公益社団法人 日本産科婦人科学会

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令和2年度第5回倫理委員会議事録

更新日時:2021年5月24日

令和2年度第5回倫理委員会議事録

日 時:令和3年3月16日(火)午後6時~8時
*Web会議形式にて開催

出席者
 委員長:三上 幹男
 副委員長:苛原  稔
 委員・主務幹事:永松  健
 委 員:石原  理、岩佐  武、織田 克利、片桐由起子、久具 宏司、倉澤健太郎、
     桑原  章、桑原 慶充、小出 馨子、榊原 秀也、佐藤 健二、澤 倫太郎、
     柴原 浩章、関沢 明彦、竹下 俊行、松本 陽子、矢内原 臨、山上  亘
 オブザーバー:木村  正理事長、宮城 悦子臨床研究審査小委員会委員・審査委員長
 欠席者:阪埜 浩司
(敬称略)

<確認事項>
令和2年度第4回倫理委員会議事録(案)【資料1】
出席委員全員で前回の議事録の確認した。

<報告・協議事項>
1. 登録関係
(1)本会の見解に基づく諸登録<令和 3 年 2月 28 日現在>【資料2】
①ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する登録:94 研究(44 施設)
②体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録:623 施設
③ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録:623 施設
④顕微授精に関する登録:592 施設
⑤医学的適応による未受精卵子、胚(受精卵)および卵巣組織の凍結・保存に関する登録:(141 施設)
⑥提供精子を用いた人工授精に関する登録:12 施設

以下の報告が行われた。資料2に沿って説明。
*症例登録について、いいペースで登録が進んでいる。施設申請については、5年に1度の更新申請について、36施設が更新申請を行っている。安全調査票は例年通り各施設からの回収が進んでいる。

(2)着床前診断に関する臨床研究申請・認可について【資料3】

下記の報告が行われた。資料3に沿って説明。
〇施設、症例の認可申請
・施設申請175件《承認164施設(うち13施設は条件付)、照会9施設、審査中2施設》
・症例申請:973例《承認869例、非承認33例、審査対象外35例、取り下げ5 例、照会24例、保留2例、審査中5件》(承認869例のうち128例は条件付)

*2021年3月1日に第5回の着床前診断に関する審査小委員会を行った。
*今回は間隔が短かったこともあり新規申請数は少なかった。
*症例申請は新規が5例であり、施設内や第3者のカウンセリングの内容が不十分であった例があったので条件付き承認とした。施設申請は、新規が2件でその1件では要件が足りないことで照会とした。

〇説明書・同意書の問題点について
現在、着床前診断実施に際して使用されている説明書・同意書の内容について下記の問題がある施設がある。これらについて担当者に伝えて修正を行っていただく。
①日産婦での倫理委員会の承認を得ることについて、正しい記載への修正。
②日産婦の見解も古いバージョンとなっている。
③実施責任者名の変更も必要。
④日産婦への申請同意も追加。

〇見解改定小委員会について
PGT-M倫理審議会などについて見解改定小委員会のスケジュールや、今後必要な細則・内規の変更について議論を開始した。

2.ART施設実施責任者の変更に伴う照会について【資料4】

以下の議論が行われた。
*今回の更新変更の中に、責任者が変わるという申請があった。これは、ART施設に関する居抜きのような変更申請である。
*責任者が変わった場合には単純な変更として扱ってよいのかが議論となっている。現在は規定がないが、新規の申請と同様に研修の証明などを行っていただく方が良いのではないかと考えている。内規の改定を行い、実施責任者の変更に際して研修の証明書の提出を求めることができるようにしたい。
*これまで大学施設ではきちんとは行われてこなかったと思われるが、今後はきちんとしておく方が良いと思う。
*今後、こうした診療所の責任者の変更に関する案件は多く出てくると考えている。そのため、これを機に内規の中で規定するようにしたい。新規申請という考え方もあるが、これまで行ってきた施設について、改めて新規申請ということも適切ではない。
*今後不妊治療が公的保険の適用となることを踏まえて、ART施設認可について適切なシステムとしておくことが望ましい。

