公益社団法人 日本産科婦人科学会

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平成29年度第3回倫理委員会議事録

更新日時:2018年8月2日

平成29年度第3回倫理委員会議事録

日 時:平成29年11月21日(火)午後6時30分~8時30分
場 所:日本産科婦人科学会事務局「会議室」

出席者
   委員長:苛原  稔
   副委員長:三上 幹男
   主務幹事:桑原  章
   委 員:石原  理、織田 克利、河端 恵美子、久具 宏司、倉澤 健太郎、桑原 慶充、
齊藤 英和、榊原 秀也、澤 倫太郎、杉浦 真弓、関沢 明彦、竹下 俊行、山中 美智子
欠 席:佐藤 美紀子、寺田 幸弘、阪埜 浩司、山上  亘
(敬称略)

 定刻に苛原委員長が開会を宣言し、平成29年度第2回倫理委員会議事録【資料1】を確認した後、定例の報告・協議事項に移った。

1. 登録関係
(1)本会の見解に基づく諸登録(平成29年10月31日現在)
 齊藤委員より、登録・調査小委員会の諸登録について報告があった【資料2-1、2-2】。苛原委員長より、施設内倫理委員会に関するQ&Aを作成する提案があった。

(2)着床前診断に関する臨床研究申請・認可について
 榊原委員より、「着床前診断に関する審査小委員会」の結果が報告された【資料3】。

(3)着床前診断に関する審査のあり方、重篤性疾患の見直しについて
 苛原委員長より、着床前診断に関する審査のあり方、重篤性疾患の見直しについて、「着床前診断に関する審査小委員会」のメンバーを中心に検討することが提案された。
   山中 美智子委員:学会が重篤性を定義することは、もはや難しいと考えられる。
   竹下 俊行委員:ART登録施設内の倫理委員会のあり方も見直す必要があると考える。

2. ART登録事業及び登録情報に基づく研究申請について
 三上副委員長より、日産婦データ登録事業に対する審査の一環として、登録・調査小委員会からART登録事業の倫理審査申請を受け取ったこと、他のデータ登録事業(周産期、腫瘍)と合わせて来週倫理審査を行うことが報告された。

 

3. PGT-Aに関する小委員会(PGS特別臨床研究の実施について)
 竹下委員より、臨床研究の進捗が報告された。症例リクルート方法を検討することが提案され【資料5】、了承された。

4. 第三者が関与する生殖補助医療に関して
 苛原委員長より、デンマーク精子バンクCryos 社から依頼があり、10月12日に第三者が関与する生殖補助医療に関する小委員会として意見交換会を行ったことが報告された。以下の議論を得て、今後、第三者が関与する生殖補助医療に関する小委員会にて議論を継続することとなった。
   苛原  稔委員長:国内でも、実際、精子・卵子提供による生植補助医療が行われているが、本会はAIDを除き、明確な意思を表明していない。第三者からの卵子提供による分娩が報道されたこの機会に、本会の姿勢を示す必要がある。代理懐胎は議論の対象とはしない方向として、第三者が関与する生殖補助医療に関する小委員会で検討したいと考えている。
   桑原  章委員:本会は、卵子・胚提供に関する見解を示さず、厚労省母子保健課長からの文書(平成13年1月)を根拠として、これらの医療を行わないように指導してきた。AID以外の第三者が関与する生殖補助医療が実際に行われている現状も考慮し、本会としては、どのような議論をすることになるか?
   倉澤 健太郎委員:国が必要な制度を整備した時に備えて、本会が事前に対応しておくことは可能と考える。
   久具 宏司委員:学会内部で議論を進め、積極的に意見表明などを行うべきかどうか、慎重に検討することが必要と考える。
   苛原  稔委員長:親子の関係に問題が無いとはいえ、実際に卵子提供による子供が生まれている現状を放任すると、より商業主義的治療が先行しないか懸念している。監督官庁とも意見交換を行いながら、本会としての今後のあるべき姿、リスクを公表すべきと考える。
   倉澤 健太郎委員:ODネットによる第三者からの卵子提供での出産例も報告されたこの機会に、議論を再開することは良いきっかけだと思う。実施の是非ではなく、実施する場合の制度の整備について議論することが適切と考える。
   苛原  稔委員長:学会だけでは決められない課題もあり、必要な制度の整備に関しても検討が必要と考える。

5. 凍結胚の現状把握とそれに伴う課題の検討に関して
 苛原委員長より、各ART施設で保管されている凍結胚と、それに伴う課題について検討する必要性が提案され、登録・調査小委員会で検討することとなった。
   苛原  稔委員長:臍帯血バンクの破綻に伴い、保存されていた臍帯血が不法に売買された事件と類似の懸念が凍結胚に関してもあると考えている。
   石原  理委員:膨大な凍結胚を個別にトレースすることは、膨大なコストが必要で、実施している国は無い。一方、我が国のように定期的な現状把握を行っていない国は少数であり、まずは現状把握が必要と考える。未受精卵子の方が売買される懸念が大きく、これも同時に把握した方が良い。

