公益社団法人 日本産科婦人科学会

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声明/倫理に関する見解
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「着床前診断」に関する見解

更新日時:2019年8月28日
「着床前診断」の実施に関する細則
様式1,2-1,2-2,3-1,3-2,4,5
 

会   告

学会会員殿


 日本産科婦人科学会(以下,本会)倫理委員会は,重篤な遺伝性疾患児を出産する可能性のある遺伝子変異ならびに染色体異常を保因する場合,および均衡型染色体構造異常に起因すると考えられる習慣流産の場合に着床前診断(以下,本法)を実施する必要性を認め,その際に本会会員が順守すべき事項を,「着床前診断」に関する見解として示し,最近では平成30年6月に改定しました.
 平成30年10月より,改定された見解に基づく施設認可を行い,平成31年1月からは,認可された施設より申請された症例の審査を開始しました.その間,審査の過程で,いくつかの問題点が明らかになってきました.今回,この点をふまえて,本法に関する細則・様式の改定案をとりまとめ,理事会(平成31年4月11日)はこれを承認しましたので,会員にお知らせ致します.

令和元年5月

公益社団法人 日本産科婦人科学会
理事長  藤井 知行
倫理委員会委員長  苛原  稔

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「着床前診断」に関する見解

受精卵(胚)の着床前診断に対し、ヒトの体外受精・胚移植技術の適用を認め、実施にあたり遵守すべき条件を以下に定める。

1.位置づけ
着床前診断(以下本法)は極めて高度な技術を要し、高い倫理観のもとに行われる医療行為である。

2.実施者
本法の実施者は、生殖医学に関する高度の知識・技術を習得し、かつ遺伝性疾患に関して深い知識と豊かな経験を有していること、および、遺伝子・染色体診断の技術に関する業績を有することを要する。

3.施設要件
本法を実施する医療機関は、生殖補助医療に関して十分な実績を有することを必要とする。実施しようとする施設の要件は、細則に定めるものとし、所定の様式に従って施設認可申請を行い、本会における施設審査を経て認可を得なければならない。

4.適応と審査対象および実施要件
   1) 検査の対象となるのは、重篤な遺伝性疾患児を出産する可能性のある遺伝子変異ならびに染色体異常を保因する場合、および均衡型染色体構造異常に起因すると考えられる習慣流産(反復流産を含む)に限られる。遺伝性疾患の場合の適応の可否は、日本産科婦人科学会(以下本会)において審査される。
   2) 本法の実施にあたっては、所定の様式に従って本会に申請し、施設の認可と症例の適用に関する認可を得なければならない。なお、症例の審査方法については「着床前診断の実施に関する細則」に定める。
   3) 本法の実施は、夫婦の強い希望がありかつ夫婦間で合意が得られた場合に限り認めるものとする。本法の実施にあたっては、実施者は実施前に当該夫婦に対して、本法の原理・手法、予想される成績、安全性、他の出生前診断との異同、などを文書にて説明の上、患者の自己決定権を尊重し、文書にて同意を得、これを保管する。また、被実施者夫婦およびその出生児のプライバシーを厳重に守ることとする。
   4) 審査対象には、診断する遺伝学的情報(遺伝子・染色体)の詳細および診断法が含まれる。対象となるクライエントに対しては、診断法および診断精度等を含め、検査前、検査後に十分な遺伝カウンセリングを行う。

5.診断情報および遺伝子情報の管理
診断する遺伝学的情報は、疾患の発症に関わる遺伝子・染色体に限られる。遺伝情報の網羅的なスクリーニングを目的としない。目的以外の診断情報については原則として解析または開示しない。また、遺伝学的情報は重大な個人情報であり、その管理に関しては「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」および遺伝医学関連学会によるガイドラインに基づき、厳重な管理が要求される。

6.遺伝カウンセリング
本法は遺伝情報を取り扱う遺伝医療に位置づけられるため、十分な専門的知識と経験に基づく遺伝カウンセリングが必要である。この遺伝カウンセリングは、4項3)および4)に述べる実施施設内における説明・カウンセリングに加え、客観的な立場からの検査前の適切な遺伝学的情報提供と、クライエントの医学的理解や意思の確認などを含めるものとし、原則として着床前診断実施施設以外の第三者機関において、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー等の遺伝医療の専門家によって行われるものとする。また、検査後は、着床前診断実施施設が遺伝子・染色体解析データのすべてを受けとり、遺伝子(染色体)解析の専門家により判断、解釈を加え、着床前診断実施施設がクライエントに解析結果を情報提供し、改めて適切な遺伝カウンセリングを行う。

7.申請および審査手続き
本法の実施にあたっては、本会への審査申請、承認を受けた後に、実施施設の倫理委員会での承認を受けなければならない。施設認定は、本会倫理委員会内に設置された着床前診断に関する審査小委員会で行うものとし、小委員会の運用については、細則に定める。