3.着床前診断が認可されていない施設において不適切な検査実施が予定されているという情報が小委員会に届いた件について【資料5】

以下の報告が行われた。
*地方連絡委員によるメイルによる事情聴取を行った。その結果では着床前診断を行う予定という事実はないという返事であった。また、着床前診断についての見解について理解しており、今後着床前診断の実施のための施設申請を予定しているとの回答であった。

4.着床前診断に関する審査小委員会主導の、データを二次利用する臨床研究について【資料 6】

以下の議論が行われた。
*着床前診断に関する審査小委員会の中で、着床前診断でこれまで集積されているデータを利用して転座カップルの流産率や理論値と実臨床データのすり合わせを行う解析を行いたいとの提案があった。PGTの症例データについて2015年まではまとめていたが、そのあとは紙ベースで保存されているままの状況なので、それを含めてデータ化してまとめるということも目的として、着床前診断に関する小委員会の活動として日産婦事務局に申請を行った。
*着床前診断に関する審査小委員会の事業として行う形とする。学会主導研究として進める。均衡型転座のカップルに焦点を置いた、着床前診断の検討や分離形式の現実の発生頻度についての検討は少ないとのことである。
*臨床研究審査小委員会の方では統合指針に向けた準備が進んでいない。学会主導の研究についての統合指針の中での取り扱いが不透明であるがその点は大丈夫か。
*統合指針がでるまでは、規約・内規の変更は難しいと思っている。それを念頭においてこの研究も考えてゆく。まず審査小委員会の着床前診断のデータは紙ベースで保存となっているのでそれを専門の知識のある方を雇って、デジタルデータに起こしてゆく作業をすすめる予定である。あくまでも日産婦の着床前診断に関する審査小委員会の事業としていく。 竹下委員:以前、同様の研究について提案が行われた際に、単独施設の研究であるという理由で却下となったことがあった。
*その当時には、日産婦自体が日産婦内の委員会の主導研究を審査するという体制が整っていなかったということがある。
*現在着床前診断の施設および事例の申請のシステムのオンライン化を目指して準備を進めており、このオンライン化と連動してデータベース構築もできるように進めたい。

5.「PGT-Mに関する倫理審議会」について【資料7】
*サーベイを送ってそれをまとめるという段階にきている。また、人類遺伝学会の理事会に参加して現在作成中の新たな申請審査体制についての説明を行って意見をいただいた。サーベイと関連学会から得た意見を取りまとめて最終案を確定したい。今後コアメンバーでの話し合いを行い見解改定につなげてゆく。

6.臨床研究審査小委員会について これまでに承認された実施中の臨床研究一覧は学会ホームページに掲載している。
https://www.jsog.or.jp/citizen/jsogpolicy-3

(1)知財が発生する可能性のある臨床研究の取り扱いについて専門委員会にご意見お伺いの件【資料8-1】

以下の議論が行われた。
*知的財産が絡む内容の研究について学会のデータベースの情報を使いたいという研究に対して、専門の方からの意見をいただいた。意見の内容として、そうした知財が絡む内容の研究を承認するのであれば、その際には学会も知財の権利にかかわるべきとのことであった。ただし、理事会ではこの点は定款細則にかかわるということで慎重な態度で進めるということになった。
*日産婦のデータベースはそういった知財が絡む場合にどのように対応するのかということの取り決めがない状態である。今後、統合指針を見据えて臨床研究審査小委員会の運営規約も変更する予定であるがこうした知財にかかわることも含めて議論を行う必要がある。
*現在の日産婦のデータベースは無償のボランティアベースである。そのため、日産婦学会が得たデータはパブリックドメインとしての取り扱いとなり、学会がそのデータについて収益を上げることは倫理的には許されないと思う。研究者の大学において、こうした学会のデータの利用に関して契約に基づく事前の調整がない限り本来は施設内のIRBに許可されない。通常、研究の開始にあたって、研究者と企業との間で知財に関する取り扱いについて知財管理委員会で取り決めを行うべきである。
*今回問題となっている研究申請については、大学は承認しているが、日産婦としては承認しないということで通知した。
*この件については、今後さらに倫理委員会でも議論を進めてゆく。

