公益社団法人 日本産科婦人科学会

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子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために

更新日時:2021年1月8日

世界的な公衆衛生上の問題「子宮頸がんの排除」に向けたWHOスライドの日本語翻訳版を掲載しました。以下のバナーからパワーポイントスライドをダウンロードし、ご利用下さい。

より詳しい情報は、下のバナーからご覧いただけます。

 

 


『子宮頸がんとHPVワクチンに関する最新の知識と正しい理解のために』

初版 2018年3月12日
第2版 2019年12月7日
第3版 2020年7月10日
第3.1版 2020年7月21日
第3.2版 2021年1月8日

1. 子宮頸がんとHPV

1)日本における子宮頸がんの最近の動向はどうなっていますか?

 子宮頸がんは年間約1万人が罹患し、約2,800人が死亡しており、患者数・死亡者数とも近年漸増傾向にあります。特に、他の年齢層に比較して50歳未満の若い世代での罹患の増加が問題となっています。

子宮頸がん説明図

子宮頸がん説明図

2)子宮頸がんはどのようにして起こるのですか? どのように予防できるのですか?

 子宮頸がんの95%以上は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因です。子宮頸部に感染するHPVの感染経路は、性的接触と考えられます。HPVはごくありふれたウイルスで、性交渉の経験がある女性のうち50%~80%は、HPVに感染していると推計されています。性交渉を経験する年頃になれば、男女を問わず、多くの人々がHPVに感染します。そして、そのうち一部の女性が将来高度前がん病変や子宮頸がんを発症することになります。
 HPVに感染してから子宮頸がんに進行するまでの期間は、数年~数十年と考えられます。HPVに感染した女性の一部は、感染細胞が異常な形に変化して、前がん病変を発症します。HPVの作用による細胞の異常は、軽い異常(軽度前がん病変)が起こり、その中の一部は、さらに強い異常(高度前がん病変)に進行します。
 これらの異形成は、一般的に症状が出現しないため、「子宮頸がん検診」で見つけられます。しかし、がん検診を受診しないと、気づかれないまま、前がん病変から子宮頸がん(浸潤がん)に進行することがあります。
 発がん性HPVの中で、とくに、HPV16型、HPV18型は特に前がん病変や子宮頸がんへ進行する頻度が高く、スピードも速いと言われています。しかし、HPV16型、HPV18型の感染は、HPVワクチンによって防ぐことができます。このように、子宮頸がんでは、原因であるHPVに感染しないことによってがんにならないようにすること(1次予防)と、がん検診によるスクリーニングでがんを早期発見・早期治療し、結果的に子宮頸がんによる死亡を予防すること(2次予防)ができます。このように子宮頸がんは、最も予防しやすいがんであり、がん予防の知識が大切となる病気です。

子宮頸がん説明図

3)子宮頸がんの治療法は? 治療後の後遺症にはどんな症状がありますか?

 前がん病変やごく初期の早期がんの段階までに発見されれば、子宮頸部円錐切除術による子宮の温存も可能です。しかしながら円錐切除術はその後の妊娠における流産・早産のリスクを高めたり、子宮の入り口が細くなったり閉じてしまう可能性などのリスクを伴い、将来の妊娠・出産に影響が出る可能性があります。また、円錐切除術後に再発することもあり、適切な切除範囲を決めることが重要なので、婦人科腫瘍の専門医がいる施設での実施をお奨めします。

子宮頸がん説明図

 円錐切除除術では子宮頸部を円錐状に切除するので、子宮全摘出術と異なり子宮頸部の一部と子宮体部は温存されますので、その後の妊娠が基本的には可能です。日本では年間約14,000人の方がこの手術を受けており、そのうち約1,300人が手術後に妊娠しています。
 一方浸潤がんに対しては根治手術(子宮や卵巣を摘出・リンパ節を広く郭清)や放射線治療、抗がん剤による化学療法などが選択されます。子宮頸がんの治療成績はかなり向上してきていますが、依然として進行症例の予後は不良であり、またこれらの治療により救命できたとしても、妊娠ができなくなったり、排尿障害、下肢のリンパ浮腫、ホルモン欠落症状など様々な後遺症で苦しむ患者さんも少なくありません。

2. HPVワクチン

1)日本で承認されているHPVワクチンはどのようなものですか?

