公益社団法人 日本産科婦人科学会

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令和2年度第2回倫理委員会議事録

更新日時:2020年12月17日

令和2年度第2回倫理委員会議事録

日 時:令和2年8月4日(火)午後6時~8時
*Web会議形式にて開催

出席者
 委員長:三上 幹男
 副委員長:苛原  稔
 委員・主務幹事:永松  健
 委 員:石原  理、岩佐  武、織田 克利、片桐由起子、久具 宏司、倉澤健太郎、
     桑原  章、桑原 慶充、小出 馨子、榊原 秀也、佐藤 健二、柴原 浩章、
     関沢 明彦、竹下 俊行、阪埜 浩司、松本 陽子、矢内原 臨、山上  亘
 オブザーバー:木村  正理事長、宮城 悦子臨床研究審査小委員会委員・審査委員長
 欠席者:澤 倫太郎
(敬称略)

<確認事項>
令和2年度第1回倫理委員会議事録(案)【資料1】
委員全体で前回の委員会の議事録の確認が行われた。

<報告・協議事項>
1. 登録関係
(1)本会の見解に基づく諸登録<令和 2 年 7 月 31 日現在>【資料2-1】
石原委員により下記の報告が行われた。
①ヒト精子・卵子・受精卵を取り扱う研究に関する登録:103 研究(44 施設)
②体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録:621 施設
③ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録:621 施設
④顕微授精に関する登録:590589 施設
⑤医学的適応による未受精卵子、胚(受精卵)および卵巣組織の凍結・保存に関する登録:(131 施設)
⑥提供精子を用いた人工授精に関する登録:12 施設

(2)学会機関誌9月号に掲載予定の「令和元年度倫理委員会 登録・調査小委員会報告(2018年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績および2020年7月における登録施設名)」について【資料2-2】
9月号に掲載予定の登録・調査小委員会報告の内容について石原委員より説明が行われた。

(3)本会専門医の資格喪失により、2017年10月より見解に定められている実施責任者の資格要件を満たしていなかったART実施施設の登録について
以下の議論が行われた。
*ART実施責任者が産婦人科専門医を喪失している1施設があることが判明した。ART施設登録抹消でよいかの判断が必要。
*ARTの不妊治療の助成金は地方自治体が日産婦の資格を利用している。しかし、不妊治療の助成を認めるかどうかは行政側が確認することであり、学会が担保する責任を負う必要はない。

(4)登録・調査小委員会の所管、業務内容についての検討ワーキンググループについて【当日資料1】
第2回WGにおいて出された意見を踏まえて、今後のART登録事業の業務改善や今後の方向性についての短期、中期、長期的な視点での方向性について資料に基づいて説明が行われた。

(5)着床前診断に関する臨床研究申請・認可について【資料3-1】
*下記の報告が行われた。
・施設申請170件《承認138施設(うち21施設は条件付)、照会13施設、審査中19施設》
・症例申請:958例《承認820例、非承認30例、審査対象外35例、取り下げ5例、照会62例、保留2例、審査中4件》(承認820例のうち120例は条件付)

*施設研究倫理審査委員会の委員の構成の問題、遺伝カウンセリングの体制の問題などで照会となった施設が多かったこと、審査書類の不備が多かったことの説明があった。
*利益相反状態がない研究倫理審査委医会と検査会社の関係性ついて利益相反状態がないことが望ましいため、細則改訂を予定していることの説明があった。

(6)着床前診断における胚の区分:罹患胚(病気胚)と非罹患胚(保因胚・健康胚)に関する問合せについて【資料3-2】
以下の説明が行われた。
*ある施設の研究倫理審査委員会から、着床前診断における胚の区分に関して研究参加者の説明する内容について問い合わせがあった。
*小委員会の見解として、これまでは保因胚かどうかの情報は伝えていないということで来ている。
*習慣流産の場合の均衡型転座の保因胚に関する情報についてはどうするのかというあたりが、考え方が分かれる。
*問い合わせ施設にPGTのどういった内容に関することなのか問い合わせを行い、その後回答を考える予定としている。

(7)認定施設の倫理委員会について-確認書提出の件【資料3-3】
以下の説明が行われた。
*施設研究倫理審査委員会でPGT-Mの症例実施について適切な議論がおこなわれていなかった施設があることが判明した。
*適切な施設倫理員会の実施を行うことを求めるため「PGT-M 実施施設へのお知らせ―PGT-M 実施ART 施設における施設倫理委員会の審査方法と議事録について」を送付して、確認書の返送をいただいている。 *現在、47施設から回答書が未提出である。これらの施設に督促をする。先日のPGT参加施設への説明会でもそのように話をした。

2. 臨床研究審査小委員会について
(1)これまでに承認された実施中の臨床研究一覧を以下の学会ホームページに掲載
 https://www.jsog.or.jp/citizen/jsogpolicy-3
 上記が報告された。