6.大谷医師に対する本会会員資格停止処分取消および撤回の申入れについて
 苛原委員長より、着床前診断を推進する患者の会より、倫理委員長宛てに表記申し入れがあり、顧問弁護士と相談の上、対応を検討中であることが報告された【資料6】。

7. 医療法人小塙医院つくばARTクリニックにおける凍結胚の返還、現状保全命令に関して
 苛原委員長より、本会会員が運営する、医療法人小塙医院つくばARTクリニックに対して、夫の死後、その妻から凍結胚返還の依頼および凍結胚の現状保全命令があり、本会へ相談されたため、顧問弁護士と慎重に相談を行っていることが報告された。
   倉澤 健太郎委員:胚の特殊性をどこまで認識しているのか、改めて考える必要がある。摘出臓器や胆石の石を患者が持って帰りたいと言った場合と同列に、胚も患者さんに渡して良いのか、胚は特別なのかという議論である。死後生殖の是非に関する議論とも並行して、検討が必要と思われる。
   石原  理委員:死後生植を禁止していない国もあり、本会は禁止というより、実施できないことを前提に見解を作ってきている。
   苛原  稔委員長:凍結胚の管理に関する検討とも併せて、検討が必要と認識される。ひとまず、「第三者が関与する生殖補助医療に関する小委員会」で議論し、必要なら、別の委員会を立ち上げることも検討したい。

8. NIPT臨床研究の総括について
 NIPTコンソーシアムを代表して、関沢委員から説明があった。
   関沢 明彦委員:NIPTを臨床研究として行うことの終了を提案したところ、研究結果をまとめるように指示されたので、コンソーシアムから発表した学術論文をまとめ、総括報告書(案)を作成した【資料7】。
   苛原  稔委員長:この報告書を日本医学会・本会の最終報告とするのか、コンソーシアムに含まれていない施設の研究も含む報告書を作成するのか?
   久具 宏司委員:客観的なデータがまとまっているので、理事会で臨床研究終了に関する議論を始めていただきたい。非コンソーシアムの施設からも報告書を受け取り、それらをまとめて本会の最終報告書を作成したい。
   苛原  稔委員長:臨床研究を終了したその後の体制はどうか?
   久具 宏司委員:現状をほぼ維持しながら登録制に移行したい。遺伝カウンセリングの重要性も示されており、どんな施設でもNIPT実施可能とはならないものと考える。
   関沢 明彦委員:学会を退会するとNIPTを自由に実施できて、学会ルールを守っている会員ができないのはおかしい、という意見がある。
   倉澤 健太郎委員:現状維持のままだと、未認可実施施設でのNIPTが継続される公算が高くなる。
   久具 宏司委員:人類遺伝学会、小児科学会を含めた現在の医学会の枠組みで議論することが必須であり、本会と人類遺伝学会、小児科学会が認める認定制度によってNIPTを実施できる人、施設の認定をしているので、本会のみの意見で現状を変更することはできない。産婦人科医以外も遵守する現在の医学会の枠組みで制度を作っていることも認識しておく必要がある。
   苛原  稔委員長:今後、小委員会にて慎重に制度設計を継続して検討していただきたい。

9. その他
   杉浦 真弓委員:PGS研究が進んでいる現在、RCTの検討と同時に倫理的議論も進めていかないといけないと考えている。
   三上 幹男副委員長:臨床研究審査小委員会から、各データの二次利用に関する申請書を会員が本会HPからダウンロードできるようにして、そのことを会員に対して周知したい。【資料5】。「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に則って臨床研究審査小委員会に倫理審査委員会の役割を持たせるために、一般の立場を代表する委員の追加委嘱をしたい。一般の方にお願いするため、今後の委員会の日程、内容により個別に委員を人選し、委嘱、解委嘱する必要があるため、人選を小委員会にお任せいただきたい。結果は倫理委員会、理事会にその都度報告することとしたい【資料4】。

 

 次回委員会は、平成30年2月13日(火)18時30分より、学会事務局会議室において開催予定であることを確認し、20時30分に会議を終了した。
今後の委員会開催予定:平成30年度:第1回4月17日、第2回5月15日
(8月以降は、理事会の開催予定に合わせて調整)

 

【資 料:】
1. 平成29年度「第2回倫理委員会」議事録(案)
2-1.「登録・調査小委員会」報告
2-2.ART 登録施設の閉鎖等に伴う登録辞退に関する内規
3.「着床前診断に関する審査小委員会」報告(答申書、照会文案、非承認通知案、議事録)
4.「臨床研究審査小委員会」メンバー表
5. 学会 HP 掲載場所の参考画面(議案3.「PGS に関する小委員会」、議案9.「臨床研究審査小委員会」共通)
6. 着床前診断を推進する患者の会からの、大谷徹郎医師会員資格停止処分に対する処分取消および撤回申入書
7-1. NIPT 臨床研究での成果、問題点、日本における出生前遺伝学的検査、特にNIPT の実施に関する提言(要約)
7-2. NIPT コンソーシアムとして取り組んだ臨床研究に関する報告書
8. 報道記事など

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