令和2年5月2日
会員 各位
日本産科婦人科学会 理事長 木村 正
日本産婦人科医会 会 長 木下勝之
新型コロナウイルス感染症が拡大する中、通常の産婦人科診療においても十分な予防策を講じる必要が出てきています。
ニューヨークの病院で全分娩患者にPCR検査(ユニバーサル・スクリーニング)を行ったところ、症状のない妊婦の14%が陽性であったことが報告され(Sutton D, N Engl J Med. 2020 Apr 13. https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMc2009316)、国内でも無症状の入院患者の約6%が陽性であったことが、報道機関より公表されています。
これらは、日々の診療において接する多くの一般患者の中に、一定数の新型コロナウイルス陽性者が存在することを示しています。学会、医会としても行政に対し幅広い検査の実施を要望しているところですが、我が国におけるPCRの実施件数は少なく、また、検査陽性の無症状妊婦受け入れ体制の整備も不十分である現時点では、全ての施設にユニバーサル・スクリーニングを導入することは困難で体制整備を急がねばなりません。
無症状の新型コロナウイルス感染者が一定数存在する現在、日常診療において、医療従事者が意識せずに無症状感染患者(妊婦)に診療を行っても就業制限の対象にならないことが、医療崩壊を防ぐ上においても重要になってきています。厚生労働省では、医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応として、予防策ごとに3段階のリスク分類を公表(4月7日付事務連絡)しています。十分な予防策を講じていれば、長時間の濃厚接触があった患者(妊婦)が、後に新型コロナウイルス感染症と診断された場合でも、常に就業制限に至るとは限りません。
そこで、厚生労働省の事務連絡をもとに就業制限の判断基準を作成しました。また、すでに医会が公表している産婦人科診療における標準感染予防策(スタンダード・プリコーション)とともに、ご参考にしていただければと思います。
以上
<参考資料>
・医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応について(厚生労働省 4月7日付事務連絡)
・濃厚接触の判断基準/産婦人科診療における標準感染予防策