4MAR2002

 

会員へのお知らせ


周 産 期  委 員 会
委員長  佐藤 章
遺伝性疾患の情報・検体集積分配ネットワークシステム検討小委員会
小委員長 鈴森 薫

 

 

妊婦健診時のHIV抗体検査推奨に関するお知らせ

 

 近年のHIV/AIDS治療の進歩により、HIV感染者の長期予後は著しく改善され、自然感染率約30%の母子感染も2%程度にまで抑制可能となった。しかし不幸にして母子感染した児の予後は不良である。従って、感染妊婦の早期治療開始と母子感染の防止を目的に、妊婦健診にてHIV抗体検査を行なう意義は極めて大きいものと考えられる。更にHIV感染の診断は、配偶者などへの感染防止、医療従事者への感染防止などにかかわる効果も期待され、その意味からも妊婦のHIV抗体検査が推奨される。

 なお、HIV抗体検査には社会的・倫理的問題を生じかねない側面もあり、その実施にあたっては以下の解説を参考にされ、検査の必要性とプライバシーの保護に対する十分なインフォームドコンセントを得た後に行うことに留意されたい。

 

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「妊婦健診時のHIV抗体検査に関するお知らせ」に対する解説

 

 厚生労働省エイズ対策研究推進事業(「妊産婦のSTD及びHIV陽性率と妊婦のSTD及びHIVの出生児に与える影響に関する研究」班:主任研究者 田中憲一、「HIV母子感染予防の臨床研究」グループ:分担研究者 戸谷良造)平成12年度研究報告書によれば、同グループが行った全国の主要医療施設に対するアンケート調査により2000年10月までに把握したHIV感染妊娠はのべ217例であり、内1999年は39例とその数は年々増加している。また同調査の解析から、1998年には抗体検査を行った妊婦10万人に対し10.0人のHIV感染妊婦が発見されていたことが明らかとなった。

 近年HIV/AIDSに対する治療法は著しい進歩を遂げ、新薬の開発や多剤併用療法(HAART :Highly Active Anti-retroviral Therapy)の普及により長期生存も可能となり、もはやHIV/AIDSは手の打ちようのない致死的な感染症とは言えなくなっている。母子感染に関しても、我が国で分娩に至った139例のHIV感染妊娠の母子感染率は、帝王切開で2.1%、経膣分娩で33.3%と帝王切開で有意に低下していたと報告されており、また諸外国からの報告でも、十分に管理された場合のHIV母子感染率は概ね2%程度である(The European Mode of Delivery Collaboration:Lancet,353;1035-39,1999、 The International Perinatal HIV Group : N Eng J Med,340;997-987,1999)。このように自然感染率が約30%といわれていたHIV母子感染も、抗HIV剤の投与と選択的帝王切開術及び母乳栄養の禁止により、感染率を10分の1以下の約2%にまで低下させることが可能となっている。また、昨年の第13回国際エイズ会議においても、HIV感染予防の観点からHIV検査 (VTC: Voluntary HIV Testing and Counseling)の必要性が指摘され、数多くの国がHIV感染予防対策の一つとしてHIV検査体制の確立に努めている。

 HIV感染の有無を明らかにすることは、医療従事者への水平感染予防の面からも重要である。HIV感染妊娠例に対し十分な院内感染対策下で対応できるばかりでなく、不慮の「針刺し事故」発生時にも抗HIV剤の予防内服により感染を防御することが可能となっている。

 以上HIV母子感染を取り巻く現状に鑑み、妊娠初期のHIV検査は母体に対する早期治療の開始と母子感染の予防という両面から推奨されるべき検査と考えられる。

 検査法には、スクリーニング検査に適するHIV抗体検査(PA法、EIA法等)と、確認検査(PCR法、Western Blot法等)の2種類がある。妊婦に対する妊娠初期のHIV検査はPA法、EIA法等の抗体検査が一般的である。HIV抗体検査では偽陽性が高頻度に認められることから、HIV抗体検査陽性例に対しPCR法、Western Blot法等の確認検査が必要となる。スクリーニング検査陽性例に対しては各自施設で確認検査を行うか、あるいは都道府県単位で設置されているAIDS拠点病院やAIDS協力病院等の施設に相談する方法がある。

 なお検査の実施にあたっては、上記HIVの現状(早期に死に至る致死的な疾患ではなく、発見・早期治療開始により母体の予後を改善しうること、母子感染の予防対策が講じられること)の説明に加え、HIV陽性と判明した際には、本疾患の特殊性に鑑み、プライバシーは確実に保護され、妊娠出産だけでなく産後も含め、医療面のみならず社会的にも充分な支援が受けられる点にポイントをおいたインフォームドコンセントを得ておくことが極めて重要と考える。

 

参考資料
HIV母子感染率(The International Perinatal HIV Group : N Eng J Med,340;997-987,1999を改変)

抗ウイルス剤投与(+)

抗ウイルス剤投与(−)

選択的帝王切開術

2.0%
10.4%

経膣分娩

7.3%
19.0%
症例数:8533例

  

● 全国HIV/AIDS拠点病院リストの入手先
(エイズ予防財団)エイズ予防情報ネット:
http://api-net.jfap.or.jp/index.htm
拠点病院一覧:
http://api-net.jfap.or.jp/siryou/siryou_Frame.htm

 

● HIV母子感染予防対策マニュアルの入手先
(エイズ予防財団)エイズ予防情報ネット:
http://api-net.jfap.or.jp/index.htm
母子感染マニュアル:
http://api-net.jfap.or.jp/siryou/siryou_Frame.htm


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