11JUL2001

 平成12年度 日本産科婦人科学会公開講座


日時:2001年5月12日(土)
会場:札幌市教育文化会館 大ホール
共催:日本産科婦人科学会・北海道新聞社
協賛:日本シェーリング株式会社・雪印乳業株式会社・株式会社ヤクルト・日本ワイスレダリー株式会社
後援:北海道医師会・北海道産婦人科医会・北海道文化放送
協力:アトムメディカル株式会社・オリンパス販売株式会社・東芝メディカル株式会社

 

テーマ:
「いつまでも健やかに,美しく」
女性の健康管理とホルモン --ピルとホルモン補充療法の正しい理解のために--

 

●●● 講演要旨

 

横浜市立大学名誉教授 水口 弘司 先生
「経口避妊薬の基礎知識」

現在市販されている経口避妊薬(ピル)について,多くの女性のかたに正しく理解されていただくことが重要と考えます.このために,ピルの成分,基本的な投与方法,女性ホルモンの特徴,性周期の調節機構,ピルの避妊メカニズムについてのお話をいたします.また,エストロゲン剤とプロゲステロン剤の特徴を現在市販されている低用量ピルの開発に至る歴史を振り返りながらご説明し,服用方法の種類についてもあわせてお話いたします.
ピルによる避妊方法は腟外射精やリズム法に比べて確実性が高いにもかかわらず,諸外国に比べて日本では思ったほどまだ普及していません.コンドーム法が日本では一般的に行われています.ピルの利点や副効用としては,卵巣癌,子宮体癌,骨盤内感染症,貧血などの減少があげられます.副作用としては,血栓,心血管障害,脳血管障害などが危惧されていますが,これらは喫煙との相乗リスクがあります.体重増加は思ったほど頻度は高くないと感じます.乳癌リスクに関しては低用量ピルの長期間の使用経験が日本人にはまだないことから明かではない面があります.性感染症を予防することはできません.正しく理解しながら服用すれば,確実性が高く副効用もありピルは非常に有用なお薬といえます.

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名古屋大学名誉教授 友田 豊 先生
「いつまでも美しく健康に生きる(ホルモン補充療法を中心に)」

女性の一生はホルモンと深く関係しています.また,女性の平均余命が閉経年齢を超えたのは長い人類の歴史の中で1900年以降の近代に入ったごく最近のことです.更年期には,血管運動性障害,精神障害,膣・尿道・皮膚障害,性交時痛,骨粗鬆症,動脈硬化などの問題を経験します.
HRT(ホルモン補充療法)によって生活の質の向上,骨塩量,コラーゲン量,脳血流量の増加をきたし,アルツハイマー発症リスクが低下するとも言われています.平均余命も延長するとの報告もあります.このような良いことばかりHRT(ホルモン補充療法)と思われますが,実際に治療中断に至った理由の一番は,癌の危惧でした.しかし,エストロゲンとプロゲステロン剤によるHRT(ホルモン補充療法)によって,実際は子宮体癌は減少します.乳癌については,109カ月以上の長期投与で若干発症率が増加するかもしれません.長期投与を受ける場合には乳癌検診を定期的に受けることをお勧めします.中断の二番目の理由は,HRT(ホルモン補充療法)が自然の老いに反するという意見でした.しかし,更年期は最近人類が経験するようになったばかりです.HRT(ホルモン補充療法)は決して自然に反していないと思います.社会的活動,運動,体力づくり,食事,夫婦間の思いやり,勉強,そしてHRT(ホルモン補充療法)を通して更年期以降の生活を美しく健康に生きましょう.

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シェーリングAG 医学・学術顧問 カリン シュミット-ゴルビッツアー 先生
「ピルとホルモン補充療法の世界の現状について」

まず,ピルについて,その作用機序や開発の歴史をお話しします.世界的にみてもピルは不妊手術とならんで最もポピュラーな避妊方法です.人口増加に悩む発展途上国においては,ピルの使用は60%にものぼります.世界的にみれば,管理が不十分な妊娠合併症や不適切な中絶処置によって多くの尊い人命がいまだに失われています.このような地域ではピルによって望まない妊娠が回避できるようになってきています.先進国においては,少産化や10代の妊娠の増加など過去30年間で大きく生殖パターンが変化してきています.若年からの性行為開始と少産化のために生殖年齢期間における必要な意図的な避妊期間は近年著しく延長しています.一方,HRT(ホルモン補充療法)については,女性のヘルスケアとして重要であり,脳心血管障害のリスクを減らし,コラーゲンや骨塩量の増加をきたし,また歯に良い影響があります.
ドイツでは,ピルの使用頻度もHRT(ホルモン補充療法)の使用頻度も35%と日本に比べて高率です.閉経前からのピルの経験によってHRTに対する抵抗が少ないとも思われます.

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