16feb2000

平成11年度日本産科婦人科学会公開講座開催にあたって

女性のQOLの向上をめざして
----- 女性の健康とより良き明日を考える  -----


QOL(Quality of Life):生活の質

 

おはなし: 青 野 敏 博   

徳島大学医学部産科婦人科学教授
第52回日本産科婦人科学会会長

 

4月1日徳島市において開催される第52回日本産科婦人科学会の第1日の午後、一般市民を対象にした日本産科婦人科学会公開講座が同時開催されます。そこで今回の公開講座の意義や内容について青野会長にお話を伺いました。

 

 開かれた学会に 

●●●一般向けの公開講座が予定されていますが、どのような会になるのでしょう?

日本産科婦人科学会の本来の目的は、産婦人科学に関する研究成果を発表し、全体の学術レベルを高めることにありますが、今回はそれに加えて『社会に開かれた学会』を目指そうとしています。

公開講座はその趣旨にそって計画しているものであり、産婦人科学の最新の成果を、さまざまな角度から専門の方々にお話いただきます。また、参加された皆さんから、日頃、悩んでいらっしゃることなどを質問していただき、先生方にお答えいただくパネルディスカッションも予定しています。女性の健康を考える楽しい一日になればと思っています。

 

 QOLの医学 

●●●医学の進歩の中で、産婦人科学も大きく変わりつつあるのではないでしょうか?

医学は今、病気を治すことを主体にした治療医学の時代から、「予防医学」の時代に変わりつつあります。予防医学は、さまざまな研究によって、ある病気になるには一定の原因があること、そして、その原因を取り除くことで病気の予防ができることが分かってきたために、近年、急速に発展してきました。

新しい医学が目指しているもう一つの方向は、「生活の質=QOLの医学」です。寿命を伸ばすだけが医学ではなく、健康で、いきいきと活動的に生活できるように支えていくことこそ、医学の使命ではないか、と考えるようになってきています。

 

 更年期障害 

●●●公開講座のテーマの一つ、更年期障害に悩んでいらっしゃる女性はとても多いようですが‥‥。

多くの女性は五十歳前後で閉経を迎えます。閉経と同時に、女性の体内では大きな変化が現れます。女性ホルモンの低下です。人によっては、この変化が急激であるために、ほてりや発汗などの不調を訴えることになります。これが更年期障害です。そして、女性ホルモンの欠乏状態を放置しておくと、更年期以降になって、骨粗鬆症や、動脈硬化にともなう心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気にかかりやすくなるのです。

日本人女性の平均寿命は83.59歳(1996年)、つまり、多くの女性は閉経後30年以上も生きることになります。この30年を、病気や障害といっしょに過ごすのでは困ります。

更年期障害によるさまざまな症状を抑える治療法の一つとして、現在では、女性ホルモンの補充療法が用いられるようになっています。女性ホルモン補充療法は、骨粗鬆症や動脈硬化を予防するためにも効果的であることが、最近の研究で明らかになっています。

 

 ピル 

●●●公開講座のもう一つのテーマは避妊用ピルですが、これは昨年九月に認可されて、話題になりました。

新しく認可された低用量ピルは、これまで使われていた中用量ピルに比べると、副作用が少ないことから、安全で、確実性の高い避妊方法として評価しています。残念ながら、日本の女性は、ピルに対して拒否的である方が多いのですが、これはピルに対する正確な情報が普及していなかったためだと思います。したがって、私たち産婦人科医の立場からは、避妊用ピルを正しく知っていただき、さまざまな避妊方法の一つとして、上手に取り入れていただくことをおすすめします。

避妊方法はピルやコンドームだけではありません。子宮内避妊具(IUD)や、手術的避妊法もあります。これらの避妊方法を、年齢や、生活の条件に合わせて選択していくことが理想なのです。産婦人科医はその相談の窓口になるはずです。

 

 女性のための医学 

●●●産婦人科医のお仕事というと、出産が中心と考えやすいのですが、更年期医療をふくめて、ずいぶん幅広いのですね。

女性のライフステージは、思春期、結婚して子供を産み育てる時期、閉経を迎える更年期、そして閉経後と分けられるわけですが、一つのライフステージで起きた問題は、次のライフステージの問題を引き起します。例えば、思春期の性感染症は、卵管の炎症などによって、不妊につながる可能性があります。思春期の運動不足や無理なダイエットは骨の形成が不足し、更年期以降の骨粗鬆症につながります。したがって、更年期をいきいきと過ごすためには、思春期や成熟期を健全で豊かにしていく必要があるのです。そのような意味で、産婦人科医は、女性の一生のコンサルタントでありたいと考えています。

 

TOP

徳島新聞掲載記事より(一部改定)


公開講座(どなたでも参加できます。)
■ 会期・2000年4月1日
■ 会場・徳島文理大学 
■申込先・徳島新聞社 TEL088-655-7373  **聴講券をお送りします。参加費無料。

第52回日本産科婦人科学会学術講演会
■ 会期・2000年4月1日〜4日
■会場・アスティとくしま/徳島文理大学/徳島県郷土文化会館/ホテルクレメント徳島