公益社団法人 日本産科婦人科学会

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「卵巣がんに対する先進医療として開始する腹腔鏡手術についての指針」について

更新日時:2025年3月10日NEW

日本産科婦人科学会会員 殿

2025年1月
公益社団法人日本産科婦人科学会
理事長 加藤 聖子
婦人科腫瘍委員会
委員長 川名  敬

 本邦において、子宮体がんIA期に対する腹腔鏡下手術が2014年、ロボット支援下手術が2018年、子宮頸がんに対する腹腔鏡下手術も2018年に保険適用になり子宮悪性疾患に対する低侵襲手術は広く普及してまいりました。この度先進医療Aとして認可された卵巣がんに対する内視鏡手術は、まだ歴史が浅く治療成績に対するデータが限られている点や傍大動脈リンパ節郭清術や隣接臓器合併切除を含めた拡大手術を症例により実施する点など、豊富な手術経験を持った術者が行い、安全に普及していくことが必要と考えられます。
 そこで、日本産科婦人科学会は、日本婦人科腫瘍学会、日本産科婦人科内視鏡学会と協議の上、「腹腔鏡下卵巣癌・卵管癌・腹膜癌手術に関する臨床研究(UMIN000053566)」として全例前向き登録のもとで先進医療を開始し、安全に実施し普及させることとしました。以下の点を遵守いただき、当該療養を行っていただきますようお願い申し上げます。


  1. 「腹腔鏡下卵巣癌・卵管癌・腹膜癌手術」にかかわる先進医療Aの施設基準を満たし、当該手術をこれから施行しようとする施設は「腹腔鏡下卵巣癌・卵管癌・腹膜癌手術実施施設」として前向き症例登録(開腹および腹腔鏡手術症例)を行う義務がある。
  2. 実施施設は、卵巣がんに対する手術を施行した全症例を日本産科婦人科学会の腫瘍登録に該当症例を登録する義務がある。
  3. 必要とする手術手技に習熟した術者が当該手術を行い、腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術を行う場合は、経験者の指導を仰ぐこと。
  4. 常勤の日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医と日本産科婦人科内視鏡学会認定腹腔鏡技術認定医の協力体制のもと実施すること。
  5. 「腹腔鏡下卵巣癌・卵管癌・腹膜癌手術」を実施する場合、患者に対して、国内外の治療成績や自施設の実績等を提示し、当該治療の内容、合併症及び予後等について他の術式との差異が分かるように、文書を用いて詳しく説明を行い、患者の同意を得るとともに、患者から要望のあった場合、その都度治療に関して十分な情報を提供すること。
  6. 術前の画像診断で腹腔内の癒着が想定される症例や比較的大きい腫瘍径(卵巣腫瘍であれば10cmを目安とする)の腫瘍を認める場合には、慎重に同手術の適応を判断することが望ましい。
  7. 腫瘍細胞が体内に曝露・遺残されることがないように、卵巣腫瘍の摘出・回収方法に十分に留意することが望ましい。
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