18SEP2001
日本産科婦人科学会雑誌53巻8号掲載
委員長:中野 仁雄
委 員:小田 高久,落合 和徳,久保 春海,鈴森 薫
幹 事:澤 倫太郎,平川 俊夫
IVF-ET:in vitro fertilization and embryo
transfer 体外受精・胚移植
GIFT:gamete intrafallopian transfer 配偶子卵管内移植
ZIFT:zygote intrafallopian transfer 接合子卵管内移植
PZD:partial zona dissection 機械的透明帯開口法
SUZI:subzonal sperm
infection 透明帯下(囲卵腔内)精子注入法
ICSI:intracytoplasmic sperm
injection 卵細胞質内精子注入法
日本産科婦人科学会では昭和61年以来,体外受精・胚移植等の生殖医学の臨床実施に関して登録報告制を敷き,平成元年度に設置された「生殖医学の登録に関する委員会」が報告内容の集計と分析を行い,これまでに平成元年度報告書(第 1 報)1),平成 2 年度報告書(第 2 報)2),平成 3 年度報告書(第 3 報)3),および平成 4 年度報告書(第 4 報)4)の 4 回の報告を行ってきた.平成 5 年度以降の生殖医学の登録・報告業務等に関しては,会告に定められた施設登録ならびに包括的調査を「診療・研究に関する倫理委員会」がすべての登録施設を対象として行い,詳細な個別調査を「生殖・内分泌委員会」が登録施設のなかの協力施設を対象として行い,それぞれの調査結果を学会誌上に公表してきた5)〜18).平成11年度の倫理委員会改組に伴い,倫理委員会は定款施行細則にある常置委員会となり,同時に下部組織として登録・調査小委員会が設置された.本小委員会では平成11年度倫理委員会登録・調査小委員会報告として平成10年分の臨床実施成績の包括的調査結果を報告した19).
平成12年度も引き続き平成11年分(平成11年 1 月 1 日から同年12月31日までの期間)の体外受精・胚移植等の臨床実施成績を全登録施設を対象に調査したので,ここに集計結果を報告する.また平成13年 3 月31日現在の登録施設名を末尾に掲載する.
臨床実施に関する今年度の調査では,平成11年 1 月 1 日から12月31日までの 1 年間に治療を開始したすべての症例を対象として,平成11年12月31日現在登録されている471施設に対し平成12年 9 月18日付けで調査用紙を送付し,平成12年12月31日を提出期限として回答を依頼した.今回の調査内容は表1〜6に示した通り,生殖医療(IVF‐ET,GIFT,ZIFT等)ならびに非配偶者間人工授精(AID)の実績の有無,新鮮胚(卵)を用いた治療成績(顕微授精法を除く),顕微授精法(新鮮卵)を用いた治療成績,凍結融解胚を用いた治療成績,凍結融解未受精卵を用いた治療成績および非配偶者間人工授精の治療成績とした.顕微授精法(新鮮卵)を用いた治療成績については,移植部位別に子宮腔内移植と卵管内移植に分け,これをさらに採精部位別に射精精子・精巣上体精子・精巣精子に分けた(表 3).前年までは凍結融解胚および卵を用いた治療は一括して集計したが,今回より胚と未受精卵に分けて調査した.凍結融解胚を用いた治療成績(顕微授精法によるものも含む)については,移植部位を区別するために,従来と同様にIVF‐ETを用いたものとZIFTを用いたものに分けた(表 4).凍結融解未受精卵を用いた治療成績については,GIFTと顕微授精法に大別し,後者については移植部位と採精部位を顕微授精法(新鮮卵)と同様に分けた(表 5).また非配偶者間人工授精(AID)の治療成績については,前年までの「治療周期総数」を「AID周期総数」に改め,定義も「平成11年 1 月 1 日から同年12月31日の間に授精を行った症例に対する延べ授精周期数の計」と変更した(表 6).
なお,妊娠例は胎★の確認された症例(いわゆる臨床妊娠)のみに限り,妊娠反応陽性のみのいわゆる化学的妊娠例はこれに含まないこととした.
◆(1)登録・実施施設状況
登録・実施施設状況および回答施設を表 7 に示した.報告を依頼した471施設のうち469施設から回答があり,回答率は99.6%であった.うち平成11年中に体外受精・胚移植等の治療を実施した施設数は423で,回答施設の90.2%であった.非配偶者間人工授精は24施設で実施された.