(2)様式5の改定に伴う、「18日本産科婦人科学会臨床研究審査小委員会規 約」に関する一部文中表記のマイナーチェンジについて【資料8-2、*参考資料】

以下の報告が行われた。
*日産婦のCOIにかかわる規則の変更に関連して、書式が旧様式5-1と5-2の書類から新たな書類の様式5になる。それに合わせて臨床研究審査小委員会の規則も変わる予定である。

(3)臨床研究審査小委員会のあり方について 以下の議論が行われた。
*PGT-Aの研究についてすでに矛盾が生じているように、倫理委員会の中での研究の審査について、倫理委員会の中の臨床研究審査小委員会が行っているということに問題がある。
*2期前までは臨床研究管理委員会が独立した委員会としてあり、その前は情報管理委員会がデータベース管理について対応していた。その後、現在のように倫理委員会の中に臨床研究審査小委員会が入った形となっている。つまり、以前は倫理委員会と独立した委員会として存在していた。着床前診断を倫理委員会が主導して行う場合に、倫理委員会内のものを倫理委員会内の委員会で審査するという問題点が発生している。今後はそうした問題を解決するためには研究倫理と生命倫理について分けて行ってゆく方が良いと考える。
*理事長の諮問機関として行う方がよい。今後はやはり独立した形のシステムになることがよいと考える。
*以前は臨床研究審査委員会で対応していた業務である。急に理事会で倫理委員会の中に入れるという話になり、変更となった。しかし、この倫理委員会は生命倫理的な事項を管理監督しているのであり、人を対象とした研究倫理の倫理委員会とは概念が異なる。
*日産婦におけるデータベースの登録事業が学会の中では研究扱いとして行われていてそれを学会自体が承認するという形で、一方でその上で施設から申請される研究はヒトを対象とした研究指針に基づいて進められているという状態である。そうした研究について統合指針の中での位置づけを今後明確にする必要がある。また、日産婦の中に統合指針に則った研究倫理委員会を作るのかどうかということからして考える必要がある。
*最初の臨床研究審査委員会での案件は凍結胚のデータを日産婦のデータを使って行いたいというものであったことを覚えている。当時は日産婦のデータを使うことについてそれほど制約はなかったが、最近は突然厳しくなった印象がある。臨床研究法の範囲に含まれる医師主導型の研究についてはこれまでのような各施設の倫理委員会は不要である。一方、統合指針に則った多施設共同研究について、研究倫理委員会は、地域で集約された施設にありそこでの審査に統合されるのではないかと思う。新しい統合指針の中では、学会が研究倫理委員会を持つという考え方はあまりなく、研究の代表者の地域での審査で行うということが想定されている。
*PGT-A研究が開始された当時は、この研究の研究倫理についてどこの研究倫理委員会での審査を行うのかということが議論になり、生命倫理に関わる内容を含むPGTの倫理審査を行うことの責任をどこが持つかということ自体が問題になった。
*生命倫理にかかわることは学会で判断して欲しいという形で門前払いとなってしまう傾向がある。そのため、施設ではできないそうした研究を行うための学会の研究倫理委員会は必要という考え方もある。施設の研究倫理委員会が審査をしたがらない研究をどこが審査するのかという矛盾が生じると考えている。また、統合指針の中では、臨床倫理委員会の位置づけをどうするのかということも分かりにくい。
*法律ではなく、指針による緩いやり方を維持しよう、指針で守っていこうというのが日本のスタンス。研究施設と研究者自身が最終的な責任をもつということが統合指針の考え方であると思う。そうすると学会が研究倫理の審査を行い責任を持つということはあまり想定されていないように感じている。
*各施設では産婦人科の生殖分野の専門家がいないため生命倫理が絡む生殖分野の審査が難しいということがある。一方で腫瘍はどの施設にも専門家がいるために審査が行われやすい。子宮移植についても、単独施設の研究倫理委員会で審査が行えるのかという点が懸念される。
*研究倫理委員会というときに今後は、何の研究倫理委員会ということが問題になり、各施設で特徴を持つ研究倫理委員会が出てくると予想される。
*日産婦として、どのような研究を扱う研究倫理委員会の運営を目指すのかということが重要となる。本倫理委員会は生命倫理を扱うのであって、今後研究倫理をどうするのかということはさらに、議論を進めてゆく必要がある。

