日時:平成17年9月27日(火)18:00~20:00
場所:保健会館別館5階会議室
出席者:
理事長:武谷雄二
委員長:吉村泰典
委員:安達知子、大川玲子、亀井 清、齊藤英和、佐々木繁、白須和裕、竹下俊行、栃木明人、
平原史樹、松岡幸一郎
幹事:阪埜浩司、澤 倫太郎、久具宏司
1.議事録確認
平成17年度第2回倫理委員会議事録(案)につき、一部修正のうえ承認された。
2.報告事項
(1) 8月分諸登録について
-1- ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する登録
申請5件〔審査 受理1件、照会1件、返却3件〕:90研究
-2- 体外受精・胚移植、およびGIFTの臨床実施に関する登録
申請4件〔審査 受理2件、照会1件、返却1件〕:654施設
-3- ヒト胚および卵の凍結保存と移植に関する登録
申請5件〔審査 受理3件、照会1件、返却1件〕:551施設
-4- パーコールを用いてのXY精子選別法の臨床実施に関する登録
機関誌46巻8号(平成6年8月)において登録一時中止以来なし、17施設
-5- 顕微授精の臨床実施に関する登録
申請5件〔審査 受理3件、照会1件、返却1件〕:382施設
-6- 非配偶者人工授精の臨床実施に関する登録
申請なし:22施設
(2)会議開催
平成17年度第3回登録・調査小委員会を6月29日(水)に開催した。平成17年度第4回登録・調査小委員会を8月23日(火)に開催した。
慶應義塾大学からの着床前診断に関する申請4件に対する審査小委員会を7月13日(火)に開催し、審議した。
「会告の見直しに関するワーキンググループ」の第1回会議を6月28日(火)に、第2回会議を9月22日(木)に開催した。
「着床前診断の適応に関するワーキンググループ」の第1回会議を7月13日(水)に、第2回会議を8月31日(水)に開催した。第3回会議を10月5日(水)に開催する予定である。
遺伝カウンセリング小委員会を9月30日(金)に開催予定である。
吉村委員長「登録・調査小委員会についてはかなり細かく申請をチェックして頂いている。以前より返却も増えてきている。会告の見直しに関するワーキンググループにおいて現在6つの会告を見直ししている。本日、2つの会告の改定案を資料として提出させて頂くので、後ほど協議をお願いしたい。」
(3)議事録のホームページでの公開
吉村委員長「着床前診断の適応に関するワーキンググループの議事録をホームページで公開することになり、すでに第1回会議議事録を公開した。」
(4)平成16年度倫理委員会登録・調査小委員会報告を機関誌ならびにホームページに掲載した。
3.協議事項
(1)慶應義塾大学から申請された4例の着床前診断に対する審査小委員会の答申書について
吉村委員長「慶應義塾大学から4例の着床前診断の申請があり、審査小委員会において審議して頂き、答申書を受領した。4例はすべてデュシェンヌ型筋ジストロフィーの症例である。」
久具幹事より各症例ならびに疾患の概要について説明がなされた。
吉村委員長「X連鎖劣性遺伝疾患という表現は正しいか。」
平原委員「正しいと考える。」
澤幹事「適切という記載は妥当と修正したほうが良い。」
栃木委員「症例2の疾患の概要からは性別診断がされたとの誤解をまねく記載がある。」
澤幹事「性別診断ではないはずだ。」
久具幹事「誤解をまねかない表現に修正する。」
吉村委員長「症例3のジストロフィン遺伝子のexon70の3塩基の欠失が、本当にこの疾患の原因となっているかについて疑問がある。」
久具幹事「他の原因の遺伝子変異を見つけきれていない可能性が残る症例である。ジストロフィン遺伝子のexon70の3塩基の欠失が原因であるとする理論的証拠が必要である。」
平原委員「家系内の健常者の遺伝子を調べて、多型であるか検索する方法もある。文献を調べ、エビデンスを提出するべきである。」
吉村委員長「症例4は特に問題はないと思う。」
以上の議論を経て、この4例に対する審査小委員会の答申を一部修正のうえ、承認した。個人情報の保護に十分配慮し、次回理事会に提出し、審議することとなった。
