15AUG2000

「みなさんへお知らせしたいこと」へ

 

 

委員会報告 日本産科婦人科学会雑誌52巻7号掲載

                                              

 

平成11年度倫理委員会・登録・調査小委員会報告

(平成10年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績および平成12年3月における登録施設名)

                                              

 

委員長:荒木 勤

委 員:小田 高久,落合 和徳,久保 春海,鈴森  薫

幹 事:澤 倫太郎


はじめに  対象と方法  結 果  考 察  まとめ  謝辞・文献

 

 学会見解に基づく諸登録施設(平成12年3月31日現在) 計474施設
   北海道   青森岩手宮城秋田山形福島  茨城栃木群馬埼玉千葉  東京  神奈川山梨長野静岡  新潟富山石川福井  岐阜愛知三重
   滋賀京都大阪  兵庫奈良和歌山  鳥取島根岡山広島山口  徳島香川愛媛高知  福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島沖縄
非配偶者間人工授精の臨床実施に関する登録施設(平成12年3月31日現在) 計22施設  
     全 国

 

 

はじめに

 日本産科婦人科学会では昭和61年以来,体外受精・胚移植等の生殖医学の臨床実施に関して登録報告例を敷き,平成元年度に設置された「生殖医学の登録に関する委員会」が報告内容の集計と分析を行い,これまでに平成元年度報告書(第1報)1),平成2年度報告書(第2報)2),平成3年度報告書(第3報)3),および平成4年度報告書(第4報)4)の4回の報告を行ってきた.平成5年度以降の生殖医学の登録・報告業務等に関しては,会告に定められた施設登録ならびに包括的調査を「診療・研究に関する倫理委員会」がすべての登録施設を対象として行い,詳細な個別的調査を「生殖内分泌委員会」が登録施設の中の協力施設を対象として行い,それぞれの調査結果を学会誌上に公表してきた5)〜17).

 平成11年度の倫理委員会改組に伴い,倫理委員会は定款細則にある常置委員会となり,同時に下部組織として登録・調査小委員会が設置された.本小委員会では平成11年度事業として,平成10年分(平成10年1月1日から同年12月31日までの期間)の臨床実施成績の包括的調査を全登録施設を対象に実施したので集計結果をここに報告する.

 なお,今回の報告では,平成12年3月31日現在の登録施設名を末尾に掲載する.

-* TOP *-

対象と方法

 臨床実施に関する今年度の調査では,平成10年1月1日から12月31日までの1年間に治療周期を開始したすべての症例を対象として,平成10年12月31日現在登録している442施設に対し平成11年9月1日付けで調査用紙を送付し,平成11年12月31日を期限として回答を依頼した.調査内容は表1〜5に示した通り,従来と同様の生殖医療の実績の有無,新鮮胚(卵)を用いた治療成績,凍結胚(卵)を用いた治療成績および顕微授精を用いた治療成績に加えて,本年度は非配偶者間人工授精の治療成績も報告の対象とした.

 なお,今回の調査においても,妊娠例は胎嚢の確認された症例(いわゆる臨床妊娠)のみに限り,妊娠反応陽性のみのいわゆる化学的妊娠例はこれに含まないこととした.

-* TOP *-

結  果

(1)登録・実施施設状況

 登録・実施施設および回答施設を表6に示した.報告を依頼した442施設のうち425施設から回答があり,回答率は96.2%であった.うち平成10年中に体外受精・胚移植等の治療を実施した施設数は377で,回答施設の88.7%であった.非配偶者間人工授精は19施設からの報告があった.

 

 表6 平成10年末の登録実施施設数

登録施設数

442

回答施設数

425

未回答施設数

17

回答率

96.20%

実施施設数

377

実施しなかった施設数

48

非配偶者間人工授精施設数

19

 

 (2)治療内容からみた妊娠・分娩例報告施設数

 治療内容からみた妊娠・分娩例報告施設数(表7)をみると,新鮮胚(卵)を用いた治療ではIVF‐ET実施施設は373あり,このうち妊娠例の報告施設数は326,分娩例の報告施設数は305と前年を上回っていた.しかし割合でみると妊娠報告施設は実施施設の87.4%,分娩報告施設は実施施設の81.8%と前年とほぼ同様であった.GIFTおよびZIFTの実施施設数は29および9であり,前年同様に減少傾向にあった.