◆(2)治療内容からみた妊娠・分娩例報告施設数
治療内容からみた妊娠・分娩例報告施設数を表 8 から11に示した.
新鮮胚(卵)を用いた治療(顕微授精法を除く)(表8)は422施設で実施された.このうちIVF‐ET実施施設数は420であり,妊娠例報告施設数は367(87.4%),生産分娩例報告施設数は338(80.5%)であった.一方GIFTの実施施設数は22であり,妊娠例報告施設数は17(77.3%),生産分娩例報告施設数は13(59.1%)であった.またZIFTの実施施設数は 9 であり,妊娠例報告施設は5(55.6%),生産分娩例報告施設数は4(44.4%)であった.なお,新鮮卵を用いたGIFTのみ実施した施設が 2 施設あった.
顕微授精法(新鮮卵)を用いた治療(表 9)は223施設で実施された.このうち射精精子を用いた子宮腔内移植の実施施設数は223であり,妊娠例報告施設数は192(86.1%),生産分娩例報告施設数は179(80.3%)であった.精巣上体精子を用いた子宮腔内移植の実施施設数は66,妊娠例報告施設数は37(56.1%),生産分娩例報告施設数は31(47.0%)であった.精巣精子を用いた子宮腔内移植の実施施設数は98,妊娠例報告施設数は57(58.2%),生産分娩例報告施設数は55(56.1%)であった.射精精子を用いた卵管内移植の実施施設数は7,妊娠例報告施設数ならびに生産分娩例報告施設数はいずれも3(42.9%)であった.精巣上体精子または精巣精子を用いた卵管内移植の実施施設数はいずれも 2 であり,このうち妊娠例報告施設数・生産分娩例報告施設数はいずれも1(50.0%)であった.
凍結融解胚を用いた治療(表10)は210施設で実施された.IVF‐ET(子宮腔内移植)実施施設数は210で,妊娠例報告施設数は143(68.1%),生産分娩例報告施設数は125(59.5%)であった.ZIFT(卵管内移植)実施施設数は 2 施設あったが,妊娠・分娩の報告はなかった.
凍結融解未受精卵を用いた治療(表11)は 6 施設で実施され,すべて凍結融解胚を用いた治療の実施施設であった.射精精子を用いた顕微授精胚の子宮腔内移植を実施した施設が 5 施設,精巣上体精子を用いたものが 1 施設あったが,いずれも妊娠・分娩には至らなかった.一方,精巣精子を用いた顕微授精胚の子宮腔内移植を実施した 3 施設のうちの 1 施設(33.3%)より妊娠・分娩例が報告された.凍結融解未受精卵を用いたGIFTを実施した施設はなかった.
体外受精・胚移植等治療周期数からみた施設数の分布を表12に示した.1年間の治療周期数が50以下の施設数(実施施設数に占める割合)は新鮮胚(卵)で252(59.7%),顕微授精法(新鮮卵)で113(50.7%),凍結融解胚で163(77.6%),凍結融解未受精卵で6(100%)であった.一方治療周期数が300を超えた施設数(実施施設数に占める割合)は新鮮胚(卵)で19(4.5%),顕微授精法(新鮮卵)で15(6.7%),凍結融解胚で7(3.3%)であり,凍結融解未受精卵では 0 であった.
◆(3)新鮮胚(卵)を用いた治療成績
新鮮胚(卵)を用いた治療成績(顕微授精法を除く)を表13に示した.取り扱い患者総数は24,319で,治療周期総数は36,085であり,これらの治療周期に34,290の採卵と27,455の移植が実施された.治療周期総数に対する採卵総回数の比率は95.0%,採卵総回数に対する移植回数の比率は80.1%であった.このうち6,812周期で妊娠が成立し(採卵当り妊娠率19.9%,移植当り妊娠率24.8%),流産は1,502周期(妊娠当り流産率22.0%)にみられた.生産分娩数は4,638であり(移植当り生産率16.9%),出生児数は5,870であった.多胎妊娠は1,163周期にみられ(妊娠当りの多胎妊娠率17.1%),その内訳は双胎1,035,三胎122,四胎6,五胎以上 0 であった.
