私が産婦人科を選んだ理由は、大学の臨床実習において産婦人科を回った時に、母児という2つの命を取り扱うことができることにロマンを感じたからです。そしてふと気付いてみると四半世紀以上、産科医療に携わってきました。
そしてこの間、周産期医療の臨床を中心に妊娠と栄養・代謝・内分泌に関した基礎研究も行ってきました。近年のわが国の妊娠可能年齢女性の栄養に関する特徴としてやせの増加と肥満の横ばいといった2極化が認められます。食習慣としては高脂肪食が特徴的変化であり、妊娠中の高脂肪食環境は母体のみならず次世代にも炎症様変化を介して影響を与えます。すなわち母体の栄養は胎児の遺伝子の異常発現(エピジェネティクス)を介し次世代の健康に影響を与えることになり、機序を解明できれば治療戦略につなげることができます。今後、食育といった基本的な生活習慣が周産期領域においても重要になります。このように世代を超えた研究を行えるのも産婦人科医の魅力です。