学会の取り組み

第69回日本産科婦人科学会・学術集会でイクボスのはじめかた~公平性と多様性の両立「お互いさま」を目指して~男女共同参画・ワークライフバランス改善委員会
産婦人科未来委員会
共同企画

今年は、男女共同参画・ワーク・ライブ・バランス改善委員会と産婦人科未来委員会の共同企画としてワークショップを開催した。昨年の第68回学術講演会のワークショップで日本産科婦人科学会は「イクボス宣言」を行ったが、実際にはどのようにしたら良いのかはわかりづらい。そこで、今年の企画は「イクボスのはじめかた」とした。
Part1では岡山大学医療人キャリアセンター地域医療人材育成講座教授の片岡仁美さんとANA人財戦略室人事部ダイバーシティ&インクルージョン推進室長の宇佐美香苗さんに講演いただいた。次いで、Part2では女性クリニックWe!富山の種部恭子さんと秋田赤十字病院の富樫嘉津恵さんの司会でワークショップを開催した。

イクボス!!

岡本愛光委員長

司会:岡本愛光委員長

南佐和子副委員長

南佐和子副委員長
(2017年当時)

イクボスできてます?

イクボスとは
部下の私生活とキャリアを応援し、自らもワーク・ライフ・バランスを満喫し、組織の目標を達成できるボス

Part1:
その1:岡山大学での取り組み

医師不足を背景として女性医師の離職防止・復職支援が急激に注目されるようになった。

女性キャリア支援の2本柱
① お互いに支え合い離職を防止
② 復帰しやすいシステム作り
病院全体のシステムづくりにはイクボスは欠かせない存在

「年齢や子供の数が同じほかの女性医師と比べないで欲しい」という意見が多い
1人1人向き合うことが大切で重要

女性医師への支援は男性医師も働きやすい環境を整えることになる。
臨床医が患者さんを受け入れ理解することは、同僚や部下を理解する、多様な背景を理解する多様な背景を受け入れることに繋がる。このような職場は患者さんに対してよりよい医療を提供でき、地域医療機関に復職することで地域医療に貢献できる。

片岡仁美さん

岡山大学医療人キャリアセンター
地域医療人材育成講座
教授
片岡仁美さん

その2:ANAの取り組み

ANAには業務特性に応じた両立支援制度がある
・短時間勤務制度
・短日数勤務制度
・退職者再雇用制度
・かがやきサポートプログラム

支援制度が活用されるためには風土改革が重要
ANAグループはDiversity & Inclusion宣言しました
① 社員の多様性を大切にする
② 自らの強みを最大限に発揮・生かす職場づくり
③ 誰もがやりがいをもって働くことで揺るぎない信頼とたゆまぬ変革を生み出すANAグループを作る

風土改革の前には上司の意識改革が必要
イクボスの推進を行っている
社員それぞれの個性を生かし、違いを強みに変えて新しい価値観を生み出していくANAはD&Iで成長します

宇佐美香苗さん

ANA人財戦略室人事部
ダイバーシティー&インクルージョン推進室長
宇佐美香苗さん

Part2:ワークショップ

ワークショップに当たり、事前に全学会員より働き方や指導等に関する不満や意見を募集し、13の代表的なケースや課題を抽出した。それぞれについて、管理職・部下、支える側・支えられる側、のそれぞれの立場から議論し、解決策を探った。
HP上では課題のみを数テーマ取り上げます
詳細は学会雑誌でご覧ください

種部恭子さん

司会:女性クリニックWe!富山
種部恭子さん

富樫嘉津恵さん

秋田赤十字病院
富樫嘉津恵さん

片岡仁美さん

イクボス代表
片岡仁美さん

宇佐美香苗さん

イクボス代表
宇佐美香苗さん

草開妙さん

支えられる側代表
草開妙さん

長谷川徹さん

支える側代表
長谷川徹さん

課題1.

短時間勤務で産休明けに復帰した医師の代わりに、夜の呼び出しや夜間の雑用を担っていた。復帰した医師は産休分を取り返すように手術の執刀を優先的に割り当ててもらっており、自分の執刀の機会は減った。結婚したが夜も不規則で無月経になり、妊活のために離職した。規模の小さな病院では人数が少なくカバーしきれない。
<問題点>
「働き続ける女はなりたくても母親になれない」「母親になった女は一線から退くしかなくなる」両者の間に深い溝
<解決策>
対立の根を探るため、それぞれからヒアリングを行う。両者の間に上司が入って対話する。
働き方だけでなく、キャリアアップにつながる仕事の割り振りについても公平に

課題4.

准常勤や非常勤だと、当然報酬は少ないのは理解できるが、業務内容も常勤の穴埋めで、労働力が充足していると、端に追いやられ、意欲を削がれる。

課題5.

男性医師(他科)と結婚して間もない女性産婦人科医師Aが当直明けに弛緩出血の救命センター搬送事例に対応。本来の当直交代時間には帰れず、一生懸命に対応している様子をみて、「あとは日曜日の日直医師に任せて」とは言い出せなかった。帰宅予定時間に帰らなかったことなどで不満をいわれ、結局そのことがきっかけでAは常勤をやめて非常勤になった。帰宅するように強く指示すべきだったのか。

課題9.

「バリバリ頑張ってきた子持ちの女医の先達」は漬物石だ。このような先例がいると、トーンダウンさせて仕事することができない

課題12.

病院が赤字。時間外勤務を減らすよう指導が入っており、指導医の時間外勤務の手当はほぼない。平日夜の患者家族への病状説明などは無報酬。しかし、手術は増やせ、外来再診は減らせ(待ち時間を短く)、臨床研究や治験はやれ。すべて正しいけどすべて矛盾している。医師の良心だけに期待するようなシステムが限界に近いことに病院上層部が気づいていない。

課題13.

最もケアすべきは「イクボス」たる使命を課せられた主任教授のような立場の人ではないか。

広島宣言〜イクボスのはじめかた〜

詳しくは日本産科婦人科学会雑誌 2018年 第70巻 第3号に『男女共同参画・ワークライフバランス改善委員会と産婦人科未来委員会共同企画『イクボスのはじめかた~公平性と多様性の両立「お互い様」を目指して~」』を掲載致します。