治療法別にみると,移植当りの妊娠率はIVF‐ETで24.7%,GIFTで37.4%,ZIFTで25.9%であった.妊娠当りの流産率はIVF‐ETで22.1%,GIFTで21.6%,ZIFTで13.3%であった.移植当りの生産率はIVF‐ETで16.8%,GIFTで25.6%,ZIFTで16.4%であった.妊娠当りの多胎妊娠率はIVF‐ETで16.9%,GIFTで22.5%,ZIFTで33.3%であった.
◆(4)顕微授精法(新鮮卵)を用いた胚移植部位別治療成績
顕微授精法(新鮮卵)を用いた胚移植部位別治療成績を表14に示した.取り扱い患者総数は15,849で,治療周期総数は23,015であり,これらの治療周期に22,350の採卵と18,592の移植が実施された.治療周期総数に対する採卵総回数の比率は97.1%,採卵総回数に対する移植回数の比率は83.2%であった.このうち4,702周期で妊娠が成立し(採卵当り妊娠率21.0%,移植当り妊娠率25.3%),流産は990周期(妊娠当り流産率21.1%)にみられた.生産分娩数は3,431であり(移植当り生産率18.5%),出生児数は4,248であった.多胎妊娠は779周期にみられ(妊娠当りの多胎妊娠率16.6%),その内訳は双胎712,三胎65,四胎1,五胎以上 1 であった.
治療法別にみた患者総数とその全体に占める割合は,射精精子を用いた子宮腔内移植が14,336(90.5%),精巣上体精子を用いた子宮腔内移植で346(2.2%),精巣精子を用いた子宮腔内移植で825(5.2%),射精精子を用いた卵管内移植で324(2.0%),精巣上体精子を用いた卵管内移植で11(0.07%),精巣精子を用いた卵管内移植で7(0.04%)であった.
移植当りの妊娠率は,射精精子を用いた子宮腔内移植で25.0%,精巣上体精子を用いた子宮腔内移植で27.4%,精巣精子を用いた子宮腔内移植で25.0%,射精精子を用いた卵管内移植で36.7%,精巣上体精子を用いた卵管内移植で46.2%,精巣精子を用いた卵管内移植で28.6%であった.
妊娠当りの流産率は射精精子を用いた子宮腔内移植で21.5%,精巣上体精子を用いた子宮腔内移植で20.0%,精巣精子を用いた子宮腔内移植で17.0%,射精精子を用いた卵管内移植で16.4%,精巣上体精子を用いた卵管内移植で16.7%,精巣精子を用いた卵管内移植で0.0%であった.
移植当りの生産率は射精精子を用いた子宮腔内移植で18.0%,精巣上体精子を用いた子宮腔内移植で21.1%,精巣精子を用いた子宮腔内移植で19.3%,射精精子を用いた卵管内移植で30.7%,精巣上体精子を用いた卵管内移植で38.5%,精巣精子を用いた卵管内移植で28.6%であった.
妊娠当りの多胎妊娠率は射精精子を用いた子宮腔内移植で16.6%,精巣上体精子を用いた子宮腔内移植で17.0%,精巣精子を用いた子宮腔内移植で17.8%,射精精子を用いた卵管内移植で12.9%,精巣上体精子または精巣精子を用いた卵管内移植では共に0.0%であった.
◆(5)凍結融解胚を用いた治療成績
凍結融解胚を用いた治療成績を表15に示した.取り扱い患者総数は7,548で,治療周期総数は9,919,移植回数は9,066であった.このうち2,197周期で妊娠が成立し(移植当り妊娠率24.2%),流産は533周期(妊娠当り流産率24.3%)にみられた.生産分娩数は1,544であり(移植当り生産率17.0%),出生児数は1,811であった.多胎妊娠は254周期にみられ(妊娠当りの多胎妊娠率11.6%),その内訳は双胎228,三胎24,四胎1,五胎以上 1 であった.なお,ZIFTによる妊娠はみられなかった.
◆(6)凍結融解未受精卵を用いた移植部位別治療成績
凍結融解未受精卵を用いた移植部位別治療成績を表16に示した.取り扱い患者総数は26で,治療周期総数は31,移植回数は27であった.このうち精巣精子を用いた子宮腔内移植の 1 周期で単胎妊娠が成立し(移植当り妊娠率3.7%),生産分娩に至った.