8.症例登録と報告
本法を実施するにあたり、実施施設は個々の症例を本会に登録しなければならない。実施後はその結果(検査精度、妊娠転帰、児の予後などを含む)を症例毎に報告する。症例の登録、報告の方法などについては、細則に定める。

9.見解等の見直し
本会は、着床前診断に関する本会の見解や資格要件、手続きなどを定期的(3~5年毎)に見直し、技術的進歩や社会的ニーズを適切に反映していくことに努める。

平成30年6月23日改定

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着床前診断の実施に関する細則

【1】施設基準ならびに実施者・配置すべき人員の基準
 1)実施施設にあっては下記の実施実績,整備の要件を満たすものとする.
  ①生殖補助医療実施医療機関の登録と報告に関する見解に定める倫理委員会を設置すること
  ②体外受精・胚移植の十分な実施実績を有すること
  ③遺伝子(染色体)解析,診断の十分な実施実績を有すること
  ④当該施設内における遺伝カウンセリング体制・人員の整備がされていること
  ⑤着床前診断実施後,遺伝子(染色体)解析データの全情報について専門的に判断,解釈し,対応できる遺伝子(染色体)解析の専門家が配置されていること
 * 遺伝子(染色体)解析を外部機関等に委託する場合,その外部機関等の業務が技術・学術的にも適正であり,かつ倫理的にも関連した倫理指針,ガイドラインを遵守していることを要す.なお着床前診断実施施設において遺伝子(染色体)解析データの全情報を受けとり,解析結果を遺伝子(染色体)解析の専門家が判断,解釈し,適切な検査後遺伝カウンセリングを行うことを要する.

【2】申請方法
 申請・認定には施設に関する申請・認定と症例に関する申請・認定がある.着床前診断を行おうとする施設は,前もって施設に関する申請・認定を行った後に,着床前診断を希望する症例が発生する度に,症例に関する申請・認定を行う必要がある.症例申請にあたっては,遺伝性疾患と習慣流産のそれぞれで方法が異なる.さらに実際の着床前診断実施に際しては,本会の承認を受けた後に実施施設の倫理委員会の承認を受けなければならない.
 1)施設認可申請
  着床前診断の施設認定申請時には上記【1】の実績,人員配置の状況を様式1により提出するものとする.また本申請にかかわる実施者,人員の配置についてはその履歴,業績を添付する.
 <記載を要する事項>
  ①倫理委員会の設置状況
  ②施設の体外受精・胚移植の実施状況
  ③施設の遺伝子(染色体)解析,診断の実施状況,および着床前診断の遺伝子(染色体)解析の体制
  ④施設の遺伝カウンセリング体制の状況
  ⑤着床前診断の実施責任者および実施者(複数の場合は全員)の氏名,略歴,業績
  ⑥着床前診断の遺伝子(染色体)解析データの全情報について専門的に判断,解釈し,対応できる遺伝子(染色体)解析の専門家の氏名,略歴,業績
  ⑦施設内の遺伝カウンセリング担当者の氏名,臨床遺伝専門医,認定遺伝カウンセラー等の遺伝医療の専門資格,略歴,業績
 2)症例認可申請
  着床前診断に関する施設認可を得た施設において,着床前診断を希望する症例が現れた場合は,個々の症例の申請書類を様式2-1および様式2-2により日本産科婦人科学会理事長宛に送付する.
 (1)着床前診断に関する症例認可申請【遺伝性疾患】(様式2-1)
  ①着床前診断を行う疾患名(遺伝子異常,染色体異常,核型などを含む)
  ②症例の概要(妊娠歴,流産歴,分娩歴,夫婦および家族歴(遺伝家系図),着床前診断を希望するに至った経緯,生まれてくる児の重篤性を示す臨床症状もしくは検査結果など)
  ③胚の遺伝子異常,染色体異常等の診断法
  ④クライエントへの説明内容
  ⑤自施設における遺伝カウンセリングの内容と本会への申請に対する同意書
  ⑥検査前の第三者による遺伝カウンセリングの報告(着床前診断実施診療施設以外の第三者機関における遺伝カウンセリングの内容(写し)と担当者の施設名,氏名)
 (2)着床前診断に関する症例認可申請【習慣流産】(様式2-2)
  ①着床前診断を行う疾患名(遺伝子異常,染色体異常,核型などを含む)
  ②症例の概要(妊娠歴,流産歴,分娩歴,夫婦および家族歴(遺伝家系図),着床前診断を希望するに至った経緯,夫婦の染色体異常,核型,流産児(絨毛)の染色体分析結果,習慣流産関連の諸検査成績など)
  ③胚の遺伝子異常,染色体異常等の診断法
  ④クライエントへの説明内容
  ⑤自施設における遺伝カウンセリングの内容と本会への申請に対する同意書
  ⑥検査前の第三者による遺伝カウンセリングの報告(着床前診断実施診療施設以外の第三者機関における遺伝カウンセリングの内容(写し)と担当者の施設名,氏名)

