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抗インフルエンザウイルス薬投与妊婦の出産と小児に対する特定使用成績調査中間報告

 新型インフルエンザ(A/H1N1)は2009年に世界的な大流行を引き起こし、妊婦に肺炎等が合併しやすく、死亡のリスクが高いことが海外から報告された。これらの報告を受け、日本産科婦人科学会では「妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応(Q&A)」を2009年5月に作成し、以後改定を加えてきた。Q&Aでは妊婦の新型インフルエンザ感染が確認された場合、早期の抗インフルエンザ薬の服用を勧めている。また内科医とも協力し適切な対応をとっていただいた。その結果、表1(PDF 77KB)に示す如く日本では妊婦の重症例も少なく、また一人の母体死亡も出さなかった。これは他国に比べて2日以内の抗ウイルス薬の使用率が高いこと、ワクチン接種率が高いこともその要因であろうと推察される(表2(PDF 45KB))。
 これまでのところ抗インフルエンザ薬を妊婦が服用しても重篤な副作用は報告されていないが、症例数は不十分である。ついては、本学会は昨年末から抗インフルエンザ薬の妊婦ならびに出生児に対する安全性に対して客観的に評価を行うための調査を行なった。この度、調査の中間解析を行ったので、その成果を報告する。

I.抗インフルエンザ薬の投与時期と投与薬(表3(PDF 74KB)
 今回、中間解析で詳細を検討できた163例中、147例(90.2%)がタミフルを投与されており、リレンザの投与は15例(9.2%)、投与薬不明が1例であった。日本産科婦人科学会のQ&A(8月改定)で抗インフルエンザ薬としてタミフルを推奨したからタミフル投薬剤が多かったのかもしれない。また少数例ではあるがタミフルの催奇性について大きな問題はなさそうだとの論文(林昌洋他. 日病薬誌45:547-550, 2009)が掲載されたからかもしれない。

Ⅱ.抗インフルエンザ薬投与時期と胎児・新生児異常との関連
1) タミフルの影響
 表3、表4に示すように、絶対的過敏期にタミフルが14例処方され、3例の異常(流産2例:いずれも妊娠6週、早産1例:妊娠36週)であった。参考までに林らが報告した絶対過敏期のタミフル投与例43例を追加すると、57症例中心室中隔欠損(VSD)1例、流産3例、早産1例となった(表4(PDF 113KB))。
 相対的過敏期でのタミフル投与は13例であり、1例に軽度の新生児黄疸を認めたのみであった。林らの2例を加えた15例でも1例の新生児黄疸を認めるのみであった。
 比較的過敏期ではタミフル投与が15例に行われたが、早産(妊娠32週)1例、新生児仮死2例、微熱1例であった。
 妊娠中期(16-28週)では58例にタミフルが処方され、8例の異常が報告された。内訳はVSD1例、顔貌異常・両側多合指症1例、新生児黄疸2例、低血糖1例、早産(妊娠36週)1例、皮下腫瘤1例であった。
 妊娠後期にタミフル44例が処方され、児の異常として聴力検査再調査1例であった。

2) リレンザの影響
 リレンザは相対過敏期に3例、比較過敏期に3例、妊娠中期に6例、妊娠後期に3例処方されたが、胎児新生児異常は認めなかった。

Ⅲ.総括
 絶対過敏期にタミフルが投与された14例中2例(14.3%)に流産を認めたが、自然流産率の15%にほぼ一致しており、タミフルの影響とは考えにくい。また早産も妊娠36週でありタミフルの影響とは考え難い。相対的過敏期、比較的過敏期におけるタミフルの影響についても重篤なものはなかった。妊娠中期に投与した際、2例の奇形が認められた(VSD1例、顔貌異常・両側多合指症1例)が、タミフルとの因果関係は服薬時期から考え、否定的である。また妊娠後期でのタミフル投与例での異常(聴力検査再調査)も1例のみで因果関係は不明である。
 リレンザ使用15例では、いずれの症例も異常を認めなかった。
 今後、さらに多くの症例を集積し、かつ児の2歳時までのフォローアップが必要であるが、現時点での妊婦インフルエンザ感染例に対するタミフル投与、リレンザ吸入につき、特に制限を必要とするような副作用は認められなかった。このため新型インフルエンザ感染に対応するQ&Aも変更せず、継続とする。

平成22年11月
抗インフルエンザウイルス薬投与妊婦の出産と小児に対する特定使用成績調査
評価委員
        齋藤 滋  (富山大学)
        海野 信也 (北里大学)
        水上 尚典 (北海道大学)
        中井 章人 (日本医科大学)
        久保 隆彦 (成育医療研究センター)

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