 凍結胚(卵)を用いた治療ではIVF‐ET実施施設は158であり,33施設の増加をみた.このうち妊娠例の報告施設数は106で実施施設の67.1%,分娩例の報告施設数は92で実施施設の58.2%であった.

 顕微授精を用いた治療では,子宮腔内への胚移植実施施設が181と前年の145から大幅な増加を示した.このうち妊娠例の報告施設数は159で実施施設の87.8%,分娩例の報告施設数は152で実施施設の84.0%と前年より上昇していた.

 体外受精・胚移植等の治療周期数からみた施設数の分布を表8に示した.1年間の治療周期数が50以下の施設数(実施施設数に占める割合)は新鮮胚(卵)で215(57.6%),凍結胚(卵)で123(77.8%),顕微授精で85(47.0%)であった.一方治療周期数が300を超えた施設が新鮮胚(卵)で16(4.3%),凍結胚(卵)で6(3.8%),顕微授精で13(7.2%)あり,凍結胚(卵)と顕微授精の増加を認めた.

   

    

 表7 妊娠・分娩例報告施設数

IVF-ET

GIFT

ZIFT

新鮮胚(卵)を用いた治療

実施施設数

373

29

9

妊娠施設数

326

18

5

実施施設数に対する割合

87.40%

62.10%

55.60%

分娩例報告施設

305

17

4

実施施設数に対する割合

81.80%

58.60%

44.40%

凍結胚(卵)を用いた治療

実施施設数

158

1

1

妊娠施設数

106

1

1

実施施設数に対する割合

67.10%

100.00%

100.00%

分娩例報告施設

92

1

1

実施施設数に対する割合

58.20%

100.00%

100.00%

顕微授精を用いた治療

実施施設数

181

0

9

妊娠施設数

159

0

6

実施施設数に対する割合

87.80%

0.00%

66.70%

分娩例報告施設

152

0

5

実施施設数に対する割合

84.00%

0.00%

55.60%

 表8 体外受精・胚移植治療周期数からみた施設数の分布

治療周期

新鮮胚(卵)

凍結胚(卵)

顕微授精

1〜50

215

123

85

51〜100

69

17

50

101〜150

33

7

19

151〜200

22

2

7

201〜250

11

1

2

251〜300

7

2

5

301〜350

3

1

4

351〜400

4

0

1

401〜450

1

2

3

451〜500

1

1

0

501〜550

2

0

1

551〜600

0

0

0

601〜700

1

0

1

701以上

4

2

3

合計

373

158

181

 

 

 (3)新鮮胚(卵)を用いた治療成績

 新鮮胚(卵)を用いた治療成績を表9に示す.取り扱い患者総数は,同一患者が複数の施設で治療を受けている場合も考えられるが,合計24,042名であった.治療周期総数は34,929であり,これらの治療周期に33,670の採卵と27,436の移植が実施された.治療周期総数に対する採卵総回数の比率は96.4%,採卵総回数に対する移植総回数の比率は81.5%であった.

 これらの方法によって平成10年中に合計6,255周期の妊娠が成立した(移植当り妊娠率22.8%,採卵当り妊娠率18.6%).そのうち流産は1,452周期にみられ,妊娠当り流産率は23.2%であった.生産分娩は4,672であり(移植当り生産率17.0%),出生児数は5,851に達した.多胎妊娠は1,278例にみられ,妊娠当りの多胎妊娠率は20.4%であり,昨年(17.7%)より上昇した.その内訳は双胎1,135,三胎134,四胎9周期であった.

 治療法別にみると,移植当りの妊娠率はIVF‐ETで22.6%,GIFTで31.6%,ZIFTで34.1%であった.流産率はIVF‐ETで23.4%,GIFTで15.0%,ZIFTで21.4%であった.移植当りの生産率はIVF‐ETで16.9%,GIFTで25.1%,ZIFTで26.8%であった.多胎妊娠率はIVF‐ETで20.3%,GIFTで24.8%,ZIFTで25.0%であった.

