公益社団法人 日本産科婦人科学会

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平成17年度第1回倫理委員会議事録

更新日時:2018年8月3日

平成17年度第1回倫理委員会議事録

日日 時:平成17年5月27日(金)16:00~18:30
場 所:全共連ビル「No.14会議室」
出席者:
委員長:吉村 泰典
副委員長:田中 俊誠
委 員:稲葉 憲之、大川 玲子、亀井 清、齊藤 英和、佐々木 繁、竹下 俊行、栃木 明人、松岡幸一郎、
宮崎亮一郎
幹 事:阪埜 浩司、澤 倫太郎、久具 宏司、下平 和久、杉浦 真弓

平成17年度第1回倫理委員会議事録
会の冒頭、吉村委員長より挨拶があり、さらに各委員および幹事より自己紹介がなされた。
  吉村委員長「ここ数年間、本倫理委員会は会員に罰則を与えるような委員会であるがそれはこの委員会の本来の姿とは考えていない。倫理は人、時代によっても刻々と変化するものである。生命倫理の本質的な議論も必要であるが、短期的に対応しなくてはならない問題も山積している。是非みなさまのお知恵を拝借したい。」

1. 議事録確認
  平成16年度第4回倫理委員会議事録(案)につき、修正なく承認された。

2. 報告事項

(1) 4月分諸登録について
-1-ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する登録
申請8件〔審査 受理6件、照会1件、返却1件〕:87施設
-2-体外受精・胚移植、およびGIFTの臨床実施に関する登録
申請1件〔審査 受理1件〕:645施設
-3-ヒト胚および卵の凍結保存と移植に関する登録
申請3件〔審査 受理3件〕:540施設
-4-パーコールを用いてのXY精子選別法の臨床実施に関する登録
機関誌46巻8号(平成6年8月)において登録一時中止以来なし、17施設
-5-顕微授精の臨床実施に関する登録
申請3件〔審査 受理2件、照会1件〕:373施設
-6-非配偶者人工授精の臨床実施に関する登録
申請なし:23施設

吉村委員長「本年4月分までの登録に関する審査は昨年と同じく、昨年度の登録調査小委員会にお願いした。本年度5月分より、齊藤英和小委員長を中心とした本年度登録調査小委員会にお願いする。」

(2) 会議開催
平成17年度第1回登録・調査小委員会を5月11日(水)に開催した。
齊藤委員「現在例年にならい、登録・調査小委員会で各登録施設からの報告を集計している。本会からのお知らせとして3年連続報告を怠ると登録施設からはずす場合があるとの通知がすでになされている。今回それに該当する施設が2施設あることがわかり、すでに3回連絡しているが回答がない。再度通達し、最終的にどのように対応するか決めたい。」
吉村委員長「最終的には理事会に諮りたい。また、登録・調査小委員会ではヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する再登録を実施した。」
齊藤委員「この研究に関する再登録についてはいくつか問題点もあり、次回の小委員会で検討を予定している。」
5月18日(水)に「着床前診断に関する審査小委員会」を開催した。
吉村委員「現在、慶應義塾大学と名古屋市立大学からの申請について審査している。近日中に審査小委員会としての判断が倫理委員会に提出される予定である。その際には倫理委員会を開催し、理事会に報告したいと考えている。」

(3) 平成17~18年度倫理委員会および小委員会について
吉村委員長「資料2にあるように本委員会および小委員会の委員を決め、お願いした。なるべく機能的な委員会とするべくスリム化した。必要があればアドホック的に小委員会を作ろうと考えている。」