◆(7)非配偶者間人工授精を用いた治療成績
非配偶者間人工授精を用いた治療成績を表17に示した.非配偶者間人工授精は24の登録施設(表 7)において1,134名の患者に施行され,AID周期総数は6,059,生産分娩数199,出生児数は221であった.但し,実数報告が得られなかった施設数が患者総数で3,流産数で3,生産分娩数で4,出生児数で 3 あった.また報告が得られた施設のうちの 2 施設では妊娠例の計 3 例について妊娠の帰結が不明であった.
◆(8)治療法別出生児数および累積出生児数
治療法別出生児数および累積出生児数を表18に示した.なお,凍結融解胚を用いた治療成績と凍結融解未受精卵を用いた治療成績を合わせて凍結胚(卵)を用いた治療成績として表した.凍結融解未受精卵を用いた成績と顕微授精の成績が一部重複しており(表16),重複症例数は治療周期総数の31ならびに出生児数の 1 であった.累積出生児数の重複については,平成10年報告分までの重複症例数1318)に平成11年分の 1 を加えた合計14であった.重複症例数を調整した結果,生殖補助医療による平成11年の治療周期総数は69,019,出生児数は11,929となり,平成11年までの累積出生児数は59,520となった.また,新鮮胚(卵),凍結胚(卵),顕微授精を用いた治療による累積出生児数(および累積出生児数合計に対する比率)はそれぞれ37,969(63.8%),5,305(8.9%),および16,260(27.3%)であった.
平成11年12月末における登録施設数は471施設で,平成10年12月末の442施設から29施設の増加をみた.治療周期総数は,新鮮胚(卵),凍結胚(卵)および顕微授精を用いた治療のすべてを合わせると69,019周期に及び,前年の61,718周期に比べて7,301周期の増加であった.これらの方法により出生した児の総数は11,929児となり,前年の11,119児に比べ年間810児の出生増加がみられたことになる.表18に示したように,新たな出生児数を加えるとこれまでに本邦で59,520児が誕生したことが明らかになった.
新鮮胚(卵)を用いた治療(顕微授精法を除く)の全体像をみると,計24,319人の患者に36,085周期の治療を行っているが,前年(それぞれ24,042人,34,929周期)より患者数は277人,周期数は1,156周期の増加がみられた.治療成績についてみると,妊娠率は移植当り24.8%,採卵当り19.9%であり,移植当り生産率は16.9%,妊娠当り流産率は22.0%であり,前年(それぞれ22.8%,18.6%,17.0%,23.2%)ならびに前々年(それぞれ23.1%,18.6%,16.0%,23.1%)と比較すると,移植当りおよび採卵当り妊娠率はわずかであるが高くなり,流産率は低下した.また前年上昇した多胎妊娠率(前年20.4%,前々年17.7%)は17.1%に低下したが,これは移植胚数の制限が強化されている結果である可能性がある.もし移植胚数の減少にもかかわらず妊娠率が向上したならば,治療技術が徐々にではあるが進歩していることを意味するものと思われる.妊娠率が高くなり,流産率が低下したにもかかわらず生産率は前年と同程度であった.これは妊娠数より流産数と生産分娩数を引いた数が672(全妊娠の9.9%)もあるためである(前年は131,全妊娠の2.1%).妊娠の10%近くが胎★の確認された子宮外妊娠と死産であるとは考えにくいことから,妊娠の経過と転帰が十分に追跡できていない可能性があり,調査・集計を行ううえでの今後の課題となると思われる.
平成11年中の新鮮卵を用いたGIFTによる治療周期総数は286であった.この治療周期総数は平成 5 年が1,111と最多であったが,その後は次第に減少して平成 9 年に218と最少となり,平成10年には376と一旦増加したが今回再び減少した.顕微授精を除く新鮮胚(卵)を用いた治療に占めるGIFTの割合は,平成 2 年が9.8%(治療周期総数は726)と最大であり,治療周期が最も多かった平成 5 年で5.2%であった.今回の調査で判明した平成11年のその割合は0.8%で,ZIFTと合わせても1.1%であり,治療法としての役割は終わりつつあるものと思われる.