 

 表9 新鮮胚(卵)を用いた治療成績

IVF-ET

GIFT

ZIFT

合計

患者総数

23,590

355

97

24,042

治療周期総数

34,450

376

103

34,929

採卵総回数

33,206

376

88

33,670

採卵総回数/治療周期総数

96.40%

100.00%

85.40%

96.40%

移植回数

26,996

358

82

27,436

移植回数/採卵総回数

81.30%

94.70%

93.20%

81.50%

妊娠数

6,114

113

28

6,255

移植当り妊娠率

22.60%

31.60%

34.10%

22.80%

採卵当り妊娠率

18.40%

29.90%

31.80%

18.60%

流産数

1,429

17

6

1,452

妊娠当り流産率

23.40%

15.00%

21.40%

23.20%

多胎妊娠数

1,243

28

7

1,278

双胎

1,103

25

7

1,135

三胎

132

2

0

134

四胎

8

1

0

9

五胎以上

0

0

0

0

妊娠当り多胎妊娠率

20.30%

24.80%

25.00%

20.40%

生産分娩数

4,560

90

22

4,672

移植当り生産率

16.90%

25.10%

26.80%

17.00%

出生児数

5,704

120

27

5,851

 

 (4)凍結胚(卵)を用いた治療成績

 凍結胚(卵)を用いた治療成績を表10に示した.6,255名の患者に計8,132周期で凍結胚(卵)の融解が行われ,7,643回の移植が行われ,前年度に比べ大幅な増加をみた.治療周期総数に対する移植総回数の比率は94.0%であった.大部分がIVF‐ETであったが,GIFTおよびZIFTは平成9年以前の総数が,各々7周期と8周期であったものが97例(127周期),283例(387周期)と急激に増加した.妊娠の成立は1,748周期に認められ,移植当りの妊娠率は22.9%であった.そのうち378周期が流産(流産率21.6%)となり,1,293例が生産分娩に至っており,移植当りの生産率は16.9%となった.多胎妊娠は235周期で多胎妊娠率は13.4%であった.その内訳は双胎212周期,三胎23周期で,四胎以上は認めなかった.出生児数は1,567児と前年より665人の増加があった.

 

 表10 凍結胚(卵)を用いた治療成績

IVF-ET

GIFT

ZIFT

合計

患者総数

5,875

97

283

6,255

治療周期総数

7,618

127

387

8,132

移植回数

7,144

124

375

7,643

妊娠数

1,650

28

70

1,748

移植当り妊娠率

23.10%

22.60%

18.70%

22.90%

流産数

359

4

15

378

妊娠当りの流産率

21.80%

14.30%

21.40%

21.60%

多胎妊娠数

220

5

10

235

双胎

199

5

8

212

三胎

21

0

2

23

四胎

0

0

0

0

五胎以上

0

0

0

0

妊娠当り多胎妊娠率

13.30%

17.90%

14.30%

13.40%

生産分娩数

1,216

24

53

1,293

移植当り生産率

17.00%

19.40%

14.10%

16.90%

出生児数

1,474

29

64

1,567

 

 (5)顕微授精を用いた治療成績

 顕微授精を用いた治療成績を表11および12に示した.患者総数は12,823名で治療周期総数は18,657回であった.18,266回の採卵が行われ,15,505回の移植が行われた.採卵総回数に対する移植総回数の比率は84.9%であった.大部分が子宮腔内への移植例で,ZIFT(卵管内への移植)は158周期(0.8%)であった.妊娠の成立は3,952周期に認められ,移植当りの妊娠率は25.5%と,前年同様の数値を示した.そのうち862周期が流産(流産率21.8%)となり,3,055例が生産分娩に至っており,移植当り生産率は19.7%と前年度(17.9%)より上昇した.

 多胎妊娠は668周期(双胎617,三胎49,四胎2)に認められ,多胎妊娠率は16.9%で,計3,701児が出生した.

