女性の再婚に関する民法の規定に基づき、産婦人科医が医学的見地からの証明書の作成を求められます。民法の改正案は参議院で可決され、施行日は6月7日となりますので、証明書は6月7日から作成ください。施行日前に証明書を作成されても、戸籍の窓口では用いることができません。
会員各位
会員へのお知らせ
女性の再婚に関する民法の規定に基づき、産婦人科医が医学的見地からの証明書の作成を求められることについて、日本産科婦人科学会(本会)会員にお知らせいたします。
平成27年12月16日、最高裁判所は、民法第733条(※1)が婚姻解消後の女性の再婚禁止期間を6箇月と定めているうちの、婚姻解消後100日を超える部分は過剰な制約であり憲法違反である、との判断を示しました。最高裁判所の判断を受け、民法第733条は、国会の審議を経た後、改正される見通しとなりました(添付1)。改正後の民法第733条によれば、婚姻解消後の女性の再婚禁止期間は100日と短縮されます。
さらに、民法第733条2項に該当する場合は、婚姻解消後100日を経過していなくても再婚することが可能となります。民法第733条2項に該当することは医師による証明書(添付2)をもって判断するよう運用されますので、婚姻解消後100日を経過する前の再婚を望む女性が、産婦人科医に対し上記証明書の発行を求めることが推察されます。
ここに本会は、「民法第733条第2項に該当する旨の証明書記載の手引き」(添付3)を提示し、会員各位にお知らせいたします。
一方、戸籍実務において、婚姻解消後300日以内の出生子は、民法第772条(※2)によって、前婚の婚姻中に懐胎したものと推定され、前夫の嫡出子としての取扱いがなされます。しかしながら、婚姻解消後に成立した妊娠であっても、早産のために婚姻解消後300日以内に出産に至る例があります。このような事例に対し、法務省は平成19年5月7日、婚姻解消後に懐胎したことを示す医師の証明書があれば、母の嫡出でない子又は現夫の子として出生の届出が出来るとの民事局長通達を発出しました(添付4)。本会は日本産婦人科医会と協議の上、平成19年5月7日、「懐胎時期に関する証明書記載の手引き」を定め、会員各位にお知らせしました。
今回、民法第733条が改正され、女性の再婚禁止期間が100日と短縮されることにより、婚姻解消後に成立した妊娠で婚姻解消後300日以内に出産する事例が増加することが予測されます。ここに改めて、「懐胎時期に関する証明書記載の手引き」(添付5)を提示し、会員各位にお知らせいたします。
なお、法務省では、民法の改正を待つことなく、すでに最高裁判所の判決の直後に、婚姻解消後100日を経過した女性の再婚に伴う婚姻届を受理するよう、全国の自治体に通知を発出しています。また、民法第733条の改正法案が成立すると、日を経ずして施行される見通しですが、改正民法の施行日より前の「民法第733条第2項に該当する旨の証明書」の作成はお控えください。
※1民法第733条(再婚禁止期間)〔現行〕
女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚することができない。
2.女が前婚の解消又は取消しの前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。
※2民法第772条(嫡出の推定)
妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する 。
2.婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する 。
平成28年5月27日
公益社団法人 日本産科婦人科学会
理事長 藤井 知行