(2)学会データベースを二次利用する臨床研究申請の専門委員会における審査について【資料4-1】
以下の議論が行われた。
*本会のデータベースの使用についての規約では、速やかに該当する各領域の専門委員会に問い合わせを行い、データベース利用が適切かどうかを審議するということになっている。データベースの項目の中にない事項の抽出の希望やすでに公開されている解析結果の2次利用を希望した問い合わせがある。臨床研究審査小委員会でどこまでを対応すべきかが難しい。
*データベースの利用に関する問い合わせがあった場合に、臨床研究審査小委員会で繰り返しの審査を行う必要性に疑問を感じる。施設倫理委員会の確認すべき内容に不備があれば単純に却下でよいと考える。
*施設倫理委員会の承認も受けていない状態で、データベース利用を希望してくる場合もあり、そういったチェックについては臨床研究審査小委員会でおこなわざるを得ないということがある。
*以前周産期データの申請で、商業目的で使用したいということであり、学術的な観点からは認められないということがあった。学会の財産を商業目的に利用という動きに対しては、臨床研究審査小委員会で判断して却下するということが必要な場合もある。

(3)ヒアリングを行った臨床研究に関する報告【資料4-2】
以下の報告が行われた。
既に承認されている臨床研究について、本会周産期登録データを⽤いた追加解析を⾏いたいとのことで、施設倫理審査委員会への申請後に本会への申請が行われ、その際に以前に申請されていた研究の研究計画書と内容が完全に変わってしまっているという事例があった。申請元施設の担当者のヒアリングを行い、新規申請として申請をしてもらうこととした。

(4)進捗状況、研究成果、終了報告書の提出率を上げるための審査結果通知書を研究代表申請者に発出する際の送り状への文言追加について【資料4-3】【当日資料2】
以下の議論が行われた。
*臨床研究の終了報告および年度ごとの進捗報告が適切に行われていない研究がある。
*報告の提出を求めるのと並行して、各施設の研究倫理審査委員会への報告の写しの提出でよいとするなど、各施設側の手間を省く方向についても今後、臨床研究審査委員会の中で検討したい。

3. 着床前診断の実施に関する細則の改定について【資料5】【当日資料3】
以下の議論が行われた
*PGT-Mの症例申請における厳格性を保つ意味では検査会社とART施設の研究倫理審査委員会のCOIの面での独立性が保たれていることが望ましい。
*PGT-AとPGT-Mは異なる基準に基づいて行われる方向になってゆくと考える。PGT-Mを行う施設はより高い基準を求めることは必要と思う。最終的には見解の変更により整合性を取る必要がある。
*PGT-Mの症例申請の際には、施設基準にさらに追加の要件を加える形にして、PGT-Mの申請ではより高い施設要件が必要であるという形のPGT施行細則の変更を予定する。次の理事会でこの細則の修正を認めていただいて、開始したい。
*追加要件に、常勤の臨床遺伝専門医を配置されていることの要件をいれることで、PGT-Mの実施体制が不十分な施設は除外できると考えている。
*将来的には、PGTに関する見解自体の改定を進めて、その時点で施設要件全体を整理したい。

4.NIPTについて
(1)NIPTに関わる日産婦からの発出文書
下記の4つの資料について説明が行われた。
 厚労省の対応、7月22日厚労省WGについて【資料6-1】
 NIPTのよりよいあり方に関する提言回答書について【資料6-2】
 改訂指針、細則について【資料6-3】
無認定施設からの患者、あるいは希望の患者に関する対応について【資料6-4】

(2)NIPTアンケート調査の提案について【資料6-5】
以下の説明が行われた。
*無認可施設でのNIPT受検者に関する状況を把握するために、産婦人科学会の方でBaby plusを使って調査を行うこととした。NIPT受検経験者へのアンケートと全国分娩施設へのアンケートを行う予定。

(3)医学会からの「新型出生前診断の指針」改定について話し合いの件【資料6-6】
日本医学会からNIPTに関する話し合いを持ちたいという日産婦への依頼があった。NIPTの新指針の改定について日本医学会との話合いを行う予定であることの説明が行われた。

5. PGT-Aに関する小委員会からの報告
(1)臨床研究進捗について
以下の説明が行われた。
*2020年7月7日にPGT-A研究施設に対する説明の機会を持った。これはコロナウイルスにより日産婦の学術集会の際に実施できなかったのでその代替である。施設研究倫理委員会の承認内容に基づいて適切に研究を実施することと PGT-Aの方法として、non-invasive PGT-Aについては実施しないようにということを説明した。
*PGT-A症例の追跡に関して、参加施設は施設は79施設、追跡胚は約3000になっている。まだ症例の最終的な転帰までは明らかにはなっていない

(2)胚培養士からの匿名による連絡について【資料7】
以下の議論が行われた。
*PGT-A研究に参加しているART施設のPGT-Aの実施に当たっての説明同意が不十分であるという胚培養士からの匿名の連絡が日産婦にあった。
*プロトコールの遵守を呼びかける文書を作成してPGT-A研究代表者から研究参加施設に注意を行う予定である。