 顕微授精の子宮腔内移植例の方法別(表12)では,ICSIが患者総数12,684(99.8%),治療周期総数18,468(99.8%)と大部分を占めた.採卵総回数に対する移植総回数の比率は,ICSI 84.8%,SUZI 40.9%,PZD 100.0%,移植当りの妊娠率はICSI 25.4%,SUZI 33.3%,PZD 11.1%,妊娠当りの流産率はICSI 21.8%,SUZI 66.7%,PZD 100.0%であり,移植当りの生産率はICSI 19.6%,SUZI 11.1%,PZD 0.0%であった.

    

 表11 顕微授精後の胚移植部位別治療成績

子宮腔内

卵管内

合計

患者総数

12,708

115

12,823

治療周期総数

18,499

158

18,657

採卵総回数

18,118

148

18,266

採卵総回数/治療周期総数

97.90%

93.70%

97.90%

移植回数

15,362

143

15,505

移植回数/採卵総回数

84.80%

96.60%

84.90%

妊娠数

3,899

53

3,952

移植当り妊娠率

25.40%

37.10%

25.50%

採卵当り妊娠率

21.50%

35.80%

21.60%

流産数

851

11

862

妊娠当り流産率

21.80%

20.80%

21.80%

多胎妊娠数

660

8

668

双胎

611

7

617

三胎

48

1

49

四胎

2

0

2

五胎以上

0

0

0

妊娠当り多胎妊娠率

16.90%

15.10%

16.90%

生産分娩数

3,013

42

3,055

移植当り生産率

19.60%

29.40%

19.70%

出生児数

3,652

49

3,701

 表12 顕微授精法(子宮腔内移植例)の手技別の治療成績

PZD

SUZI

ICSI

合計

患者総数

7

17

12,684

12,708

治療周期総数

9

22

18,468

18,499

採卵総回数

9

22

18,087

18,118

採卵総回数/治療周期総数

100.00%

100.00%

97.90%

97.90%

移植回数

9

9

15,344

15,362

移植回数/採卵総回数

100.00%

40.90%

84.80%

84.80%

妊娠数

1

3

3,895

3,899

移植当り妊娠率

11.10%

33.30%

25.40%

25.40%

採卵当り妊娠率

11.10%

13.60%

21.50%

21.50%

流産数

1

2

848

851

妊娠当り流産率

100.00%

66.70%

21.80%

21.80%

多胎妊娠数

0

1

659

660

双胎

0

1

610

611

三胎

0

0

48

48

四胎

0

0

2

2

五胎以上

0

0

0

0

妊娠当り多胎妊娠率

0.00%

33.30%

16.90%

16.90%

生産分娩数

0

1

3,012

3,013

移植当り生産率

0.00%

11.10%

19.60%

19.60%

出生児数

0

2

3,650

3,652

 

 

 (6)非配偶者間人工授精を用いた治療成績

 非配偶者間人工授精を用いた治療成績を表13に示した.非配偶者間人工授精は19の登録施設において1,711例の患者に施行された.治療周期総数は3,497であり,生産分娩数186例,出生児数は188児であった.

 しかし,実際の妊娠例を分娩まで追跡できない症例が認められた.

 表13 非配偶者間人工授精の治療成績

患者総数

1,711例

治療周期総数

3,497例

妊娠数

285例

流産数

44例

生産分娩数

186例

出生児数

188例

 

 

 (7)治療法別出生児数および累積出生児数

 治療法別出生児数および累積出生児数を表14に示した.平成10年中の各治療法による出生児数は前述の通りであるが,重複例を考慮に入れ,合計すると11,119児となった.新鮮胚(卵),凍結胚(卵),顕微授精を用いた治療による累積出生児数(および累積出生児数合計に対する比率)はそれぞれ32,099(67.4%),3,493(7.4%),12,012(25.3%)となり,その合計は47,591児に達した.

 表14 治療法別出生児数および累積出生児数

治療周期総数

出生児数

累積出生児数

新鮮胚(卵)を用いた治療

34,929

5,851

32,099

凍結胚(卵)を用いた治療

8,132

1,567

3,493(13)

顕微授精を用いた治療

18,657

3,701

12,012(13)

合 計

61,718

11,119

47,591

( )内は重複症例数,合計は重複症例数を減じてある.