7.NIPTについて
(1)無認定施設に関して

以下の報告が行われた。
*いくつかの無認定施設で勤務しているという報告があった日産婦会員に対して連絡をとり、注意を行うということをこれまで行ってきた。
*連絡に応じない医師があり、配達証明郵便を送ったが受け取り拒否で返ってきた。
*厚労省の議論が固まらない状況で、日産婦の改定指針の運用が凍結されていることもあり、本件に関しての対応は厚労省の専門委員会での検討結果を待って考慮することとする。

(2)テレビ番組に対する抗議に関して 以下の報告が行われた。
*NIPTに関する間違った情報をゲストの無認定施設の医師が発言しているバラエティー番組が放送されたことが確認されて、この件について当該テレビ局とBPOに抗議文を送ったところ、電話で釈明したいとのことであった。電話での釈明では先方は明らかな間違いは言っていないとの返事であるが、NIPTのような倫理的にナイーブな内容を扱ったことについては問題があったと認めている。注意喚起した意義はあったと考えている。今後の対応を注視したい。

(3)厚生労働省NIPT等の出生前検査に関する専門委員会の検討状況について【資料9、当日資料1】

以下の議論が行われた。
*NIPTの実施についての体制について、厚労省主導で出生前検査認証制度の運営委員会を作るということになった。受検体制については、日産婦で承認を得た新しい指針を土台にして策定していくということである。受検後の、陽性の結果の妊婦に対しての出生前検査を含む妊娠全般に関する相談支援のために女性健康支援センターに窓口を設置することになった。こうした厚生労働省側の動きに対して無認定施設が逆にそれを利用してしまい無認定を認めることになるのではないか、国が普及を進めているような印象を持たれないかという懸念のご意見をいただいた。
*日産婦の指針は一旦廃案となるということになる。そして、国が定めた体制の中でNIPTが実施されるということになる。日産婦の改定指針の廃止についてはこのシステムが動き出した段階でということを考えている。
*当初政府は個別の妊娠にかかわらないというスタンスであったが、今回の内容は大きな方針転換である。99年通知を変えるということは大きな変更である。懸念事項がいくつかある。一つは母体保護法との兼ね合いで14条をどのように考えるのか、女性健康支援センターについて予算規模が小さく少なすぎると思われ、この女性健康支援センターはどのような働きをするのか具体的な内容を確認する必要がある。今後運用してゆく中で課題は多く出てくると思う。
*今後も刻々と状況は変わってゆくので継続的に議論を行う場を設ける必要がある。本来出生前診断は、産婦人科医療であるので、委員会には産婦人科が多く入る形が必要と思う。小児科側の意見も重要であるが、あくまでも産婦人科医療として実施するものであるという点は重要である。
*妊婦さんにとって良いものをつくるということが優先されるべき。妊婦さんがたらいまわしにならないような制度となることを望む。必ずしも妊婦さんにとって良い制度を目指すという形になっていないことを残念に感じている。

8.PGT-Aに関する小委員会からの報告
(1)臨床研究の進捗状況について

以下の報告が行われた。
*3月の最初に中間検討会を小グループに分けて4回実施して、今後の進め方の意見を聞いた。3月1日までの症例について3月15日までに登録完了することを依頼した。モニタリングについては中央モニタリングと症例数が多い施設に対するオンサイトに分けて行う予定。12施設程度オンサイトで進めている。モニタリングの調査項目を定めて、それについて各施設に質問を行った。3段階に分けて結果の判定を行った。結果として、おおむね問題なく実施されていることが確認できた。ただ、カルテに同意をしたことの記載が抜けている施設もありそれに対しては注意を行う。3月中旬に検討会の形で、モザイクの取り扱いについてなどの議題について意見交換会をした。3月15日までの症例をまとめた上で、日産婦学会学術講演会の倫理企画セッションで報告する。現在の進捗として、妊娠転帰が判明しているものが1000例を超えていると予想している。

