日本産科婦人科学会
JAPANESEENGLISH
JSOG HOME
学術講演会 刊行物 専門医申請関連
会員専用 login
Home > 声明

声明


「新たな手法を用いた出生前遺伝学的検査について」

   日本産科婦人科学会は、出生前遺伝学検査の指針として、昭和63年1月「先天異常の胎児診断、特に妊娠絨毛検査に関する見解」を、平成19年4月に「出生前に行われる検査および診断に関する見解」を公表し、さらにそれらを平成23年6月に現行の「出生前に行われる検査および診断に関する見解」へと改定してきました。しかし、最近、海外では、網羅的な分子遺伝学的解析・検査手法*を用いた新たな出生前診断、あるいは従来の検査よりも非侵襲的な母体採血による検査が注目され、普及しはじめています。すなわち、絨毛採取や羊水検査におけるマイクロアレイ法(CGHアレイ法やSNPアレイ法等)**、非侵襲的な検体(母体血液中の胎児・胎盤由来細胞やDNA/RNA等)***を用いた高速ゲノムシーケンサー(次世代シーケンサー)****等による遺伝学的検査です。これらの検査では、解析結果の解釈が従来の検査に比較して難しいことも多く、臨床対応には遺伝医学的専門知識が求められ、検査実施や診断には専門家による検査前ならびに検査後の遺伝カウンセリングが必須です。なお、母体血を用いる検査については、現在、国内の臨床研究の準備が進行しており、その結果を注視していきたいと考えます。一方で、これらの検査が広範囲に実施された場合、社会に大きな混乱を招くことが懸念されますので、マススクリーニングとしての安易な実施は厳に慎むべきであります。

   本会は、現在、これらの新たな出生前診断手法に対する適切なあり方を検討中であり、「出生前に行われる検査および診断に関する見解」に補足を加え、「出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解(仮称)」改定案を準備中であります。すべての医療者ならびに妊娠されている女性には、これらの網羅的な遺伝学的解析手法による出生前診断、あるいは母体血を用いた検査について、慎重に取り扱う必要があることをご理解いただきますよう、お願い申し上げます。出生前に行われる遺伝学的検査および診断には、胎児の生命にかかわる社会的および倫理的に留意すべき多くの課題が含まれています。遺伝子の変化に基づく疾患・病態や遺伝型を人の多様性として理解し、その多様性と独自性を尊重する姿勢で臨むことが重要であります。

 

【註】
*網羅的な分子遺伝学的解析・検査手法:
   すべてのヒトゲノム遺伝子が明らかにされる解析検査技術が進む中、特定の疾患、異常に関係した遺伝子や染色体だけではなく、網羅的にすべての遺伝子や染色体の細かい分子レベルでの異常の有無をみることのできる解析手法である。検査解析できる精密分析機器が発達し、実用化されている。後述するマイクロアレイ法や高速ゲノムシーケンサー(次世代シーケンサー)を用いた遺伝学的検査もその一つである。
**マイクロアレイ法(CGHアレイ法やSNPアレイ法等):
   CGH(比較ゲノムハイブリダイゼイション)アレイ法を用いると、ヒト遺伝子が含まれる染色体全部の各部位において、正常な染色体のゲノムと変異が生じたゲノムの微細なコピー数の差異(ゲノムDNAの増幅・重複や欠損)が検出できる。これに加えてSNP(単一塩基多型)アレイ法ではLOH(ヘテロ接合性喪失)やUPD(片親性ダイソミー)などの検出ができる。
***非侵襲的な検体(母体血液中の胎児・胎盤由来細胞やDNA/RNA等):
   遺伝学的な出生前診断法には従来胎児にリスクのある絨毛採取、羊水穿刺が多く取り入れられてきたが、現在母体の採血のみで(胎児にはリスクがなく=非侵襲性)母体血液中に存在する胎児のDNAを分析する検査法が開発されてきている。
****高速ゲノムシーケンサー(次世代シーケンサー)を用いた遺伝学的検査:
   ヒトの遺伝子を含むゲノムの分子配列(塩基配列)を読み取り、配列を決定する装置による遺伝子解析法。ヒトゲノム30億塩基(対)を超高速度で正確に配列決定処理ができる精密機器が開発されてきている。

 

平成24年9月1日

公益社団法人 日本産科婦人科学会
理事長 小西郁生
倫理委員会委員長 落合和徳

このページのトップへ

サイトマップこのサイトについて
© 公益社団法人 日本産科婦人科学会