日 時:平成26年5月21日(水)午後6時00分~8時10分
場 所:日本産科婦人科学会事務局「会議室」
定刻となったが、苛原委員長の到着遅れのため、久具副委員長が開会を宣言し、1.(3)から議事を開始した。
1. 登録関係
(3)「着床前診断に関する審査小委員会」加藤LCからの申請について【資料3-2】
平原委員、加藤レディスクリニック黒田 知子先生から、資料に従って概要の説明を含めた意見聴取を行い、委員とも意見を交換した。
苛原 稔委員長:PGDを行い出生した健常児に患児の面倒見を期待すること、PGDは中絶より良いという考えは普遍的ではないので、十分議論されなければいけない。
竹下 俊行委員:以前、21番染色体を含むロバートソン転座症例で、PGDを認めた症例があったが、それはロバートソン転座を原因とする習慣流産であったので許可されている。今回は習慣流産、重篤な遺伝疾患のいずれにも該当しない。
平原 史樹委員:現状では、ダウン症を重篤な疾患ととらえてPGDを行うコンセンサスは得られていない。
山中 美智子委員:本例は自然妊娠可能な症例であり、行わなくてもよいART侵襲が加わることも問題である。
齊藤 英和委員:技術を提供してあげたいという意見がある一方で、規則は守ることが重要である。
改めて、苛原委員長の司会により次第に従い議事を再開した。平成26年度第1回倫理委員会議事録(案)【資料1】を確認した後、報告・協議事項に移った。
1. 登録関係
(1)本会の見解に基づく諸登録<平成26年4月30日現在>【資料2】
齊藤委員より、登録・調査小委員会の諸登録について報告があった。
(2)着床前診断に関する臨床研究申請・認可について【資料3-1】
平原委員より、着床前診断に関する審査小委員会の結果が報告された。
(3)「着床前診断に関する審査小委員会」報告
平原委員より、PGDの手法として行われるCGHに関して、FISHのPGDが認可された症例にCGHを行う場合の再申請方法を検討中であることが報告された。さらにCGHを外注検査する場合の品質管理、データ解釈を行う専門的スタッフの基準に関して検討中であることが報告された。
(4)着床前診断の申請、審査結果の情報公開について(平原委員)【資料4】
転帰を含むデータ公開を準備していることが報告された。
竹下 俊行委員:実施登録のみの集計であり、転帰、結果は含まれないのか?
平原 史樹委員:それを含めて集計することは、手上げ方式で希望される研究者がおられれば、別の機会に検討したい。
2.「医学的適応による未受精卵子および卵巣組織の採取・凍結・保存に関する見解」に基づく登録申請に関するコンセンサス会議(5月13日開催)および「関連学会に対する説明会・意見交換会」(5月14日開催)について【資料5-1~4】
苛原委員長から、開催された会議の概要が資料に沿って説明され、次回理事会に報告することとなった。
石原 理委員:社会的適応による卵子凍結も登録されることとなることを、認識しておく必要がある。
3.各登録申請書の脚注に関する誤植訂正について【資料7】
桑原 章委員:「医学的適応による未受精卵子および卵巣組織の採取・凍結・保存に関する登録申請」を作成した時に、既存の「体外受精・胚移植に関する見解」、「顕微授精に関する見解」、「 ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する見解」の登録申請の脚注に誤植があることに気がついたので、この機会に訂正したい。内容は、「医師全員」を「医師」全員に訂正すること、「解凍」を「融解胚移植」へ訂正することである。理事会で承認されてから、学会誌、Webなどの様式も訂正したい。
委員から、特に問題無く了承された。
4.各種見解における「婚姻」に関する記載とその変更について【資料8-1~3】
苛原 稔委員長:委員会提案に対する会員からの意見が集まっているので、資料8-2にまとめた。私個人は、夫婦の定義に関して学会がコメントすることは困難であり、法律や社会全体で検討するべきことであると考えている。一方、重婚的内縁関係や離婚直後にARTを行った場合の父-子関係が不安定になることに関しては、個々の症例で検討していただきたいと思う。
石原 理委員:今回の変更により、将来、同姓婚に対するART実施の可能性があることを認識しておく必要があるが、配偶子提供が認められていない現在においては、検討する必要はない。
久具 宏司副委員長:重婚的内縁関係に関し、今回の見解改定は「重婚的内縁関係」の男女でもARTを行えることを宣言することとなるが、「重婚的内縁」の男女にARTを行ってもよいのか、この場で確認しておきたい。
