行ってゆく必要がある。
 PGT-Aのみを行おうとしている検査会社も見解との齟齬はない。
 〇PGT-Mの倫理審議会では、遺伝カウンセリング、検査体制には厳しい意見が出ており、その観点からやはりPGT-Mの実施の施設要件のハードルは高く設定するべきである。
 〇PGT-Mについては実施施設を限定するが、PGT-Mを受ける患者の利便性からは胚生検は居住地の近くで可能で、その後限定された専門施設で診断や説明が行われるという方向性進められるとよいと思う。

(3)第2段階PGT-A研究の研究倫理審査の承認の報告【資料5-3】
第2段階のPGT-A研究の実施が日産婦の臨床研究審査小委員会で承認されたこと、徳島大学の施設倫理委員会でも承認されたことの報告が行われた。

5. 母体血を用いた出生前遺伝学的検査について
・NIPT施設認定について
・NIPTについての学会間の調整【資料6-1】
・今後の新指針後の施設認定について

下記の報告および議論が行われた。
 〇日本医学会内のNIPT施設認定の委員会が終了したことを日本医学会に対して宣言した。1施設の施設認定が残っているがそれについては完了した上で、4月1日以降は一旦施設認定のスキームがない状態となる。
 〇NIPT指針の改定に向けて日本人類遺伝学会と日本小児科学会との提案を受けておりそれを入れ込む形で調整中である。
 〇理事長直轄の認定委員会の発足、関連学会(本会、日本人類遺伝学会、日本小児科学会、産婦人科遺伝診療学会)の4つの学会での認定システムの構築、登録認定作業、申請についての問い合わせ対応について今後検討を進めたい。

(6)NIPT無認定施設について
日産婦学会員であって無認可でNIPTを実施していることが疑われる施設に事情聴取を今後予定することが報告された。

(7)第3回NIPTの調査等に関するワーキンググループ(厚生労働書)の進捗状況【資料6-3】
下記の報告が行われた。
 〇NIPT施設の調査について研究倫理委員会の承認が終了して施設アンケート調査中。今後、NIPT受検者に対しても調査が進む予定である。アンケート結果は厚労大臣まであげるため、レベルの高い調査としての位置づけになっている。

6. 親子鑑定の問題について【資料7】
下記の議論が行われた。
 親子鑑定について倫理委員会で話してほしいと意見が出ている。親子鑑定が社会的な話題となるケース増えてきている。これ自体について学会が意見を述べる立場にはないと思われる。

7. 「生殖医療に関する遺伝カウンセリング受け入れ可能な臨床遺伝専門医 」について
下記の議論が行われた。
 2000年頃に、厚生労働省から日産婦に要望があり、「生殖医療に関する遺伝カウンセリング受け入れ可能な臨床遺伝専門医 」が制定された。2005年頃まで続き、臨床遺伝専門医が生殖に関する講習を受けて認定を受けるという建て付けであったが中断されていた。2016年から再開し、日産婦に委譲された。
 〇現在、日産婦の倫理委員会で、着床前診断に関する審査小委員会委員長と倫理委員会主務幹事で判断、理事会承認としてきた。日本人類遺伝学会が認定する臨床遺伝専門医と日本産科婦人科遺伝診療学会が実施する講習が要件となっており、資格自体は日産婦が認定するという状態で複数の学会にまたがる内容となり矛盾が生じている。
 資格の認定について日本産科婦人科遺伝診療学会に移管した方がよいのではないか。
 〇今後引き続き検討課題とする。

8. 倫理委員会の業務について【資料9】
倫理委員会の中の業務について継続性を重視した体制作りを目指したい、小委員長を含め、後継者を考えておいていただきたい、との意見が出された。

9. その他
※次回委員会は、2020/3/24(火)18時より学会事務局会議室において開催予定

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