 

-* TOP *-

考  察

 平成10年12月末における登録施設数は442施設で,平成9年12月末の394施設から48施設の増加をみた.これは平成7年の45施設,平成8年の40施設を上回る増加であった.登録施設中377施設が治療を施行しており,60施設が新たに治療を開始したことになる.一方で治療を実施しなかった施設は48あった.治療周期総数は,新鮮胚(卵),凍結胚(卵)および顕微授精を用いた治療のすべてを合わせると,61,718周期に及び,前年に比べて7,690周期の増加であった.これらの方法により出生した児の総数は11,119児となり,前年に比べ,年間1,908児の出生増加がみられたことになる.表14に示したように,新たな出生児数を加えるとこれまでに本邦で47,591児が誕生したことが明らかになった.

 新鮮胚(卵)を用いた治療の全体像をみると,計24,042人の患者に34,929周期の治療を行っているが,前年より患者数は2,393人,周期数は2,682周期の増加がみられた.治療成績についてみると,妊娠率は移植当り22.8%,採卵当り18.6%であり,生産率は移植当り17.0%,流産率23.2%といずれも前年と同様であった.しかし,多胎妊娠率20.4%は前年(17.7%)より高値であった.新鮮胚(卵)を用いた体外受精は治療方法として確立されており,治療成績は固定化してきている.

 平成10年中のGIFTの治療周期総数は376で,前々年が339周期,前年が218周期であることを考えればこの3年間続いた大幅な減少傾向は一段落したと推察される.

 平成10年中の凍結胚(卵)を用いた治療の実施施設数は158で,前年の125と比較して33施設の増加であった.治療周期総数はIVF‐ET 7,618周期,GIFT 127周期,ZIFT 387周期の合計8,132周期と,前年(5,208周期)と比較して大幅に増加し,特にGIFTとZIFT(前年の治療周期は各々2周期と1周期)は激増している.移植当りの妊娠率および生産率はそれぞれ22.9%,16.9%と前年の成績と比較し向上しており,凍結胚(卵)を用いたGIFTの妊娠が初めて報告され,しかも高い妊娠率であったことが注目される.本年度は治療実施施設総数の41.9%が凍結胚を利用しているが,多胎妊娠を予防するという観点からも胚の凍結保存の普及は重要であり,今後も多くの施設での凍結保存の活用が望まれる.

 顕微授精を用いた治療成績については子宮腔内移植施行例が大部分を占める.今回の実施施設は181であり,前年の145と比較し増加していた.さらに実施施設数に対する妊娠例および分娩例の報告のある施設数の割合はそれぞれ87.8%および84.0%となっており,前々年の77.4%,72.7%,前年の85.5%,81.4%と比較しても上昇傾向にある.患者総数,治療周期総数および移植総回数もそれぞれ12,823,18,657,15,505で前年を上回っている.また顕微授精を用いた治療により平成10年には3,701児の出生が報告され,本治療法により12,012児が誕生したことになる.今後実施施設数も増加することが予測されるが,倫理上も適切な医学的適応を守った本法の活用が望まれる.

 多胎妊娠の実態をみると,多胎率は新鮮胚(卵)で20.4%,凍結胚で13.4%,顕微授精で16.9%であった.前年度の多胎率はそれぞれ17.7%,14.2%,16.3%であり,新鮮胚(卵)を用いた治療における多胎妊娠率は増加し,集計開始(昭和63年)以来,初めて20%を越えた.今後とも多胎の防止が重要な課題となっていくと考えられる.

-* TOP *-

まとめ

 倫理委員会・調査・登録小委員会の平成11年度事業として,体外受精・胚移植等の生殖医療の臨床実施登録施設に対して,平成10年分の包括的調査を行った結果,以下の事項が明らかになった.

 1.体外受精・胚移植の治療周期からみた施設数の分布は,前年と同様,年間50周期以下の施設が多くを占めた.

 2.新鮮胚を用いたIVF‐ETの実施施設数,患者総数,治療周期総数は前年と比較して増加の傾向にあり,移植当り,採卵当りの生産率からみても,治療成績は固定している.

