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平成25年度第4回倫理委員会議事録

更新日時:2018年8月2日

平成25年度第4回倫理委員会議事録

日 時:平成25年11月19日(火)午後6時00分~8時15分
場 所:日本産科婦人科学会事務局「会議室」

出席者
   委員長:苛原  稔
   副委員長:久具 宏司
   主務幹事:桑原  章
   委 員:石原  理、加藤 聖子、久保田 俊郎、齊藤 英和、榊原 秀也、澤 倫太郎、関沢 明彦、
髙橋 健太郎、平原 史樹、矢幡 秀昭、山中 美智子
   理事長:小西 郁生
   陪 席:吉村 泰典
欠席者:安達 知子、杉浦 真弓、竹下 俊行、阪埜 浩司   (敬称略)
 

 定刻となり、苛原倫理委員長が開会を宣言し、平成25年度第3回倫理委員会議事録(案)【資料1】を確認した後、報告・協議事項に移った。

1.登録関係:
(1)本会の見解に基づく諸登録<平成25年10月31日現在>【資料2】
 齊藤委員より、登録・調査小委員会の諸登録について報告があった。2011年ART登録データは本年9月号に掲載済み、2012年ART登録データ集計は本年11月末から集計予定で、30万件以上が登録されている。
(2)ART登録における精度向上に関して【資料10】
 齊藤委員より治療周期、妊娠周期が一定数あるにもかかわらず生産率が低い施設や、治療法「その他」を誤って選択している施設に照会したい旨の提案があり、倫理委員長、登録小委員長名で依頼することが了承された。
(3)着床前診断に関する臨床研究申請・認可について【資料3】
 平原委員より、着床前診断に関する審査小委員会の結果が報告された。
(4)着床前診断の実施報告まとめについて【資料4】
 平原委員から、着床前診断に関する審査小委員会内に蓄積されている調査データを公表する方法に関して、数種類の様式が提案された。榊原委員からは、今集まっているデータでまとめられる集計を公開し、詳細な研究を希望する学会員がいれば、求めに応じてデータを利用できるように準備することが提案された。他の委員から異論無く、データ解析、公開を行うことが了承された。

2.生化学的妊娠、PGSに関するWGに関して
 PGDに関連する事項として、苛原委員長から着床前診断WG(小委員長:竹下 俊行先生)で生化学的妊娠と習慣流産に関して再度検討することが提案され、了承された。さらに苛原委員長より、実施の是非はともかく、PGSに関するWGを新設することが提案され、了承された。

3.「PGDとPGSに関する公開シンポジウム」ならびに「臨時倫理委員会」の開催について【資料5】
 以上のような現状を踏まえ、12月23日(月、祝)に「PGDとPGSに関する公開シンポジウム」ならびに「臨時倫理委員会」を開催することが提案された。
   苛原  稔委員長:資料にあるような構成で、数名の演者候補を検討している。PGDの現状に関しては、平原委員にご報告をお願いしたい。演者の選定に当たって、委員の意見を伺いたい。
   吉村 泰典先生:PGSにテーマを絞る、患者団体からの演者も考慮してはどうか?
 公開シンポジウムおよび臨時倫理委員会の開催は了承され、各委員へプログラム案を回覧し、意見を集約して、開催準備を進めることとなった。

(4.周産期登録の倫理審査について【資料6】は担当委員会が異なるため、検討課題から除外した)
(5.「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン」は、重要案件なので最後に集中的に審議することとした)

6.人類遺伝学会からの照会について、苛原委員長から報告があった。【資料8】

7.母体血胎児染色体検査について、関沢委員から報告があった。【資料9】

8.セントマザー産婦人科医院からのAIDに関する問合せについて【資料11】
   苛原  稔委員長:「非配偶者間人工授精に関する見解」に照らし合わせると、不可とする根拠が見当たらない。
   久具 宏司副委員長:不可とは言えないが、「AIHに関する見解」の4. 5. 6.精子提供者・精子の管理の詳細、営利目的の点で、今回の案件は疑念が払拭できない。しかし、現在の見解は、AID実施施設が施設内で精子提供者・精子の管理を行うことを前提として書かれており、今回のように施設外から精子を提供して行うAIDに関して、明確に是非を回答することができない。
   吉村 泰典先生:匿名を原則とした学会の見解がある以上、推奨はできないが、患者個人がどうしても希望する場合、主治医と患者夫婦の間で慎重に検討される以上、本学会がそれを妨げることはできないとしか、コメントできない。
 以上の議論を踏まえ、倫理委員長から回答することとなった。