 国内で承認されているHPVワクチンは2価と4価の2種類があります。2価ワクチンは子宮頸がんの主な原因となるHPV-16型と18型に対するワクチンです。一方4価ワクチンは16型・18型と、良性の尖形コンジローマの原因となる6型・11型の4つの型に対するワクチンです。これらワクチンはHPVの感染を予防するもので、すでにHPVに感染している細胞からHPVを排除する効果は認められません。したがって、初めての性交渉を経験する前に接種することが最も効果的です。現在世界の80カ国以上において、HPVワクチンの国の公費助成によるプログラムが実施されています。なお、海外ではすでに9つの型のHPVの感染を予防し、90%以上の子宮頸がんを予防すると推定されている9価HPVワクチンが公費接種されており、日本では2020年7月21日に、厚生労働省より製造販売が承認されましたが、まだ定期接種ではなく、任意接種としての流通もしていません(2020年12月現在)。詳細はこのWEBページに追加した「3.2020年10月以降の最新情報」をご参照下さい。

2)HPVワクチンの効果は国内外でどのように示されているのですか?

 HPVワクチン接種を国のプログラムとして早期に取り入れたオーストラリア・イギリス・米国・北欧などの国々では、HPV感染や前がん病変の発生が有意に低下していることが報告されています。これらの国々では、ワクチン接種世代と同じ世代でワクチンを接種していない人のHPV感染も低下しています(集団免疫効果といいます)。またフィンランドの報告によると、HPVに関連して発生する浸潤がんが、ワクチンを接種した人たちにおいては全く発生していないとされています。
 最近の報告では、HPVワクチンと子宮頸がん検診が最も成功しているオーストラリアでは2028年に世界に先駆けて新規の子宮頸がん患者はほぼいなくなるとのシミュレーションがなされました。世界全体でもHPVワクチンと検診を適切に組み合わせることで今世紀中の排除(症例数が人口10万あたり4人以下になることを言う)が可能であるとのシミュレーションがなされました。日本においてこのままHPVワクチンの接種が進まない状況が今後も改善しないと、子宮頸がんの予防において世界の流れから大きく取り残される懸念があります。

子宮頸がん説明図

 国内においても複数のHPVワクチンの有効性についての研究が進行中です。
 新潟県で行われている研究では、ワクチンを接種した20歳~22歳の女性においてHPV-16型・18型(HPVワクチンによる効果が期待される型)に感染している割合が有意に低下していることがすでに示されています。

子宮頸がん説明図

 秋田県、宮城県における研究では、20〜24歳の女性の子宮頸がん検診において異常な細胞が見つかる割合が、ワクチン接種者では非接種者と比較して有意に少ないことが判明しています。日本対がん協会のデータを用いた研究からは、20〜29歳の女性において子宮頸部の前がん病変と診断される割合はワクチン接種者で有意に少ないことが示されました。
 松山市における研究ではワクチン接種世代では20歳時の子宮頸がん検診において前がん病変が見つかる割合が有意に減少していることが示されました。

子宮頸がん説明図

 他にも前がん病変からのHPV16型・18型の検出がワクチン接種世代で減少していることも報告されています。

3)HPVワクチンの安全性はどう評価されているのですか?