顕微授精法(新鮮卵)を用いた治療については,その実施施設数は前年の181より約25%増加して223施設となり,初めて登録実施施設全体の半数を越えた.その結果,患者総数,治療周期総数および移植回数もそれぞれ15,849人,23,015周期,18,592回となり,前年(12,823人,18,657周期,15,505回)よりも20%ほど増加した.治療成績についてみると,妊娠率は移植当り25.3%,採卵当り21.0%であり,移植当り生産率は18.5%,妊娠当り流産率は22.1%であった(前年はそれぞれ22.5%,21.6%,19.7%,21.8%).移植当りの妊娠率が高くなったにもかかわらず生産率は前年より低下しているが,これは新鮮胚(卵)を用いた治療成績と同様に,妊娠数より流産数と生産分娩数を引いた数が281(全妊娠の6.0%)と前年の35(同0.9%)よりもかなり多いことに起因していると思われる.前年までは移植部位別分類をIVF‐ETとZIFTとしていたが,誤解を招きやすくなったため子宮腔内移植と卵管内移植と表現することとした.しかし移植周期の97.8%が子宮腔内移植であり,卵管内に移植した周期は2.2%に過ぎなかった.新鮮胚(卵)を用いた治療の移植当りの妊娠率をみると,顕微授精を用いない場合には子宮腔内移植と卵管内移植にほとんど差がなかったが,顕微授精では卵管内移植の方が高い傾向にあることが注目される.顕微授精の方法に関しては,この数年でほとんどがICSIとなったため(顕微授精胚子宮腔内移植の患者総数に占めるICSIの割合は平成 7 年98.3%,8年97.4%,9年99.8%,10年99.8%),従来のPZD,SUZI,ICSIに分けた集計は廃止した.また最近では射精精子以外の精子が顕微授精に供されるようになったことを考慮し,精子の採取法により射精精子,精巣上体精子,精巣精子に分けることとした.その患者の割合は,射精精子が92.5%,精巣上体精子が2.3%,精巣精子が5.2%であり,臨床応用されて日も浅い精巣精子の割合が注目される.新鮮卵を用いたすべての顕微授精法により今回4,248児の出生が報告され,平成11年までの累積は16,260児となった.今後も実施施設数および治療周期数が増加することが予測されるが,顕微授精に用いる精子の採取部位なども含め,引き続き倫理上適切な医学的適応を遵守した本法の活用が望まれる.
凍結融解胚を用いた治療の実施施設数は210で,実施施設総数423の49.2%にあたり,前年の158と比較して50施設の増加であった.しかし,多胎妊娠の防止のためには胚の凍結保存は不可欠であり,実施施設のさらなる増加が望まれる.移植部位は99.9%以上が子宮腔内であり,平成11年には本治療法により1,811児の出生が報告された.
凍結融解未受精卵を用いた治療の実施施設数は 6 であり,実施された26例すべてが顕微授精後の子宮腔内移植例であった.このうち射精精子を用いた22例ならびに精巣上体精子を用いた 1 例には妊娠はなかったが,精巣精子を用いた 1 例で生児が得られた.
多胎妊娠の実態をみると,妊娠当り多胎妊娠率は新鮮胚(卵)(顕微授精を除く)で17.1%,凍結融解胚で11.6%,顕微授精で16.6%であった.前年の多胎率(それぞれ20.4%,13.4%,16.9%)と比較して減少している.但し,4胎以上の妊娠例が新鮮胚で 6 例,凍結融解胚で 2 例,顕微授精で 2 例含まれていた.4胎以上の妊娠は母子の生命リスクを高めることから,日本産科婦人科学会では多胎妊娠の防止をはかるために平成 8 年 2 月に会告‘「多胎妊娠」に関する見解’20)を発表し,移植胚数を原則として 3 個以内とし,また排卵誘発に際してはゴナドトロピン製剤の周期当りの使用量を可能な限り減量するよう会員に求めている.さらに,平成13年 5 月にも学会誌に本会告を再掲して会員への周知徹底を図っているところである21).今後とも多胎の防止に積極的に取り組むことが必要である.
倫理委員会・登録・調査小委員会の平成12年度事業として,体外受精・胚移植等の生殖医療の臨床実施登録施設に対して,平成11年分の包括的調査を行った結果,以下の事項が明らかになった.
1.登録施設数は471と年々増加傾向にある.
2.体外受精・胚移植等の治療周期からみた施設数の分布は,前年と同様,年間50周期以下の施設が多くを占めた.
