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流産・切迫流産

更新日時:2025年1月30日

流産はどのような状態ですか?

流産は、妊娠したにもかかわらず、早い時期に妊娠が終了してしまう状態です。妊娠22週より前に生まれた赤ちゃんは、お母さんの子宮の外では生きていけません。そこで日本では、妊娠22週より前に終結した妊娠を、流産と呼んでいます。
妊娠の約15%は自然流産に終わります。流産率は年齢とともに上昇し、40歳を過ぎると妊娠しても40%以上が流産するといわれています。妊娠したことがある女性のうち、38%が流産を経験しているという報告もあるように、流産は決してまれではありません。

流産の原因は?

妊娠12週未満の流産(早期流産)で、最も多い流産原因は赤ちゃんの異常です。流産した組織(将来胎盤になる絨毛組織)の染色体を調べると、約80%に異常を認めたと報告されています1)。この場合、精子と卵子から受精卵(胚)ができる段階で、流産する運命がすでに決まっていたことになります。赤ちゃんの染色体異常は、ほとんどが偶然のできごとです。「また流産を繰り返すかもしれない」と過度に心配なさる必要はありません。
一方で、赤ちゃんの染色体異常は、お母さんの年齢と関係します。40歳代の流産率の高さは、胚の染色体異常の頻度が上昇するためです。何度も流産や死産を繰り返す場合(不育症)は、お母さんに妊娠を継続しづらい何らかの病気が潜んでいることがあります。子宮の中で感染が起こったり、子宮頸管無力症や自己免疫疾患があったりすると、妊娠12週以降でも流産することがあります(後期流産)。

流産の分類は?

流産にはいくつかの分類があります。

原因による分類

自然流産

自然に起こってしまう流産のことをいいます。流産と診断され、子宮内容除去術(流産手術)が行われた場合も、自然流産に含まれます。

人工流産

いわゆる「人工妊娠中絶」のことです。母体保護法指定医が、母体を保護する目的で行う流産です。

感染流産

子宮内に細菌などが感染して、流産が引き起こされた状態をいいます。放置すると、感染が全身に広がることもある(敗血症)ので、注意が必要です。

症状や所見による分類

稽留流産

出血や腹痛がないまま、子宮内で赤ちゃんが亡くなっている状態です。超音波検査で初めて流産していることに気づきます。流産した組織は、自然に排出されるのを待つ場合と、子宮内容除去術(流産手術)を行う場合があります。流産手術の方法は、掻把法から吸引法へ移行している施設が多いようです。

進行流産

子宮の出口(子宮頸管)が開き、出血も増えるなど、流産が進み始めている状態です。いずれ流産した組織は、自然に排出されることが多いです。ただ、出血や腹痛が強い場合は、子宮内容除去術(流産手術)が必要になることもあります。

進み具合による分類

生化学的妊娠

尿や血液の検査で妊娠反応が陽性になったものの、超音波検査で着床の部位(胎嚢)を確認する前に、月経様の出血が起こり、流産してしまった状態です。妊娠検査薬で気づかなければ、ふだんの月経と生化学的妊娠を見分けるのは難しいかもしれません。特に治療は必要ありませんし、そもそも日本では、生化学的妊娠を妊娠や流産の回数に含めていません。

不全流産

流産した組織が排出しかけているものの、その一部が子宮の中に残っており、出血や腹痛が続いている状態です。子宮内容除去術(流産手術)が必要なことが多いです。

完全流産

流産した組織が、すべて自然に排出された状態です。出血や腹痛は軽快していることが多く、追加の処置も必要ありません。

回数による分類(反復流産と習慣流産)

反復流産

自然流産を2回繰り返した場合を「反復流産」と言います。流産を2回繰り返す頻度は、2~5%といわれています。なお、生化学的妊娠は流産の回数に含めません。

習慣流産

自然流産を3回以上繰り返した場合を「習慣流産」と言います。流産を3回以上繰り返す頻度は、約1%といわれています。
 
流産を繰り返す不育症のリスク因子として、子宮の形態異常や、全身性エリテマトーデス・抗リン脂質抗体症候群といった自己免疫疾患、甲状腺などのホルモンの異常、夫婦いずれかの染色体の構造異常などが知られています。一方で、不育症の精密検査を行っても、半数以上は原因不明といわれています。

流産後に気をつけることは?

もし前回の流産から、次の妊娠までの間隔が短くても、流産の確率が高まることはありません。したがって、流産後にわざわざ避妊期間を設ける必要はなさそうです。
ただ、流産後の女性は気分が落ち込みやすく、不安も強いといわれています。気持ちが落ち着くまで、次の妊娠を少しお待ちになることもあって良いと思います。
血液型がRh(D)陰性(いわゆるRhマイナス)の方は、次の妊娠に備えて抗D免疫グロブリンを注射します。

切迫流産はどのような病気ですか?

妊娠22週未満で、子宮内で赤ちゃんが生存しているのに、出血や腹痛など流産が進みそうな徴候を認めた場合を、切迫流産といいます。切迫流産に対して、安静にしたり、くすりを投与したからといって、流産を予防する効果はなさそうです。それでも重労働や長時間労働は避けた方が良いと思われますので、安静や勤務の緩和が必要か、主治医とご相談ください。厚生労働省の 母性健康管理指導事項連絡カード もご活用いただけます。

妊娠初期に少量の出血があったら?

妊娠の初期には、軽い腹痛を感じたり、少量の出血を認めることがしばしばあります。もし少量の出血に気づき、すぐに産婦人科を受診したとしても、有効な対処法はありません。少量の出血や軽い腹痛であれば、まずはご自宅で安静になさるのが良いと思います。ただし、月経のような多めの出血があったり、腹痛がひどい場合は、夜間や休日であっても産婦人科へご連絡ください。

最後に

流産はとてもつらく悲しい経験です。「次もまた流産したらどうしよう」と不安に思われるかもしれません。そこで1つお知らせしたいのですが、次の妊娠で無事に出産できる確率を、流産の回数別に調べてみると、2回流産で80%、3回流産で70%、4回流産で60%、5回流産で50%だった、という報告があります2)。将来、妊娠・出産できる可能性は、ちゃんと残されています。
今回の流産を乗り越え、次の妊娠へ臨むにあたり、気持ちの持ち方はとても大切といわれています。ご家族や周囲のサポートを受けながら、前向きな気持ちで妊娠・出産に取り組んでほしいと思います。
 
日本産婦人科医会:「妊娠・出産のための動画シリーズ」
 
【参考文献】
1) Hogge WA. The clinical use of karyotyping spontaneous abortions. Am J Obstet Gynecol.
2) Katano K. Peripheral natural killer cell activity as a predictor of recurrent pregnancy loss: a large cohort study. Fertil Steril.

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