 HPVワクチンは接種により、注射部位の一時的な痛み・腫れなどの局所症状は約8割の方に生じるとされています。また、注射時の痛みや不安のために失神(迷走神経反射)を起こした事例が報告されていますが、これについては接種直後30分程度安静にすることで対応が可能です。
 平成29年11月の厚生労働省専門部会で、慢性の痛みや運動機能の障害などHPVワクチン接種後に報告された「多様な症状」とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されておらず、これらは機能性身体症状と考えられるとの見解が発表されています。
 また平成28年12月に厚生労働省研究班(祖父江班)の全国疫学調査の結果が報告され、HPVワクチン接種歴のない女子でも、HPVワクチン接種歴のある女子に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する人が一定数(12〜18歳女子では10万人あたり20.4人)存在すること、すなわち、「多様な症状」がHPVワクチン接種後に特有の症状ではないことが示されました。さらに、名古屋市で行われたアンケート調査では、24種類の「多様な症状」の頻度がHPVワクチンを接種した女子と接種しなかった女子で有意な差がなかったことが示されました。HPVワクチン接種と24症状の因果関係は証明されなかったということになります。

子宮頸がん説明図

 これまでに行われたHPVワクチンに関する多くの臨床研究を統合解析したコクランレビューでは、HPVワクチン接種によって短期的な局所反応(接種部位の反応)は増加するものの、全身的な事象や重篤な副反応は増加しないと報告されています。世界保健機関(WHO)も世界中の最新データを継続的に評価し、HPVワクチンの推奨を変更しなければならないような安全性の問題は見つかっていないと発表しています。

4)HPVワクチン接種後に「多様な症状」が現れた場合の治療の現状を教えてください。

 ワクチン接種後に何らかの症状が現れた方のための診療相談窓口が全国85医療機関(全ての都道府県)に設置されています。また平成27年8月には日本医師会・日本医学会より「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」が発刊され、接種医や地域の医療機関においての、問診・診察・治療を含む初期対応のポイントやリハビリテーションを含めた日常生活の支援、家族・学校との連携の重要性についても明記されました。
 平成29年7月の厚生労働省研究班(牛田班)の報告では、HPVワクチン接種歴があり症状を呈する方に対する認知行動療法と言われるような治療方法の効果に関する解析結果が示され、症状のフォローアップのできた156例中115例(73.7%)は症状が消失または軽快し32例(20.5%)は不変、9例(5.8%)は悪化したとされました。HPVワクチン接種の有無にかかわらず、慢性の痛みや運動機能の障害などの症状が長く続く患者さんの中には回復が難しい方がいるのも事実であり、早期から専門家による診療が必要と考えられます。
 今後は、このような思春期に多いとされる多様な症状を呈する患者さんに対しては、複数の診療科の専門家が連携して適切な治療にあたるとともに、社会全体で苦しんでいる患者さんをしっかり支えていくことが重要です。私たちは、HPVワクチンの接種の有無にかかわらず、こうした症状を呈する患者さんの診療体制のさらなる整備について、他の分野の専門家と協力して真摯に取り組んでまいります。

5)現在、接種の推奨が中止されているそうですが、実際に接種はできますか?
接種後に重篤な症状がおきたときに、救済制度はあるのでしょうか?

 HPVワクチンは平成25年4月に予防接種法に基づき定期接種化されました。現在、自治体から接種対象者に個別に接種を奨めるような積極的勧奨は中断されていますが、定期接種としての位置づけに変化はなく、公費助成による接種は可能です。詳しくは平成30年1月に厚生労働省がホームページに公開したリーフレットも参考にして下さい。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html

 また、お住まいの自治体の定期接種ワクチンの担当部署に問い合わせることもできます。万一接種後に重篤な有害事象が発生した場合は、予防接種法に基づく救済制度の申請は可能で、因果関係などの審査の後、必要な補償が受けられる場合もあります。

