27apr2000

 

ごあいさつ 「女性の身体とホルモンの話」 「ピルの正しい知識」 「明るい更年期のために」 パネルディスカッション 

 

日本産科婦人科学会 公開講座
女性のQuality Of Lifeの向上をめざして


 

女性のための健康フォーラム

第52回日本産科婦人科学会総会が4月1日から4日間、徳島市で開催され、全国から約4000名の産婦人科医と研究者が集まりました。その公開市民講座「女性のための健康フォーラム」が、4月1日、徳島文理大学にて開催され、10代から70代まで幅広い年齢層の女性たち1200名が参加しました。

「もっとイキイキと、もっとすこやかに」をテーマに、女性の生き方を、女性ホルモンの面から考えた公開講座の内容を抜粋してお伝えします。

 

ごあいさつ

日本産科婦人科学会会長 徳島大学教授 青野敏博


日本産科婦人科学会では、一般市民への啓発活動の一環として、全国各地で公開講座を開催してきましたが、初めての試みとして、産科婦人科学会総会・学術講演会の期間中に、学会主催の公開講座を同時開催することにいたしました。

今回は、ピルと女性ホルモン補充療法を中心に女性のQOL向上に焦点を絞った内容です。著名な先生方の講演や女優の秋野暢子さんをまじえたディスカッションで、女性の身体と病気、そしてホルモンによる治療法などについて、楽しく学んでいただきたいと思います。

 

 

基調講演「女性の身体とホルモンの話」

昭和大学医学部産科婦人科学教授 矢内原 巧


女性の一生は女性ホルモンと深い関係があり、思春期、成熟期、更年期、それぞれの時期に、ホルモンの変化や異常に関係するさまざまな症状や病気が現れます。

思春期には、月経異常、思春期出血、急激なやせ、肥満、多毛症といった身体的異常の他に、精神面では、性的関心と社会的精神的自覚との間のギャップが問題になります。十代女性の人工妊娠中絶が急増していますが、この問題解決のためには、家庭・社会の理解と、思春期の正しい性教育が必要です。また、低用量ピルの普及も求められています。

女性ホルモンの変化がもっとも強く身体に影響を及ぼすのが更年期です。女性ホルモンの低下により、更年期障害と呼ばれるさまざまな症状が現れるのみならず、高脂血症、心臓病、骨粗鬆症などの病気にかかりやすくなります。これら症状と病気を予防する方法の一つとして、女性ホルモン補充療法があり、医学の進歩によって、より安心して受けられるようになっています。

女性にとって、体内で起こるこれらの変化と病気、そしてその治療法を正しく知っておくことは、一生のQOL(生活の質)をより良いものにするために必要なことです。

 

 

講演1「ピルの正しい知識」

東京女子医科大学産婦人科助教授 安達知子


性は子どもをつくる目的以外に、コミュニケーションや歓びとして、人生に大切な役割を果しています。しかし、妊娠しても産めない状況にあるのなら、確実な避妊法を欠かさず実行する必要があります。残念ながら、日本では人工妊娠中絶がまだまだ多く、特に10代では20年前に比べて4倍に増加しています。これは、性交渉の低年齢化に加えて、避妊知識の欠如が原因です。

昨年秋から使えるようになった低用量ピルは、他のどの避妊法よりも確実な避妊効果があり、女性が自分の意思で使用でき、使用を中止するとすぐに妊娠できる身体の状態に回復するという特徴があります。しかし、日本では、ピルに関しての副作用ばかりが拡大して強調され、正しい情報が伝わらなかったために、普及は遅れています。例えば、副作用として伝わっている情報の一つに、癌の増加ということがありますが、卵巣癌や子宮体癌は低用量ピルの服用で逆に減少します。ただし、乳癌については増加するとの報告もありますので、服用中は定期検診を受けてください。正しい知識を得た上で、低用量ピルの使用について判断していただきたいと思います。

 

 

講演2「明るい更年期のために」

聖路加国際病院産婦人科部長 伊藤博之


更年期を我慢して通過するか、人生の転換期として、明るく捉えるかは、更年期及び更年期以後の大切な問題です。人生80年の今日、女性は閉経後30年以上を生きるのです。暗い気持ちで過ごすには長すぎます。

確かに、更年期にはさまざまな不快な症状が出現します。これらの症状を減らし、更年期を上手に過ごすためには、バランスの良い食事、適度な運動、ストレス対策などが大切ですが、もともと女性ホルモンの不足から現れる症状であることから、女性ホルモン補充療法(HRT)が有効です。

HRTには、更年期症状を改善するだけでなく、更年期の女性で増加するコレステロールを低下させて動脈硬化や心臓病の発症を予防する効果、骨粗鬆症を治療する効果など、さまざまなメリットがあります。

HRTと癌の関係では、低用量ピルと同様に、乳癌にわずかな増加の可能性が報告されており、服用中は定期検診の必要があります。

欧米先進国のHRT普及率は約20%とされていますが、日本は1%にすぎません。HRTのメリット/デメリットを正しく知って、更年期を明るく上手に過ごすために役立ててください。