(2)「PGT-A臨床研究参加施設一覧」のクライエントに分かりやすい日産婦学会ホームページ掲載場所の検討について【資料10】

以下の議論が行われた。
*PGT-A研究に関する情報をみることができるページへのアクセスが分かりにくいとのご意見が出ている。
*現在研究結果が明らかではないため、実施施設についてあまり広く情報を出すことのデメリットもあるため、当面は現状のままとする。

9. 子宮移植について【当日資料3】

以下の報告が行われた。
*日本医学会の子宮移植倫理検討委員会の草案がまとまってきた。次回の10回目で議論がまとまる予定。理事会にかけられて成案としてまとまるが、これはあくまでも医学会としての意見である。まずは死体移植で臓器移植法の下で進める。生体移植については手術侵襲の問題はあるが、医学的倫理的な検討を行いながら可能との判断。脳死移植については、倫理的には可能であるが、法律の改定が必要となるため今は難しい。 現実的には生体移植を中心として進めるべきと考えており、倫理的にも許されるというご意見が出ていた。しかし、今後様々な問題を解決する必要がある。疾患としてはロキタンスキー症候群が対象。だが、将来は子宮摘出後女性も対象として検討という方向性。臨床研究として行うという形になると思われる。大学の研究倫理委員会にかけることになるが、日産婦とともに細かい部分を検討した上で施設の研究倫理委員会で検討という流れになる。

10.小児・AYA世代のがん患者に対する妊孕性温存療法研究推進事業について【資料11】

以下の議論が行われた。
*厚労科研の研究班が中心となり進んでいる。次期の倫理委員会において調査登録委員会内での委員会を作って進める予定。本件研究事業では制度として、患者に配偶子の保存について経済的支援を行うということが決定されている。
*死後生殖に関連して問題となることとして、この保存配偶子は誰が所有権もつことが想定されているのか。
*死後生殖は重要なポイントの一つであるが、完全には整理されていない課題であり厚生労働省での委員会および本研究事業の委員会の中でも議論を継続するとのことである。

11.「出生前検査における染色体マイクロアレイ(CMA)法の利用上の留意点」について【資料12】

以下の報告が行われた。
周産期における遺伝に関する小委員会で委員会報告として「出生前検査における染色体マイクロアレイ(CMA)法の利用上の留意点」を作成した。実際にこの技術での検査行った場合に問題になる点についてまとめている。ガイドラインの中では出生前診断の細かい方法の違いで生じる問題点については記載されていないのでそれを補うものである。次年度の周産期委員会でも次世代型シークエンサーについての留意点についての文章を作成する予定。周産期委員会の中では了解いただいている。

12. non-Medicalの卵子凍結について【資料13】

以下の議論が行われた。
*がん生殖とは異なり、non-medicalでの卵子凍結が商業的に行われつつあるという問題が出ている。生殖内分泌委員会で議論していただき倫理委員会でも検討して理事会に報告ということになる。Non-medicalの卵子提供についての見解を出すと日産婦が推進する立場のように取られてしまう。しかし、見解を出さなければ拘束力がないという問題がある。生殖内分泌委員会では、学問的に検討して、それを倫理委員会へフィードバックの予定。
*現状の状況はやむを得ない状態。先送りになっていることとしてレジストリの問題である。がん生殖でもレジストリが懸念事項である。整理しきれていない状態である。がん生殖以外のものについてもレジストリを作成している国も多い。それを検討する必要がある。
*妊娠を先延ばしする手段としてnon-medicalな卵子凍結は推奨しないということが学会としての意見である。
*2015年のころに様々なところで企業が推進したという現象があった。国内でも開始した施設が出たこともあった。現在提供配偶子の検討も行われているが、高年齢になると卵子提供もなかなかむつかしいということもあり、若い間にとっておくという選択肢としてあり得る。