9.「生殖医療に関する遺伝カウンセリング受け入れ可能な臨床遺伝専門医」認定講習会開催について【資料12】
 平原委員から、倫理委員会主催で2年ごとに開催されている「生殖医療に関する遺伝カウンセリング受け入れ可能な臨床遺伝専門医」認定講習会を次年度開催することが提案され、了承された。

10.NIPTに関するBGIジャパンの情報について、平原委員から解説があった。【資料13】

 

5.生殖医学会「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン」について【資料7、7-1~6、参考】
   苛原  稔委員長:9月17日に日本生殖医学会から「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン」【資料7】に関する意見を本会に求められた。11月8日の常任理事会で本委員会における概要を【資料7-1】のように説明し、了承を得ている。医学的適応に関しては主病治療の副作用対策と考え、医療の一環として患者サイドに立った見解を示し、会員に周知する必要性があると考える。一方、社会的適応は加齢が主因で医療とは異なる案件であるが、ART技術を応用し、実際に行われていて、今後も増加すると推測される。学会としても、女性が不利益を被るなどの社会的問題が発生しないよう、その動向に注意を払う必要があるが、明確な年齢制限を定めることなどは困難と思われ、見解とするには馴染まないため、生殖内分泌委員会ARTリスクマネジメント委員会で詳細を検討し臨床指針を作成し、状況把握のため会員から報告を求めたいと考えている。生殖医学会への回答案、見解の原案【資料7-2,3】は既に委員に回覧し、本日欠席の委員からの意見も集まっている【資料7-4】。さらに他の見解と関連する資料も準備した【資料7-5,6,参考資料】。
   石原  理委員:実態を把握できる体制を構築することが重要であり、医学的適応を義務的報告、社会的適応を任意報告とした場合にどれほど捕捉できるか危惧される。このサービスをうける女性が不利益を被らないように補助するのが学会の役割なので、適切な情報を発信し、最小限の管理体制が重要である。
   澤 倫太郎委員:社会的適応は倫理的問題が少なく、会告にするには不適切と考える。
   久具 宏司副委員長:社会的適応は倫理的問題もなく、医療であるかどうかも疑問である。
   苛原  稔委員長:社会的適応を放任する立場では無いことを強調したい。
 生殖医学会へは原案のとおり回答することとし、原案の詳細についての検討に移った。
   久具 宏司副委員長:卵子保存の対象となる疾患、症例の選択に関し、この見解で規定することは困難であるが、見解の作成と同時に、あるいはその後に、産婦人科以外の専門分野との連携が重要である。
   苛原  稔委員長:(本日欠席の阪埜委員のコメントで、子宮機能喪失に対する卵子凍結は、代理懐胎を前提とすることが問題であるとの指摘に対して)今回の見解は卵巣機能の低下に伴う妊孕性の喪失に対するものであり、代理懐胎に関して現在のところ触れる必要は無いと考える。次に、本学会の会員でない、今回の見解の対象となる疾患に関する専門医師集団(乳がんや血液疾患の関連学会、癌治療学会など)とコンセンサスを得るステップは、見解が作成される過程で必要になると考える。また、現在ある「精子の凍結保存に関する見解」とも対等に書かれていることを申し上げておきたい。
   桑原 章委員:婚姻と今回の見解の対象となる範囲に関して、ご議論いただきたい。前提として、既存の「体外受精に関する見解」では、対象は婚姻している必要があり、既存の「胚および卵子の凍結保存に関する見解」は、適応はともかく、既婚を前提に未受精卵子の凍結も念頭にある。現行の見解のみでも、既婚女性の卵子凍結は可能で、未婚女性の卵子凍結は不可となっている。
   吉村 泰典先生:これまでの経緯を振り返る。「胚および卵の凍結保存に関する見解」を「胚および卵子の凍結保存に関する見解」に改定した時点で、未受精卵子も含まれる解釈となった。しかし、その時点でも未婚女性は含まないように配慮した。それは、医学的適応による未受精卵子保存は様々な倫理的問題が含まれていたからである。今日、ここに至って、医学的適応による未受精卵子の凍結に関する見解を明確に定める必要を感じる。
   石原  理委員:既存の「胚および卵子の凍結保存に関する見解」は、体外受精や顕微授精の一環として行われる凍結(未受精卵子でも)であり、今回の見解は、医学的適応による妊孕性の温存を目的として行われる凍結に対象を絞っておくべきである。
   吉村 泰典先生:婚姻に関して、学会は当初、事実婚を認めていなかったが、現在は事実婚によるARTも可能としている。しかし、非嫡出子の法的不利益(遺産相続)が存在する以上、学会として非嫡出子の出生に荷担するような状況は不適切であると考え、あえて「婚姻しており」という文言を残した経緯がある。しかるに、最近の最高裁判決によって非嫡出子の法的不利益が無くなった現在、社会的不利益は存在する(戸籍上は非嫡出子と記載される)としても、もはや「体外受精に関する見解」から「婚姻しており」の6文字を削除する時期にさしかかっていると考える。
   石原  理委員:事実婚や非配偶者間生殖医療に関しては、別の次元で考える方が適切である。「体外受精に関する見解」としては、社会通念としての夫婦を対象とすることが適切である。
   澤 倫太郎委員:卵子凍結の倫理上の問題とは?
   苛原  稔委員長:保存された卵子の取り扱いに関して、胚になることも念頭に尊厳性を含めた倫理上の問題があると考える。
   石原  理委員:乳癌で胚を凍結保存し、患者の強い希望に抗せず乳癌治療後2年で胚移植、妊娠し、妊娠中に乳癌が再発した症例が最近報告された。倫理面を含め、学会としての見解を示す重要性を指摘したい。
 以上の議論に加えて、今回の対象は、医原性の卵巣機能低下例に限定する(先天的卵巣機能低下例:ターナー症候群、早発閉経などは含まれない)こと、生殖医療専門医が必須であることを確認した。凍結された卵子の保管場所はART登録施設内に限るのか、あるいは外部の施設(医療施設では無い機関)でも可能なのかについては、ペンディングとなった。