3.新鮮胚を用いたIVF‐ETの実施施設数,患者総数,治療周期総数は前年と比較して増加しており,わずかであるが妊娠率に向上の傾向が認められた.
4.凍結胚(卵)を用いた治療の実施施設は前年より増加し,実施施設総数における割合は49.2%まで上昇した.
5.顕微授精法(新鮮卵)を用いた治療では,実施施設数が実施施設全体の半数を越え,患者数も治療周期数も増加した.治療内容については,大部分が射精精子を用いた子宮腔内移植であり,移植当りの妊娠率に向上の傾向が認められるものの,全体の成績は前年並みであった.
6.今回より凍結未授精卵を用いた治療の集計を独立させたが,実施施設も実施周期もいまだ少数であり,妊娠は 1 例に認められたのみであった.
7.平成11年分の生殖補助医療による出生児は11,929人に達し,これまでに59,520児が誕生したことが明らかとなった.
本報告は,回答をお寄せいただいた各登録施設のご理解とご協力によるものであり,ここに深謝いたします.
1. 日本産科婦人科学会理事会内委員会.生殖医学の登録に関する委員会報告.日産婦誌 1990;42:393―397
2. 日本産科婦人科学会理事会内委員会.平成 2 年度 生殖医学の登録に関する委員会報告(平成元年分の臨床実施成績と昭和63年末までの治療により出生した児の調査成績).日産婦誌 1991;43:470―476
3. 日本産科婦人科学会理事会内委員会.平成 3 年度 生殖医学の登録に関する委員会報告(第 3 報)(平成 2 年分の臨床実施成績,平成元年分の治療による出生児の追跡調査成績).日産婦誌 1992;44:499―511
4. 日本産科婦人科学会理事会内委員会.平成 4 年度 生殖医学の登録に関する委員会報告(第 4 報)(平成 3 年分の臨床実施成績,平成 2 年分の治療による出生児の追跡調査成績,全追跡調査児の総合解析成績).日産婦誌 1993;45:397―410
5. 日本産科婦人科学会理事会内委員会.平成 5 年度 診療・研究に関する倫理委員会報告(平成 4 年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績).日産婦誌 1994;46:929―933
6. 日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会報告.[平成 5 年度 生殖医学登録報告(第 5 報):平成 4 年分の臨床実施成績].日産婦誌 1994;46:1269―1277
7. 日本産科婦人科学会理事会内委員会.平成 6 年度 診療・研究に関する倫理委員会報告(平成 5 年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績).日産婦誌 1995;47;444―448
8. 日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会報告.[平成 5 年度 生殖医学登録報告(第 5 報・続報):平成 4 年(1992年)分の臨床実施成績―国際統計報告書].日産婦誌 1995;47:577―592
9. 日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会報告.[平成 6 年度生殖医学登録報告(第 6 報):平成 5 年(1993年)分の臨床実施成績―国際統計報告書].日産婦誌 1995;47:1199―1218
10. 日本産科婦人科学会理事会内委員会報告.平成 7 年度 診療・研究に関する倫理委員会報告(平成 6 年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績).日産婦誌 1996;48:365―371
11. 日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会報告.[平成 7 年度 生殖医学登録報告(第 7 報):平成 6 年(1994年)分の臨床実施成績―国際統計報告書].日産婦誌 1996;48:1182―1196
12. 日本産科婦人科学会理事会内委員会報告.平成 8 年度診療・研究に関する倫理委員会報告(平成 7 年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績).日産婦誌 1997;49:697―702
13. 日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会報告.[平成 8 年度 生殖医学登録報告(第 8 報):平成 7 年(1995年)分の臨床実施成績―国際統計報告書].日産婦誌 1997;49:1143―1161
14. 日本産科婦人科学会理事会内委員会報告.平成 9 年度 診療・研究に関する倫理委員会報告(平成 8 年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績および平成10年 3 月における登録施設名).日産婦誌 1998;50:267―277