(4) 慶應義塾大学からの「着床前診断に関する臨床研究施設認可」申請(3例目) に対して審査小委員会について
吉村委員長「5名の方に審査小委員をお願いする。」

(5) 優生思想を問うネットワークから「受精卵診断に関する要望書」を4月11日に受領した。本会として事務局レベルで受領の返答を行った。
阪埜幹事「優生思想を問うネットワークの矢野代表より要望書を受領した。内容は安易に受精卵診断を認めるべきではない、根拠なく習慣流産に受精卵診断を行うな、審査の過程および内容を十分公表せよ、というものである。」
吉村委員長「本委員会としてこのような要望書すべてに返答が必要かどうかの議論はあると思う。今回に関しては、現在審査中の2例の着床前診断の理事会での決定を待って、きちんと返答したいと考えている。」
田中副委員長「優生という語句を使用する団体であることに違和感がある。」
澤幹事「社会的にインパクトを与えるために使っていると考える。」
松岡委員「単純にネーミングの問題である。」
吉村委員長「本会として何らかの説明はあると考えている。」
亀井委員「慎重に解答する必要があろう。」
吉村委員長「理事会の決定を待って、レスポンスをしたい。原案を作成し、委員の承認を得た上で返答したい。」
本提案は承認された。

(6) 多胎減数手術についての当日配布資料について
松岡委員「代議員からの本会会告の見直しの意見のなかにも多胎減数手術についての意見があった。日本産婦人科医会としては平成12年に母体保護法の改正に関する提言を提出しており、その中に多胎減数手術は人工妊娠中絶の適応で行えるような改正を求めた。」
吉村委員長「現在医会では議論されているのか。」
佐々木委員「当時は国に働きかけも行った。この改正案には妊娠12週未満は女性の同意のみで人工妊娠中絶を受けられる条項があり、少子化が深刻な現状では強く国に法改正を求めるのが難しい時期であることも事実だ。」
松岡委員「現状では、母体保護法の解釈のなかで多胎減数手術を運用している。日本医師会とのすり合わせも必要であろう。学会として明確に法改正を要望していくことが重要だ。」
大川委員「この女性の自己決定権を重視した母体保護法の改正案はむしろ推奨されるべきものではないか。本会としてもリプロダクティブヘルスライツを推進する姿勢は必要だ。」
亀井委員「この医会提言も公表からすでに5年が経過している。内容自体も再度見直しが必要かもしれない。」
佐々木委員「医会会長も任期中に検討すると申していた。」
田中副委員長「女性の権利という言葉よりリプロダクティブヘルスライツという言葉のほうが適切ではないか。」
吉村委員長「多胎減数手術は実態もわからないのが現状だ。我が国でどのくらい行われているかのデータもないというのは問題だ。子供の福祉や学問的観点からも多胎減数手術をどうするか考えて行く必要がある。継続審議としたい。」

3. 協議事項

(1) 平成17年度倫理委員会要検討事項について
吉村委員長「本年度本倫理委員会で検討を要すべき事項をまとめさせていただいた。会告の見直しは速やかに実施することが必要である。会告は時代とともに変化している。本会として昭和58年以来現在まで13の会告がある。再度読み直してみるとそれなりによくできていると感心する。会告の解説があるために硬直的な運用しかできなくなっている。会告の見直しについてはワーキンググループをつくり、検討したい。生殖医療評価機構は第三者機関による生殖補助医療の評価のシステムとして藤井前会長が発案されたものである。非常に大事なテーマであるが、評価以前に、現在は我が国の生殖補助医療のデータすら存在していない現実がある。まず、評価に必要な個表のデータを全例で集めたい。そのためには一般の不妊クリニックにも参加して頂くことが必要で、そのような形式を登録・調査委員会の齊藤小委員長および生殖内分泌委員会水沼委員長を中心に検討を始めていただいている。着床前診断についてはすでに審査が行われているが、今後は習慣流産を含め重篤な遺伝性疾患というその適応について考えていきたい。また、昨年の総合科学技術会議生命倫理専門調査会において研究目的のヒト胚の作成が認められた。現在、研究目的で作成する胚の指針が検討されているが、今後本会としてのガイドラインの作成が必要となろう。」

