公益社団法人 日本産科婦人科学会

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産婦人科専門医
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2016年度までに研修を始めた専攻医のための研修カリキュラム

更新日時:2018年8月1日

2016年度までに研修を始めた専攻医のための研修カリキュラム

総 論

1.基本的診療能力
   1) 医師として患者に接するマナー
   2) インフォームドコンセント
   3) 医療面接(問診)と問診事項の記載
   4) 全身の診察と所見の記載
2. 医の倫理とプロフェショナリズム
   1) 医師としての倫理的基本姿勢について理解し、女性を総合的に診察する。
   2) 医学・医療にかかわる倫理指針を理解する。(臨床研究、治験、疫学研究)
   3) Evidence-based medicine(EBM)を理解し、実践できる。
3. 産婦人科診察と所見の記載
   女性生殖器・泌尿器の発生、解剖、生理、病理、さらに、新生児の特徴を理解したうえで、以下の診察と所見の記載ができる。
   1) 視診、双合診・直腸診
   2) 新生児の診察
4. 検査法
   1) 一般的検査
   2) 産婦人科の検査(項目は各論で記載)
5. 基本的治療法・手技
   1) 呼吸循環を含めた全身の管理
   2) 術前・術後管理(摘出標本の取り扱い・病理検査提出を含む)
   3) 注射、採血、輸液、輸血
   4) 薬剤処方
   5) 外来・病棟での処置
6. 救急患者のプライマリケア
   バイタルサインの把握、生命維持に必要な処置
   専門医への適切なコンサルテーション、適切な医療施設への搬送
7. チーム医療
8. 医療安全
9. 保健指導、予防医学的・遺伝医学的対応
10. 医療の社会的側面
   1) 健康保険制度
   2) 母体保護法
   3) 地域医療
11. 生涯学習

生殖・内分泌

   排卵・月経周期のメカニズムを理解し、排卵障害や月経異常とその検査、治療法を学ぶ。不妊症、不育症の概念を把握し、適切な診療やカウンセリングを行うのに必要な知識・技能・態度を身につける。
I. 経験すべき疾患
   1. 内分泌疾患
      1) 女性性機能の生理で重要な、視床下部―下垂体―卵巣系のホルモンの種類、それぞれの作用・分泌調節機構、および子宮内膜の周期的変化について理解し、説明できる。副腎・甲状腺ホルモンの生殖における意義も理解する。
      2) 月経異常をきたす疾患について理解し、分類・診断でき、治療できる。
   2. 不妊症
      1) 女性不妊症について検査・診断を行うことができ、治療法を説明できる。
      2) 男性不妊症について検査・診断を行うことができ、治療法を説明できる。
      3) その他の原因による不妊症検査・診断を行うことができ、治療法を説明できる。
      4) 高次で専門的な生殖補助医療技術について、倫理的側面やガイドラインを含めて説明し、紹介できる。
   3. 不育症
      1) 不育症の定義や不育症因子について理解し、それぞれを適切に検査・診断できる。
      2) 受精卵の着床前診断の適応範囲と倫理的側面を理解できる。
II.
検査:以下の検査を実施し、結果に基づいて診療をすることができる。
      (1) 家族歴、月経歴、既往歴の聴取
      (2) 基礎体温表
      (3) 血中ホルモン値測定
      (4) 超音波検査による卵胞発育モニタリング、排卵の判定
      (5) 子宮卵管造影検査、卵管通気・通水検査
      (6) 精液検査
      (7) 頸管粘液検査、性交後試験(Huhner試験)
      (8) 子宮の形態異常の診断:経腟超音波検査、子宮卵管造影
III.
治療・手術:以下の治療を実施できる。手術は助手を務める。
      (1) Kaufmann療法; Holmstrom療法
      (2) 高プロラクチン血症治療、乳汁分泌抑制法
      (3) 月経随伴症状の治療
      (4) 月経前症候群治療
      (5) AIHの適応を理解する
      (6) 排卵誘発:クロミフェン・ゴナドトロピン療法の適応を理解する。
       副作用対策i) 卵巣過剰刺激症候群;ii) 多胎妊娠
      (7) 生殖外科(腹腔鏡検査、腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術)

婦人科腫瘍

   女性生殖器に発生する主な良性・悪性腫瘍の検査、診断、治療法と病理とを理解する。性機能、生殖機能の温存の重要性を理解する。がんの早期発見、とくに、子宮頸癌のスクリーニング、子宮体癌の早期診断の重要性を理解し、説明、実践する。