13. 法務省民事局からの「民法(親子法制)等の改正に関する中間試案」についてご意見依頼の件【資料14】

以下の議論が行われた。
*法務省民事局で現在行われている民法(親子法制)等の改正について試案についての、日産婦の意見が求められている。倫理委員会委員の先生方にご通知して今月中を期限として意見を募集している。民事局側への回答の締め切りまでにご意見いただきたい。
*法務省の試案で大きく違っているのは、これまでの嫡出推定は、確実性に重きを置いていた。以前に300日以内であっても産婦人科の証明があれば認めようという意見もあったが、これは早産との関係であった。今回はDVとの関係で、父親と離婚できずに無戸籍となる子供がある。これを避けることが目的となる。そのため、場合によっては嫡出判定が曖昧となる場合もあると思われるが、現在の社会の状況からやむを得ないと思う。
*結果として、無戸籍の子供をなくすということが重視されている。しかし、嫡出判定が困難になる可能性についても留意が必要。

14. 「精子の凍結保存に関する見解」に施設登録申請の規約が存在しないことについて【資料15】

以下の議論が行われた。
*がん生殖においても問題となっているが、精子の凍結保存の見解の内容に施設登録に関する記載がないという問題がある。現在の見解は悪性腫瘍に対する医学的適応のための見解である。がん生殖の委員会が進行中なのでそちらで検討いただきたいと考えている。小児・AYA世代のがん患者に対する妊孕性温存療法研究の進捗に伴い、精子凍結の実施施設については他学会とのすり合わせを行いながら進めてゆく必要がある。
*精子凍結はそもそも泌尿器科医だけでなく医師であればだれでもできる。泌尿器科より内科などで白血病やリンパ腫の治療を行う患者に実施する場合の方がニーズは高い。内科の施設で保存するという考え方もある。卵子保存は産婦人科が必ずかかわるが精子保存は産婦人科を介さずに保存が可能であるので産婦人科だけに縛りを設けても仕方がないという考え方もある。
*WPATHのトランスジェンダーの方のためのガイドラインでは、配偶子の凍結について伝える義務があるという記載がある。臨床の場で当事者から精子凍結の可能性について聞かれることもあり、精子保存の施設についても取り決めは必要と思う。
*本来は国で方針を決めてもらうべきという考え方もあるが、ジェンダーにかかわる問題であるという点では、精子の凍結保存についても日産婦として何らかの姿勢を出すことも大切である。

15.生殖医療に関するカウンセリング可能な臨床遺伝専門医について

以下の議論が行われた。
*生殖医療に関するカウンセリング可能な臨床遺伝専門医の資格について、日産婦での資格認定を行ってきたが日産婦が認定する意義が乏しいと考えている。この資格を日本産婦人科遺伝診療学会に引き継ぐことも検討したが、この資格の保持者が日本産婦人科遺伝診療学会の会員でない方も多いということがあり頓挫している。現在でも着床前診断の小委員会で申請を確認して資格を承認するということは変わっていない。人類遺伝学会からは、会費を払って資格を取得しており存続させてほしいとの意見もあったとのことで、関連学会でWGを作って方向性を検討してもいいのではとの連絡が来た。
*現在はこの申請もほとんどない状態でありこの資格の持つ意義も乏しくなっている。今後は新たな申請は受け付けないとう考え方もある。
*今後倫理委員会内でさらに議論を行う予定とする。

16.その他
(1)倫理委員会業務について【資料 16】

以下について報告が行われた。
〇登録・調査小委員会内のART症例登録事業について
*UMIN側と話し合いを進めて症例登録システムの改変を進めている。事務局の作業が効率的になる方向を目指している。

〇第三者が関与する生殖補助医療に関するワーキンググループ
*親子法の改定に伴い、提供配偶子に関する制度の整備が求められている。理事長直轄の委員会において、話し合いを進めている。提供配偶子の管理について公的管理運営機関が必要と考えており、日産婦が行う役割との切り分けを考えつつ制度について作案中である。