6)日本産科婦人科学会のHPVワクチンに関する考え方について教えてください。

 日本産科婦人科学会は、科学的見地に立って、子宮頸がんの予防戦略においてHPVワクチンと検診の両者は共に必須であると考え、これまでにHPVワクチン接種の積極的勧奨の再開を国に対して強く求める声明を複数回にわたり発表してきました。また本会および日本小児科学会などを含む17の予防接種推進専門協議会の関連学術団体は、HPVワクチン接種推進に向けた見解を国内外に発信しています。自治体がHPVワクチンは定期接種であることを対象者や保護者に対して告知する動きへの支持も表明いたしました。

http://www.jsog.or.jp/modules/statement/index.php?content_id=38

 さらに、これら子宮頸がんの予防戦略の早期実現に向けて、厚生労働省および内閣官房に対しても要望書を提出しております。その中では、HPVワクチンの積極的勧奨の一刻も早い再開に加え、積極的勧奨一時差し控えによりHPVワクチンを接種しないまま定期接種対象年齢を越えた女子に対する定期接種に準じた接種機会の確保や子宮頸がん検診受診勧奨強化、9価ワクチン普及と定期接種化、男子への接種の承認(中咽頭がん・陰茎がん・肛門がんなど男性のHPV関連がんの要望と集団免疫の強化のため)、さらには、関連学術21団体の要望書として文部科学省に小中学校でのがん教育の充実なども求めております。

http://www.jsog.or.jp/modules/important/index.php?content_id=13

http://www.jsog.or.jp/modules/news_m/index.php?content_id=749

 私どもは、これからも子宮頸がんとHPVワクチンに関する科学的根拠に基づく正しい知識と最新の情報を常に国民に向けて発信するとともに、今後、接種勧奨が再開された場合に、接種対象の女性とそのご家族に対して、接種医がワクチンのベネフィットとリスクの十分なインフォームドコンセントを行い、相互信頼関係の下に、希望する人が、接種を受けられる体制を構築していきます。
 将来、先進国の中でわが国だけが、多くの女性が子宮頸がんで子宮を失ったり、命を落としたりするという不利益が、これ以上拡大しないよう、日本産科婦人科学会は、ワクチン接種と検診という両者による子宮頸がんの予防およびこの病気の排除を皆様と共に目指していくべきと考えております。そのために、市民の皆様、メディア関係者の皆様との情報交換の場を今後も設けてまいります。そして今後も最新のデータをアップデート・発信し、国民1人1人のHPVワクチンに関する正しい理解と子宮頸がん予防推進の助けになるように努力してまいります。

3. 2020年10月以降の最新情報

①スウェーデンにおける4価HPVワクチン接種後の浸潤癌減少に関する報告

1.HPVワクチンによる子宮頸がん減少効果と最近の国内外の状況

 1) 浸潤子宮頸がんに対するHPVワクチンの減少効果について

 2020年スウェーデンから世界で初めて国家規模で浸潤子宮頸がんの減少効果を示す論文が発表されました。子宮頸がんの一歩手前である子宮頸部高度前がん病変の予防に対するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの有効性(感染減少)と効果(前がん病変減少)は、これまでに示されてきました。しかし、HPV ワクチン接種と接種後の浸潤子宮頸がんのリスクとの関連を示すデータは不足している状態でした。そこでスウェーデンで全国規模の人口統計と保健に関する登録を用いて、2006~2017 年の間に登録されている約167万人の 10~30 歳の女児・女性を対象とした追跡研究が行われました。追跡調査時の年齢、暦年、居住県、親の特性(学歴、世帯所得、母親の出生国、母親の病歴を含む)で調整を行い、4価HPV ワクチン接種と浸潤性子宮頸がんのリスクとの関連について評価が行われました。研究期間中での、子宮頸がんの罹患を 31 歳の誕生日までとして評価されました。子宮頸がんは、1回以上の4 価 HPVワクチンの接種を受けたことのある約53万人(ワクチン接種集団)中の19 人と、ワクチン接種を受けなかった約115万人(ワクチン非接種集団)中の 538 人で診断されました。ここから、子宮頸がんの累積発生率は、ワクチン接種を受けた女性では 10万人あたり 47 件、受けなかった女性では 10万人あたり 94 件と計算されました。追跡調査時の年齢のみで補正を行うと、ワクチン接種集団の非接種集団に対する発生率比は 0.51(95%信頼区間 [CI] :0.32~0.82となりました(49%の減少効果:信頼区間が1未満だと統計学的に意味あり)。他の関連が予想される因子でさらに補正を行うと、発生率比は 0.37(95% CI:0.21~0.57)となりました(63%の減少効果)。すべての関連因子で補正を行うと、発生率比は、推奨通りに17 歳になる前にワクチン接種を受けた女性では 0.12(95% CI:0.00~0.34)(88%の減少効果)、キャッチアップ接種(年齢が少し高いために無料接種が受けられなかった年代への接種)として17~30 歳で受けた女性では 0.47(95% CI:0.27~0.75)(53%の減少効果)となり、HPVワクチンの浸潤子宮頸がんに対する高い予防効果が示されました。つまり、スウェーデンの 10~30 歳の女児・女性において、4 価 HPV ワクチン接種は、国レベルでの大幅な浸潤性子宮頸がんのリスク減少と関連していました。