I. 検査
   1. 細胞診
   2. コルポスコピー
   3. 組織診
   4. 画像診断
      1) 超音波検査:経腟、経腹
      2) レントゲン診断(胸部、腹部、骨、IVP)
      3) MRI
      4) CT
II. 治療
   1. 手術:
      1) 術前・術後管理
      2) 単純子宮全摘術:執刀できる
      3) 子宮筋腫核出術
      4) 子宮頸部円錐切除術
      5) 付属器・卵巣摘出術、卵巣腫瘍・卵巣嚢腫摘出術
      6) 悪性腫瘍手術の助手
   2. 化学療法
   3. 放射線療法
III. 疾病各論
      1) 子宮筋腫、腺筋症
      2) 子宮頸癌/CIN
      3) 子宮体癌/子宮内膜(異型)増殖症
      4) 子宮内膜症
      5) 卵巣の機能性腫大
      6) 卵巣の良性腫瘍、類腫瘍病変(卵巣チョコレートのう胞)
      7) 卵巣・卵管の悪性腫瘍
      8) 外陰疾患
      9) 絨毛性疾患

周産期

   妊娠、分娩、産褥ならびに周産期において母児の管理が適切に行えるよう、母児の生理と病理を理解し、保健指導と適切な診療を実施するのに必要な知識・技能・態度を身につける。
   1.正常妊娠・分娩・産褥の管理
      1)正常妊娠経過に照らして母児を評価し、適切な診断と保健指導を行う。
         (1)妊娠の診断
         (2)妊娠週数の診断
         (3)妊娠に伴う母体の変化の評価と処置
         (4)胎児の発育、成熟の評価
      2)正常新生児を日本版NRP[新生児蘇生法]
       NCPRに基づいて管理するとともに、異常新生児のスクリーニングとプライマリケアを行うことができる。
   2. 異常妊娠・分娩・産褥のプライマリケア、管理
      1) 切迫流産、流産
      2) 異所性妊娠(子宮外妊娠)
      3) 切迫早産・早産
      4) 常位胎盤早期剥離
      5) 前置胎盤、低置胎盤
      6) 多胎妊娠
      7) 妊娠高血圧症候群
      8) 胎児機能不全
      9) 胎児発育不全(FGR)
   3. 異常新生児のプライマリケアを行うとともに、リスクの評価を自ら行い、必要な治療・措置を講じることができる。
   4. 妊婦、産婦、褥婦ならびに新生児の薬物療法を行うことができる。
      妊婦、産婦、褥婦および新生児における薬物療法の基本、薬効、副作用、禁忌薬を理解したうえで薬物療法を行うことができる。薬剤の適応を理解し、適切に処方できる。妊婦の感染症の特殊性、母体・胎内感染の胎児への影響も理解する。
   5. 各種産科検査法の原理と適応を理解し、検査データで適切な臨床判断をする。
      1)妊娠反応
      2)超音波検査 (経腟法、経腹法)
      3)胎児心拍数陣痛計による検査・胎児胎盤機能検査法
   6. 産科手術の適応と要約を理解し、自ら実施する。
      1)子宮内容除去術
      2)帝王切開術
   7. 産科麻酔の種類、適応ならびに要約を理解する。
   8. 態度
      母性の保護、育成に努め、胎児に対しても人としての尊厳を付与されている対象として配慮する。

女性のヘルスケア

I. 女性のヘルスケア
   思春期、性成熟期、更年期・老年期の生涯にわたる女性のヘルスケアの重要性を、生殖機能の観点からも理解し、それぞれの時期に特有の疾病の適切な検査、治療法を実施できる。
   1.思春期・性成熟期
      1) 性器発生・形態異常を述べることができる。
      2) 思春期の発来機序およびその異常を述べることができる。
      3) 月経異常の診断ができ、適切な治療法を述べることができる。
      4) 年齢を考慮した避妊法を指導することができる。
   2. 中高年女性のヘルスケア
      1) 更年期・老年期女性のヘルスケア
         (1) 更年期障害の診断・治療ができる。
         (2) 中高年女性に特有な疾患、とくに、骨粗鬆症、メタボリック症候群(高血圧、脂質異常症、肥満)の重要性を閉経との関連で理解する。
         (3) ホルモン補充療法のメリット、デメリットを理解し、中高年女性のヘルスケアに応用できる。
      2) 骨盤臓器脱(POP)の診断と適切な治療法を理解する。
   3. 感染症
      1)性器感染症の病態を理解し、診断、治療ができる。
      2)性感染症(STD)の病態を理解し、診断、治療ができる。
   4.産婦人科心身症

II. 母性衛生
   思春期、性成熟期、更年期・老年期の各時期における女性の生理、心理を理解し、適切な保健指導ができる。

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