〇ヒト受精胚へのゲノム編集技術等を用いる生殖補助医療研究に関する委員会について
*委員会の活動については現在止まっているが、研究班としては続いている。新型コロナ感染拡大の影響により進んでいない。

(2)倫理委員会への問い合わせ内容(NIPT関連、ART登録関連、PGT関連、臨床研究審査関連、マスメディア関連)の報告【資料17-1、17-2、17-3、17- 4、17-5】

以下の報告が行われた。
*倫理委員会が扱う種々の分野に関して問い合わせがある。対応集として、問い合わせ事例への対応を今後ためていって将来の倫理委員会での対応のために役立てたい。

(3)倫理委員会の名称についてー臨床倫理問題検討委員会等(案)、定款の改定に向けて、次期体制時の課題など

以下の議論が行われた。
*本来日産婦の倫理委員会は生命倫理を扱うものであるが、研究倫理員会との混乱が生じやすい。名称の変更として、「臨床倫理問題検討委員会」などを一つの案を考えている。この名称の件はここですぐ決めず委員の皆様に考えていただくということにしたい。
*歴史的には日産婦の会員の倫理性を高めることが当初の目的であったと思う。立ち居振る舞いを律してゆくという趣旨であったと思う。
*来年以降の変更という予定で考えたい。今後、理事会でも変更を行う件について提案し議論を行って頂く方向で進めたい。

(4)今後の倫理委員会の開催予定について
<2021 年度>
第 1 回:2021 年 5 月 11 日(火)18 時より WEB 会議
―以下予定
第 2 回:2021 年 8 月 3 日(火)18 時より WEB 会議
第 3 回:2021 年 11 月 9 日(火)18 時より WEB 会議
第 4 回:2022 年 2 月 1 日(火)18 時より WEB 会議
第 5 回:2022 年 3 月 15 日(火)18 時より WEB 会議
<2022 年度>
第 1 回:2022 年 5 月 10 日(火)18 時より WEB 会議(可能であれば現地開催)

【資 料:】
1.   ※公開用:令和2年度「第4回倫理委員会」議事録(案)
2.   「登録・調査小委員会」報告
3.   「令和2年度第5回着床前診断に関する審査小委員会」報告
4.   ART登録施設における実施責任者の変更申請に関する報告
5.   着床前診断の非認可施設に対する調査報告
6.   着床前診断に関するデータを二次利用する臨床研究計画書
7.  「PGT-M に関する倫理審議会」報告
8-1. 知財が発生する可能性のある臨床研究の取り扱いに関する専門委員会委員長宛ての検討依頼
8-2. 18 日本産科婦人科学会臨床研究審査小委員会規約(様式の表記変更案)210422 【*参考資料】臨床研究「COI 自己申告書」新旧の様式
9.   厚生労働省「NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会」報告
10.  「PGT-A 臨床研究参加施設一覧」のホームページ掲載状況
11.   小児・AYA世代のがん患者に対する妊孕性温存療法研究推進事業概要
12.   周産期遺伝に関する小委員会「出生前検査における染色体マイクロアレイ(CMA)法の利用上の留意点」
13.   non-Medical の卵子凍結に関する現状、問題点、提案
14.  「民法(親子法制)等の改正に関する中間試案」について法務省民事局からの依頼
15.  「精子の凍結保存に関する見解」に施設登録申請の規約が存在しないことに関する概要、問題点、解決策について
16.  2019-2020 倫理委員会業務まとめ一覧
17-1. (NIPT 関連)倫理委員会に対する問合せまとめ
17-2. (ART 登録関連)倫理委員会に対する問合せまとめ
17-3. (PGT 関連)倫理委員会に対する問合せまとめ
17-4. (臨床研究審査関連)倫理委員会に対する問合せまとめ
17-5. (マスメディア関連)倫理委員会に対する問合せまとめ

 当日資料-1. NIPT厚労省案
 当日資料-2. PGT-A特別臨床研究報告
 当日資料-3. 日本医学会子宮移植提言草案

[倫理見解集]
http://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=73/1/073010001.pdf

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