 

 

 

パネルディスカッション もっとイキイキと、もっとすこやかに


    

パネリスト

矢内原 巧氏 ・・ 昭和大学医学部産科婦人科学教授
安達 知子氏 ・・ 東京女子医科大学産婦人科助教授
伊藤 博之氏 ・・ 聖路加国際病院産婦人科部長
互  恵子氏 ・・ (株)資生堂ビューティーサイエンス研究所研究員

《ゲストパネリスト》
秋野 暢子氏 ・・ (女優)

 

運動の効果と続けるコツ

  

矢内原 

秋野さんは女優・主婦・母親の3役をこなしていらっしゃると伺いました。

秋野  

はい。17年前に結婚しまして、6年前にやっと子供に恵まれ、現在43歳です。これから更年期を迎えるわけですが、ずっと健康で働きつづけていきたいと思っています。

矢内原 

スーパーウーマンの秘訣はなんですか?

秋野  

私、死ぬ寸前まで元気でいたいといつも思っているんです。ですから、そのために、自分の身体にとても気を使っています。バランスの良い食事を心掛け、運動もよくします。フルマラソンに年2回参加し、それを目標にして普段からトレーニングを欠かしません。

伊藤  

運動には、体力を増強させる以外に、気分を転換させてストレスを解消する効果があります。ですから、更年期症状を改善するためにたいへん役立ちます。

矢内原 

普段運動をしていない人が、始める時のポイントは何でしょう?

伊藤  

まず、無理のない運動、例えばラジオ体操や歩くことから始めることです。仲間とニコニコしながらやれる位のペースで結構です。何よりも大切なことは継続することです。また、更年期の女性は一年間に1%ずつ筋力が低下するとされていますから、軽いダンベルなどで筋力を高める運動もよいと思います。

 

化粧の効用

  

矢内原 

更年期女性の化粧について伺います。

   

化粧の力は、更年期女性の心と身体の調整に役立つと考えています。毎朝、洗顔から始まる肌のお手入れやメーキャップは、肌のケアや美しさを求めるというだけでなく、自分に対しては、リラックスさせる、活力を生むといった効果をもち、他人との関係を改善する力もあります。肌のマッサージで心を落ち着かせると、脳波にやすらぎのα波が現れることが明らかになっています。また、老人ホームで、痴呆のお年寄りたちに化粧をしてあげたところ、表情が明るくなり会話が弾む、オムツのとれた人もいるといった効果がありました。

矢内原 

更年期の肌の手入れで気をつけることはありますか?

   

更年期だからということはなく、紫外線を浴びない、乾燥させない、汚れは早く落とす、といったことです。五年後の自分の肌をイメージしながら、毎日のケアを心掛けてください。

 

ピルについて

  

矢内原 

ピルに関しては、さまざまな質問が寄せられています。まず、何歳ぐらいから服用していいのか、ということですが。

安達  

これまで使われてきた中用量ピルは副作用が問題になることもあり、使用開始年齢についても慎重になっていたのですが、低用量ピルでは副作用が少ないことから、若い人に使われるようになってきました。一般的には、初経を迎えて3カ月経過すれば使ってもかまわないとされています。

矢内原 

ピルを服用していて、子どもをつくろうとした場合、心配はないのでしょうか?

安達 

95%以上の人がピルを止めて3カ月で普通の月経に戻ります。また、生まれてくる赤ちゃんにはまったく問題ありません。

 

女性ホルモン補充療法について

  

秋野 

女性ホルモン補充療法は、いつ頃から始めたらよいのですか?

伊藤 

日本では閉経直後が普通ですが、閉経前でも問題なく、更年期症状が出始めた時期を目安にすればいいと思います。

矢内原 

いつ頃まで続けるべきなのですか?

伊藤 

更年期症状を改善させるためであれば、3〜6カ月で効果が現れますから、それで止めても結構です。ただし、心臓病や骨粗鬆症を予防するためには、長く続ける必要があります。問題がなければ80歳まで続けても構いません。

矢内原 

秋野さん、最後に今日のご印象をお話ください。

秋野 

とても参考になりました。私は、一生を元気で過ごすためには、ホームドクターを持つべきで、特に女性は、自分の心と身体を良く理解してくださり、自分も先生の治療方針に納得して従える、そのような婦人科のドクターを見つけることが大切なのだと思います。

矢内原 

そのような医療が日本中どこでも受けられるように、私たち医師も努力していきたいと思います。ありがとうございました。

 

 


主 催‥‥‥

日本産科婦人科学会  徳島新聞社  日本シエーリング株式会社  株式会社 ヤクルト本社

協 賛‥‥‥

株式会社 資生堂

後 援‥‥‥

徳島県  徳島県医師会  日本母性保護産婦人科医会徳島県支部  四国放送  NHK徳島放送局  エフエム徳島

協 力‥‥‥

アトムメディカル株式会社  オリンパス販売株式会社  株式会社 タニタ  東芝メディカル株式会社  雪印乳業株式会社 他


徳島新聞掲載記事より(一部改定)

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