15. 日本産科婦人科学会理事会内委員会報告.平成10年度 診療・研究に関する倫理委員会報告(平成 9 年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績および平成11年 3 月における登録施設名).日産婦誌 1999;51:361―394
16. 日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会報告.平成 9 年度 生殖医学登録報告(第 9 報)[平成 8 年(1996年)分の臨床実施成績―国際統計報告書].日産婦誌 1999;51:803―822
17. 日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会報告.平成10年度 生殖医学登録報告(第10報)[平成 9 年(1997年)分の臨床実施成績―国際統計報告書].日産婦誌 1999;51:1098―1120
18. 日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会報告.平成11年度 生殖医学登録報告(第11報)[平成10年(1998年)分の臨床実施成績―国際統計報告書].日産婦誌 2001;53:665―682
19. 日本産科婦人科学会 平成11年度倫理委員会・登録・調査小委員会報告(平成10年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績および平成12年 3 月における登録施設名).日産婦誌 2000;52:962―987
20. 会告 「多胎妊娠」に関する見解.日産婦誌 1996;48:巻頭(11―12)
21. 会員へのお知らせ 体外受精・胚移植等における移植胚数について.日産婦誌 2001;53:巻頭(20―21)
表1 PFD 4k
表2 PFD 3k
表3 PFD 3k
表4 PFD 3k
表5 PFD 3k
表6 PFD 3k
登録施設数 471 回答施設数 469 回答率 99.6% 実施施設数 423 実施しなかった施設数 46 非配偶者間人工授精実施施設数 24
IVF-ET GIFT ZIFT 実施施設数 420 22 9 妊娠例報告施設数 367 17 5 実施施設数に対する割合 87.4% 77.3% 55.6% 生産分娩例報告施設数 338 13 4 実施施設数に対する割合 80.5% 59.1% 44.4%
表9 顕微授精法(新鮮卵)を用いた治療による妊娠・分娩例報告施設数
射精精子 精巣上体精子 精巣精子 射精精子 精巣上体精子 精巣精子 実施施設数 223 66 98 7 2 2 妊娠例報告施設数 192 37 57 3 1 1 実施施設数に対する割合 86.1% 56.1% 58.2% 42.9% 50.0% 50.0% 生産分娩例報告施設数 179 31 55 3 1 1 実施施設数に対する割合 80.3% 47.0% 56.1% 42.9% 50.0% 50.0%
IVF-ET ZIFT 実施施設数 210 2 妊娠例報告施設数 143 0 実施施設数に対する割合 68.1% 0.0% 生産分娩例報告施設数 125 0 実施施設数に対する割合 59.5% 0.0%
表11 凍結融解未受精卵を用いた治療による妊娠・分娩例報告施設数
GIFT 射精精子 精巣上体精子 精巣精子 射精精子 精巣上体精子 精巣精子 実施施設数 0 5 1 3 0 0 0 妊娠例報告施設数 0 0 0 1 0 0 0 実施施設数に対する割合 0.0% 0.0% 33.3% 生産分娩例報告施設数 0 0 0 1 0 0 0 実施施設数に対する割合 0.0% 0.0% 33.3%
治療周期 新鮮胚(卵) 顕微授精(新鮮胚) 凍結融解胚 凍結融解未受精卵 1〜50 252 113 163 6 51〜100 83 42 21 0 101〜150 31 29 13 0 151〜200 24 10 3 0 201〜250 6 10 1 0 251〜300 7 4 2 0 301〜350 6 4 1 0 351〜400 3 3 3 0 401〜450 3 0 1 0 451〜500 1 0 0 0 501〜550 1 3 0 0 551〜600 1 1 1 0 601〜650 1 0 0 0 651〜700 1 0 0 0 701以上 2 4 1 0 合計 422 223 210 6
