HUMAN +女と男のディクショナリー
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卵らんそう巣は子しきゅう宮につながり、左右2つある親指の先くらいの大きさの臓器です。女性ホルモンの分ぶんぴつ泌、排はいらん卵や妊娠に欠かせない、女性にとって重要な臓器です。この卵巣に発生した腫しゅよう瘍を「卵巣腫瘍」、その中で悪性腫瘍を「卵巣がん」と呼びます。卵巣腫瘍には非常に多くの種類があり、また良性腫瘍と悪性腫瘍の中間的な性格を持つ「境界悪性腫瘍」もあります。それぞれのタイプによって治療や管理も異なるため、一般の人にとって卵巣腫瘍は理解しにくい、難しい病気となっています。◎ 若い女性にもおこる卵巣がん卵巣がんは当初は無症状のため、サイレントキラーと呼ばれます。おなかが張る、最近太ったとの訴えや、超音波検査で骨こつばん盤内の腫しゅりゅう瘤として発見されることもあります。閉へいけい経後の高齢女性に多いですが、若い女性も無関係ではありません。卵巣腫瘍には「表層上皮性・間質性腫瘍」、「性索間質性腫瘍」、「胚細胞性腫瘍」の3つのグループがあります。胚細胞性腫瘍は、主に10代の小中学生から20代の女性に発生します。多くが良性の奇きけいしゅ形腫ですが、まれに悪性腫瘍が発生します。卵巣がんの5%程度が、悪性の胚細胞性腫瘍です。このタイプの卵巣がんは抗がん剤がよく効き、妊娠できる機能を温存して治療することもできます。卵巣がんの5%程度は遺伝が原因であることがわかってきました。遺いでんせい伝性乳がん卵巣がん(HBOC)という病気が有名です(107ページ参照)。主に乳がんの原因遺伝子(BRCA)の異常で発生し、通常より若い年齢で表層上皮性・間質性腫瘍である漿しょうえきせいせん液性腺がんなどが発生します。親子や姉妹に若くして乳がんや卵巣がんになった人がいた場合は、注意が必要です。良性の卵巣腫瘍ががん化する場合もあります。特に最近、日本において子宮内膜症による卵巣チョコレート嚢のうほう胞(48ページ参照)ががん化することが知られてきました。このがん化によって発生する明めいさいぼうせん細胞腺がんというタイプは抗がん剤が効きにくいことも知られています。チョコレート嚢胞は小さければ低容量ピルなどの薬物療法を行い、経過を観察します。閉経周辺期以降や若くても10cm以上の大きな嚢胞の場合は、がん化を予防するために手術による摘てきしゅつ出を考えなくてはなりません。卵巣がんは決して頻ひんど度の高い病気ではありませんが、若い女性にまったく無関係な病気ではありません。婦人科疾しっかん患によくある不正出血などの症状が出にくい病気ですので、より注意が必要ともいえます。53思 春 期青 年 期将来の妊娠のために妊娠・出産中 高 年 期9若い女性のがん③卵巣がん慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 阪埜浩司Doctor

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