(2)死亡した夫の凍結精子を用いて生まれた子の親子関係の判決について
吉村委員長「死亡した夫の凍結精子によって生まれた子の親子関係をめぐって東京地裁で裁判が行われている。近日中にその判決が出るようで、マスコミからの問い合わせが事務局にきている。昨年、松山で同様の事件があった。今回は昨年のケースとは若干異なる部分もある。昨年は調査し、本会としてのコメントを公表した。」
澤幹事「地方連絡委員を通じて調査することもあるが、個人情報保護の観点から調査は難しいと考える。」
松岡委員「本会が何を問われているかという点に注意して対応することが重要である。親子法や判決に対して本会が直接関与するべきものではない。ただ精子の凍結保存については本会の基本姿勢を示す必要がある。本会は会告で体外受精・胚移植は婚姻している夫婦に限定している。」
吉村委員長「本会の会告では精子の凍結保存についての規定がない。一方、日本不妊学会は見解を公表しており、その中では、死後は直ちに廃棄することになっている。現在、会告の見直しワーキンググループでも議論になっているが、本当に婚姻している夫婦でなければ体外受精・胚移植は行ってはならないのか。」
澤幹事「事実婚で生まれた子は、法律婚で生まれた子と完全に同様の権利を有しない。」
白須委員「今回の東京地裁のケースも、死亡した夫の凍結精子を用いたとすればやはり会告に違反していることになる。」
松岡委員「事実関係を確認する努力は必要ではないか。昨年のケースと整合性がとれないのはよくない。社会的問題はできるかぎり確認をした方がよい。」
大川委員「事実婚も認められるべきであると思う。法律が障害になっているのであれば、学会として国に働きかける努力も必要ではないか。」
吉村委員長「死後の凍結保存精子を使用したとなると、体外受精・胚移植施術時に同意をとっていないことになる。」
松岡委員「生前同意が裁判の争点であろう。」
亀井委員「夫が死亡していれば、心身ともに妊娠、分娩、育児に耐えうる状態ではなくなっている可能性がある。」
吉村委員長「凍結精子の取り扱いについては会告の見直しワーキンググループでも協議したい。」
以上より、本件に関しては必要があれば本会としてのコメントを作成すること、会告の見直しワーキンググループで検討することが承認された。
(3)本会会告の見直しについて
吉村委員長「現在、会告の見直しワーキンググループにおいて6つの会告の見直しを含む会告の改定を検討している。そのなかで2つの会告の改定案がまとまったので、本日協議して頂きたい。生殖医療実施医療機関の登録と報告に関する見解とXY精子選別におけるパーコール使用の安全性に関する見解である。XY精子選別におけるパーコール使用の安全性に関する見解については削除の方向で検討している。」
安達委員「この会告を削除するとパーコールによるXY精子選別を認めることになるのか。」
吉村委員長「そういう趣旨ではない。」
安達委員「この会告はわかりにくい。」
松岡委員「削除のほうがすっきりしてよいと思う。」
佐々木委員「本会へのART報告は実施が0でも行っているのか。」
齊藤委員「0報告をして頂いている。おもに実施登録施設の実施責任者の項目を一部改定し、すでに会員へのお知らせとして公表している。」
武谷理事長「実施責任者の要件が変更されて、すでに登録されている施設に支障が生じないか。」
齊藤委員「再登録時に登録ができない施設がでてくるかもしれない。」
吉村委員長「会告の見直しについてはさらに協議が必要である。なるべく会告をすっきりとした形で改定したい。会告によって重み付けを変えることも考えている。今後、さらに複数の改定案について協議して頂くことになる。各委員には資料を呼んで頂き、各人の考えを整理しておいて頂きたい。とくに事実婚のカップルに対する体外受精・胚移植をどのように取り扱うかについてはよく考えておいて頂きたい。」
以上より、2件の会告の改定案については方向性を了承し、継続審議となった。
以上で第3回倫理委員会は終了となった。