IVF-ET GIFT ZIFT 合計 患者総数 23,924 280 115 24,319 治療周期総数 36,671 286 128 36,085 採卵総回数 33,883 283 124 34,290 排卵総回数/治療周期総数 95.0% 99.0% 96.9% 95.0% 移植回数 27,066 273 116 27,455 移植回数/採卵総回数 79.9% 96.5% 93.5% 80.1% 妊娠数 6,680 102 30 6,812 移植当たり妊娠率 24.7% 37.4% 25.9% 24.8% 採卵当たり妊娠率 19.7% 36.0% 24.2% 19.9% 流産数 1,476 22 4 1,502 妊娠当たり流産率 22.1% 21.6% 13.3% 22.0% 多胎妊娠数 1,130 23 10 1,163 双胎 1,003 22 10 1,035 三胎 121 1 0 122 四胎 6 0 0 6 五胎以上 0 0 0 0 妊娠当たり多胎妊娠率 16.9% 22.5% 33.3% 17.1% 生産分娩数 4,549 70 19 4,638 移植当たり生産率 16.8% 25.6% 16.4% 16.9% 出生児数 5,755 92 23 5,870
合計 射精精子 精巣上体精子 精巣精子 射精精子 精巣上体精子 精巣精子 患者総数 14,336 346 825 324 11 7 15,849 治療周期総数 20,762 612 1,216 404 14 7 23,015 採卵総回数 20,141 603 1,196 389 14 7 22,350 排卵総回数/治療周期総数 97.0% 98.5% 98.4% 96.3% 100.0% 100.0% 97.1% 移植回数 16,711 493 987 381 13 7 18,592 移植回数/採卵総回数 83.0% 81.8% 82.5% 97.9% 92.9% 100.0% 83.2% 妊娠数 4,172 135 247 140 6 2 4,702 移植当たり妊娠率 25.0% 27.4% 25.0% 36.7% 46.2% 28.6% 25.3% 採卵当たり妊娠率 20.7% 22.4% 20.7% 36.0% 12.9% 28.6% 21.0% 流産数 897 27 42 23 1 0 990 妊娠当たり流産率 21.5% 20.0% 17.0% 16.4% 16.7% 0.0% 21.1% 多胎妊娠数 694 23 44 18 0 0 779 双胎 632 22 40 18 0 0 712 三胎 60 1 4 0 0 0 65 四胎 1 0 0 0 0 0 1 五胎以上 1 0 0 0 0 0 1 妊娠当たり多胎妊娠率 16.6% 17.0% 17.8% 12.9% 0.0% 0.0% 16.6% 生産分娩数 3,013 104 190 117 5 2 3,431 移植当たり生産率 18.0% 21.1% 19.3% 30.7% 38.5% 28.6% 18.5% 出生児数 3,745 126 235 135 5 2 4,248
IVF-ET ZIFT 合計 患者総数 7,544 4 7,548 治療周期総数 9,915 4 9,919 移植回数 9,062 4 9,066 妊娠数 2,197 0 2,197 移植当たり妊娠率 24.2% 0.0% 24.2% 流産数 533 0 533 妊娠当たり流産率 24.3% 24.3% 多胎妊娠数 254 0 254 双胎 228 0 228 三胎 24 0 24 四胎 1 0 1 五胎以上 1 0 1 妊娠当たり多胎妊娠率 11.6% 11.6% 生産分娩数 1,544 0 1,544 移植当たり生産率 17.0% 17.0% 出生児数 1,811 0 1,811
GIFT 合計 射精精子 精巣上体精子 精巣精子 射精精子 精巣上体精子 精巣精子 患者総数 0 22 1 3 0 0 0 26 治療周期総数 0 27 1 3 0 0 0 31 移植回数 0 24 1 2 0 0 0 27 妊娠数 0 0 0 1 0 0 0 1 移植当たり妊娠率 0.0% 0.0% 50.0% 3.7% 流産数 0 0 0 0 0 0 0 0 妊娠当たり流産率 0.0% 0.0% 多胎妊娠数 0 0 0 0 0 0 0 0 双胎 0 0 0 0 0 0 0 0 三胎 0 0 0 0 0 0 0 0 四胎 0 0 0 0 0 0 0 0 五胎以上 0 0 0 0 0 0 0 0 妊娠当たり多胎妊娠率 0.0% 0.0% 生産分娩数 0 0 0 1 0 0 0 1 移植当たり生産率 0.0% 0.0% 50.0% 3.7% 出生児数 0 0 0 1 0 0 0 1
患者総数 1,134 AID周期総数 6,059 妊娠数 343 流産数 48 生産分娩数 199 出生児数 221
治療周期総数 出生児数 累積出生児数 新鮮胚(卵)を用いた治療 36,085 5,870 37,969 凍結胚(卵)を用いた治療* 9,950 (31) 1,812 (1) 5,305 (14) 顕微授精を用いた治療 23,015 (31) 4,248 (1) 16,260 (14) 合計 69,019 11,929 59,520
( )内は重複症例数、合計は重複症例数を減じてある。
学会見解に基づく諸登録施設(平成13年3月31日現在)
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非配偶者間人工授精の臨床実施に関する登録施設(平成13年3月31日現在) PDF
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