(2)会告の見直しについて
吉村委員長「会告見直しの具体的方法としては5~6名の委員によるワーキンググループをつくり原案の作成を依頼したい。」
澤幹事「日本医師会で医師の職業倫理規定を作成した際、生殖医療については2項目のみで一つは本会への登録の重要性、もう一つが代理懐胎の禁止である。計13の会告のなかにも倫理規範としての濃淡があってもよいのではないか。」
松岡委員「従来も会告と会員へのお知らせという形で濃淡はある。昨年度の理事会で4段階の懲戒規定ができており、運用をどうするかという問題だ。」
吉村委員長「まず少人数でたたき台を作っていただきたい。田中副委員長を中心に生殖医療評価機構の中心メンバーで検討をお願いしたい。まず見直すべき会告の抽出と見直しの方法を検討して頂きたい。」
本提案が承認された。
佐々木委員「会告の見直しについて理事長として一定の方向性はお考えなのか。」
吉村委員長「理事長の私見は頂いている。守って頂きたい最低限のルールという位置づけということだろうか。」

(3)旧富士見産婦人科病院事件に係わる本会会員2名について
吉村委員長「旧富士見産婦人科病院事件に対し医道審議会の決定による行政処分が発表された。処分対象者に本会会員が2名含まれていた。医師免許取り消し処分とされた本会会員は処分取り消しの申し立てを東京地裁におこなったが却下され、現在東京高裁に申し立てを行っている。本会員については裁判所の決定を待って対応することが常務理事会で確認されている。また、医業停止2年の処分を受けた本会会員の処分については現在所属地方部会長に意見を聞いている。この意見を参考に処分が検討される予定である。本件は庶務や専門医とも関連する事項である。個人的には医業停止中の当該会員の研修の機会を奪うような処分は適さないと考えている。」

(4)生殖遺伝カウンセリングについて
吉村委員長「数年前より本会として生殖医療におけるカウンセリングの重要性と社会からの要望にこたえるべく、生殖遺伝カウンセリング制度と生殖遺伝カウンセリング指導医の認定制度の立ち上げを行い、その一環として過去2回の講習会を開催してきた。しかしながら、この制度に対して全体的なコンセンサスが得られるまえに講習会が実施され、出席者からも多くの疑問が投げかけられた。本会として今後は生殖遺伝カウンセリング指導医にこだわることなく、むしろ講習会に重点をおき、関連学会の専門医の受験資格や資格更新のポイントとして認めて頂くよう働きかけることが重要であろう。」
澤幹事「当時は不妊センター化構想のなかでカウンセラーの整備が急務であり、本会が中心的な役割を担おうと早くから動いた。現状では委員長のご意見のように講習会を開催していくことがむしろ意義深い。年々参加者は増加している。むしろ本会会員以外の参加希望者が多い。」
稲葉委員「指導医制度にこだわらないほうが現実的だ。」
吉村委員長「人類遺伝学会の臨床遺伝専門医や不妊学会の生殖医療指導医のポイントになる方向で働きかけたい。平原小委員長にこの方向をお伝えする。」
以上了解された。

(5) 本委員会の公開性について
吉村委員長「本倫理委員会の議事録についてご意見を頂きたい。」
阪埜幹事「従来、本倫理委員会の議事録は幹事で発言者を明記して原案を作成し、各委員の確認の後、会員専用ホームページに掲載してきた。昨年のホームページの改訂の際、原則的に会員専用ページを減らし、一般ページで公開する方向性を理事会で確認している。」
松岡委員「一般のページに公開することに賛成である。隠すことで断片的な情報がマスコミに流れ、むしろ問題が大きくなったことがある。」
吉村委員長「各委員は自分の発言部分を十分確認して頂きたい。また、マスコミの対応については委員の皆様のご迷惑とならないよう、倫理委員長、広報委員長に一任させて頂きたい。」
稲葉委員「広報の立場からマスコミへの発表は議事録の完成を待ってからにしたい。このことは次回の常務理事会で理事長以下各理事のご了解を得ることにしたい。」
本提案を承認し、第1回倫理委員会は終了となった。

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