苛原 稔委員長:重婚的内縁関係の男女にARTを行うか否かに関しては、個々の施設において対応していただきたい。今回の改定により、「戸籍の確認を行ってはならない」とは定義されていないので、結果として施設毎に対応が異なることとなってもよろしいのではないか。
他に意見は無く、原案のまま理事会、総会での協議を行うこととなった。
5.「ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針」および「ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する見解」が遵守されなかった件
苛原委員長から、5月13日に、永井クリニック永井 泰院長ならびに研究当時者の大月 純子胚培養士に対して行った、事情聴取の概要が報告された【資料9】。学会見解に違反していること、国の倫理指針に違反していることが認められ、本件の重要性を考慮し、何らかの指導を行う必要性があるとの結論に至った。次回理事会へ報告するとともに、理事会から適切な指導を行うよう、委員長から理事長ならびに総務担当理事へ上申することとなった。
6.「第2回PGSに関する小委員会」に関して
竹下 俊行委員:5月13日に、第2回PGSに関する小委員会を開催した。現在の見解では、PGDの目的として「スクリーニングとしない」と記載されており、ここで言う「スクリーニング」の定義を明らかにする必要性が指摘された。見解の見直しの時期にさしかかっているとの意見もあった。PGSを行う場合に、見解の改定が必要かどうか議論される一方で、見解の改定や倫理的議論を進めるためにも、根拠となる医学的データが無い現状を考慮し、限定的に臨床研究を行う必要性があるとの意見もあった。特に、今回は倫理的問題として、柘植委員から始めてご意見を伺った。7月25日に、3回目の委員会を開催する予定である。
久具 宏司副委員長:臨床研究を行う場合の評価項目は、生児獲得率なのか、流産率の低下なのか?
平原 史樹委員:医学的評価に加えて、社会がどのように受け止めるかを考慮し、社会的評価基準を定めて臨床研究を行う必要がある。
苛原 稔委員長:一般に意見を求めることも必要である。今後も小委員会で議論を深めていただきたい。
7.「第3回着床前診断ワーキンググループ委員会」に関して
竹下 俊行委員:着床前診断の適応としての生化学的妊娠の取り扱いに関して3回に渡り検討してきた。倫理委員会への答申【資料10】をまとめるとともに、付記に、これまでの議論を解説した。
久具 宏司副委員長:この答申は見解に加えるのではなく、あくまでも内規として参考にするものとしたい。
榊原 秀也委員:習慣流産の定義に関して混乱を招くことも危惧されるので、一般会員への周知は避け、PGD実施施設に回覧する、あるいは委員会内部での資料のみとしたい。
苛原 稔委員長:委員会内資料とするのみでよろしいのではないか。
8.「生殖医療に関する遺伝カウンセリング受入れ可能な臨床遺伝専門医」認定講習会と「生殖医療に関する遺伝専門医認定小委員会」の設置について、平原委員から説明があった。
以上で本日の審議を終了し、次回は9月3日に、新しい学会事務局にて開催されることが案内され、20:10に閉会となった。
【資 料:】
1. 平成26年度「第1回倫理委員会」議事録(案)
2. 「登録・調査小委員会」報告
3.-1「着床前診断に関する審査小委員会」報告(答申書、議事録)
-2 加藤レディスクリニックからの申請概要
-3 FISH法で認可された症例をCGH法で実施する場合に必要な手続きに関する通知文書(案)
4. 学会誌ならびにホームページ掲載案
5.-1「医学的適応による未受精卵子および卵巣組織の採取・凍結・保存に関する見解」登録申請書(改訂案)
-2「新しい見解に基づく登録申請の内規に関するコンセンサスミーティング」議事録(案)
-3 見解本文
-4 新しい見解についての関連学会に対する説明会・意見交換会の概要
7. 「体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録」、「ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録」、「顕微授精に関する登録」、「非配偶者間人工授精に関する登録」
8.-1 委員会提案:各種見解における「婚姻」に関する記載とその変更について
-2 会員からのご意見まとめ、三國 雅人先生から提出された資料
-3 久具副委員長からの事実婚・内縁に関する参考資料
9. 事情聴取の記録
10.「第3回着床前診断ワーキンググループ委員会」答申
11. 報道記事など