子宮頸がん説明図

②9価HPVワクチンの本邦での承認について

 9価HPVワクチンは、HPV6/11/16/18/31/33/45/52/58の9つの型の感染を予防しますが,これらの型のうちHPV16/18/31/33/45/52/58の7つの型は、子宮頸がんのみならず、女性の腟がんや男女ともに外陰がん、肛門がん、中咽頭がんなどの原因となります。また、HPV6・11型は男女の生殖器粘膜にできる良性のイボである尖圭コンジローマの原因の約90%を占めるとされています。9価HPVワクチンは2014年12月に米国で承認されて以降、現在では世界で80以上の国と地域で承認されています。米国ではすでに11-12歳の男女に国の正式なワクチンプログラム(定期接種)として接種が推奨され、9-14歳では2回接種が承認されています。日本では,2020年7月21日に、厚生労働省より製造販売が承認されました。日本の添付文書では、対象は9歳以上の女性のみで、効能・効果は子宮頸癌(扁平上皮細胞癌及び腺癌)及びその前駆病変(子宮 頸部上皮内腫瘍(CIN)1、2 及び 3 並びに上皮内腺癌(AIS)・外陰上皮内腫瘍(VIN)1、2 及び 3 並びに腟上皮内腫瘍(VaIN) 1、2 及び 3 ・尖圭コンジローマとなっています。世界的に9価ワクチンはその需要の高さより供給不足が指摘されており、日本での任意接種(自費で希望者が接種すること)がいつから可能になるかは不明ですが、接種者の副反応の全例調査が予定されています。国の正式なワクチンプログラム(定期接種)とするかについて、2020年8月より国の検討が開始されていますが、現時点では実現に時間を要すると考えられています。9価HPVワクチン普及を待って、定期接種の2価と4価ワクチン接種を逃してしまうことがないように定期接種対象者と保護者への情報提供は極めて重要です。

子宮頸がん説明図

③9価HPVワクチンと4価HPVワクチンの比較

 国際共同試験では、16–26 歳女性に対して9価HPVワクチン(7106人に投与)の効果について、4価HPVワクチン(7109人に投与)を対照として、無作為化比較試験(どちらのワクチンが接種されたかわからない臨床試験)が2007年から2009年にかけて18か国で行われました。結果として、従来の4価ワクチンと同等の子宮頸部の高度前がん病変及び上皮内癌や外陰・腟の上皮内病変を予防する効果に加え、新たなターゲットとなったHPV 31/33/45/52/58 による病変が97.4% 減少したことが証明されました(表参照)。

④9価ワクチンの安全性の検証は?