 3.凍結胚(卵)を用いた治療の実施施設は前年より増加し,実施施設総数における割合は41.9%まで上昇した.

 4.顕微授精を用いた治療については,大部分が子宮腔内移植例によるものであったが,実施施設における妊娠例および分娩例の報告施設は実施施設のそれぞれ87.8%および84.0%と上昇傾向にあり,治療法として定着してきたと思われる.

 5.平成10年分の生殖補助医療による出生児は11,119人に達し,これまでに47,591児が誕生したことになる.

-* TOP *-

 

謝  辞

 本報告は,回答をお寄せいただいた各登録施設のご理解とご協力によるものであり,ここに深謝いたします.

 

文  献

 1. 日本産科婦人科学会理事会内委員会.生殖医学の登録に関する委員会報告.日産婦誌 1990;42:393―397

 2. 日本産科婦人科学会理事会内委員会.平成2年度生殖医学の登録に関する委員会報告(平成元年分の臨床実施成績と昭和63年末までの治療により出生した児の調査成績).日産婦誌 1991;43:470―476

 3. 日本産科婦人科学会理事会内委員会.平成3年度生殖医学の登録に関する委員会報告(第3報)(平成2年分の臨床実地成績,平成元年分の治療による出生児の追跡調査成績).日産婦誌 1992;44:499―511

 4. 日本産科婦人科学会理事会内委員会.平成4年度生殖医学の登録に関する委員会報告(第4報)(平成3年分の臨床実施成績,平成2年分の治療による出生児の追跡調査成績,全追跡調査児の総合解析成績).日産婦誌 1993;45:397―410

 5. 日本産科婦人科学会理事会内委員会.平成5年度診療・研究に関する倫理委員会報告(平成4年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績).日産婦誌 1994;46:929―933

 6. 日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会報告.[平成5年度生殖医学登録報告(第5報):平成4年(1992年)分の臨床実施成績―国際統計報告書].日産婦誌 1994;46:1269―1277

 7. 日本産科婦人科学会理事会内委員会.平成6年度診療・研究に関する倫理委員会報告(平成5年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績).日産婦誌 1995;47:444―448

 8. 日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会報告.[平成5年度生殖医学登録報告(第5報・続報):平成4年(1992年)分の臨床実施成績―国際統計報告書].日産婦誌 1995;47:577―592

 9. 日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会報告.[平成6年度生殖医学登録報告(第6報):平成5年(1993年)分の臨床実施成績―国際統計報告書].日産婦誌 1995;47:1199―1218

10. 日本産科婦人科学会理事会内委員会報告.平成7年度診療・研究に関する倫理委員会報告(平成6年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績).日産婦誌 1996;48:365―371

11. 日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会報告.[平成7年度生殖医学登録報告(第7報):平成6年(1994年)分の臨床実施成績―国際統計報告書].日産婦誌 1996;48:1182―1196

12. 日本産科婦人科学会理事会内委員会報告.平成8年度診療・研究に関する倫理委員会報告(平成7年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績).日産婦誌 1997;49:697―702

13. 日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会報告.[平成8年度生殖医学登録報告(第8報):平成7年(1995年)分の臨床実施成績―国際統計報告書].日産婦誌 1997;49:1143―1161

14. 日本産科婦人科学会理事会内委員会報告.平成9年度診療・研究に関する倫理委員会報告(平成8年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績および平成10年3月における登録施設名).日産婦誌 1998;50:267―277

15. 日本産科婦人科学会理事会内委員会報告.平成10年度診療・研究に関する倫理委員会報告(平成9年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績および平成11年3月における登録施設名).日産婦誌 1999;51:361―394

16. 日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会報告.[平成9年度生殖医学登録報告(第9報):平成8年(1996年)分の臨床実施成績―国際統計報告書].日産婦誌 1999;51:803―822

17. 日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会報告.[平成10年度生殖医学登録報告(第10報):平成9年(1997年)分の臨床実施成績―国際統計報告書].日産婦誌 1999;51:1098―1120

-* TOP *-