(広島大学大学院医歯薬学総合研究科産婦人科教授)

 健康で長生きするためには2つの大きな条件があります。一つはよい遺伝子をもっていること。遺伝子の潜在的な長寿能力を生かせば人は120歳から125歳まで生きるといわれています。

 日本人の平均寿命は男が78歳、女は85歳ですが、これは生まれたばかりの赤ちゃんの平均寿命です。いま65歳の女性は今後、平均で22年間、87歳まで生きます。65歳の男性は82歳まで。一方、WHOの報告によると日本人の健康寿命は75歳です。平均寿命からこれを引くと、男女とも5年とか6〜7年ぐらいが不健康寿命。つまり痴呆になったり寝たきりになったりして人生を終わる人が多いということです。健康寿命を平均寿命にまで伸ばさなければなりません。

 女性の方が男性より長生きするのはなぜでしょうか。一つは染色体構成が違う、つまり遺伝子の組み合わせが違うということです。ヒトの染色体46本のうち44本までは男女一緒です。あとの2本の性染色体の中にXとYがあります。X染色体には生きていくために必要な遺伝子が満載されていますが、Y染色体には男を決める遺伝子以外には重要な遺伝子は載っていません。女性はX染色体を2つ持っており、遺伝子にちょっと傷があってももう一つのX染色体の遺伝子が修復してくれます。女性はもともと長く生きるようになっているということです。

 2番目は卵巣から出てくるエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが女性の健康を守っているということです。また、代謝も非常にゆっくりしています。私たちの体の細胞は常に壊れて新しい細胞に生まれ変わるのですが、細胞の分裂回数は約50回ぐらいと決まっています。これは染色体の端にあるテロメアが細胞分裂をするごとに先が切れてしまうからですが、女性は大事にゆっくり使うから、80歳になってもあと20回分残っているという具合で、何歳でも生きていける状態になっています。

 女性はストレスにも強いし免疫力も強いのです。また交感神経と副交感神経から成る自律神経から見ても、「がんばろう」という交感神経より、「ゆっくりしよう。そんなにがんばらなくていい」という副交感神経が優位となっており、そんなにがんばらない状態でやっていけます。

 なぜこのように女性は守られているのでしょうか。産婦人科の立場からいえば、女性は妊娠、出産、育児という大変な生物学的な機能をこなしています。このすばらしい大変なことに耐えてがんばる女性に神様がご褒美を与えているのだといわれるぐらいのものです。更年期になって閉経すると更年期障害が出てきて老化が始まります。50歳を過ぎたら子供をつくらないようになっているからです。ホルモンが減少すると各種機能のバランスが崩れ、更年期障害とよばれるいろんな症状が出てきます。そのためホルモン量を適正にして健康寿命をのばすため、女性ホルモン補充療法も大いに活用したらいいのではないかと学会では考えています。

 産婦人科も、最近では妊婦さんや不妊症を診たり、癌を診たりするだけでなく、女性のトータルな健康管理にあたっています。産婦人科をファミリードクターとして利用いただきたいと思います。いつまでも元気で、ぱたっと倒れたときが平均寿命だったというPPK運動が勧められます。PPKというのは寝たきりや痴呆で介護されない、すなわちピンピンコロリのPPK。ピンピンコロリを目指して私たちは、みなさんがいつまでも長寿で健康で活動的で、毎日が生きがいがあって楽しいと思って生きられるような、そういう体づくりをし、精神的にも過ごしていただきたいと願っています。
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