6. 子宮移植に関する小委員会からの報告
以下の報告が行われた。
子宮移植に関する小委員会を開催した。その後は日本医学会の会議は開かれておらず、そこでの議論を待っている状態。

7. 第73回学術講演会・委員会企画・学会後の説明会について
それぞれの必要な枠の確保を学術集会事務局に依頼した。

8. 倫理審議会について
以下の説明が行われた。
新型コロナウイルスの流行の影響により、PGT-Mの倫理審議会の第1回を実施後にしばらく期間が空いた。第2回は2020年11月1日、第3回は2021年2月7日にそれぞれ実施予定。第2回はコアメンバーだけが集まり、それをyou tubeで配信という形で予定したい。第3回は公開フォーラム形式で多くの参加者での話し合いを予定していたが、現状の新型コロナの状態では無理と思われるので開催方法を今後検討したい。

9. 日本生殖医学会からの「提供配偶子を用いる生殖医療についての提言」について【資料8】
以下の説明が行われた。
日本生殖医学会から発出予定の「提供配偶子を用いる生殖医療についての提言」について日産婦からの意見を聞きたいという依頼があった。理事会、倫理委員会の皆様からいただいた意見をまとめて、理事長名で生殖医学会へ回答した。

10. 提供配偶子を用いる生殖医療に関する検討委員会設置について【資料9】
提供配偶子を用いる生殖医療に関して、理事長直轄の検討グループを設立することの承認を得たこと、またその委員会のメンバーについて報告が行われた。倫理委員会の中の第3者が関与する生殖補助医療に関するワーキンググループと連携して進めてゆく予定であることの説明が行われた。

11. 生殖医学会演題に関する問い合わせについて【資料10】
以下の説明が行われた。
日本生殖医学会の学術集会の演題に関して、倫理的な問題についての問い合わせが日産婦理事長あてに来た。専門家にこの件について確認して、施設研究倫理審査委員会の承認の下で行われているのであれば、倫理的な問題はないとの意見をいただいた。その旨を日本生殖医学会の理事長宛にこの問い合わせがあったことについての手紙を送ることとした。

12. 生殖医療に関する遺伝カウンセリング受け入れ可能な臨床遺伝専門医に関して【資料11】
以下の議論が行われた。
*産婦人科遺伝診療学会への資格認定の移行を依頼したが、実はこの資格を持っている方々の多くが、遺伝診療学会の会員ではなかったため、遺伝診療学会で引き受けることが難しいことが判明した。
*今後、この資格に関して、人類遺伝学会側の意見について問い合わせを行う予定。

13.その他
倫理委員会内での業務整理について【資料12】
以下の説明があった。
倫理委員会の仕事が多岐にわたっており、研究倫理と生命倫理の両方のことがすべて業務にはいっている。今後、少しずつ業務について整理、効率化を進めていきたいと考えている。

次回の第3回倫理委員会は2020年11月10日18時からWeb形式を予定することとなった。

以上にて閉会。

【資 料】
1. ※公開用:令和2年度「第1回倫理委員会」議事録(案)
2-1.「登録・調査小委員会」報告
2-2. 学会機関誌9月号掲載原稿「令和元年度倫理委員会 登録・調査小委員会報告(2018年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績および2020年7月における登録施設名)」
3-1. 「令和2年度第2回着床前診断に関する審査小委員会」報告
3-2. PGT研究に関する問合せ、小委員長ならびに委員のコメント
3-3. 施設倫理審査に関する確認書ならびに提出状況
4-1. これまでに問題のあった学会DBを利用する臨床研究申請例
4-2. 臨床研究ヒアリングの概容
4-3. 臨床研究審査小委員会審査結果通知書の送付状
5. 着床前診断の実施に関する細則改定案
6-1. 厚労省母子保健課長宛ての説明文書
6-2. NIPTのよりよいあり方を考える有志 からの提言ならびに本会からの回答書
6-3. 指針改訂についての経緯・現状に関する説明
6-4. NIPT無認定施設の対応に関するまとめ
6-5. NIPTアンケート調査の提案
6-6. 日本医学会からの書面
7. 胚培養士からのメール
8. 日本生殖医学会からの提言ならびに本会からのコメント
9. 提供配偶子を用いる生殖医療に関する検討委員会設置の提案
10. 生殖医学会演題に関する倫理的な問題点についての問合せならびに本会からの返答文書
11. 「生殖医療に関する遺伝カウンセリング受け入れ可能な臨床遺伝専門医」 登録認定の移管について
12. 2019-2020倫理委員会業務まとめ一覧

≪当日配布資料≫
1. ART登録事業の課題解決のためのアクション
2. 臨床研究進捗状況の報告について
3. 着床前診断実施認可施設のCOIについて

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