 以上で、本日の審議を終了し、未受精卵子の凍結に関しては引き続き、通信で議論を続けることとなった。次回委員会は、臨時倫理委員会が12月23日に開催されること、定例は来年2月4日に開催することを確認し、20:15に閉会となった。

【資 料:】
1.平成25年度「第2回倫理委員会」議事録(案)
2.「登録・調査小委員会」報告
3.「着床前診断に関する審査小委員会」報告(答申書、議事録)
4.着床前診断審査後の調査、データ解析について(案)
5.公開シンポジウム計画(案)
6.周産期委員会委員長からの問い合わせ、様式2・様式3・様式4(修正版)
7.H25.11.15付け日本生殖医学会「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン」
7−1.本会としての対応(案)
7−2.H25.9.17付け日本生殖医学会指針案に対する本会からの返事(案)ならびに日本生殖医学会からの依頼状
7−3.医学的適応による未受精卵子および卵巣組織の採取・凍結・保存に関する見解(原案) ※事前送付済
7−4.欠席委員からのご意見(阪埜委員、他)
7−5.他の見解の見直しに関して
7−6.H17.12理事会確認事項
※参考:不妊治療中の方からの問い合わせならびに本会からの回答
8.人類遺伝学会抄録(抜粋)
9.母体血胎児染色体検査についての報告
10. ART登録における精度向上に関して
11. セントマザー産婦人科医院からの質問状
12. 過去の遺伝カウンセリング講習会開催実績など
13. 1308 BGI NIPTimg057(平原先生よりご提供)
14. 報道記事など

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