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産婦人科の“魅力”
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女性のがん治療のプロフェッショナル
  - 婦人科腫瘍学の魅力
2009年7月14日 櫻木範明 (婦人科腫瘍委員会委員長)
産婦人科医こそが女性のがんに最良の医療を提供できる専門医です

 産婦人科医療は大変広い領域をカバーしており、さらに専門領域を婦人科腫瘍、周産期、生殖内分泌、女性ヘルスケアに分けることができます。産婦人科は女性特有の疾患の予防、診断、治療に関わるプロフェッショナルの集団です。「がん」について言えば、我が国の死亡原因の第一位はがんで、3人に一人はがんで亡くなります。子宮がん、卵巣がん、乳がんなどは女性の健康を脅かす女性特有のがんです。わが国には産婦人科の専門医資格を取得して特別な研修を修了した産婦人科医に婦人科腫瘍専門医資格を与える日本婦人科腫瘍学会専門医制度ができています。このことからも婦人科腫瘍学という領域が医療の中で大変ユニークで重要な役割を担っていることがわかります。なぜがん治療の中で婦人科腫瘍学が高度なプロフェッショナルとして位置づけられるのでしょうか。その第一の特徴は女性のがんが卵巣や子宮などの次世代に生命を伝えてゆく生殖臓器に発生することであり、第二には女性のがんの発生や、増殖あるいは抑制に女性特有の性ホルモンが深く関与していることにあります。婦人科腫瘍学であつかう「がん」には小児・思春期から老年期に至るまで様々な種類のものがあります。抗がん剤治療や手術治療の進歩により、若い女性の卵巣胚細胞腫瘍や初期の子宮頸がんを卵巣や子宮を残して、すなわち妊娠する能力(妊孕能と呼びます)を保持する治療が行われることが標準治療になっています。このように卵巣や子宮に発生するがんの特徴を深く理解して次世代にまで希望がつながる医療を行うのが婦人科腫瘍学なのです。

 女性がんの発生についての基礎的研究も産婦人科は積極的に進めています。卵巣がんは絶え間の無い排卵により卵巣の上皮に遺伝子異常が起こり、さらにゴナドトロピンや性ステロイドの関与により発生します。子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染がきっかけとなります。HPV発見者のzur Hausen教授がノーベル賞を授与されたことや、HPVに対するワクチンが開発されがん予防が夢ではなくなったことなどのニュースはまだ記憶に新しいところです。子宮体がんはエストロゲンが単独で持続的に作用することが深く関わっています。予後不良なtype 2子宮体がんにおける遺伝子異常、子宮内膜症のチョコレート囊胞と卵巣明細胞腺癌などの発生メカニズムの解明も進んでいます。これらは女性がんの発生についての研究成果の一部です。このような知識を十分に理解し、女性の健康維持に適切な情報や助言を人々に提供し、細胞診や病理診断にも精通し、早期発見・早期診断に積極的に関わり、妊孕能やQOLに十分に配慮した治療をできるのは産婦人科の他にはないやりがいであり大きな魅力です。
若い女性のがんについて

 一般にがんは高齢者の病気であると思われています。がんの増加も社会の高齢化によるものと言われます。しかしこれは真実の一面でしかありません。子宮頸がんについては、50歳以上ではこの20年間で減少していますが、逆に若い40歳までの女性では10年間で、およそ4倍近くにも増加しています。10代~30代の若い女性のがん罹患率は子宮がんが第一位なのです。若い女性のがん治療では治療後の卵巣機能や妊娠をはじめとして、数十年にわたるQOL管理が大変大切です。治療後の妊娠成立には生殖補助医療専門医とチームであたります。卵巣機能については生殖内分泌学や更年期医学の専門医と連携します。妊娠中に発見されたがんに対しては周産期医療および新生児医療エキスパートと共同で治療にあたることが必須です。さらに女性患者特有の心理的負担などへの対応には看護師などとのチームワークが必須であり有効です。これらは産婦人科の総合力を示しています。

予防・検診から治療まで

 予防に優る治療はないと言われます。女性の卵巣機能を正常に保ってあげること、適切に排卵調節をしてあげること、HPV感染について啓発すること、がん検診・婦人科検診の大切さを伝えることなどわれわれにできることはたくさんあります。予防やがん検診の重要性が今よりももっと人々に理解されればがんによる死亡は減少するでしょう。しかし「がん」そのものが無くなることはないでしょう。治療については、ますます妊孕能、卵巣機能、排尿機能などの維持に配慮した、QOLの高い治療が求められます。若年女性に発見された浸潤子宮頸癌に対して、根治性の高い手術を行い、術後の卵巣機能、性機能や膀胱機能を保持した治療を行うのが婦人科腫瘍医のめざすところです。

 現在医学生あるいは初期研修医である皆さんに伝えたいことがあります。人類の半分を占める女性の健康にとって産婦人科医の役割は未来に至るまで不変です。われわれとともに手を携えて産婦人科医として女性がんの診断・治療にあたりましょう。治療法の改良や全く新しい治療法の開発にも大いに興味を持って研究面にも力を入れて欲しいと思います。女性を守り、未来の生命を守り、あなたの家族と周囲の人々、社会に貢献しましょう。


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