28sep2005

会員へのお知らせ


「女性ホルモンが肺がんに関与」との報道に関する本会の見解について

 最近、「女性ホルモンが肺がんに関与」という見出しで、ホルモン補充療法が肺がんのリスクを高めるかの印象を与える新聞報道がなされました。この研究は、国立がんセンターと国立循環器病センターを中心とした約10地域の保健所が協力したコホート研究であります。研究結果の要旨は第64回日本癌学会学術総会で発表され、またすでに論文化されております(Int J Cancer, 2005;117:662-666, Reproductive factors, hormone use and the risk of lung cancer among middle-aged never-smoking Japanese women: A large-scale population-based cohort study)。

 この研究の解釈に関していくつか指摘される点はありますが、研究グループの結論は人工閉経(閉経前の両側卵巣摘除)例でかつホルモン剤(female hormone;著者の表現)を使用した女性では、自然閉経を経験しかつホルモン剤使用経験のない女性と比較し肺がんのリスクが上昇(HR2.4, 95%CI=1.07-5.40)しているということであります。ただし、人工閉経でホルモン剤を使用した例での肺がん例数は7例でした。なお、ホルモン剤使用状況は質問表で「女性ホルモン剤を避妊や月経困難、閉経期などに使用したことがありますか(なし・ある)」と問いかけたもので、経口避妊薬、ホルモン補充療法、黄体ホルモン製剤など、さまざまなものが含まれている可能性があります。また、ホルモン剤使用の時期が人工閉経の前であるのか後であるのかの時間的関係は不明です。

 臨床の現場での判断で最も重要である“人工閉経女性でホルモン剤使用の有無”、あるいは“自然閉経女性でホルモン剤使用の有無”における肺がん発生率には有意な差は報告されておりません。

 以上、本学会の見解として、更年期医療のevidence-based medicineを実践する上で、既存のevidenceに具体的な変更をせまるものではないと判断いたします。

 なお、日本産婦人科医会および日本更年期医学会も同様の見解を表明していることを申し添えます。

平成17年9月28日
社団法人日本産科婦人科学会
理事長 武谷 雄二