【3】着床前診断に関する審査小委員会(以下小委員会)
 1)小委員会は,原則として本会理事または倫理委員,および理事長が委嘱する着床前診断に豊富な知識を有する複数の領域にわたる専門家,男性および女性の委員をもって構成され,施設認定に関する審査,個々の申請事例についての適応可否に関する審査等を行う.委員は5名以上10名以内とする.委員の再任は妨げない.
 2)小委員長は委員の互選により選出される.
 3)小委員会は本会倫理委員長の諮問あるいは必要に応じて小委員長が召集する.
 4)小委員会の職責遂行を補佐するため幹事若干名が陪席する.

【4】施設および症例の認定
 1)小委員会は書類により施設申請ならびに症例申請を審議し,必要に応じて調査を行う.
 2)小委員会は施設ならびに症例(疾患)や診断方法について認定の可否を決定し,申請者に通知する.(様式3-1,様式3-2)
 3)小委員長は申請審議内容を倫理委員会に報告する.
 4)施設認定の期間は5年とし,5年ごとに更新する.

【5】症例の登録
 1)本法を実施するにあたっては,認定症例毎に実施施設の倫理委員会の承認を受けなければならない.
 2)倫理委員会の承認後,実施施設は個々の症例を倫理委員会の議事録および承認書の写しと共に様式4により本会に登録しなければならない.

【6】実施報告義務
 1)本件に関わる報告対象期間は毎年1月1日から12月31日までとする.
 2)実施施設は,毎年3月末日までに個々の登録症例について実施報告書(様式5)により本会倫理委員長宛に送付する.
 3)当該年度に実施がない場合でも,実施報告書(様式5)は送付する.
 4)本会倫理委員会は報告書を審議し,その結果を理事会に報告する.

【7】着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)臨床研究に関わる要件
 1)PGT-Aが生殖補助医療による流産予防,妊娠・出産率の向上に有益な技術であるかを検証することを目的として,以下の条件を満たす場合にのみ,PGT-Aに関する臨床研究を行う.
 2)実施施設は,既に本会見解によって認定されたART登録施設に限る.
 3)PGT-Aに関する臨床研究を実施する登録施設は,日本生殖医学会の認める生殖医療専門医が常勤していることを必須とする.
 4)PGT-Aに関する臨床研究を実施する登録施設は,着床前胚染色体異数性検査の結果の解釈に必要な臨床遺伝の知識を持った専門家が常勤し,常にPGT-Aに関するカウンセリングを行うことが可能であることを要する.
 5)PGT-Aに関する臨床研究を実施する登録施設は,患者が希望した場合に,遺伝学の観点を中心とした専門的知識を有する日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会が認定する臨床遺伝専門医,または認定遺伝カウンセラーへ紹介し,当該専門家による遺伝カウンセリングを受ける機会を提供することを必須とする.
 6)PGT-Aに関する臨床研究を行おうとする登録施設は,本会倫理委員会に臨床研究計画書を添えて申請し,許可された後に,各施設内の臨床研究倫理審査委員会の審査を受けなければならない.
 7)PGT-Aに関する解析検査を担当する機関は,国内における医療に関する法律などを遵守し,検査に関する品質管理(施設内管理および施設間管理)を行っていること.
 8)詳細は別途運用を定める.

【8】見解の遵守
 1)本会倫理委員会は認定施設および実施者が見解を遵守しているかを検討し,違反した場合にはその旨理事会に報告する.
 2)理事会は見解に違反した施設および会員に対して本会見解の遵守に関する取り決めに従って適切な指導・処分を行う.

 

(令和元年6月 改定 理事長 藤井 知行,倫理委員長 苛原 稔)
(平成10年10月発表,会長 佐藤和雄)
(平成11年7月改定,会長 青野敏博,倫理委員会委員長 藤本征一郞)
(平成18年2月改定,理事長 武谷雄二,倫理委員会委員長 吉村泰典)
(平成22年6月改定,理事長 吉村泰典,倫理委員会委員長 嘉村敏治)
(平成27年6月改定,理事長 小西郁生,倫理委員長 苛原 稔)
(平成30年6月23日改定,理事長 藤井知行,倫理委員長 苛原 稔)
(平成31年4月11日改定)
(令和元年6月1日改定,理事長 藤井知行,倫理委員長 苛原 稔)

(様式1)
(様式2―1)
(様式2―2)
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(様式4)
(様式5)
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