 可能性のある重大な副反応(9価HPVワクチンまたは4価HPVワクチンの自発報告で認められた接種が関連する可能性が高い症状)として、過敏症反応(アナフィラキシー、気管支痙攣、蕁麻疹等)、ギラン・バレー症候群、血小板減少性紫斑病、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)が挙げられていますが、発生数そのものが少ないため、その発生頻度は不明です。
 頻度の高い副反応としては注射部位の疼痛・腫脹・紅斑が挙げられます。国際共同試験において、対照の4価HPVワクチンでは接種後5日以内の注射部位の副反応が84.9%(7078症例中6012症例)であったのに対し、9価HPVワクチンでは90.7%(7071症例中6414症例)でした。特に疼痛は4価HPVワクチンでは83.5%(7078症例中5910症例)であったのに対し、9価HPVワクチンでは89.9%(7071症例中6356症例)でした。同試験に登録された日本人においては、注射部位の副反応が81.9%(127症例中104症例)、特に疼痛は81.9%(127症例中104症例)であり、外国人と比べて高率ではありませんでした。9-15歳女子を対象にした国内試験(V503-008試験)においては、接種後5日以内の注射部位の副反応が95.0%(100症例中95症例)、特に疼痛は93.0%(100症例中93症例)に認められました。(表参照)

子宮頸がん説明図

 国際的な臨床試験において失神の発現は認められませんでした。ただし、失神寸前の状態が3症例(3.0%)に認められています。ワクチン接種後に注射による心因性反応を含む血管迷走神経反射として失神が現れることがあるため、添付文書には、失神による転倒を避けるため接種後30分程度は座らせるなどした上で被接種者の状態を観察することが望ましいと記載されています。
 また、発生機序は不明ですが、ワクチン接種後に注射部位に限局しない激しい疼痛(筋肉痛、関節痛、皮膚の痛み等)、しびれ、脱力等があらわれ、長期間症状が持続する例が報告されているため、そのような異常が認められた場合には、神経学的・免疫学的な鑑別診断を含めた適切な診療が可能な医療機関への受診を促すなどの対応を行うことが求められています。

(参考)ワクチン接種ストレス関連反応(ISRR:Immunization stress-related response )という概念について
 世界保健機構 (WHO) は最近、ワクチン接種ストレス関連反応(ISRR:Immunization stress-related response )という概念を提唱しています。接種前・接種時・接種直後に見られる急性反応としての頻脈・息切れ・口喝・手足のしびれや、めまい・過換気・失神等、そして、接種後の遅発性反応としての脱力・麻痺・異常な動き・不規則な歩行、言語障害等の解離性神経症状的反応などが含まれています。ワクチンが直接の原因ではない症状も含む好ましくない事象(有害事象)とワクチンの接種に伴う免疫の付与以外の反応(副反応)を区別して評価することが重要です。

⑤2価もしくは4価接種後に9価HPVワクチンの追加接種は?

 既にHPVワクチン(2価もしくは4価)接種後に9価HPVワクチンの追加接種をすることについては、重篤な副反応の報告はないものの、WHOや米国予防接種諮問委員会(ACIP)及び米国疾病予防管理センター(CDC)では、すでに2価もしくは4価でHPVワクチン接種が終了している場合の追加接種については、すでに一番頻度の多いHPV 16/18型に対する免疫は獲得されており、5価が追加になることの効果は限定的であることと、異なる種類のワクチンを接種した場合の有効性と安全性のデータは限られていることから推奨はされていません。しかしながら2価もしくは4価ワクチン接種が完了していない場合については、なるべく同一薬で接種を完了することが望ましいものの、9価に切り替えて完了することも可能とも追記されています。また日本の9価HPVワクチンの添付文章でも、異なる種類のワクチンを交互接種した場合の有効性、安全性については十分なデータがないため、原則は同じワクチンで3回の接種を完了することとされています。

この解説の詳細については
・Part 1
子宮頸がん予防についての正しい理解のために子宮頸がんとHPVワクチンに関する最新の知識
・Part 2 子宮頸がん検診の最新の知識
・Part 3 HPVワクチン最新情報(浸潤子宮頸がんの減少効果や9価HPVワクチンについて)
をご覧下さい。


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