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本邦におけるEP合剤による血栓症の頻度の調査および血栓症リスクに対する安全策に関する検討小委員会報告について

更新日時:2016年6月28日

本邦におけるEP合剤による血栓症の頻度の調査および血栓症リスクに対する安全策に
関する検討小委員会報告について

 

 平成25年10月に、低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤服用者での、血栓症によるとみられる死亡例が報告されたことを受け、本会では、同年11月に「女性ホルモン剤使用中患者の血栓症に対する注意喚起」の文書を公表しました。同時に、本会内の専門委員会である生殖・内分泌委員会に、「本邦におけるEP合剤による血栓症の頻度の調査および血栓症リスクに対する安全策に関する検討小委員会」を設置し、さらなる対策の必要性を探ることといたしました。この過程では、並行して進められていた厚生労働省科学研究「女性ホルモン剤と血栓症に関する全国調査研究」の成果も踏まえつつ、女性のヘルスケア委員会とも協力して検討を進めてまいりました。
 今回、小委員会報告として提言をまとめるに至りましたので、ここに発表いたします。

 

平成28年6月28日

公益社団法人 日本産科婦人科学会
生殖・内分泌委員会
委員長 久具 宏司
同委員会内「本邦におけるEP合剤による血栓症の頻度の調査および血栓症リスクに対する安全策に関する検討小委員会」
委員長 楢原 久司

 


本邦におけるEP合剤による血栓症の頻度の調査および血栓症リスクに対する安全策に関する検討小委員会 報告
委員長:楢原 久司
委員:北脇 城、久具 宏司、倉林 工、小林 隆夫、望月 善子

 経口避妊薬(oral contraceptive; OC)と同じエストロゲン・プロゲスチン(EP)合剤である低用量EP配合薬(low dose estrogen-progestin; LEP)が2008年から相次いで月経困難症の治療薬として保険収載されて以来、LEPは急速に処方数が増加している。そうした状況のなかで重大な有害事象の1つである静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism; VTE)の報告も散見されるようになった。2013年にはLEP服用者の死亡例がマスメディアにより大きく報道されたことを受けて、本学会においてもOCおよびLEPのリスクとベネフィットの正しい認識と適正な普及推進のための活動の一環として、生殖内分泌委員会内に女性ヘルスケア委員会と合同で本小委員会を設置した。
 本邦の医薬品医療機器総合機構(PMDA)のデータベースに基づいた統計(2009年~2013年、5年間の集計)によれば、OC使用者10,000人・年あたりのVTE、動脈血栓塞栓症、血栓塞栓症全例の罹患率は、それぞれ1.11(95%信頼区間:1.0~1.24)、0.37(0.30~0.44)、1.56(1.42~1.71)であり、血栓塞栓症全例の45.5%はOC服用開始90日以内(27.7%は30日以内)の発症であった(Thromb Res 2015;136:1110)。
 エストロゲンの含有量に関しては、低用量化に伴うVTEリスクの減少が以前から指摘されているが、最近の海外のコホート研究においても20μgの方が30~40μgよりも肺血栓塞栓症、虚血性卒中、心筋梗塞リスクが低下することが示されている(BMJ 2016;353:i2002)。
 プロゲスチンの種類によるVTEリスクに関しても多くの研究結果が発表されているが、論文によって結果が異なっている。最近のOC服用女性のVTEリスクに関するシステマティックレビューとメタアナリシスにおいて、ドロスピレノン含有OCは他のプロゲスチン含有OCと比較して、後向きコホート研究とコホート内ケースコントロール研究においてはVTEリスクが増加したが、前向きコホート研究ではVTEリスクの増加は認められなかった(Aust Fam Physician 2016;45:59, Contraception 2016;93:378)。
 また本学会は、2015年11月に「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬ガイドライン(OC・LEPガイドライン)2015年度版」を発刊し、その中で「OCはプロゲスチンの種類により、第一世代から第四世代まで分類される。OCの種類によるVTE発症頻度の違いについては、後方視的研究では差があるとの報告がある一方、前方視的研究では差がないとの報告もある。このようにOCの種類によるVTE発症頻度に差があるか否かについては、一致した見解がないため現時点では明確でないが、VTEリスクは全てのOC・LEPの共通した有害事象であることを認識するべきである」と解説している。
 現時点ではOC・LEPの種類によるVTEリスクの差は明らかではない。OC・LEPガイドライン2015年度版に記載のあるVTEのハイリスク因子を正しく理解し、リスクとベネフィットを十分に勘案したうえで、OC・LEPの使用を開始し、投与中は適切な管理に努めることにより、より一層のOCおよびLEPの普及が望まれる。

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