ワーク・ライフ・バランス W.L.B.事例紹介

Vol.1 交替勤務制の取り組み ~質の高い医療を提供するために~ 日本赤十字社医療センター 第二産婦人科部長 木戸道子

現状を改善するために

産婦人科医不足が社会問題になり、対策が進められてきたが、まだ現場では状況が改善された、という実感には乏しいのではないでしょうか。
図のような医師不足の悪循環を断ち切り、医師にとって魅力のある勤務環境を作り、医療安全を向上させることが求められます。

医師不足の悪循環

交替勤務制の導入

当院では2009年6月から交替制勤務が導入されました。
夜勤は夜だけ(20時から翌朝9時まで)働くため、当直を挟んだ長時間連続勤務にはなりません。当日および前日の夜勤の分の人数が日勤に欠員となるため、運用にはある程度の人員の確保が必要となります。

交替勤務制の例

出典 木戸道子:「医師のワークライフバランス改善.女性医師支援、勤務体制の工夫」(労働の科学 vol 67, No10, 606-609, 2012)

勤務体制の変更による生活時間の変化

疲れてぎりぎりの状態では質の高い医療は提供できません。医療者自身の心身のゆとり、コンディション作りが必要です。交替勤務によりON/OFFがはっきりすることでワークライフバランスは改善し、夜勤前後に心身の休養をとることが可能となります。

交替制勤務導入前 交替制勤務導入後

交替制勤務の効果と課題

交替勤務制により離職、非常勤、パートへの転職や、当直免除などの特別サポートなどせずとも、出産育児、介護などのライフイベントの際に、多くの医師が常勤をつづけやすくなりました。
ただ、解決すべき課題も残されています。

勤務表や外来担当表の作成が必要
収入面: 当直料がなくなり収入が減少することもある。夜間休日の勤務への正当な評価が必要
診療面: 外来担当曜日が固定しにくい
患者の理解: 日中に主治医が不在になることへの理解が必要
このために、チーム診療の促進、診療ガイドラインの活用による標準化が有効
研修面: 経験を積むために時間外勤務が増える可能性がある
施設面: 運用には業務量と人員が必須

地域の基幹施設など実施しやすい条件があるところから運用を進め、問題点や運用のコツなど、情報を共有していくことが望まれます。