公益社団法人 日本産科婦人科学会

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HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種の早期の勧奨再開を強く求める声明

更新日時:2018年6月15日

平成29年12月9日

公益社団法人 日本産科婦人科学会
理事長 藤井 知行

 日本産科婦人科学会は、女性のがんの中でも、特に20~40歳代の働き盛りや子育て世代の若年女性が多く罹患し、国内において最近10年間で死亡率が増加傾向にある子宮頸がんの予防対策を急務と考え、尽力しております。
 子宮頸がんの予防戦略に、一次予防としてのワクチン接種と二次予防としての検診の両者が必須であることは世界的なエビデンスであり、私どもは検診受診率の向上と共に、HPVワクチンの普及を促進してまいりました。
 しかしながら、HPVワクチンは平成25年4月に予防接種法に基づき定期接種化されたにもかかわらず、接種後に様々な症状が報告されたことにより、わずか2ヶ月後に接種の積極的勧奨が中止され、その後も一部の研究者の科学的根拠のないデータや報道等により、国民の正しい理解を得られないまま、すでに4年半もの長期にわたり勧奨が再開されないままとなっております。
 これにより平成22年度から公費助成対象であった平成6~11年度生まれの接種率が70%程度であったのに対して、平成12年度生まれ以降では接種率が劇的に低下し、このままでは平成12年度生まれ以降の女性はワクチン導入前世代と同程度の子宮頸がん発生のリスクに戻ってしまうことが推計されています。WHOは最新の世界各国における解析結果と科学的根拠に基づき、HPVワクチンの安全性と有効性を繰り返し確認する一方で、日本において若い女性が本来予防し得るHPV関連がんのリスクにさらされている状況を危惧し、安全で効果的なワクチンが使用されていない日本の政策決定を批判しています。
 世界に目を向けると、ワクチン接種を国のプログラムに早期に導入した国々では、接種世代におけるHPV感染率の劇的な減少と前がん病変の有意な減少が示され、さらに子宮頸がんの原因となるHPV型の90%以上をブロックし得る9価ワクチンの導入や15歳未満に対する2回接種の推奨などが進んでおり、我が国は子宮頸がんの一次予防の観点で世界に大きく遅れをとっております。
 最近になり、日本においても接種世代における有意なHPV感染率の低下や細胞診異常の減少などが明らかにされてきています。さらに平成29年11月の第31回副反応検討部会において発表された厚生労働省のHPVワクチンの効果に関する推計によると、ワクチン接種により期待される子宮頸がん罹患者数の減少(生涯累積罹患リスクによる推計)は10万人あたり859~595人、期待される子宮頸がん死亡者数の減少(生涯累積死亡リスクによる推計)は10万人あたり209~144人であり、接種により多くの子宮頸がんの罹患や死亡の回避が期待できることが示されました。このまま勧奨を再開せず接種率がゼロに近い世代が拡大し続ければ、将来、ワクチン接種を勧奨しなかったことに対して、不作為責任を問われることも危惧されますので、私どもは学術団体(アカデミア)として、国民と行政に対して正確な科学的情報を発信する責務があると認識しております。
 子宮頸がんは、現在、女性の74人に1人が罹患し、340人に1人が子宮頸がんで死亡しています。本会は、将来、先進国の中で我が国に於いてのみ多くの女性が子宮頸がんで子宮を失ったり、命を落としたりするという不利益がこれ以上拡大しないよう、国に対して、一刻も早くHPVワクチン接種の積極的勧奨を再開することを強く求めます。また国民にHPVワクチンについて正しい理解をしていただくために、今後も最善を尽くしてまいります。

以上

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