公益社団法人 日本産科婦人科学会

English
産科・婦人科の病気
SUB MENU
Human+

コピーライト

本サイトに掲載されている情報、写真、イラストなど文字・画像等のコンテンツの著作権は特段の記載がない限り、公益社団法人日本産科婦人科学会に帰属します。

非営利目的かつ個人での使用を目的として印字や保存を行う場合やその他著作権法に認められる場合を除き、本会の許諾なくWEBサイトのデータの一部又は全部をそのまま又は改変して転用・複製・転載・頒布・切除・販売することを一切禁じます。

月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)

更新日時:2025年1月30日

月経前症候群(PMS)はどのような病気ですか?

月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)は、月経の前に現れるこころとからだの不調です。さまざまな症状が月経前に3~10日間くらい続きますが、月経が始まると自然に軽快・消失します。
日本人女性の70~80%が月経前に何らかの不調を自覚しており、5%は重い月経前症候群で日常生活に困難を感じています。月経前症候群は、特に思春期の女性で多いといわれています。

月経前症候群の原因は?

はっきりした原因は分かっていませんが、女性ホルモンの変動が影響しているといわれています。女性の月経周期では、排卵してから月経が発来するまでの期間(黄体期)に、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2種類の女性ホルモンが、多量に分泌されます。この黄体期の後半に、血液中のエストロゲンとプロゲステロンが急激に低下すると、脳でホルモンや神経伝達物質のバランスが乱れ、こころの不調が現れると言われています。一方で、脳内のホルモンや神経伝達物質は、女性ホルモン以外にも、ストレスなど様々な要因の影響を受けています。このように月経前症候群はいくつもの要因が重なり合って発症すると考えられています。

月経前症候群の症状は?

①こころの症状

情緒が不安定、イライラする、気分が落ち込む(抑うつ)、不安、不眠・眠気(睡眠障害)、集中力が低下する

②からだの症状

のぼせ、偏食や過食、めまい、からだがだるい(倦怠感)、お腹・頭・腰が痛い、むくみ、お腹や乳房が張る、便秘

特にこころの症状が重く、日常生活も困難な場合は、月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder : PMDD)と診断されることもあります。

月経前症候群の診断は?

上に述べたような症状が、毎月決まって月経の前に現れ、月経が始まると和らぐことの確認が大切です。そこで日々の症状を症状日誌に記録してもらい、月経の周期と関連するか確認します。こころの症状がうつ病といった精神的な病気でないか、確認することも重要です。

月経前症候群の治療は?

1.薬によらない治療法

月経前症候群とうまく付き合うために、自分のリズムを知り、気分転換やリラックスする時間をつくったり、心地良いと思えるセルフケアを探してみることをお勧めします。まず症状日誌を記録し、いまの状態を理解することで、症状に対処しやすくなります。症状が重い場合は、仕事の負担を減らすことが、治療になるときもあります。
ふだんの生活では、穀類(玄米・全粒粉パン)や野菜など食物繊維の多い複合炭水化物、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、ビタミンB6を、積極的に摂取するよう勧められています。一方で、精製された糖(単純炭水化物)・アルコールの摂取や、喫煙は控えたほうがよいといわれています。

2.薬による治療

①低用量ピルで排卵を抑える

月経前症候群の主な原因は、排卵の後に、女性ホルモンが大きく変動することです。そこで低用量ピルで排卵を止め、女性ホルモンの変動を少なくしてあげると、月経前症候群の症状は軽快します。
低用量ピルは一時的に排卵を止めるもので、服用をやめれば排卵は速やかに回復します。副作用が少なく、その後の妊娠・出産にも影響しません。低用量ピルにはいくつか種類がありますので、担当医にご相談ください。

②脳内のセロトニンを増やす

脳でセロトニンという神経伝達物質が減少すると、気持ちが不安定になり、こころの症状が出やすいといわれています。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を用いて、脳内のセロトニンを増やすことで、月経前症候群の症状が軽快します。海外ではSSRIによる治療が主流になりつつあります。

③漢方薬を用いる

患者さんの症状や体質(証)に合わせて、漢方薬を使用します。加味逍遥散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、抑肝散などが、よく処方されています。

④痛みやむくみに対処する

痛みに対して鎮痛剤、むくみなど水分の貯留症状に対して利尿剤を使用することもあります。

このページの先頭へ